西前高原山地の縦走その4(2006年3月

年月日:    2006.03.04

行程:    西古屋ダムから歩行開始・標高約210m(08:55) 〜 尾根取り付き(09:15) 〜 726.1mピーク東を通過(10:16) 〜 810.2mピーク(12:07) 〜 833mピーク(12:44) 〜 780mピーク(13:52) 〜 692.5mピーク(14:39) 〜 林道出合い(15:20) 〜  車に帰着(16:07)

関連記録@ 西前高原山地の縦走その1(2003年3月)
関連記録A 西前高原山地の縦走その2(2003年3月)
関連記録B 西前高原山地の縦走その3(2004年3月)

 

林道西前高原線は、塩谷町の上寺島地区を起点として西荒川右岸尾根を越え、土佐川から鶏岳をグルッと回りこんで西古屋ダムをかすめ、鬼怒川左岸尾根をうねうね走って旧藤原町の大原地区へ抜ける。その名に倣って、林道が走る山域を個人的に西前高原山地と呼んでいる。この山域の特徴は、@笹薮が無く歩きやすい、A危険箇所が少ない、B尾根上に植林がなく、落葉期はほぼ全域で周囲を見渡せる、C地理的に積雪地域に近いこと。このため、西前高原山地は早春の山歩きのタイミングを計るのに適している。

今年の冬は平野部の降雪が少なかった。特に2月に入ってからが顕著で、高原山の土上平放牧場の雪もついに消えてしまった。これが西前高原山地を歩ける目安となる。今回は日帰りコースだが、春の本格的縦走に向けた脚慣らしとして山中一泊できる重い装備を担いでいくことにする。2004年3月に歩いたコースの逆回りを目標とするが、時間・体力との相談で縮小することも可能だ。急遽決めたので地図の用意をしている余裕がない。方位磁石も紛失したままだが、以前歩いている山域なので不要。

2年前と同様に西古屋ダムサイト(白石川左岸)に車を停めた堤頂を渡って林道・西前高原線に抜ける。舗装林道にはヒノキの落ち葉が積もっていて歩きやすい状態である。白石川西沢の奥では山を崩して何やら工事中。

車が遺棄されている広場の反対側の尾根の踏み跡を辿る。相変わらずこの辺りにはペットボトルや弁当の容器などのゴミが多い。ハイキング客が来るとは思えない場所なので、尾根上の潅木を伐採した人達が残したものだろうか。清澄度は今ひとつだが、ほぼ一貫して梢越しに高原山を眺めながら登っていく。

726.1mピーク東の緩やかな広葉樹林を通って鬼怒川東岸の尾根に入る。昔の尾根道を快適に歩くつもりだったのだが、嫌いな物が目についた。荷造り用の黄色いビニール紐が目印として取り付けられていたのである。

この尾根には植林が無いので林業関係者が入り込む可能性は無い。道に沿って付いているのだから地籍調査でもない。明らかに登山者が付けたものだろう。それにしても付け方が異常だ。どんな初心者でも迷いようがない単純な尾根の明瞭な踏み跡にそって、ひどい所では2m間隔で付いている。樹木に配慮した付け方ではあるが、異様な数の多さで、まるで花咲爺でも通ったみたいだ。この尾根の雰囲気が台無し。自己顕示欲が強い人達の仕業なのだろうか。変な連中に目をつけられたものだ。山中をゴミだらけにして、悪意すら感じる。このタイプの目印は今まで目にしたことがないが、今後栃木の全域に広まる恐れがある。腹が立ったので当初の計画は放棄し、目印を全て回収することに決めた。とはいっても頑丈なビニール紐なので簡単にはとれない。ナイフを所持していないので、ストックの先端で少しずつ破って取り除くので時間を食う。

黄色の紐は740m級ピークから南に伸びる尾根にも続いているが、進行方向ではないので今回は放置。道は740m級ピークの西側を巻いている。巻きが終わる辺りにある石祠にお参りするつもりだったのだが、黄色の紐を追ってピークに上がってしまったので、今回はお参り無し。

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p>黄色の紐は766mピークまで続き、東側に下っている。尾根上の目障りがようやく消えたので以後はペースが上がった。とはいえ遅れは決定的。2年前のコースの逆周りをするには遅くとも13時には903.6mピークに到達していなければならない。あと2時間で到達するのが無理なことは明らか。

