二子山〜袈裟丸山〜小法師尾根縦走(2004年4月)

年月日:    2004.04.29

行程:    楡沢入口出発(05:40) 〜 林道終点(山ノ神)(06:06) 〜 沢登り完了、尾根上到着(標高約1,070m)(07:05) 〜 1,159,9mピーク三角点(07:20) 〜 二子山(標高1,556.4m)(08:40) 〜 沢入からの登山道出合(09:13) 〜 前袈裟丸山(標高1,878.2m)(10:29) 〜 中袈裟丸山(標高1,906m)(12:02) 〜 奥袈裟丸山(標高1,957.9m)(12:43) 〜 小法師尾根への分岐(標高1,900m)(13:40) 〜 1,690mピーク手前の鞍部(14:28) 〜 笹の平(標高1,680m)のど真ん中(15:10) 〜 小法師岳(標高1,593.1m)(15:35) 〜 巣神山(標高1,226.0m)(16:46) 〜 庚申ダム(17:48) 〜 楡沢入口帰着(18:23)

春の大型連休とはいっても田舎に用事があるので、山に行けるのは4月29、30日の2日間のみ。29日は快晴の予報である。アカヤシオの咲く季節に袈裟丸山に登るのがかねての希望だったので、ずっと暖めていた計画:二子山〜袈裟丸山〜小法師尾根縦走(周回)を実行に移すことにした。

行程が長いし情報も少ないので本当に安全に縦走できるのか確信はなかった。不安要素が幾つもある。@小法師尾根の様子が不明、A小法師尾根が派生する場所の傾斜が急である、B楡(ねり)沢から二子山に至る破線ルートの情報も無い、C国道122号線の足尾トンネルと沢入トンネルは歩いて通れるのか、等等。しかし、たまたま3月末に庚申ダムから巣神山に登って小法師尾根の半分近くの様子を把握できた。楡沢の入り口も認識した。足尾トンネルと沢入トンネルには旧道が残っているのでトンネルの中を歩かなくても済みそうである。不安要素がだいぶ減って縦走の成算がある程度立つようになった。

では、どちら回りで行くべきか?尾根が広くて迷う可能性がある小法師尾根を登りに使用して一泊し、人気がある袈裟丸山を朝早い静かなうちに歩いて二子山経由で下山するのが良いと思われた。しかし、この案では下山してからがつらい。庚申ダムは楡沢入り口よりも標高が約100m高いのである。自転車を利用して一般車道を一気に移動するためには庚申ダムに下山しなければならない。静かで安全な山歩きと下山してからの移動の労を両天秤にかけて、結果として楡沢から登って庚申ダムに下る案を選択した。ルートが確定してみると、なんとなく山中一泊では中途半端な行程に思えてきた。退屈な山中泊はできる限り避けたい。日が長くなってきたので、一応山中泊の準備はしながらも日帰りを狙うこととした。

早く寝ようと思ったのに28日の夜遅くにサッカー日本代表の対チェコ戦の中継放送があり、つい誘惑に負けてズルズルと0時半まで前半を観戦し、睡眠3時間で出発。

日光市経由で国道122号線を南下し順調に足尾着。先ず、庚申ダムに寄って杉林の中にポンコツ自転車を隠し、未知の楡沢へ向かった。地図では奥に民家が数軒あることになっているので、氷室山登山の時みたいに首吊りに来たと騒がれないように、できるだけ国道寄りに停めた。この時期は山に入る人が多いので、よほど変な場所に停めなければ大丈夫であろう。

5時40分 歩行開始(楡沢入口出発)。
楡沢沿いの道は一応舗装されてはいるが荒れている。「民家有り、発砲注意!」旨の猟友会の注意書きがあり、少々物騒な場所だ。道沿いの民家には人が住んでいる様子はない。その代わり、石切り場があり、石材業者の大きな丸いカッターが2台、道横に並んでいる。こちらは現役のようである。

石切場があるくらいだから楡沢の左岸側は切り立った場所が多く、沢底も石がゴロゴロしていて狭い。砂防堰堤や植林を目的として作られた細い林道は補修されていないので、オフロード車でも走りにくそうである。終点付近にはシカ駆除を目的としたくくり罠を設置してあるとの注意書きがある。その割にはシカの糞が認められない。群馬県側ではシカの駆除が徹底しているのだろうか。

