冬の釈迦ヶ岳(2005年12月)

年月日:    2005.12.17(土)

行程:     歩行開始・標高約800m(10:07)〜 山頂(12:47)〜 帰着(15:02)

寒い日が続いている。西高東低の気圧配置で、平野部は快晴で山沿いは雪雲が掛かる。今年の12月の寒さは昔ならばあたりまえだったはずだが、近年の暖冬に慣れてしまった身には異常に感じる。寒いのに加えて降雪したら家から出たくなくなる。それでも雪国ならば否応無しに除雪作業を強いられ運動することになるのだが、栃木県はその必要が無いので運動不足になりがち。2週間も運動していないのでそろそろ何かしないと血糖値が跳ね上がってしまう。

土曜日(17日)朝は穏やかに晴れ上がり絶好のお出かけ日和。翌日曜日からは今年最強の寒波が来るとの予報であり、運動するなら今日しかない。何も計画していなかったし、遠出する気にもなれず、久々に高原山の南側にでも行ってみようかと9時過ぎに家を出た。久々の全県快晴で、男鹿山地や那須連邦、さらには帝釈山までくっきり見えている。高原山の積雪は土上平放牧場の雪を見る限りたいしたことはなさそう。ひょっとしたら釈迦ヶ岳に登って大パノラマを見渡せるかもしれない。

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男鹿山地    09:08
左端が日留賀岳。大佐飛山は中央右側のぱっとしないピーク。氏家からは大佐飛山より大蛇尾川中央嶺や大長山の方が高く見える。


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大倉山と那須岳   09:16


林道・守子線には積雪は無く釈迦ヶ岳登山道の入り口に車を停めた。2001年に守子神社が再建されて以降、定期的に笹刈りが行われるようになり、かつての消え入りそうな廃れた登山道の雰囲気は無い。黒沢と尚仁沢に挟まれた緩い勾配の明るい尾根歩きは快適だ。守子神社に到るまで積雪は深くても10cm以下。真新しいハンターの長靴の足跡が残っていたが、守子神社を過ぎたところで引き返していたので誤射される心配は無い。

守子神社を過ぎると少し勾配がきつくなってくる。明るいブナ原生林の中を歩くのは快適なのだが、距離が長いのでなまった体には少々きつい。予想通り、勾配があるところでは単位面積当たりの日射エネルギーが多いので雪が無く、枯葉を踏みしめて歩いていける。

守子分岐で釈迦ヶ岳林道終点からくる歩道と合流する。2年前は笹が茂って廃道然としていたが、再び笹刈りされて復活したらしい。真新しい足跡が釈迦ヶ岳林道終点方面から前山方面に続いていた。往復しているので、時間的に登山者のものではないと思われた。守子分岐を過ぎるとさらに勾配がきつくなり、高度が上がるので積雪も増す。吹き溜まりで膝上まで沈む場所があるので、ここでたまらずスパッツを装着。足跡はやはりハンターのものらしく、積雪が深い場所で引き返していた。

前山直下は例年遅くまで残雪が見られる場所である。ここの積雪の具合を見れば釈迦ヶ岳の積雪量もある程度予想できる。どうやら膝程度のツボ足は強いられそうだ。突如、人の足跡が出現。上方から下ってきて、なんと尚仁沢側の急な斜面に消えている。これも真新しい。積雪してはいても登山道を見誤る可能性は無いので、明らかな意志をもって沢に下っていったようだ。それにしてもどこからやってきたのか?不思議に思いながら前山直下の急勾配を登っていくと、足跡は西側から前山斜面を横断してきていた。自分も相当な物好きだが、こういう歩き方はしない。どんな人達なんだろうか?その正体は帰りに知ることとなる。

前山に人の足跡無し。前山を過ぎるとイラモミが茂る尾根を通る。ここも遅くまで残雪が見られる場所であるが、積雪量は膝下程度。よって、山頂まで行けると判断。高さ5、6m程度の細いダケカンバがびっしり生える尾根を順調に歩き、徐々に高度が上がるにつれて眼下に南側の明るい景色が広がる。尚仁沢登山道は釈迦ヶ岳南面にあるため、日中は適度に雪が温み、踏みしめるとしっかり固まって登りやすい。

数本のイラモミが生える場所に達したとき、中岳の方角から男性の声が響いてきた。中岳はコメツガ(イラモミもあるのか?)にびっしりと覆われて普段は真っ黒に見える山なのであるが、今回は雪をたっぷり被って白い。岩がゴツゴツしていて隙間だらけなので積雪時は近寄らないのが無難だ。枝の雪が頭に落ちるのか、それとも足がすべるのか、難儀しているような声だった。中岳・西平岳への縦走路への分岐には足跡が無かった。つまり、先ほどの声の主達は西平岳から釈迦ヶ岳を目指しているということだ。

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中岳   12:28
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西平岳、中岳方面   12:40
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往路(前山方面)   12:40


最高の気象条件下で山頂到着。栃木県は快晴で雲が無く県境尾根を全て見渡せる。福島県と新潟県の県境では天候が変わりそうな兆候が出ているが、会津駒ヶ岳はくっきり見えている。過去何度かこのパノラマを目にしているのだが、まだ県北や南会津の山々に馴染みが無かった頃のことなので、今回は新鮮に思える。

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前黒山、男鹿山地方面   12:49
一応、大佐飛山(中央右)が高く見える。
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那須岳   12:51
手前の尾根は鴫内山〜西村山


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鶏頂山と奥鬼怒・県境の山々(根名草山〜田代山)  12:53


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奥鬼怒・県境の山々(孫兵衛山〜安ヶ森峠)と会津駒ヶ岳、三岩岳  12:54


写真撮影をしていると、中岳方面から同年配と思われる男性5人組がゼーゼー息を切らしながらご到着。挨拶だけ交わして彼らと入れ違いに下山開始。頂上に滞在すること約20分。何時に登ってもタッチの差で頂上で他の登山者と出遭う不思議な山である。

イラモミの木まで下り、陽だまりで雪に座って中岳を眺めながら遅い昼食休憩。徐々に上空に雲が流れてくるようになってきたが、天候が崩れることはなかった。時間的に余裕を持って概ね順調に下る。

前山の急勾配を下る途中で尚仁沢側から男性の声が響き緊張が走る。しばし様子を伺ってから下ると、下方に背中に鉄砲を担い2名の男性がいた。登りで見た足跡の主達らしい。猟友会のオレンジ色の服は着ていない。キジ・ヤマドリ・ノウサギ・テンなどを狙う猟師のいでたちだ。愛想の良いオジサン達で、山の上の雪の様子について言葉を交わして別れた。山野を跋渉する点においては猟師にはかなわない。かつて雪の磐梯山麓で伯父に狩り連れていってもらったことを思い出す。

帰りに東北本線の陸橋を渡る頃、朝方くっきりと見えていた県北の山々の上空には暗い雲が広がりつつあった。夕刻から風が強まり、山は大荒れの予感。これが今年の登り納めとなるのだろうか。

山野・史跡探訪の備忘録