大峠から三倉山往復・高山植物観賞(2006年7月)

年月日:    2006.07.22

行程:     大峠登り口(福島・野際側)(05:41)〜林道終点(05:53)〜大峠(06:30)〜流石山(08:07)〜五葉の泉(08:53)〜大倉山(09:16)〜1,854.0m三角点峰(09:36)〜三倉山(09:48)〜一ノ倉(09:58−10:30)〜大倉山(11:11)〜流石山(12:07)〜大峠(12:44)〜駐車地(13:25)

草花にだけ興味ある方はこちらにどうぞ。

高山植物の花期は7月に集中する。県北のこの時期の山歩きとして唯一やり残しているのが、大峠〜流石山〜大倉山のお花畑巡り。土曜日は晴れ間も覗く可能性があるため、苦手の夏山登山に出かけることにした。梅雨末期の降雨でしばらくアユ釣りできそうにないので、迷いはない。

金曜夜に現地へ出発。12時過ぎに音金地区手前に到着。松川街道に行ったことが無いので、夜間に林道に入るのは止めて、加藤谷川の傍らの広場で車中泊。土曜日早朝に松川街道に進入。松川林道はヨロイ沢手前まで舗装されている。ヨロイ沢を渡ってしばらく進むと登山者用の広場があり、10台程度駐車可能。ここから歩いていく。

林道終点まで若干路面が凸凹しているが車の走行は可能。林道終点にも車は無く、人気の場所にしてはめずらしく一番乗りらしい。

林道終点から大峠までの道は、何故か必ずしも昔の会津中街道(松川街道)の道筋とは一致していない。カラマツ植林時に設けた林道跡の終点までを登山道として使用しているため、林道跡終点から連絡路を辿って街道跡に出る。この連絡路には新旧があり、登りに辿った新道は笹刈りしただけの悪路である。

大峠はガスの中で景色は何も見えん。朝の時点ではガスは福島から栃木へ流れていた。辺りはウグイスのさえずりに満ちている。この後、三倉山まで延々とホーホケキョの BGM が流れていた。いったい何羽生息しているのだろうか。この山域はウグイスの楽園である。

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大峠(帰りに撮影)   12:44


大峠近辺にはミヤマウツボグサが多く見られ、これからが花期本番。流石山への登り始めは紅いシモツケが目立つ。可憐なウスユキソウは流石山への登り斜面に点在している。標高1,550m辺りで高山植物の開花が最も賑やかになる。大峠付近のニッコウキスゲは終わりつつあり、どの個体も蕾が0若しくは1個残すのみ。標高を上げるにつれてニッコウキスゲの蕾の残数が増えるので、8月上旬までは楽しめそうだ。ニッコウキスゲとともにお花畑を形成するハクサンフウロは花期が長いので、標高に関係なくどこでも開花しており、最も目立つ存在である。ハクサンフウロ程は目立たないが、カラマツソウもハクサンフウロ並みに遍在している。その他、草原にはトリアシショウマ、オニアザミ等が点在。あまり愛でる対象ではないが、シシウドの類も多い。登山道沿いにウサギギクが咲いている。個体数は少ないがイワオトギリやミヤマキンポウゲもみかけた。草原の中に人為的にもたらされた登山道が空間を提供し、本来は沢沿いに見られるウサギギクや風衝地に生えるイワオトギリのような草花が登山道の縁で十分な日照を得ることができる。 標高1,650mを超えると花が少なくなり新葉の美しい笹原が広がる。細く抉れた登山道の左右が笹刈りされて歩きやすくなっているが、反面、荒れが広がることだろう。登山道と植生保護の関係は難しい問題だ。

流石山到着寸前に青空が広がったが、男鹿山地がかすかに望めたのはこれ一回きり。この後、何度も雲間は覗くものの、ガスが完全に切れることはなく、遠くの景色が見えることはなかった。景色が見えないのは残念だが、適度に涼しくて紫外線も弱められるので歩くのは楽だ。