6時06分 林道終点(山ノ神)到着、沢登り開始。
楡沢本流に支沢が合流する地点が道路終点である。大山祇命(おおやまつみのみこと)の立派な石碑がひっそりと終点を見下ろす。

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大山祇命


2万5千分の1の地図上の破線は楡沢沿いに進み、途中から県境尾根に向けて切れ込む支沢に進み尾根に上がる。ここを辿って袈裟丸山に登ったという記録は見当たらない。あるページでは「廃道」との表現もあったので、周回コース上で最も不安な場所の一つであった。地図上では支沢に斜面崩壊の様子は見てとれないが、等高線の間隔が狭く急峻な地形であることは覚悟していた。

大山祇命の右の支沢が目指す登山ルートであるはずだが、なんの案内もない。目印も無い。入り口こそかすかに踏み跡らしきものが認められるが、廃道どころか道跡すら無い。岩がゴロゴロし、両側が切り立ってゴツゴツとしたただの枯れ沢が続くのみ。急斜面の消えかけた道を辿るイメージは裏切られた。これではただの沢登りではないか。

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楡沢の支沢    06:20


嫌いな沢登りだがなんとかなるだろうと進入。しかし100mも進まないうちに難所現る。簡単に乗り越えられそうと思った段差に取付く場所がなく右岸側を大きく巻いたが、沢に降りる場所までしばらく掴まるものが少ない急斜面を恐る恐る進まなければならなかった。どう見ても自分が辿ったコースが正解と思われるのだが、誰かが歩いた形跡は一切無く、ますます不安になる。次に現れた岩場は左右どちらも巻けない。行き止まりかと思ったが、岩場に枯れた樹木の幹が不自然に一本立てかけてある。樹木自体は頼りにならなくても、これを補助材としてうまくバランスを保って上がることができた。こんなことを続けること数十分。後ろを振り返ると南の山々が目線の高さになっている。そろそろ尾根に上がれるのではないかと思い始めたころシカの糞を見つけた。

シカの糞があるということは上方に抜けるルートがあるということ。沢が二股に分かれている。右股が本筋で、地図の破線はそのまま右股を1,159.9mピークに向けて直登することになっているが、もう沢登りはご免である。岩場が少なく比較的楽に登れそうな左股を選択。

7時05分 沢登り完了、尾根へ上がる(標高約1,070m)。
標高差300m、一時間強の沢登りであった。もともと道はなく、修験者が自然の岩場をよじ登るコースだったのではないだろうか。フリークライミングには及ばないが、手足が滑ったら命を落としそうな場所が何箇所かある。水がほとんど流れていないので登山靴で遡行可能だが、初めての人がここを下るのは非常に危険である。沢登りの好きな方にはお薦めかも。

さて、難所を抜けたので周回を既に半分果たした気分である。尾根上に抜け出た場所には古い赤紐が残されていた。この人も私と同じようなルートを辿ったのかもしれない。ここからは朝日に照らされて明るい尾根を美しいトウゴクミツバツツジの花を愛でながら1,159mピークに向かう。

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県境尾根のトウゴクミツバツツジ  07:15


7時20分 1,159,9mピーク三角点到達。
二子山なんとかという名称の三角点らしい。1,159.9mピークから見た二子山はきれいなツインピークスで、その命名に納得。二子山まで直線距離にして2km以上・標高差にして400m近くあり、まだまだ遠い。袈裟丸山は二子山の背後にあって全く見えない。

ミズナラに覆われた県境尾根は道こそないが藪が無く勾配も緩いのでとても歩き易い。日差しが強く気温が上がりそうだが、朝は冷たい北風が吹き付けて寒く、発汗を抑えてくれて好都合だった。

8時00分 二子山東の笹原(標高1,350m)到達。
二子山の東側・標高1,350mに平坦な地形があり、刈り込んだかのようにシカに食べられて矮小化したミヤコザサの笹原にシラカバの木が映える。周回コース上で最も印象的な場所であった。

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東側から見た二子山 08:08
左側が二子山山頂とされている三角点ピークである。