ツガやモミの木が多い780mピークを経て810.2mピークへ到る区間はやや道が不鮮明である。笹は全くないのだが、マダニが数匹くっついた。810.2mピーク三角点手前にある東電のマイクロ派反射板の南西斜面が伐採されていて、見晴らしが良い。マイクロ波が人体に悪いことを知っているのでちょっぴり気味が悪いが、精子ができなくなって困る歳ではない。

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マイクロ派反射板 11:30


810.2mピークには2年前には無かったR.K.のプレート有り。次の鞍部へ下る途中で登ってきた男性と出会いしばし会話。なんとなくハンター風の格好だなと思ったら、5日前の狩猟中にはぐれたポインターを探しに来たついでに山歩きを楽しんでいるとのこと。狩猟者用の地図を携行していた。尾根が入り組む692.5mピークの方から縦走してきたそうである。さすがハンターは山歩きに長けている。とても感じの良い方であった。

鞍部から833mピークへの区間を歩くのは3度目だが、登りは初めて。不明瞭な細い道跡があるが辿りにくい。

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833mピーク 12:44


833mピークで昼食休憩して今後の進路を思案。時間的に903.6mピーク行きは無理。さきほどの男性と同じコースを逆回りすることに決めた。長い南南東尾根を下り、途中から連絡尾根に入る。この辺りは尾根が入り組み、ツガの存在により見通しが悪い。地図を持っていても不安になるところだが、一度歩いているので記憶を頼りにすんなりと連絡尾根に乗った。

前回ここを通った時も感じたことだが、連絡尾根の最低鞍部は峠のような形をしている。試しに西荒川源頭側に下ってみた。昔の細い道形がジグザグに下っていくのが確かめられた。白石川源頭側の道跡は確認しなかったが、峠道として使われた歴史があるのだろうか。

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西荒川-白石川間の峠  13:00


780mピークへの約80mの急登りはきついが危険は感じない。780mピークへの登りは簡単だが、反対に下りは難易度が高い。連絡尾根が派生する場所まで道の無い急斜面を80m下るので、地図と方位磁石無しで一発で連絡尾根に下るのは不可能に近い。2003年に苦労したことを思い出した。

安全に下山する目安として2時半までに692.5mピーク着が目標である。曇り空になってしまったので休憩せず、780mピークの主図根にタッチして先を急いだ。スッキリとした幅広の尾根は歩き易い。庭園のような雰囲気の場所もある。前回に較べてシカの気配がほとんど感じられないのは、やはり雪が少ないせいなのだろうか。

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780mピーク東側  13:59


692.5mピークは船生の最奥部に位置し、麓からその姿を拝むことはできない。等高線からも判るように、ニョキッと突き出た美しい容姿をしている。隠れたもう一つの鶏岳といったところか。

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西から見る692.5mピーク  14:06


692.5mピーク手前の鞍部への下りが岩場になっている。登りはなんとかなるが、下りは懸垂下降するのが無難だろう。北東尾根を下り急斜面を横断して巻いたが、こちらもヒヤヒヤもの。鞍部からの登りに控える最初の大岩は南側から巻ける。次の岩場は北側から巻く。一見危険そうだが、楽に登れる。

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692.5mピークから見る高原山  14:39


692.5mの三等三角点にも810.2mピークと同じ赤テープが付いていたので、ここにもR.K.氏が来たのかもしれない。692.5mピークの最高点はさらに東側にある。本当はこのまま西荒川沿いの尾根を辿りたいところだが、土佐川の源流域に下ってしまうので帰りに尾根を越えなければない。2003年に登ってきたコースを忠実に辿ることにし、三角点の少し東側から境界杭に沿ってまっすぐ南に下りる。境界杭の西側が植林地になっており、境界杭も赤ペンキが塗られているので判りやすい。地図には表れないが植林された平坦な場所があり、遠くから飛ばされてきたらしいキティちゃんの風船が落ちていた。三角点の真南に伸びる尾根に正確に下るにはここから右に逸れて雑木藪の斜面を下る必要がある。地図を持っていても判断が難しいだろうが、一度歩いた場所だけに判断を誤ることは無かった。標高500mの鞍部から沢に降りる。沢底は泥岩のナメで危険箇所は無い。沢に沿って歩けば西俣奥に延びる林道と出合う。

一時曇っていた空が再び晴れて明るい光が射した。水が薄くヒタヒタと流れる美しいナメ底を見ながら林道を快適に歩いてダムサイトに帰着。

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西古谷ダムサイト  15:00


回収物: 黄色の荷作りテープ1巻き分、アクエリアスのペットボトル2本、コンビニの袋、タバコの空き箱、キティちゃんの風船等。

山野・史跡探訪の備忘録