今十文字峠 (2005年1月)

年月日:    2005.01.03

北緯36度56分49秒,東経140度13分1秒の地点から歩行開始(15:00)〜 南いわき幹線の送電線鉄塔・標高約690m(15:50)〜 那須町と黒羽町の境界・標高約715m(15:56)〜 今十文字峠・標高約635m 〜 車に帰着(16:58)

福島に帰省するときはいつも国道294号で北上するので、ついでに東堂山にでも登ってみようかと考えていたが、あいにく年末の降雪であきらめ。飲み食いして寝てばかりの年末年始だったので、とにかく体を動かしておきたい。栃木県に戻ってくる時、那須町芦野の積雪量が少なかったので、ひょっとしたら東堂山に登れるかもしれないと考え伊王野で左折して国道294号から白河の関へ向かう県道に入った。

八溝地域の山はほぼ100%植林されていて特徴のあるピークが存在しない。東堂山はたまたま県境から延びる尾根上の一ピークに名前がつけられただけなので、どれが目標なのか見当がつかない。戸中峠に向かう道の途上から尾根に取り付くつもりであったが、粗い道路地図しか持っていないので戸中峠に向かう道への分岐がどの辺りにあるのかも判らない。午後3時近いので道を確かめている余裕も無い。棚倉町方面を示す標識がある所まで行けばよかったものを、なんとなく峠に通じていそうな分岐があったのでダメ元で右折してしまった。カーナビを持たないので、車の運転も山歩きと同じ感覚である。スピードがあるし、徒歩と違って簡単に反転もできないし、他車が後ろから迫っていたりするとどこまでも進んでしまう。道を間違えて予期せぬところに行ってしまうのも一興。何のあてもなく盲滅法に車を走らせて偶然知り得たものは数多い。

舗装された道が右岸側に続く。雪面の車の轍を見る限り、降雪してから通行した車は2〜3台程度らしい。交通量が少ないのが気になるところだが、なんとなく峠に通じる道のように思えてそのまま進行。徐々に雪が深くなってきたので、谷底に向かう未舗装分岐が現れたところで車を置いて歩いてみることにした。

少し道路を登っていくと勾配の緩い植林地をみつけたのでさっそく薄暗い林に入ってみる。杉林は落ち枝の跳ね返りが厄介で好きではないのであるが、雪に埋もれているせいか歩き易い。樹齢30年〜40年程度の杉の植林地は平坦で大きな段差がある。昔は段々畑であったのであろう。故郷の山にもこんなところがあって、畝の形が残っていたりするものである。右側の尾根には太い竹の林があるので、昔は人家もあったと考えられる。竹林の斜面を登って尾根伝いに高みに登ってみた。高みにはなにも無い。ここだけ広葉樹が残されていて周囲を伺える。なんとなく地図で見た東堂山の尾根とは違うような気がする。はずれだったか?とりあえず尾根伝いに県境方面に向けて登ってみることにする。

尾根上はほぼ100%檜の植林地で、道は無いがとても歩き易い。次に至ったピーク(標高586m)はスッキリした形をしているが見晴らしは良くない。次の600m級ピークに至る尾根は北側が若い植林地で北側の山々を見渡すことができた。つい2時間前に近くで眺めていた磐梯山がこんなところからもくっきり見えるのが驚きだ。

600m級ピークにも何もないので、いよいよ東堂山ではないことがあきらだ。さて、ここからの進路をどうするか?帰りは雪の上の足跡を辿れば良いので、日没までに下れば迷う心配は無い。よって4時になるまで送電線鉄塔を目指して尾根を進む。

南いわき幹線の送電線鉄塔・標高約690mからの眺めはなかなか秀逸。東側を除けば遮るものがほとんどない。日光や高原山が見渡せる。

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南いわき幹線  15:50
この送電線は篠井富屋連峰の本山の東山麓を横切る。


東電の巡視路は尾根のさらに奥の峠から延びてきて、送電線鉄塔で行き止まりとなっている。ならばこのまま送電線鉄塔を歩いて峠に出て、峠から車道を歩いて車に戻ろうではないか。鉄塔から谷を見渡して車道が見当たらないことが唯一の不安ではある。車道が峠まで通じていないかもしれないがとにかく尾根終点まで行かないと気が済まない。4時まであと10分あるので、これにかけた。

東電の巡視路はすぐに二股に別れ、左は隣の尾根の送電線鉄塔に向かう。右側を選択して尾根を辿る。

辿ってきた尾根の派生個所・標高約715mに達した。主尾根の反対側には積雪した舗装林道が主尾根に沿って東に延びている。所持していた132000分の1の市町村地図で確認したところ、戸中峠の道とは全然似ていない。似たような道路は八溝山に近い場所にある。達した場所は福島県と栃木県の境界ではなくて那須町と黒羽町の境界尾根であり、近くに見える高い山が八溝山ということになる。そうだとすれば眼下の舗装車道は雲巌寺から登って八溝山に向かう道路であり、10年近く前に車で通ったことがある。

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八溝山  15:56


本当なんだろうか?舗装車道は車を停めた谷の道路につながっていると判断し、道路を歩いて戻ることに決定。道路はしばらく町境尾根の黒羽町側に沿っており、なかなか那須町側の谷に下る分岐が見えてこない。時刻はもう4時を過ぎているので、今から来たルートを逆に辿る余裕は無い。峠道が現れなければ適当に植林地を下るしかない。少し不安になりかけた頃、舗装道路のヘアピンカーブで分岐が現れた。分岐の標示には「今十文字峠」と書かれている。これは林道だから、近くには旧道の「元十文字峠」でもあるのだろうか。

谷に下る未舗装道路はバリケードで封鎖されているが、積雪した道路には新しい轍が残っているので麓まで通じているに違いない。既に暗くなりつつあるが、これで帰りの歩きも安心。ところが、未舗装林道は谷の斜面の凹凸に沿って走っているのでやたらと距離が長い。下りの方が登りの尾根歩きよりも時間がかかった。

無雪期の伐採地は無残な光景としか見えないが、積雪した伐採地は白のアクセントが加わり、特に日没前のほんの限られた時間帯に美しい姿を見せることがある。ひんやりした空気の中で眺める無人の雪の植林地の雰囲気もよいものだ。山名があろうとなかろうと雪の八溝山地をもっと歩いてみたいと思った。

山野・史跡探訪の備忘録