栗山ダム周遊、 月山 〜 大日向山 〜 夫婦山(2004年11月)

年月日:     2004年11月23日(火曜、勤労感謝の日)

行程:    栗山ダムサイト・標高約920m出発(07:11) 〜 月山・標高1,176.5m (07:55) 〜 下郷線147号鉄塔・標高約980m(09:33) 〜 大日向山・標高1,176.5m (10:40) 〜 下郷線147号鉄塔復帰(11:25) 〜 夫婦山・標高1,341.6m(13:38) 〜 駐車地に帰着(14:40)

狩猟期間に入ったら県北の山には近づかないようにしているのであるが、今年も雪が降るのが遅いので、天気が良いとつい出かけてしまう。地図の準備をしていなかったため、先日使用した地図の登り残しである横瀬山にでも行こうかと考えた。しかし、車に乗り込んでダッシュボードを開けたら、春に準備しておいた栗山ダム周辺の地図が出てきた。春のヤシオツツジが咲く時期を狙って栗山ダム周りの3山(月山・大日向山・夫婦山)を周遊するつもりであったのだが、平五郎山と引馬峠への思いにとり憑かれて、つい時期を逃してしまったのであった。今年は春の花の時期をことごとくはずしまくりで、なんとアカヤシオ、ゴヨウツツジ(シロヤシオ)、カタクリ、イワウチワの花を一度も見ていないのである。いつでも行けると思っていると結局は行かずじまいとなってしまうもの。

横瀬山と栗山ダム周りのどちらにしようかと迷いながら国道121号を北上。分岐手前のトンネルを抜ける寸前でようやく決心。左に折れて川俣方面に向かった。日蔭牧場を抜けて登っていく舗装道のアスファルトが荒れていた。春に二度様子見に訪れた時は荒れていなかったので、秋の降水時に抉られたものであろう。水が流れるような場所ではないので、凄まじい豪雨であったろう。現地到着時には栗山ダムサイトの広場に他に車無し。春に人気の場所はこの時期ひっそりと静まり返っている。

07時11分 歩行開始(標高約1,050m)。  月山は気軽に登れる山らしいので登山道があるはずだが、ガイドブックの類を持っていないし準備もしていないのでどこに登り口があるのか知らない。登り口の案内は見当たらないし、地図にも載っていない。道が無くともダム軸から尾根に取り付いて真っ直ぐ南東方向に登るつもりだったので、ロックフィルダムの右端を登って堤頂に出た。目の前にあった梯子を登って法面のコンクリート壁を上がり尾根に取り付く。ダム建設時に用いられたと思われるコンクリート製の四角い土台が残っている。尾根上に踏み跡はないが、笹は歩く障害とはならず快適に登っていける。シカの生息する鞍部を過ぎると笹の無い尾根となり、次第に勾配が急になる。地図には表されていないものの標高1,230m付近はかなりの急勾配である。このルートを利用する人がいるらしく、なんとトラロープが設置されている。これは助かる。トラロープにつかまって西側から上がってくる尾根上の登山道に出、ここから10分程度で山頂に至る。

07時55分 月山山頂到着(標高1,287.2m)。  月山は氏家町からも良く見える山。南側が急峻であることは遠目にも判る。変わった形をしていたので、本格的に山歩きをする前から気になっていた存在であった。現在は砥川に今市下部ダムが建設されているので今市市側から簡単にアクセスできる状況にはなさそう。しかし、地形的にはどう見ても今市市の山なので、南側にも登山道があるだろうと想像していた。山頂にある石祠に「作下部村中」「享和三年」と彫られているので、昔の月山は今市市作下部地区の住民の信仰の対象であったと思われる。栗山ダムができたことで、今でこそ栗山村日蔭地区経由でダムサイトから登れるが、昔は砥川沿いに今市市作下部地区からしか登れない山であったはず。南側にも踏み跡があるようだが、今でも辿れるのだろうか?

