残雪期の分水嶺(天狗角力取山・大滝山)(2006年5月)

年月日:   2006/05/04

行程:   観音寺林道途中・標高約680mから歩行開始(11:13)〜 1,327mピークと天狗角力取山間の鞍部・標高約1,295m(12:57)〜 天狗角力取山山頂・標高1,360m(13:23)〜 広域基幹林道・三河小田川線 (13:46)〜 大滝山山頂・標高1,370.3m(14:02)〜 小田峠・標高約1,175m(14:52)〜 車に帰着(16:08)

帰省した翌日は親父殿が植木や山野草の手入れに忙しく山菜採りにでかける予定無しとのこと。暇を持て余し、運動のためにブラリと近くの山へ出かけた。子供の頃から自宅の庭感覚の山域。地図は要らん。観音寺川流域には残雪がたっぷりあるので、天狗角力取山(てんぐのすも(う)とりやま)にでも行って見るか。川桁山の登山道を辿って小田峠まで上がり、反対側に稜線を辿れば簡単に行けるはず。無雪期はびっしりチシマザサに覆われて移動がままならず、地元では天狗角力取山に登るなんて言ったらキチガイ扱いだが、今年は雪が多かったおかげで絶好の機会到来だ。

今年は例年よりサクラの開花が若干遅れ気味で、観音寺川の土手沿いのソメイヨシノが満開。川桁地区の住宅街をバイパスする道路を進み観音寺林道に入る手前に大勢の花見客を見かけた。地元では元々有名な並木桜だが、リステル猪苗代の宿泊客らの口コミで知名度が上がり、今年は駐車場やトイレまで整備され且つGWと重なったことで人出が多かったようだ。林道は未舗装だが、前年に較べて整備されていた。林道途中に雪が残っていたので、途中に車を置いていく。偶然にも前日の今尾頭道探索と同じ出発時刻だ。

最近林道を整備し直したらしくて歩きやすくなった。途中に車が2台。山菜はまだ出ていないので、どうやら川桁山に登山中らしい。こちらは出発が遅いから、小田峠に行くまでに戻ってくる登山者と行き会うかもしれない。

昔、川桁山の裏の小田峠で珪石の採掘が行われており、峠の直下まで林道が続いていた。現在の登山道はその名残である。子供の頃(昭和四十年代)には既に閉山していたが、ここを歩くときは道路に落ちている珪石を探すのが楽しみだったものだ。当時、林道は徐々に荒れつつあったが、ネマガリダケ採りの季節になると耕運機で登ってくる人がいた。現在整備されているのは植林地帯までで、地元の集落ごとに担当区間を決めて草刈を行っている。その奥はまったく利用されておらず荒れ放題で、ネマガリダケ採りと登山者以外は入り込まない。

川桁山の裏はまだ残雪タップりで、観音寺川は雪代で水量豊富。かつての林道も雪解け水がゴンゴン流れてイワナでもいそうな立派な渓流状態で、登山道には見えない。こうなっていることはあらかじめ予想していたので、本日は防波堤釣り用に買ったスパイク長靴を履いてきた。大正解。

画像
川桁山裏側    12:07


天狗角力取山の南の沢には分厚い残雪があり歩きやすそう。さらに山の斜面にも雪が残り、これらをうまく拾っていけばチシマザサ藪に悩まされずに近道できるであろう。よって、予定変更して小田峠ではなく南の沢に進入。

画像
観音寺川奥部    12:10


スパイク長靴の威力は絶大で、軽アイゼンより効く。朝方霜が降りるくらい冷え込んだので、出発が早ければ雪が固くで危険な状態であったであろう。遅い時間の出発でちょうどよかったようだ。

藪を避けていたら沢源頭に入り込んでしまった。斜度45度程度あるので、滑ると止まりそうにない。途中で藪に逃げ、太いチシマザサを掻き分けて1,327mピークと天狗角力取山間の鞍部に達した。北側の斜面はブナの原生林であり、安達太良山の眺めが良い。天狗角力取山に向かって登ると北側斜面で吾妻連峰が一望できるようになる。昨日ほどではないが本日も空気が澄み、遠くの山並みが美しい。

