不動岳〜唐沢山〜大鳥屋山〜岳ノ山(2005年1月)

年月日:    2005.01.09

目的:     氷室山南東尾根歩きの完結

行程:      歩行開始(08:15)〜 354mピーク(08:47)〜 不動岳・標高約378m(09:28)〜 石尊山・標高約450m(09:57)〜 浅間山・標高約440m(10:05)〜 唐沢山・標高555.0m(11:14)〜 榛名山・標高約576m(11:38)〜 林道峠・標高約460m(12:03)〜 大鳥屋山・標高693.1m(12:48)〜 岳ノ山・標高約704m(13:52)〜 林道・牛の沢出原線の峠・標高約440m(14:25)〜 車に帰着(15:10)

降雪して県北の山々が雪に閉ざされたので、一年振りに安蘇の山々を訪れることにした。南東に向かって伸びる長い尾根上に幾つもの山が存在するのが安蘇の第一の特徴である。尾根を縦走して山々を繋いでいけるのが魅力であり、尾根を辿って帰りはMTBで下るという歩き方が最も適した場所である。

では何所に行こうか。あれこれ考えて、一年前に氷室山から岳ノ山まで下った尾根歩きの続きを行うことに決定。今回はMTB使用なので、尾根を上る方向で歩く。MTBを置く場所を林道・牛の沢出原線の峠として、問題は尾根取り付きを何所にするかだ。烏が森の住人さんの記録によると、富士重工業のテストコースに沿った尾根は有刺鉄線と藪があるという。よって、古越路峠から歩くことはあきらめ、小屋集落から354mピークに登ることにする。

次にどんな尾根か調査。大鳥屋山の記録を検索していて極楽蜻蛉さんの記録に行き着いた。97年に同じ354mピークから岳ノ山まで歩いている。これで歩けるという見込みがたった。MTBを使用すれば必然的に同じ様なルートになる。思えばMTBを購入したのは、この地域の山歩きの先達の一人である極楽蜻蛉さんの記録を見たのがきっかけであった。

寒波の到来で冷え込みが厳しい。特に9日朝は気温が低くて起き上がるのに苦労した。国道293号で葛生に向かい、まずは取り付き場所の様子見。県道200号から常盤中学校のところで左折し、秋山川の小屋橋を渡り、突き当たりを少し右に行ってから山に向かって左折。しかし、民家があって車を停められるような場所は無い。一年前の首吊り騒ぎは御免なので、戻る途中で適当な駐車場所を探す。小屋橋を渡っていて川原に広場があるのが目に入った。ゲートボール場があり広い駐車スペースがある。これで駐車場所を確保。

次にMTBを置きに峠を目指す。一応、五丈の滝登山口の駐車場まで行ってみたが、暗く冷え冷えしていて雰囲気悪し。よって、当初の計画通り、林道・牛が沢・出原線の峠へ向かった。峠に起点を持つ未舗装林道でなにやら工事中。車上荒らしが頻発している旨の佐野警察署の注意書きの他に、物騒な表現の貼り紙が有った。貼り紙の主は工事を請け負っている佐野の篠崎建設で、度重なる被害にかなり頭にきているご様子。

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林道・牛が沢・出原線の峠の警告


岳ノ山や愛宕山に最もお手軽に登れる場所だが、しばらくは近づかないほうが良いかもしれない。峠の藪にMTBを置いて、出発点へ戻る。

いざ出発しようとしてせっかく準備した地図が見つからないのでガックリ。地図の準備が間に合わなかったり、準備したとしても忘れることが多くて、この一年まともに地形図を見て歩いたことがいったい何度あったろうか。まあ、尾根を登るだけなら地図は要らないので気をとりなおして出発。

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出発地から見る秋山側右岸の尾根  08:15


354mピークの東尾根に取り付く。尾根上には古い踏み跡が続いている。最近は誰も歩かないらしく、一見廃道の雰囲気が漂う。354mピークには石祠が2体。古い踏み跡は小屋地区の参道跡であるのは間違いない。祠の近くにテレビのアンテナがあり、参道跡に沿って同軸ケーブルが埋設されている。

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354mピーク   08:47


尾根が北上するところまでは少々藪。サンモリッツゴルフ場は良く見えない。377.8mピーク手前ではっきりとした人の話声を聞く。てっきりハイキング客の声だと思った。こんな時間にいったいどこから登ってきたのだろうと思って377.8mピークに行ってみたが、人がいた気配はない。どうやらゴルフ場から声が収斂して響くらしい。

不動岳山頂はつまらない雑木林。尾根上の起伏の一つに過ぎない。一本の木に4つも山名板がくくりつけられている。極楽蜻蛉さんの歩いた97年当時は何もない藪だったそうだが、花咲爺でも来たみたいだ。この日歩いた山の中でもっとも山名板が多かった。不動岳には祠があるらしいのだが気づかず通過。

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不動岳山頂   09:28


不動岳から向かうとき、主尾根上のピークとその右手に主尾根から飛び出た同じくらいの高さのピークが見える。周囲から際立つ地形であるため、信仰の対象となっている(いた)可能性が高い。

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左:石尊山・450mと右:浅間山・440m   
帰りに小屋橋から撮影   15:15


主尾根上のピーク(標高約450m)には杉林の中に祠が3基あるのみ。次に440mピークに空身で往復してみる。鞍部に下る古い踏み跡があったので、昔は2つのピークの間を人が行き来していたことは間違いない。杉が植林された440mピークには期待をはるかに上回るものが存在していた。赤いトタンで覆われた社殿に神様が祀られており、その周囲に結界を張るように東西南北に2体づつ石祠が並んでいる。色といい石祠の配置といい派手な造りの神様である。このような造りの神様を見たことがない。

