東堂山、戸中峠(2005年1月)

年月日:      2005.01.15(土)

行程:       歩行開始(10:13)〜 東堂山山頂到着・標高約618m(11:05)〜 県境尾根到着・標高約709m(11:41)〜 尾根の選択誤りに気づいて退却(12:33)〜 県境尾根復帰・標高約675m(13:17)〜 戸中峠到着・標高約600m(13:57)〜 718.9mピーク   (14:44)〜 帰着(15:54)

1月3日に帰省先の福島から栃木に戻る途中、東堂山に行こうとして道を間違え、全然関係ない尾根を歩いた。この時の新雪に覆われた八溝山地の雰囲気と快適な尾根に魅せられて、次回東堂山を目指すときは冬季の尾根歩き周回をすることにした。東堂山を経由して県境尾根に至り、戸中峠の南の718.9m三角点ピークまで県境尾根を南下し、西北西に尾根を下って梓川左右の尾根を周回するというものである。

年初の寒波の締めくくりとして太平洋側を通過する低気圧が土日に降雨・降雪をもたらすと予想されていた。土曜日朝、起きてみると曇りではあるが陰鬱というほどではない。小雨が降っている程度で無風。雨の中を山歩きする気にはならないが、県北ならば雪が降っているであろうから八溝の尾根歩きにはちょうど良いかもしれぬ。

氏家から那須町伊王野に向かう間、ずっと気温は1℃で雨や霙の状態で、今ひとつ寒さが足りない。戸中峠に向かう県道60号に入って高度が増すとようやく雪に変わった。東堂山南西尾根にはどこからでも取り付けるので、車を停める場所を最優先。北向沢への分岐を過ぎて戸中峠方面に700mくらい進むと、梓川に橋が架かって左岸側に作業道が続いており、車を停める場所もある。道路から外れて目立たないのでここを出発点とする。植林地は暖かく年末年始に降った雪はだいぶ融けてしまったようだが、県境尾根にはまだ20cm程度の雪が残っていることが予想されたので、前回に続いて長靴を履いていくことにする。この手の山を歩くにはゴム長に優るもの無し。

東堂山南西尾根の沢沿いに林業用の広い作業道がついている。駐車場所から最も近い作業道をしばし登ったところで地図を忘れたことに気づいた。登りは良いが降雪中の尾根を地図無しで下るのは難しいので、地図を取りに戻って約10分のロス。沢筋の作業道終点から詰めると南西方向から延びてきた現役の作業道に出る。この道の終点にある雑木林のところから数十m斜面を登って尾根に上がる。

尾根上に明瞭な道は無いが歩き難くもない。良く手入れされた八溝の植林地の尾根歩きは気持ちが良い。雪はほとんど残っておらず、さらさらした新雪が2〜3p積もっているだけであった。降雪中で遠くの地形は全く確認できないが、適当に尾根を辿る。

東堂山らしき高みには何もない。若干北側に尾根をたどったところに、山名にふさわしく比較的立派な石祠がある。新雪を擦り込んでみると彫った文字がきれいに浮かび上がった。明治十九年旧暦七月十七日建立の石祠は今では顧みられない存在の様であるが保存状態は良い。

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東堂山の石祠     11:05
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この石祠も現在は祀る者が絶えて久しいようである。これだけの重量物を人力で担ぎ上げるのには大変な労力を要したはず。往時の人々の信仰心の厚さ、絆の強さ、活気が伝わってくる。

東堂山に至る尾根はほぼ100%檜の植林地であるが、稜線に赤松の大木を点々と見かける。稜線もまた神聖なところとして、代々、赤松の木を残してきたのだろうか。

東堂山から県境方面に向けての尾根は、それまでに較べると潅木の藪があったり枝掃いが不十分であったりして少し歩きにくい。例の目障りな赤テープがやたらとたくさんあった。自分が藪中で歩きやすそうであると思った場所には必ずといってよいほど付いていて、場所によっては数m内に3つも付いていたりするので偏執的。八溝山地が汚されたようで気分が悪い。稜線からはずれた場所にもあるのだから境界見出しに相当するものではない。自分の歩いたルートを誇示しているのだろうか。私にとっては井上昌子より気に障る存在だ。できる限り除去。