画像
天狗角力取山への登り    13:05


画像
吾妻連峰と小田川の谷    13:14


勾配は急で、一旦滑ったらはるか下方の山腹を走る林道・三河小田川線まで止まりそうにない。天狗角力取山の山頂手前だけ稜線部に雪が無かった。潅木の藪ではあるが、カモシカの通り道になっているらしく歩くことは可能。

天狗角力取山山頂の木には古いタオルが巻きつけられている。潅木を少々刈った跡も見受けられる。西から北東にかけて270度の大展望。南に続く分水嶺と猪苗代湖を見下ろすパノラマが素晴らしく、ただの藪山という先入観が一変。ただ、頂上に有刺鉄線が一本残されていたのはいただけない。

画像
分水嶺(左)と猪苗代湖    13:24


画像
川桁山    13:23
画像
大滝山と安達太良山    13:31


天狗角力取山から北東の方角にある大滝山までは分水嶺に雪が残っており簡単に行けそう。緩い雪面を快適に下ると、鞍部はダケカンバ平とでも呼びたくなる広い平坦地である。ここに平成3年開通の広域基幹林道・三河小田川線が走っており、開通してまもない頃にオフロードバイクで走り抜けたことがある。交流の無い小田と磐梯熱海間を林道で結ぶ必要性に疑問を感じたものだが、さすが林道整備に手厚い福島県、今もきれいに整備・維持されている。

画像
三河小田川線開通記念碑    13:46
画像
三河小田川線    13:48


大滝山一帯は民有地であるようで、管理人が立てた「関係者以外の入山禁止」の看板が鼻につく。ネマガリダケ採りの季節には見張りまで置いているらしいのだ。かなり根性悪そう。税金で林道建設してもらっておきながら良く言うよ。

画像
地権者の警告


林道から大滝山には全て残雪の上を歩いて行ける。大滝山山頂は雪が消えて二等三角点が露出。東側にはブナ原生林が残り、郡山方面が一望できる。こちらから猪苗代湖は見えないが、川桁山と磐梯山が並ぶ構図が面白い。

画像
大滝山二等三角点   14:02
画像
二ッ森方面    14:03


画像
天狗角力取山、川桁山、磐梯山    14:05


本日は出発が遅かったので、二ツ森方面に踏み出したい気持ちを抑えて引き返す。林道開通記念碑までの下りは尻セードも交えてスイスイ。天狗角力取山への登り返しも踏み抜きゼロで快調。

画像
尻セーディング    14:10
画像
天狗角力取山への登り返し    14:24


往路で下るのは少々危険と思われる。せっかくだから分水嶺を南に下るという手もあるのだが、ほぼ全て藪を下ることになる。当初の予定通り1,327mピーク経由で小田峠へ下ることにした。結構な急傾斜だが、雪もつかまるものも多くて楽。

画像
天狗が相撲をとる場所(中央の禿)    14:40


滑落しないように気をつけながら小田峠の急な雪面を下ってしまえば、後は林道跡を歩くのみ。

画像
雪解け水で渓流状態の林道跡 15:30


沢の水を飲みたいところだが、ノウサギの糞が一面に散らばっていて糞のエキスを飲むことになりそうな気がして、さすがに止めて顔を洗うだけにする。猪苗代は昔も今もノウサギが多い。日頃栃木県でシカの糞ばかり見ているので、碁石のように丸いノウサギの糞が雪面にポロポロ散らばる光景が妙に懐かしい感じがする。

川桁山の登山客はとっくに下山したようであった。雪解け水が流れて渓流のような登山道に青いきれいなバンダナが落ちていた。そばにはカタクリの花が数輪咲いていたので、写真撮影時に置き忘れたのであろう。落とし主の車は既になかった。

最奥の堰堤近くのカラマツが植林された斜面でイワウチワの群落が一斉に開花中。ポカポカ陽気の中、白や青紫のキクザキイチゲ、カタクリ、青いエゾエンゴサクなどを眺め早春の雰囲気を堪能しながら帰着。

画像
キクザキイチゲ   15:16
画像
イワウチワ    15:44
画像
エゾエンゴサク    15:58


山野・史跡探訪の備忘録