前年度の蕨の枯葉が一面に笹原を覆っている。蕨には毒があってシカが食べない。蕨は水はけと日当たりの良い場所を好む。一般に蕨の生育に向くのは伐採・植林して10年くらいの期間で、植樹が育つにつれて蕨は生育できなくなる。ここはシカが関与することで、半永久的に蕨の宝庫が維持されているのである。

笹原から二子山に向けて100mも登った頃だろうか、愛想の良い犬を連れて餅ヶ瀬川側のカラマツ林を登ってくる男性に声をかけられた。「山登り?」「そうです。」「どこから登ったんですか?」「楡沢から。」「それは珍しいねー。ところでイワタケって見たことある?」「いいえ、テレビでしか見たことないです。」「お見せしようか。」てな訳で、イワタケを見せてもらった。危険な岩場に生育するイワタケを大量に採っていたので相当なベテランの方らしい。水で戻して酢醤油をつけたり、てんぷらにしたりして食するのだそうである。普段山歩きも良くやるが、この日の目的はシカの角探し。昨年は12本も拾ったが、今年は駆除が徹底してシカが寄り付かないので角が落ちていないとのことだった。

男性が犬連れで8時台に標高1,400m以上の高みにいたということは、餅ヶ瀬川側から簡単に上がれる道があるということだろう。カラマツの植林があることからも頷ける。道を聞いておけばよかった。

8時40分 二子山(標高1,556.4m)到達。
山部さんの山名板は袈裟丸山方面から訪れた登山者の正面に見えるように三角点の東側に設置されていた。二子山山頂は笹原で、ミズナラを透かして袈裟丸山と小法師尾根が良く見える。ようやく本日歩こうとしている尾根の全貌を把握できた。

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二子山山頂から見た袈裟丸山 08:50


前袈裟丸山までまだ4km近くある。小法師尾根への分岐点まで凸凹の袈裟丸山を越えていかなければならない。屏風のように広がる袈裟丸の峰々が対面の小法師尾根に行くまでの高いハードルのように思えた。山部さん達は折場口から奥袈裟丸山まで往復し二子山にも立ち寄っている。この実績が支えとなった。

二子山の東側の県境尾根はとても歩きやすいのにもかかわらず踏み跡がない。一方、二子山から西側は踏み跡が明瞭。二子山に訪れる登山客のほぼ全てが袈裟丸山登山のついでに立ち寄るのであろう。天気が良くて袈裟丸山が前方に見えているので、地図も方位磁石も頼ることなく快適に進んだ。

9時13分 沢入からの登山道と出会う。
前日の雨で柔らかくなった登山道に先行者の真新しい足跡が多数ついていた。アカヤシオの花期にはまだ早くて楽しみが無いし、ピークには必ず先行の登山者がいてくつろげないので、前袈裟丸山まで休憩したのは一回きり。結果的にはこのおかげで時間を稼いで日帰りできたともいえる。前袈裟丸山に至るまでに、早くも下山してきてすれ違った登山者5名、追い抜いた登山者は20名にのぼった。

10時29分 前袈裟丸山(標高1,878.2m)到達。
頂上にも10名ほど登山客が休んでいたので、休まず通過。

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小法師尾根   10:39


後袈裟丸山の手前に、八反張と呼ばれる両側から浸食が進み危険な鞍部がある。立ち入り禁止となっているが、自己責任で入り込む人は少なくないようである。若い男性が一人空身で戻ってきた。今はまだ渡れるが、いずれは前袈裟丸山から後袈裟丸山まで行くことができなくなることであろう。

後袈裟丸山にも先行者の男性が1名いて写真を撮っていたので、休まずさらに奥へ進む。雪を冠る真っ白な武尊山と至仏山が美しい。後袈裟丸山から先は道があまり明瞭ではない。北側斜面ではシャクナゲやコメツガの根がゴツゴツ張り出したところに雪がまだ残っていて歩きにくい。中袈裟丸山との間の鞍部に向けて下っていく途中で男性の登山客と遇った。だれも先に行った形跡が無いので不安になって戻ろうとしていたとのこと。この後、中袈裟丸山までこの方とご一緒することになった。中袈裟丸山の南側斜面は笹が生い茂っていてかろうじて道を識別できる程度。