徐々に年末年始に降雪した雪が目立つようになってきた。雪上には数日前に誰かが歩いた足跡が残っていた。複数名のパーティが県境尾根経由で戸中峠から東堂山まで往復したものと思われた。

県境には「火の用心」と書かれた吸殻入れのようなものがある。足跡は県境尾根に沿って南東に向かっていた。福島県側は伐採・植林したばかりのところがあって明るく、順調に県境尾根を辿れると思われた。

突然尾根上にスズタケが現れる。最初はスズタケの尾根を南に進もうと思ったが、左側にも南東に向かう尾根が続いている。県境尾根は概ね南東に向かっているはずなので、よく地図を確認せずに南東尾根に進んだ。足跡は南尾根にも有ったし、南東尾根にも有った。これはいったいどういうことなのであろうと不思議に思ったが、南東尾根はほぼ平坦で歩き易くこれまでの県境尾根と雰囲気が同じである。且つ旧い踏み跡もあったので、確実に県境尾根を辿っていると思い込んでいた。ところがいつまでたっても戸中峠に行き着かない。何故か足跡も途中でぷっつりと途絶えた。その後も足跡の無い尾根を辿るが、だんだん県境尾根らしからぬ雰囲気となってきた。尾根を間違えて福島県側に深く入り込んだのかもしれないとは思ったが、降雪で周囲の地形が見えないので現在位置が特定できない。県境までの地図しか用意していないので、このまま下って峠道に降り立つことができるかどうかも判らない。冒険するわけにはいかないので、最悪は自分の足跡を辿って東堂山経由で戻る覚悟で引き返すことを決意。

戻る途中で四等三角点を見つけた(帰宅後に地図で確認したところ、675.2m三角点を越えて尾根末端近くまで達していた。)。所持している地図の範囲は県境までなので、そんな三角点は載っていない。つまり福島県側に深く入り込んでいることになる。ではどこで間違えたのか?改めて地図を見ると東側に向かって延びる670m級の尾根がある。この尾根にいることは間違いないので、さっきのスズタケ藪のところで選択を誤ったことになる。県境尾根歩きで迷う心配は無いと過信し、降雪中で地図を取り出すのが面倒で現在位置を把握せぬまま歩いたことが判断ミスを招いた。決して足跡に惑わされたのではない。おそらく、足跡の主達も間違いに気づいて引き返したか、もしくはどこからか適当に道路に下ったのではないだろうか。

本当にこの嫌らしいスズタケと雑木の藪が県境尾根なのか?疑心暗鬼ながら辿ると尾根の福島県側に細い踏み跡があり、再び雪上に足跡が残されていた。彼らが戸中峠から東堂山に向かったことは確かなようである。

県境尾根は比較的若い植林地が多くて、稜線が潅木の藪になっており歩きにくい。しかも地形がやや複雑で、現在位置を特定するのが難しい。再び失敗せぬように何度か地図を確認して進み、近くを車が走る音を聞くに及んでようやく県境尾根を正しく進んでいることを確信した。

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戸中峠     13:57


戸中峠から車道を下るという手もあったが、あまり疲れていないし、まだ2時間程度行動する余裕があるので、当初の予定通りに送電線鉄塔目指して県境尾根を南下。こちらは福島県側の斜面の約半分でコナラ中心の美しい自然林が残されていて雰囲気がよろしい。部分的にきれいな作業用の踏み跡を辿ることができ、稜線部にも藪が無く歩き易い。風雪の勢いが強くなってきたが、吹雪というほどでもない。最後は福島県側から上がってくると思われる東電の巡視路を歩いて南いわき幹線鉄塔の718.9mピークへ達した。

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718.9mピーク 14:44


ここからが本日一番のお楽しみ。鉄塔に向けて下り、そのまま西北西に尾根を辿る。しばらくは巡視路を歩くことができるが、これは途中で南に逸れてしまうので稜線部を維持して進む。危ない場所は無く比較的尾根の形状に特徴があるので、尾根の流れをきちんと把握しておけば、要所で地図を確認するだけで正しく尾根を辿ることが可能である。最後は杉の植林地を下降し、ドンピシャで車を置いた場所へ降り立つことができた。

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駐車地に帰着 15:34


山野・史跡探訪の備忘録