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月山山頂にて  07:55
山頂は狭く、東側がスパッと切れ落ちている。木が若干刈り払われており、北側を除いて遮るもののない絶景が楽しめる(山頂手前で北側も望める。)。夫婦山方向に映る影を撮ってみた。遠くに見えるのは県境尾根。


月山の北側直下で登山道から北側に分岐する踏み跡があるが、踏み跡は土砂捨て場で途切れてしまう。栗山ダム南東の縁の尾根伝いの踏み跡を期待して一旦は尾根上に上がってみたが、カラマツの植林地と不快なミヤコザサの藪が続くのみでつまらない。結局次の土砂捨て場に降りてしまった。栗山ダムの南東側の尾根は歩く価値が無さそうなので、ダムの周りの道をテクテク歩いてダム奥の高みを目指す。

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栗山ダム奥から見た女峰山    08:56


単に女峰山を撮影するならばダムサイトの駐車場の方が優る。北側斜面には2日前の雪が積もっているようであった。

ダム奥の土砂捨て場から境界尾根に沿って北西方向に登る。稜線は荒く笹刈りが行われていて歩き易い。栗山ダム奥のピークから北北西の尾根に下る場所で二本の木に黄色いテープが巻かれている。なんとなく送電線巡視路への誘導標示のように見えたが、道は無くミヤコザサの藪である。北北西に尾根を下ってしまうと長い距離を斜面横断して大日向山との連絡尾根に向かわねばならない。道があるのかどうか不明なので、斜面横断を嫌って大日向山まで藤原町と栗山村の境界を忠実に辿って急斜面を下った。栗山ダムからの下りも、大日向山への登りも急な斜面だが、無雪期は危険な場所も藪もなく歩き易い。落葉している時期は送電線・下郷線の鉄塔が目印となるため、方向も見定め易い。より安全に栗山ダムから下降するには、勾配の緩い尾根に沿って北北西に下ると良い。途中から西から来る巡視路を辿ると送電線鉄塔・146号に出る。良く整備された巡視路を辿って斜面を横切り鉄塔147号線に至る。

09時33分 下郷線147号鉄塔到着(標高約980m)。  送電線の巡視路は標高約1,000mを維持しながら栗山ダム周囲の急斜面を取り巻くように設けられている。栗山ダム奥の北北西尾根にも送電線鉄塔が見える。北北西尾根と連絡尾根の間は巡視路を辿って楽に移動できることが判った。帰りにこの楽なルートを歩くのを楽しみにして大日向山へ向かう。

連絡尾根は東側(田茂沢側)が植林され、西側は広葉樹林が残されている。笹は膝下程度のミヤコザサや矮小化したスズタケで快適。順調に大日向山南の急斜面に近づく。標高1,000mから勾配が突然急になる。日向明神の登りと酷似している。

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大日向山から見た高原山    10:21


山頂手前の開けた場所が大日向山で唯一の写真撮影ポイントか?快晴だが冬晴れではないので清澄度は今一つ。2日前に歩いた塩原火山のスッカン沢に較べて釈迦ヶ岳火山の爆裂火口壁は小振りな印象。

10時20分 大日向山山頂到着(標高1,176.5m)。  頂上は広い台地状の明るい広葉樹林である。大木は見られない。腰から胸の高さの笹(たぶん巨大化したミヤコザサ)に覆われいるが歩き難くはない。

大日向山山頂にて  10:40
頂上にはシャロームさんがノラさんに宛てた書置きがありました。
       

しばし佇み山頂の雰囲気を味わってから下山。下りで方向が逸れると滑落する恐れがあるが、境界見出し標の替わりとして赤いテープが境界線に沿ってつけられており、落葉期は送電線鉄塔と前衛峰が目印となるので安心である。

