枯木山(2006年10月)

年月日:   2006.10.14-15

関連記録@ 2005-11-03 枯木山への尾根探索
関連記録A 2006-03-11 残雪期の枯木山

 

初日行程:    安ヶ森ロッジ二つ手前の橋から歩行開始(12:49)〜1,549mピーク(16:00)

二日目行程:   1,549mピーク(06:14)〜1,630m級ピーク(07:37)〜1,692mピーク(08:40)〜枯木山南端(09:09)〜枯木山山頂(09:40 - 10:00)〜枯木山南端(10:30)〜1,692mピーク(10:50 - 11:00)〜尾根屈曲点(11:58)〜もちづけ橋東側の林道へ降下(14:00)〜車に帰着(14:45)

2005年11月に、白滝沢もちづけ橋から尾根に取り付き1,549mピーク経由で枯木山日帰りを試みた。このコースで秋に日帰りするのは無理ではないにしても極めてハードな行程であることを認識。当時の記録には「もう二度と辿ることはないであろう。」とある。枯木山に行く別のコースを考えていたのに、不本意ながら同じコースに挑戦したのには事情があった。

10月9日、福島の田舎からの帰りに横川のパーキングで車を停めたところ、ボンネットの隙間から白い煙が・・・。何かのオイルらしきものが飛散して、エンジンの熱で煙が出ているようである。走行性能には支障が無いのでそのまま一週間走行し、14日(土)午前中に自宅近くのディーラーに12ヶ月点検の予約を兼ねて診てもらいに行った。メカニックは一目見るなり、「あぁ、ドライブシャフトブーツが破れてますね。」。ドライブシャフトに小石が入り込んで傷つかないようにするためのものなので、走行しても問題はない。15日夕方に代車が空くとのことで、15日午後6時半までに車を預ける約束をして遊びに出かけることにした。一度は山中一泊の山歩きをあきらめかけたのであるが、日曜日は快晴の予報である。無雪期に枯木山に行くなら今の季節以外やる気にならない。短時間で且つ安全に行ける尾根コースは前回のコース以外あり得ないとの結論に達し、再挑戦を決意。遅くとも15日午後6時までには自宅に戻る必要があるので、14日中に行けるところまで行って時間稼ぎすることにする。

湯西川のダム建設に伴う道路付け替え工事は着々と進んでいるようだ。どう見てもダム建設より道路付け替えの方が費用がかかるように見えるが・・・。湯西川・平沢の集落内も道路建設中でクランクになっている。こんなところに広い道路を作る意味は何なのか?全ての工事はホテルに大型バスで集客するのが目的のように思えてしまう。平家落人の里のイメージはとうの昔に消えている。

安ヶ森ロッジの2つ手前の橋の広場に車を置いてスタート。昨年、ここから1,549mピークまで3時間弱で登っている。今回は午後のスタートとなるので、時間的に1,549mピークで幕営となるであろう。

安ヶ森ロッジは解体工事中であった。改築ではなく解体と表示されていたので、ロッジは無くなってしまうのかもしれない。白滝沢林道には植林地で伐採作業のための工事車両が数台入りこんでいた。ワイヤーの巻上げ機や、支点となる樹木に滑車とワイヤーが巻きつけられた様子を見物して奥へ進む。

前回はもちづけ橋を渡った所から尾根に取り付いて急斜面で苦労したので、白滝沢左岸沿いの林道を奥に進み勾配の緩い草付き斜面に取り付いた。ブナハリタケを見つけたのだが、収納スペースが無いので残念ながら収穫できず。

冷え対策として初めて銀マットを携行した関係でザックの収納スペースが不足し、飲料水を2リットルしか持たない。尾根取り付き前にたらふく沢水を飲んでおかなかったのは失敗だった。発汗しないようにゆっくり登るつもりだったのだが、時間が気になるので無意識のうちにペースが上がる。おまけに湿度が高く無風なので、発汗量はいつもと変わらない。

