谷倉山(粟野)探訪(2005年2月)

年月日:    2005.02.11(金)

行程:     キレットのある谷入口近く・標高約345mから出発(07:57)〜 山頂・標高約747.3m(08:55)〜 百川第十三號橋(09:32)〜 帰着(09:55)

1月22日に塩沢峠から尾出山へ向かう途上、高原山手前の送電線鉄塔から初めて谷倉山を視認した。谷倉山自体は植林されている特徴のない尾根上の一ピークに過ぎないが、その南東側に目を移すと稜線が激しく凸凹しており、針葉樹が目立つ岩稜帯である。地図には永野川(百川)と思川(粕尾川)に挟まれた尾根を2本の破線路が跨ぐ。一本は谷を詰めて谷倉山南東鞍部を越えて粕尾側の急な谷に抜ける。もう一本は百川林道ゲート前の駐車場から谷筋を登って谷倉山山頂に至る。山頂から粕尾側へはしばらくなだらかな尾根上を辿るが最後は故意に急峻な斜面を下って谷筋を辿る。いずれも生活道である可能性は低く、故意に急峻な場所を選んでいるとしか思えない。特に鞍部を跨ぐ破線路の谷は急勾配で本当に峠道があったのかすら疑わしい。

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谷倉山の尾根(高原山南の送電線鉄塔から見た光景)  2005.01.22 09:51
左側の植林された山が谷倉山である(中央奥に見えるのは石裂山)


1月29日に三峰山に登った後で時間が余ったので、破線路の実体を検分に谷倉山南東の鞍部に向かった。鞍部から谷倉山に進めるかどうかも確かめてみたかった。破線路に相当する谷はつい最近大規模に伐採されたばかりで、谷全体が伐採屑で埋め尽くされており、歩きにくいことこの上ない。案の定、地図の破線路と実際の道跡は一致しない。最初は谷底にこだわって倒れた杉の木を跨いだり潜ったり岩場を越えたりしたが、実際の道跡は谷が二股に分かれる場所で中央の尾根に上がり、最後は急な斜面をジグザグに詰めているようである。詰めの部分は伐採屑でトレース困難。鞍部には峠道らしき痕跡は一切無く、反対側(粕尾側)は人間の歩くような場所にはとても見えない。さらに鞍部から谷倉山へはロッククライミングの技術無しで登ることは不可能。巻くことすらできない(その後、何名か突破した人がいるが、やらないのが賢明。)。実に不思議な破線路である。破線路入り口は人の気配の無い寂しい渓谷である。一般の旅人が訪れた可能性は無い。粕尾側から修験者が尾出山や氷室山、根本山十二山に詣でるために通った道なのかもしれない。荒涼たる谷に見所は何もなく、死んだばかりの美しいカケスを見かけただけ。雨が降り出しそうだったので、こんなところに来る暇な奴は俺くらいだろうと自嘲しつつ、谷倉山には登らずに帰宅。

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カケス   2005.01.29 12:11


2月11日は寺坂峠から塩沢峠に縦走することを目的として出かけた。谷倉山に登る予定は無かったのだが、塩沢峠への入り口である落合にMTBを置きに行ったついでに、すぐ近くの谷倉山に寄ってみようという気になった。思いつき登山なので地図を持っていない。百川林道のゲートに行ってみたが登山口の案内は見当たらない。1月29日に訪れた際、植林された斜面を適当に登って尾根を辿れば簡単に登れそうなことを確認していた。障害物無く眺めも良さそうである。前回の探索は無駄にはならなかった。引き返して、谷入り口近くに車を停めた。

谷の入り口近くは勾配が急で取り付くことはできない。しばらく奥に入って、伐採された植林地帯の下端で伐採屑を乗り越えて左側の斜面に取り付く。切り株を伝って登っていく。斜度40〜50度で少し怖い。土壌は砕石混じりで崩れやすい。よくもこんな所に植林して収穫したものよ。人間の欲たるや恐るべし。

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登りに辿った植林斜面   2005.01.29 12:44


急斜面の登りには一苦労したが、尾根に上がってしまえば快適で、登山ルートとしては最短と思われる。ここで疑問が一つ。伐採・収穫したのは谷の下部のみ。伐採屑の放置状態から見て上方に伐採を拡大する様子は伺えないが、一体どうやって搬出するつもりなのだろうか?いずれ伐採して搬出するのであれば、下部に植林しても意味は無い。山の西側から作業道を建設して運び出すつもりなのかもしれない。

山頂に修験の場であったことを示す遺物は無い。粕尾側から広い作業道が上がってきている。このおかげで空間が開け、見晴らしは良くないが雰囲気は悪くない。山頂はこのように広くゆったりしてくつろげる場所であって欲しいものである。三角点には中倉山で見たものと同じデザインの山名板が立っている。

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谷倉山山頂   08:55


山頂に行けば正規の登山道があって下山路に使えると期待していた。しかし何も判らん。登りに使ったコースを辿れば最短だが、急勾配なので少し嫌らしい。尾根を辿って登るとき、山頂直下で作業道を横切った。作業道の起点を確かめんとこれを辿ってみた。しっかりとした造りの道で、一貫して緩い勾配であり大変歩き易い。これが正規の登山道であればジグザグしながら尾出山方向に下るはず。しかし、作業道は山肌に沿って緩い勾配で谷奥へ向かって下っていく。ようやく下方に向かう分岐が現れ、ジグザグ下降して最後に百川第十三號橋へ降り立つ。案内がないので登りでは分岐の選択を誤るかもしれないが、下りでは迷う心配がないので断然お薦め。

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百川第十三號橋(歩道起点)  09:32
写真右奥の橋のたもとに登り口がある。


犬連れのハンターが一人やってきて、いましがた自分が下ってきた道を登っていった。ちょっと危なかったかな?橋下には5、6cmのチビイワナが1匹泳いでいた。こいつは天然繁殖した魚なんだろうか?あまり魅力を感じる渓流ではないが、幾つか渕があるので少しは魚がいそうである。

短い行程ながらもなかなか楽ませてもらった。久し振りに良い方向に裏切られた感じ。目印の類がなくスッキリしていたのも良かった。少し林道歩きが長くなって時間を喰ってしまったので、ゆっくりせずに本日の本題の出発地である寺坂峠に向かった。

山野・史跡探訪の備忘録