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流石山    08:09


流石山の西側は潅木が多く、しばらくお花畑は無い。稜線部にはハクサンシャクナゲが多いのだが、今年は花着きが悪かったらしい。来年は期待できるかも。

1,792mピークから1,831mピークの登りまでは栃木県側斜面が草原状になっており、ニッコウキスゲやハクサンフウロが多い。

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稜線の草原    08:43
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五葉の泉   08:53


大倉山から三倉山方面を眺めるのを楽しみにしてきたのだが、ガスに覆われて何も見えない。大倉山(1,855m)はイヌツゲやシャクナゲ等の胸丈の潅木藪にびっしり覆われている。厚く積雪する場所ではないので4月の残雪期も歩きにくかったが、夏はとても入り込む気にはなれない藪だ。

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大倉山    09:16
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イヌツゲ    09:14


記念写真を撮っていたら至近距離から人の声がするので驚く。こちらが花や風景撮影に時間を要してダラダラ歩きしているとはいえ、追いついてくる登山者は相当な健脚のようだ。

大倉山から三倉山にかけて登山道は全て潅木帯を通る。尾根は細く、東側の斜面勾配が急で残雪期は雪庇が張り出しで危険と思われる。4月に大倉山から先に踏み込まなかったのは正解だろう。1,854.0m三角点峰から西側の県境尾根は密な潅木藪で、踏み跡は存在しない。三倉山山頂(1,888m)は広場になっていて、ガスがなければ360°の眺望が楽しめるのであろう。その先がどうなっているのか興味があったので、濃いガスの中に踏み跡を辿り、大きなハイマツが鎮座する一ノ倉で休憩。

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三倉山山頂にて  09:49
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一ノ倉  10:00


10分も経った頃、三倉山から男女一組がご到着。6時40分頃に林道終点を出発したそうだから、ここまで3時間30分で来たことになる。装備は本格的。二人ともコースタイムを記入していたので相当山慣れしている方達らしい。彼らは滞在5分程度で三倉山へ引き返した。当方は番屋川の谷に興味があったので、ここでしばらくガスが消えるのを待ったが、晴れるどころかますますガスが濃くなる。雷雲が発生したら厄介なことになるので引き上げ決定。

三倉山で昼食休憩中のお二方に挨拶して帰りも先行。もう一組いたとのことだが、既に下山したらしい。

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1,854.0m三角点峰   10:47
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三角点峰から見る流石山方面   11:05


この後遇ったのは五葉の泉で男性1名女性2名の中高年グループ1組と流石山山頂の男性単独行者のみ。大峠に降りる途中で下方から人の声が響いてきたが、下山中であったらしく大峠には誰もいなかった。朝とは風向きが変わり、ガスは栃木県側から勢い良く流れている。雲が分厚く太陽の位置すら判らない。天候が回復する見込みが無いので先を急ぐ。帰りは旧道を辿ってみた。基本的に松川街道跡を辿るのでこちらの方が歩き易い。道脇にはモミジカラマツの花が目立つ。街道跡から逸れて林道跡に連絡する区間のみ歩きにくいが、個人的には新道より旧道が歩きやすくてお薦め。

鏡ヶ沼に向かって5分ほど歩いてみたのだが、雨が降り出しそうで雰囲気が悪いため引き返した。紅葉時に旭岳と組み合わせて歩いてみよう。帰りに音金地区から三倉山に登る口を確認し、仮眠してから帰路についた。

見かけた主な草花です。小生、高山植物の名前には疎いので、誤りがありましたらご指摘ください。

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シモツケ  06:50
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ウスユキソウ 06:57
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オニアザミ  07:01
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ヒトツバヨモギ 07:12
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ミヤマウツボグサ 07:19
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ウサギギク 07:24
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カラマツソウ 07:53
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イワオトギリ 07:56
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ハクサンフウロ 11:34
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ニッコウキスゲ 12:24
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ミヤマシシウド? 12:29


山野・史跡探訪の備忘録