登っていくうちに忘れかけていた記憶が蘇る。この尾根は1,263mポイントの上下に密ではないがうっとうしい潅木藪が長く続き、早くも倦怠感を覚える。ネズコ?の大木が生える標高1,400m付近はガスの中で、藪は濡れそぼっている。時刻は15:30。ネズコの大木下で幕営するかどうか迷ったが、翌日の行程を短縮すべくガスが立ち込める山頂を目指す。ここから先、県境尾根に出るまで幕営に適した平坦な場所は無いので、行ってしまうしかない。

イヌツゲ藪を掻き分けて1,549mピーク着。福島県は晴れとの天気予報に期待して県境尾根に出てみたものの、ガスで何も見えん。少し西に下るとチシマザサの藪が薄い場所があったので、ここで幕営することに決定。高い樹木は無いものの、今宵は冷え込む心配はなさそう。テントに潜ってザックを開けてみるとツェルトが出てきてガクッ。道理で飲料水を入れるスペースが不足した訳だ。

午後5時を過ぎてガスが濃くなってきたようで、雨は降っていないものの木々や笹の葉に結露して雫がバラバラボタボタと落ちてうるさい。疲労が少ないので体も冷えず、野営としてはこれまでで最も快適。FMラジオの電波の入りも良く退屈しない。鼻がつまって寝にくかったが3時間ほどまどろみ、午前2時に目を覚ました時は雫が止んでいた。テントには揺れ動く木々の影が映る。ガスが消えて月が輝いているのだ。15日は予報通り好天に恵まれそうだ。安心して細切れに寝て5時に起床。

藪はびしょびしょにつきレインウェアを着込んで2日目スタート。時刻は6時14分。枯木山まで3時間を見込む。

県境尾根は標高が低いのでブナを主体とした潅木藪がうるさい。1,549mピーク隣のピークを鞍部に向けて下る際に早くも藪に汗拭きタオルを盗られた。

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1,549mピーク西隣のピーク  06:14


天気は良いが標高1,000m以下の谷間は霧が立ち込め、雲間から山が頭を出している状態。さわやかな秋の雰囲気を楽しめるのは午後になりそうだ。

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明神ヶ岳  06:24
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高原山(手前は持丸山、横瀬山) 06:34


1,630m級ピークの前衛ピークではイヌツゲが行く手を阻み、1,630m級ピークまで一時間以上要す。予定に対して遅れ気味なので、枯木山到達目標時刻を午前10時に設定し直す。

県境尾根の藪は密だが、針葉樹がほとんど無いので眺望に優れる。枯木山の姿を前方に捉えて進めるのが1,549mピーク経由コースの良いところである。

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東側から眺める枯木山の姿   07:37
右端のピークが三角点のある北端。南端直下の東斜面は雪崩が発生するためチシマザサ無し。岩盤剥き出し、もしくは草原状となっている。


1,630m級ピークと1,692mピーク間の鞍部は腰丈のチシマザサ主体で比較的歩き易い。藪が濃い場所は福島県側に少し逸れると楽に歩ける。

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往路(東側)の県境尾根(遠くに見えるのは荒海山)   07:58


1,692mピークへの登りの最初はチシマザサを適当に掻き分け、次にヤマグルマの壁を突破。紅葉は大して期待していなかったものの、時にして鮮やかなカエデの紅葉に慰められる。

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ハウチワカエデ 08:13
(1,692mピーク東側)
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サラサドウダン 10:50
(1,692mピーク西側、帰りに撮影)


鞍部から枯木山南端への登りの藪は身の丈以下のチシマザサが基本。尾根には明瞭なカモシカ道が一本走っており、これを辿ることで順調に登れる。カモシカ君ありがとう。

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帰りに辿った白滝沢右岸尾根  08:26
 
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県境1,706mピーク  08:48
田代山、帝釈山方面は晴天。
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枯木山南端から見る1,692mピーク  09:09
右奥が明神ヶ岳。高原山は霞んでいる。
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?  09:09
 


p>北端にある三角点までは稜線の藪が歩きにくいので、半分以上は西側斜面笹藪の中のうっすらとしたカモシカ道を辿る。

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枯木山〜大嵐山の尾根   10:22(帰りに撮影)
空気が澄んでいれば、右奥に七ヶ岳が見える。


