中津川・白滑八丁遡行〜吾妻山修験の跡探訪その5〜(2006年10月)

年月日:    2006.10.09

行程:   中津川レストハウス(08:50)〜中津川登山道入り口(09:22)〜遡行開始(09:27)〜白滑八丁・三段滑で退却(9:56-10:25)〜入川地点近くの橋脚跡(10:57)〜右岸の廃林道を辿り秋元湖手前で引き返す(12:50)〜洞門上流側からレークラインに上がる〜レークラインの橋を渡りレストハウス帰着(12:15頃)

秋元湖に沈んでいる地域が明治の磐梯山噴火前にどのような様子であったのか知るべくもないが、吾妻山修験の地獄駆けコースとは中津川と大倉川の合流点で正規の妙見口参拝道と別れ、最初から中津川を遡行していったのかもしれない。地形的にみて白滑八丁を通っていたのは間違いない。8月の中津川遡行は東電の取水門からの出発だったので、秋の3連休に帰省したついでに紅葉の名所である中津川下流部を訪れてみたいと考えていた。10月6日に大雨をもたらした低気圧の勢いは弱まらず、8日(日)は一日中強風が吹き荒れた。最終日の9日午前中に軽く沢歩きしようと思っていたのであるが、早朝は吾妻山方面がどんよりと曇っていて山歩きの雰囲気ではない。8時頃に青空が覗いたのでとりあえず様子見に出かけてみた。

レストハウスは既に営業中。行楽客の車はまだ数台しかない。昨年は遊歩道を歩いて川床に降り上流側の林道の橋に出たのであるが、そのときに川床に降りる手前で左岸沿いに細い踏み跡を見た。今回は大雨後で増水しているので安全策を取り、踏み跡を辿ってみる。ところが、踏み跡は小尾根を回り込んだところで忽然と消えた。沢に沿って山腹をトラバースしていけば林道の橋の袂に出られると思い込んでいるので、そのまま薄い藪を直進。すると唐松沢を見下ろす場所に出た。これは想定外。左下方に沢音を聞きながら歩いていたはずなのに、林道に出る前に、いつのまにか中津川が唐松沢に変わってしまっている。確か唐松沢は中津川に架かる林道の橋より上流側で合流しているはず。どうやら橋に向かってまっすぐ下っていく踏み跡を見逃したらしい。

地形図を持っていないが、大体の位置は理解できる。林道は中津川登山道分岐で中津川を離れ唐松沢右岸に沿っている。沢歩きの装備に着替えて唐松沢を渡渉し、林道に向けて藪漕ぎ。時間にして15分程度だったと思うのだが想定外の激藪漕ぎには参った。飛び出た場所は林道が中津川左岸に並進する区間であった。とりあえず上流側に進み、中津側登山道(廃道)の途中で適当な入川場所を探すが、傾斜がきつそうである。中津川登山道入り口より数十m下流側に戻ってみると入川しやすい場所があった。よく踏まれているので、沢登りの人たちは皆ここから遡行すると思われる。入川地点付近は瀬とトロが連続する渓相で、断続的に白滑八丁の前衛ともいえる岩盤のナメが現れる。

画像
中津川登山道入り口   09:22
画像
中津川入川地点  09:27


何箇所かで中津川林鉄のレールが転がっているのを見かける。

画像
中津川林鉄のレール  09:35


倒れた草や引っ掛かった枯れ枝が3日前の豪雨による増水を物語る。この日の水量が多いのか少ないのかこの時点では判断できなかった。ただ、水は透明ではあるがアメ色をしていてYellowRiver 状態。これは増水直後に見られる現象で、池塘が点在する源流地帯の泥炭からタンニン成分が流れ出ているのかもしれない。まるでアマゾンの源流みたいだ。

やがて白滑八丁にさしかかる。ここまで来て、普段より水量がかなり多めであることが判明。平水ならばU字の底が水線よりも上にあって楽に歩けるはず。今日はすべてアメ色の水に没している。万が一落っこちても溺れる心配はないが、淵では2m程度の深さがありそうで、泳ぎは確実。幸い透明度が高いので、足元を見ながらギリギリのフリクションで三段のナメに到達。

画像
帰りに撮影  10:33
画像
帰りに撮影  10:22
画像
三段ナメ入り口
画像
三段ナメ入り口から見る下流側


一段目はなんとかクリアできるが、中段手前の壷の深さが判らずピッケルの類も所持していないので、中段を越えるのはあきらめた。ここで退却決定。

画像
三段ナメ中段の壷  10:10


帰りも慎重に淵を抜ける。夏場に流れに身を任せながら下ればさぞ気持ちよいことであろう。

入川地点の下流側に古い橋脚跡がある。ここに林鉄の橋脚があったという情報は目にしていない。ということは林道の橋が架かっていたのであろうか。それにしては橋脚の高さが両岸の平坦な場所に比べて低いのが腑に落ちない。試しに右岸に這上がって歩いてみたが、大きく成長したカラマツ林の中には明瞭な作業道跡らしきものは認められない。利用されたとしてもほんの一時的なものであったと思われる。

画像
橋脚跡(上流側から)   10:57
画像
橋脚跡(下流側から)   10:59


入川地点に戻り着替え中、林道を中津川レストハウス方面に戻っていく数名の姿を目撃。キノコ採り?ハイカー?。この林道は遠く離れた金堀集落側からしか車で入れないので、中津川レストハウスから遊歩道と川床を伝ってきた人達であろう。林道を戻るときも軽装沢歩きスタイルの若い男女のペアとすれ違った。中津川に架かる林道の橋上から、左岸側に大勢の観光客がいるのが見える。あの客の中を歩いて戻る気になれないので、そのまま林道を歩いて右岸沿いに下り、レークラインの橋を渡って戻ることにする。

橋から下流側の右岸側の区間は通行止めになっており、廃道となって久しいらしい。秋元湖から辿ってくる人がいるようで、踏み跡は明瞭だ。レストハウスの客が沢に降りる地点よりも下流側に黒滑八丁と呼ばれる区間がある。こちらは摂理の表面が浸食されたもので特異な景観を呈する。

画像
黒滑八丁   11:39
画像
黒滑八丁   11:46


この近くには洞門があり、かつて遊歩道として整備されたことを物語る標識が残されている。

画像
廃林道の洞門   11:40


洞門を潜り抜け、頭上に現れるべくレークラインの橋を期待しながら進むのだが、いつまでたっても現れない。こんなに遠いはずはない。そのうち中津川がゴーロ状となり秋元湖の手前まで来てしまった。どうやら黒滑八丁を眺めていて頭上の橋を見落としたようだ。人間の注意力なんてこんなものか。

廃林道を戻り洞門を潜り抜け、50mほど上流側に進んだところの傾斜が緩いので取り付く。道はないが藪が薄いので楽にレークラインに抜けた。橋を渡り、遊歩道を登ってレストハウスの駐車場に帰着。時刻は正午過ぎ。天気も良くなり、人出が多くて駐車場は満杯状態であった。

今年は霜が降りるほどの冷え込みがないため紅葉がだいぶ遅れ気味。中津川渓谷の紅葉が見ごろを迎えるのはあと1〜2週間後と思われた。

山野・史跡探訪の備忘録