12時02分 中袈裟丸山(標高1,906m)到達。
後袈裟丸山にいた男性も追いついてきて、しばし3人で話をしながら休憩。奥袈裟丸山まで往復2時間かかるため、お二方は中袈裟丸山で引き返すとのこと。

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中袈裟丸山から見た小法師尾根    12:07
   
手前の尾根の中央左が1,690mピーク、中央がカラマツ林と丈の高いミヤコザサに覆われた広い標高1,680mの丘陵(通称「笹の平」)。
標高1,680mの丘陵には簡単に行けそうに見えるのだが、中袈裟丸山から3時間強を要した。


袈裟丸山のアップダウンの連続に少々うんざり。この先の行程が長いことを思うと、奥袈裟丸山なんてどうでもいいから眼下に見える小法師尾根にひとっ飛びしてしまいたかった。

中袈裟丸山から先には誰もいない。いつもの静かな山歩きに戻った。中袈裟丸山の下りは道も鮮明で歩き易い。それ以外の場所は記憶が定かではないが、あまり道が鮮明ではなく中袈裟丸の南側斜面と似たような感じである。

12時43分 奥袈裟丸山(標高1,957.9m)到達。
雪が残るアオモリトドマツの林の中に山頂がある。見通しが良くないので、一般の登山者にとってここまで来る価値はない。中袈裟丸まで行けば十分に袈裟丸山を堪能できるのではないだろうか。

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奥袈裟丸山    12:53


奥袈裟丸山から最高峰の1,961mピークまでは道が不鮮明でシャクナゲ・コメツガの藪がうるさい。ただし、迷う心配は無い。ここを過ぎると稜線西側に緩斜面が広がる。道は識別できなくてもアオモリトドマツの大木の森の中を適当に進んでいけば良い。1,961mピークと1,932mピークの間の鞍部は幕営に最適と思われる。

13時40分 小法師尾根への分岐(標高1,900m)到達。
1,932mピークの次にある鞍部で、地形的に判りやすいのでうっかり通り過ぎる心配はない。鞍部には尾根の入り口を示す案内標識があった。奥袈裟丸山の標識には分岐点までの所要時間40分と書かれているが、道が不鮮明で藪もあるので普通に歩いて45分〜50分といったところか。

小法師尾根が派生する場所まで標高差70m強を急降下するのであるが、鞍部がアオモリトドマツに覆われていて見通しがあまり良くないので、地図では判っていても不安に感じる所である。ここは案内を信じて素直に東に下ったが、ちょっとでも左右にずれると沢に下ってしまうので注意が必要である。所々、残雪の消えた場所では踏み跡が見られるので、無雪期のほうが安心して下れそうだ。

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小法師尾根への分岐点    13:45
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急斜面を下り終えた場所にも案内標示があった。この先は体力・時間との勝負だろう。気持ちが良い場所なので笹原に腰を下ろして少し目をつぶったらウトッとした。睡眠不足だからこのまま泊まってしまおうかなとも思ったが、体調自体は良いので、ここまで来たら帰りたい。栄養補給して尾根を進む。

1,784mピークはコメツガの疎林で、低山のアカマツの林を歩いているような感覚である。この一角からは朝歩いてきた県境尾根から前袈裟丸山にかけての山並みが良く見える。

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県境尾根から前袈裟丸山にかけての山並み    14:07


1,784mピークを下る時に1,690mピークが眼前に見えていているので真っ直ぐ進んでしまいそうだが、ここは深いミヤコザサの中を南東方向に下って連絡尾根に乗る。

14時28分 1,690mピーク手前の鞍部到着。
鞍部はダケカンバの林が美しい。

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1,690mピーク西の鞍部    14:33


ここで立ち止まり行動予定を思案した。暗くなったら杉林の中を歩くことは不可能だから、18時までには山を下りたい。小法師岳から庚申ダムまで所要時間2時間として、小法師岳まであと一時間半で歩く必要がある。残り少ない体力で、ピークをあと2つ越えていくためには、この時間を目一杯使って確実にゆっくり登るしかない。

1,690ピークの下りでも笹原の中の踏み跡を辿れる。木の根元に不自然なシカの屍骸があった。首が無い。頚椎には肉がついていない。脚の関節の骨は生々しくまだピンク色をしている。そして毛皮が折りたたんだように骨の上に載っていた。蛆虫はまだ湧いていないし、臭くもない。首と肉は狩猟者が持ち去ったのであろうか。それにしては狩猟期間が過ぎてだいぶ時間が経っている。狩猟者が訪れるにはあまりに奥深くて不便な場所でもある。クマが屍骸を喰ったのか?