枯木山は東側の眺望に優れた山である。景色を見たいと思えば稜線に出ればどこからでも眺めを堪能できる。最後はやや明瞭なカモシカ道を辿って山頂着。正体見たり枯木山!これで帰れる!。

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枯木山二等三角点   09:56


予定に対して若干の余裕有り。山頂は北北西側が開けている。残念ながら快晴の割には清澄度が低く会津の低山がよく見えない。二等三角点の傍らにはMWVの金属板が落ちていた。滞在すること20分。

山頂にはハクサンシャクナゲがびっしり。その他、ヤマグルマ、サラサドウダン、ヤマザクラ、ノリウツギ、ホツツジなどに覆われる。彩りのある場所なのだから、枯木山なんて名前はふさわしくない。

もう来ることはないかもしれない枯木山に別れを告げて帰路につく。1,692mピークまでは順調。午前11時近くになってようやく藪が乾いたので、1,692mピークを下る前にレインウェアを脱いで通常の藪歩きの服装にする。1,692mピークは赤茶けたハナヒリノキ等の低木と笹の混合藪であり白滝沢の全景を眺めること可。安ヶ森ロッジが正面遠くに見える。白滝沢に向けて真っ直ぐ南東に下るという選択肢もあるが、南尾根を辿って右岸尾根を下ることを選択。14時までに林道に降下し、遅くとも15時には車に乗りたい。

1,692m南尾根の下りはチシマザサ藪であるがうっすらとしたカモシカ道を辿れる。針葉樹が少ないので、尾根の勾配が無くなると蔓藪も現れて鬱陶しい。烏ヶ森の住人さんが記録しているように、この尾根は浅い二重尾根となっている。中央の溝は藪になっており、獣道ではない。無視して適当に藪の薄い場所を選んで進む。この辺りで喉の渇きを感じるようになった。飲料水残量は数百ミリリットル。まだ2時間以上藪歩きが残っているので、全部飲み切ってしまいたいところを我慢。どこからでも沢に向かって降りられそうな気もするが、沢の手前で勾配が急なのが嫌らしい。1,692mピーク南東尾根を選択しなかったのだから、中途半端な場所では降下したくない。

尾根屈曲点からの東進は笹の丈が低く楽。三角点に気づかず1,467.1mを通り越し順調に下るが、標高1,270m級のこんもりとしたピークから先が酷い潅木と蔓の藪で進みが遅い。午後になってさわやかな風が吹くようになったものの、発汗量が多いので体が心配になる。特に異常は感じないのだが、血が濃くなってドロドロになっていることを想像すると気分の良いものではない。

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1,220mポイントから北東側はかつて伐採して放置したために潅木藪が密。残雪期のイメージとの乖離が甚だしい。標高1,200mの北東端は進路を見定めにくい場所だ。最後の水を飲み干して、白滝沢に向けて一気に北東尾根を下る。広葉樹やイヌツゲの潅木が密生していて下りでも難儀する。ついに高度計を藪にもぎ取られた。明瞭な獣道が無く、右に左にブレながらも尾根筋をキープ。標高950m辺りから下は藪が消え、ブナ林のすっきりとした稜線を辿る。早く水を飲みたい一心で急いだ結果、目標時刻ぴったりに林道に降下。東側にきれいな沢が流れており、たらふく水を飲んで生き返った気分。この沢の水はうまい。

行動時間が短いので疲労は少ない。脛が少々痛いだけ。藪から解放された後なので林道歩きは爽快そのもの。秋の空とハラハラ舞い散るカラマツの葉が印象的であった。

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山野・史跡探訪の備忘録