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浅間山の放棄された社   10:02
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社の内部


神様は全く手入れされておらず、紙垂が換えられた様子はないし、掃き清められた跡も無い。社の名前も不明。唯一の文字は「昭和四十八年一月一日初登頂記念 五楽会」と書かれた木札のみ。顧みられなくなって久しいようだ。地域で祀る神様であったものか、それとも個人が祀る神様であったのか不明だが、信仰の廃れが進行しつつあることを象徴するような存在である。後で烏が森の住人さんの記録を再確認して、祠3体のピークが「石尊山」、社のピークが「浅間山」と呼ばれていることを知った。

戻る途上で鞍部から眺めた主尾根は石尊山から北西方向に真っ直ぐ伸びており、似たようなピークが連続してどれが唐沢山なのか見当がつかない。大鳥屋山はさらにその先にあるようなので、これから全て越えていかなければならないのかと思うとうんざり。実際、唐沢山に至るまでのピークには「石尊山」や「浅間山」のような特徴がなく、それぞれがどんなピークだったのか覚えていない。

唐沢山は冷たい風が吹き付ける寂しい場所だった。北西方向に雲がかかり始めて、天候が変わりつつあるように思われた。唐沢山から大鳥屋山方面の様子は窺えない。個人的にはあまり登る価値を感じない山。この山だけに登るのであれば高谷地区から林道に入り、伐採地を登って鞍部から南東に登るのが良いであろう。

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唐沢山・標高555.0m   11:14
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榛名山への途上で見た唐沢山(逆光)  11:29


唐沢山からの下りは雑木の尾根で踏み跡は薄い。次の576mピークに向かう鞍部は伐採されたばかりで旗川側の見晴らしが良い。576mピークには「榛名山」の名が彫られた石祠が一体。このピークからようやく大鳥屋山への尾根の連なりが目に入る。

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榛名山     11:38


大鳥屋山の手前にある最低鞍部に越沢と蛭沢を結ぶ林道を建設中。峠はかなり低い位置にあり、縦走するにはだいぶ高度を失うことになる。576mピークを下る途中で岩場に「晶子」の黄ペンキ文字を見る。マサコちゃんではなくてショウコちゃんなのだそう。最低鞍部への下りは岩がゴツゴツとした藪の急斜面で、少し緊張する。鞍部は林道建設で切り通されているので、余計に下らされる。ここは旗川側に少し下って林道に降り立つ。

反対側の取り付きを探して旗川側に少し林道を進むと、コンクリートの階段があって尾根に上がれるようになっている。道形がしっかりしていて歩く人が少なくない(なかった?)ことを示している。尾根上に石祠や石像があり、傍らの杉の木には根本山のお札が奉られていた。一年前に岳ノ山に登ったときも山頂に根本山のお札が奉られていた。この地域一帯の根本山信仰の広がりを物語る。

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林道峠の切通し     12:03
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峠の石祠と石像     12:12


最低鞍部から大鳥屋山への登りはしっかりした道形を辿り、特に急登もなく快適。道無き植林地の急登を覚悟していただけに嬉しい。この道形は最近登山者によって踏み込まれたものではない。大鳥屋山登拝のために古い時代に造られたもののようである。その証拠に朽ちた巨木が倒れこんで廃道化した区間のほうが新しい踏み跡よりもしっかりした形を残している。

大鳥屋山・標高693.1mは一等三角点が設置されている割には見晴らしのないつまらない場所。水木地区に向かって開いている尾根の方が面白そうである。一等三角点ということで人気は高いらしく、雪上に足跡が多数残されていた。彼らは北西側から往復したらしい。三角点より西寄りに石祠や昭和21年建立の百年祭記念の碑がある。

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大鳥屋山・693.1m     12:48
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百年祭記念の碑     12:56


624m ピークを経て岳ノ山への登りに入る直前までは起伏の緩やかな快適な尾根歩き。唐沢山に達した時点では徐々に雲が多くなって風も強まるかと思われたが、昼過ぎから風もいくぶん収まり、雲もない。昼寝したいくらいだ。一転して岳ノ山への登りは岩場の急登。掴まる樹木が多くないので嫌らしい場所である。登りはまだしも下りには使いたくないルートだ。

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岳ノ山への途上で見た大鳥屋山     13:40


岳ノ山・標高約704mはこの尾根にあるピークで個人的に最もお気に入りの山。容姿がスッキリしており、自然林も残されていて明るい雰囲気。神を祀るにふさわしい。麓の生活音も聞えてくる。北西の肩を下ればパノラマを堪能できる。安蘇の魅力が凝縮されたような山である。

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岳ノ山     13:52


岳ノ山から林道・牛の沢出原線の峠までの下りは一度歩いたことがあるので安心。しかし、それまでのアップダウンで膝に疲労が溜まったらしく、下りで膝に軽く痛みを感じる。氷点下で激しく関節を動かしたのが良くなかったのかもしれない。小刻みに脚を繰り出して膝の負担を軽くする。岳ノ山の下りに岩場はないが、急斜面なので万人向けではない。樹木に掴まって植林地まで下ってしまえば安全である。

林道峠・標高約440mからMTBで一気に下る。路面には雪が残っておらず危険な場所は無い。堀の内で林道を抜け県道を秋山川に沿って走る。全て緩い下りなのでMTBで走行するにはうってつけのコースである。快調にとばして無事出発点に帰着。

長時間ではないものの、アップダウンが多く、登りの標高総和が1,400m超のかなりハードな尾根歩きであった。

石祠の記録やその他この尾根について関心のある方はこの地域の山歩きの先達の記録を参照されたい。

  @ 日光連山一人山歩き

  A 極楽蜻蛉の山日記

山野・史跡探訪の備忘録