ハナント山探訪(2005年2月)

年月日:    2005.02.20(日)

遭遇した動物:  猿

行程:     笠丸地区の林道・大助線から歩行開始・標高約210m(09:55)〜 破線の峠到着・標高約405m(10:54)〜 ハナント東峰・標高約635m(11:25)〜 ハナント西峰・標高約671.9m(11:45)〜 新栃木線197号鉄塔・標高約445m(12:40)〜 林道・羽遠線へ下る・標高約320m(13:00)〜 帰着(14:09)

関連記録@ 2005-02-27 粟野・粕尾境界尾根縦走記録その2

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北西から見たハナント山  Feb 27,2005 13:58
一週間後、尾根縦走した帰りに林道・羽遠線から撮影。写っているのは西峰で、右側に少し東峰が覗いている。
まだ行ったことはないが、大越路峠から高谷山の間から東西のピークがきれいに並ぶ様子を見ることができるのではないだろうか。

山頂は南西(北東)方向に細長い。周囲に高い山が無く独立峰に近い山なので、落葉期は南側と北側の様子が伺える。

手っ取り早く登りたければ、林道・羽遠線の峠から尾根伝いに登るのが良い。基本的に稜線に自然林が残されていて明るく見晴らしも良い。途中までは昔のジグサグした道の跡が残されている。


栃木で未訪の場所は多いが、この時期気になる山は雪に覆われている。基本的に雪山には入らないし遠出もしたくないので必然的に訪れる山域が限られる。ある山に登って周囲を見渡した時に目にした山が気になれば、その山の名前を知らずとも好奇心が充電され次第偶然の出遭いを求めて登ってみることにしている。今回、このパターンにあてはまったのが思川と粟野川の間にあるどっしりした山(671.9m峰)で、寺山峠から尾根縦走する際に見た周辺地域で最も気になった山である。

二つの峰から成り、西峰に二等三角点がある。地図には名前が無い。己の知る限りウェブ上の登山記録も無い。何故こんなに存在感があるのに名前がないのか不思議。さらに興味をかきたてたのが破線路の存在である。中粕尾の笠丸地区から続く道が二手に分かれ、一方は東峰の南東の標高約400mの峠を跨いで大栗地区へ抜ける。こちらは峠道であった可能性が高い。もう一方は東峰と西峰の間の標高600m級の鞍部を越えている。現在の地図では林道にぶつかった先に破線が記されていないが、昔は出口地区へ下っていたのであろう。しかし峠道のルートとしては不自然である。後者は交通量が多かったとはとても思えないので、前者を辿って尾根上に出て、東峰、西峰を経由して尾根を縦走し、上粕尾の半縄地区へ破線を辿って下山することとする。

まずはMTBを置くために下見を兼ねて半縄地区へ行ってみた。北村地区へ向かう分岐には水洗トイレ完備の休憩所(バス停)があり感心した(でもドアがロックできない。)。破線路があると思われる山域には、地図には記載されていない林道・横平線が走っているようである。破線路の入り口らしき場所を確認し、日光神社の参道横の公民館近くMTBを置いて中粕尾へ向かった。破線路の起点となる林道は未舗装であるが、荒れてはいない。道路脇に人家は無いので遠慮せずに入っていける。MTBで戻ってくることを考え、奥まで進入せずに空き地に駐車。

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林道・大助線 09:55


朝方までまとまった雨が降っていたので山全体がしっとりとしている。藪があったらズボンがぐしょぐしょになりそうなので、下だけ雨着を付けて出発。最初の分岐で右を選択。次の分岐でも右を選択。林道終点でまたまた右股を選択。一応念のために方位磁石を確認して我が目を疑った。東に向かっているはずなのに、真南を向いている。地図に無い林道が分岐しているので、右ばかり意識しているととんでもない方向に行ってしまう。どんよりと曇って太陽の方角が全くわからないため、ミツバチスタイルが通用しなかった。枝尾根の多い尾根の下りと支沢の多い谷の遡行は地図をこまめに見なければならないので自分の好みに合わない。二番目の分岐まで戻って左の林道支線に入り、こまめに地図を見て目的の破線を辿っていることを確認。林道終点で谷が二股に分かれる。歩き易いのは左股。しかし、破線路は右股のはず。100mほど開けた茨だらけの谷底を進み、ようやく杉林に入って谷奥を詰めて尾根の鞍部に出た。

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峠・標高約405m 10:54


破線の峠・標高約405mの辺りは比較的若いスギの植林地で、間伐も枝打ちもされていない。その気になって見れば峠道の跡らしき窪みがあるような気もするが、道祖神の類も無いところを見ると交通量は極めて少なかったに違いない。それがなんで破線路として現代の地図に残されているのか腑に落ちない。昔の旅人とバッタリ行き会うのではないかと思わしめる尾頭道や高原道ですら地図に載っていないというのに。

北北西に尾根を辿る。ようやくぼんやりと太陽の姿が見えて、林に光が差すようになってきた。やっと快適に歩けると思いきや、途中でドチョンボをやらかしたことに気づいた。MTBのハンドルを固定するヘックスドライバーを車に置き忘れてきてしまった。予定の行程で下山してもMTBが使用できず10km強舗装道路を歩かなければならない。当初の縦走計画では帰りが遅くなるし、足裏に肉刺ができてしまうだろう。いまさら戻るわけにもいかず、とりあえず山頂まで行ってからどうするか考える。