15時10分 丈の高いミヤコザサの藪(標高1,680m)のど真ん中。
広くなだらかな丘陵で、小法師尾根の地図を初めて見たときから、いったいどんな場所なのか興味があった。3月末に小法師岳の近くまで行った時に積雪の多い場所であることを知ったので、笹藪になっているであろうことは予想できたし、さらに山部さんが袈裟丸山から撮った写真でも笹原に覆われていることが伺えた。実際に行ってみると、この広大な丘陵は全てカラマツの植林で、丈の高いミヤコザサの林床となっており、高原山の標高1,000m付近のタゲ国有林にとても良く似ているという印象を受けた。体力を激しく消耗するような性質の悪い笹藪ではない。とにかく広いので方位磁石で方向を見定めて、笹原を400m程度ザバザバ掻き分けて直進し、細い連絡尾根に進む。

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1,680mピークの広いミヤコザサ帯    15:16


15時35分 小法師岳(標高1,593.1m)到達。
ひょっとしたら今日辺り山部さんの山名板が掛かっているのではないかと期待して頂上に進んだら、見覚えのある形の山名板が見えた。まさに設置したてのホヤホヤの山名板である(後で山部さんの記録を拝見したところ、山名板が設置されたのは私が前袈裟丸山の登りでバテていた頃のようでした。)。

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小法師岳    15:44


小法師岳は予想していたような藪山ではなくて、庚申山〜鋸山〜皇海山の眺めが良く、笹原も歩きやすい。ツツジ類が多いので、5月には南面のカラマツの新緑とツツジの花で色彩豊かな場所となろう。

1,526mピークには原向方面を示す案内表示があった。1,425mピークに向けて下るポイントさえ見落とさなければ、あとは見通しの良い防火帯を辿るだけ。1,425mピークからは先日歩いた経験があるので余裕である。一ヶ月前に来た時に較べるとずいぶん多くの目印が残されていた。

16時46分 巣神山(標高1,226.0m)通過。
一ヶ月前にはMWVの青いブリキ板の山名は消えていたはずだが、その後どなたかが白いペンキで巣神山と書き入れたようである。巣神山から杉の植林地帯までの尾根は美しいトウゴクミツバツツジの花が満開で、袈裟丸山のアカヤシオを見られなかった分の彩りの不足を十分に補ってくれた。

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巣神山からの下りにて    17:15


杉林の沢源頭で水分を補給し生き返る。本当にこの沢の水はありがたい。

17時48分 庚申ダム到着。
庚申ダム付近にサルの群れがいた。山部さんが見たのと同じ群れであろう。お墓の供え物を期待しているのだろうか。人馴れしていて険相なサルはいなかったように思う。

隠しておいたポンコツ自転車を引っ張り出して道路を下る。変速機構が作動しないので下り専用なのだが、道はほぼ全て下りなので十分機能する。空気が乾燥しているので、風を受けて汗を乾かしながら走るのは爽快なものだ。足尾トンネルの旧道は植樹されて半分公園化されており、難なく通過。次の沢入トンネルの旧道は舗装が残っていて楽勝と思われた。ところが、舗装道を下っていくとなんと行き止まり。大規模な土砂崩れが発生して完全に旧道が埋まっている。山肌に突如として道が突っ込んでいる感じ。いまさら戻ってトンネルの中を通るのは嫌なので、その先に道が続いているのを確認して、自転車担いで堆積した不安定な岩場を越えた。バランス崩したら渡良瀬川に転落する。まさか最後の最後で最も危険な思いをするとは思わなかった。

18時23分 歩行終了(楡沢入口帰着)。

12時間超という長丁場だったものの、念願の周回を達成できて満足である。天候に恵まれてこの日はよほど体調が良かったのであろう。睡眠不足のはずなのに帰りの車の運転中に眠くなることも無く順調に帰りついた。

山野・史跡探訪の備忘録