11時25分 下郷線147号鉄塔復帰(標高約980m)。  良く整備されている巡視路経由で146号鉄塔へ移動。

11時35分 下郷線146号鉄塔到着(標高約980m)。  ここで昼食。山中で気持ちに余裕を持って陽光を浴びながら休憩したのは久しぶりのことであった。

巡視路は鉄塔146号からしばし尾根を登った後、再び斜面に沿って西に向かっていく。巡視路と別れて尾根を順調に辿り、栗山ダム北の高みに向かう。

12時10分 栗山ダム北のピーク復帰(標高約1,190m)。  笹刈りした道を歩いて夫婦山に向かえそうに思えたが、道は徐々に稜線から外れて北側の新しい植林地の防護ネットで途絶える。

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植林地から見た明神ヶ岳    12:15


しかたがないので、稜線に復帰し、深いミヤコザサの藪をザバザバと突き進む。この藪は長続きすまいとの期待とは裏腹に、進むにつれてますます深くなる。幼い頃、チマキザサの藪中を泣きそうになりながら親父の後を追って歩いた記憶が蘇る。

ミヤコザサ藪は腕を使わずに脚の力だけで突破しがちで、チシマザサ藪を歩く場合よりも脚が(特にふくらはぎが)疲労しやすい。距離が長くなるとじわじわと効いて来る。高原山剣ヶ峰南の笹原で両脚が攣って歩けなくなった経験があるので、できるだけ手を使うようにして歩く。

13時26分 夫婦山山頂到着(標高1,341.6m)。  ただ藪歩きしただけで夫婦山まで来てしまった。途中で人の声を聞いたような気がしたのだが、山頂に人が訪れた気配はなかった。空耳だったようだ。

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夫婦山から見た月山  13:38


午後になって南関東から汚い空気が流れてきて清澄度が落ちた。朝は逆光気味になってしまうので、夫婦山から月山の写真を撮るならば午前10時頃がベストか?

現在放牧場として利用されているのは道路の周辺だが、かつて夫婦山の高い所まで放牧場として利用されたことがあるようで、牛が食べないヤマツツジの潅木が多い。月山がアカヤシオの山なら夫婦山はヤマツツジの山と言えよう。5月に訪れるのが良いと思われる。

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5月の夫婦山    2004年5月15日 15:09


さて、夫婦山のことは事前に何も調べていない。人気の山だからきれいな登山道があるものと思っていた。ところが、現地に案内の類は皆無。笹藪の中になんとなく窪みがあることを認識できる程度で、登山道と言える状態ではない。人気の山とはとても思えない。

山頂直下からは古い柵の跡に沿って適当に笹原を歩く。すぐに二手に分かれる。右手の尾根沿いに進む道が地図上の破線路であろう。しかし、以前見た牧場東側の出口に降りたいので、地図に載っていない左を選択。この道は登山道らしからぬルートで、わざわざ南側の急勾配に設けられており、一回折れ曲がるだけでゆっくり一本調子で斜めに下っていく。故意に少し掘り下げられており、笹に隠れたくぼみを足先で探りながら下ることになる。うっかりすると足が横の壁にぶつかるし、潅木の枝が張り出しているので非常に歩きにくい。

醜い道ではあるが、やたら目印が付いているので迷う心配は無い。危険な場所は無いので、万が一道を見失ったら尾根に沿って適当に南に下れば道路に出られる。道路に出る寸前の植林地ではミヤコザサの中を皆が適当に歩くため踏み跡がめちゃめちゃ。結局、案内の類は一切見かけなかった。

14時20分 車道に降り立つ。  日中はトンネル内の照明が点いているので快適。

14時40分 車に帰着。  ダムサイトにはトイレがあり、水も使えるので便利。

本日の栗山ダムは終日貸しきり状態であった。ヤシオツツジの季節に大勢のハイカーが訪れるこの場所は、晩秋には人の気配がなく、気軽に静かな山歩きを楽しみたい方にお薦めである。

山野・史跡探訪の備忘録