徐々に北西に向きを変えながら一本調子で登っていく。尾根の西側斜面はヒノキの植林で歩き易い。一方、東側斜面は若い植林地で見晴らしが良い反面アズマネザサ等が生えている。この対照的な領域をジグザグに縫い合わせるように古い道跡が続く。山頂近くは東側がミズナラ・ミヤコザサ帯となっていて、眺めがよろしい。特に粟野の三峰山がよく見える。

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粟野の三峰山   11:22


植林地を西に少し進めば東峰の山頂に至る。東峰・標高約635mには主図根以外何もない。西峰との間の鞍部へ向けて緩やかに下る。尾根の西側は自然林が残されていて明るく眺めも良い。東側は暗い植林地帯。予想した通り、西側から登ってくる破線路の痕跡は無い。かろうじて峠から北に向かう道跡らしきものが認められた。

鞍部から西峰に向かってスギが植林された平坦地を進むと石祠が一基ある。北を向いているので入粟野の出口地区が祀ったものであろう(うっかりして彫文字を見るのを忘れた。)。

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石祠  11:36


近くを走る林道・羽遠線を利用して簡単に登って来られるためなのだろうか。今も祀る者がいて、ワンカップ酒や新しいコーヒー缶が供えてあった。お神酒ならぬお神珈琲を頂いて空き缶は持ち帰り、その代わりコップにアミノサプリを注いできました(コーヒーをお供えした方ごめんなさい。)。

西峰山頂部は南西方向に細長い。標高671.9mの三角点の山名板には「ハナント山」と書かれていた。初めて聞く名である。近くに目を惹く山がないので眺望はパッとしないが、落葉期の眺望は決して悪くない。特に、これから辿らんとする北西方向の尾根の連なりが良く把握できる。

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西峰(ハナント山)山頂  11:51


地図を見ながらこれからの行動を思案。尾根縦走を考えた時、山頂から同じ道を戻れば振り出しに戻るのに等しい。次の機会にうまくつながることを第一優先とし、鉄塔まで進むことにした。鉄塔まで進めば巡視路があるはずで、おそらくは林道に抜けているであろう。林道の出口は手持ちのダウンロードした地図の範囲外だが鹿沼足尾線に接続するはず。

北西尾根の下りは眺めも良く、概ね自然林が残されていて気持ちよい。この尾根にも落ち葉や倒木に覆われた古いジグザグ道があって、順調に林道・羽遠線が尾根を跨ぐ峠・標高約485mに降りてくる。ここから行き止まりの支線が南に延びている。林道の名前「羽遠」の由来がわからない。「遠」は遠木地区を意味するのだろう。「羽」に相当する地名が地図上に見当たらないが、鹿沼市の資料に拠れば、粟野川側の出口地区に「羽」のつく沢が2つ存在する(羽根場沢と羽場見沢)。

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林道・羽遠線の峠  12:13


林道から先は延々と植林地帯が続く。この山域は主尾根の稜線部に沿って赤や黄色の細く丸いポールが刺さっているし、進路を迷うような場所も無い。528mピークの手前に大量のペットボトル類が散乱していた。わざわざ棄てに来たとは考えられないので、どんな輩か不明だが大勢の人間がここで飲み食いしたらしい。拾ってやりたいところだが、大きなゴミ袋一つ分くらいはあるので手に負えない。

新栃木線197号鉄塔・標高約445mからの南西側の見晴らしが良い。谷倉山南東の凸凹した稜線も見える。薄曇りの柔らかい日差しを浴びて、昼食をとりしばし休憩。予想通り、巡視路が下方に続いているので、これを辿って林道・羽遠線・標高約320mに抜けた。

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新栃木線197号鉄塔からの眺め  12:43
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林道・羽遠線  13:03


林道・羽遠線はたまにオフロード車が走ってくる程度で静かな林道である。小さな沢なのに魚を2匹発見。じっくり観察したがカワムツではなかった。よくこんな環境で道路工事に耐えて生き延びてきたものだ。ちょっぴり嬉しくなった。

遠木地区で鹿沼足尾線に抜け、思川を眺めながら笠丸地区へ戻る。川底が広く平坦で玉石の配置が不自然な区間があった。思川の粕尾地区はアユ釣りで有名で、どうやら粕尾川漁協が川床を均し大きな玉石を配置して人工的なアユ釣り場を作ったらしい。しかし、パラパラと玉石を入れれば好釣場になるものではない。川底は砕石と砂なのでアユが居つくとは思えない。むしろその下流にある自然の瀬の方が涎が出そうなくらい良い釣り場に見える。金儲けのために川底をいじったことで大量の泥が流れ出て、下流部はすべて泥を被った状態となっていた。水産資源の保護を主目的として内水面漁協に独占的な活動が認められているのであるが、本末転倒ではないか。

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林道・大助線 14:09


山野・史跡探訪の備忘録