中山峠から七ヶ岳へ(丸山で退却)(2006年11月)

年月日:   2006.11.03

行程:   標高1,145m・中山峠出発(10:34)〜標高1,258m・三角山山頂(10:51)〜標高1,235m・沼の平(11:20)〜標高1,552m・丸山(12:49)〜退却開始(13:00)〜沼の平復帰(14:06)〜中山峠帰着(14:55)

国道121号線を通って会津から栃木県に向かうとき、田島近辺で南側に顕著なピークを連ねる山が目に付く。以前から気にはなっていたが、これが七ヶ岳であることを知ったのはつい最近のこと。強くその存在を意識したのは昨年春に土倉山に登った時のことで、シュカブラみたいな形をした七ヶ岳に一目惚れ。Webで調べたところ、七ヶ岳の土台は900万年前の火砕流堆積物と700万年前の奥鬼怒カルデラの火砕流堆積物であり、後の火山活動で東側が陥没して形成されたとのこと。

魅力的な地形をしており、今年こそは訪問してみたい。裾野が広くて周回には向かないのが難点。MTBを利用して破線路をつないで周回できないかと検討していたのであるが、なにせ行ったことがないので見当がつかない。11月3日の会津地方は快晴の予報につき、とりあえずお手軽な周回を試してみようと考えた。

この一週間、寝不足状態が続いて早朝出発は不可能につき、しっかり睡眠をとって8時過ぎに自宅発。滝沢から鎌越沢に入り、七ヶ岳林道や沼の平に向かうと思われる林道の入り口を見やって中山峠らしき場所に到着。

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中山峠から田島側  10:34


峠であることを示す案内は無い。登山道の入り口らしきものも無い。旧舘岩村と旧田島町の境界だったらしく舘岩村の表示があるだけ。所持している地形図のコピーは合併後のものなので、境界線が無いので役に立たない。周囲の地形からここが中山峠であろうと判断。既に10時を過ぎており、MTBの空気入れも忘れてきたので、周回をあきらめてここから丸山経由で七ヶ岳往復する案に変更。中山峠から北に向かう破線路を辿れば余裕で往復可能であろうと思われた。

入り口と思しき場所はうっすらと踏み跡らしきものがあるが、登山道には見えない。現在、ここから登る人は皆無のようだ。立ち木に赤ペンキがうっすらと残っているが、登山者のためではなく営林署がつけたもののようだ。身の丈程度の薄いチシマザサ藪の斜面を登って三角山の西端に達する。ここで赤紐を目にする。わずかながら中山峠から三角山に登る人はいるようだ。地形図には三角山を東西に貫く破線が示されているが、登山路らしきものはない。少し寄り道して、歩き易いところを適当に辿り山頂着。何にも標示なし。眺望も無い。北側に枝越しに七ヶ岳が望めるだけ。

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三角山   10:51


すぐに下って先に進む。営林署の古い標示を見ながら鞍部に下り、密ではないが延々と続くチシマザサ藪を掻き分けながら緩いブナ林の斜面をダラダラ登る。この辺りの山は大木が見当たらない。切り株が見当たらず潅木藪も無いので、伐採されたとしてもかなり昔のことであろう。

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帰りに撮影   14:22


1,261m地点から下ると右手に沼の平が見えてくる。湿地帯になっており、枯草に覆われていた。

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沼の平   11:20
中央が七ヶ岳、左のシラカンバの背後に見えるのが丸山。沼の平の周囲は美しいシラカンバの林とチシマザサの藪。


丸山への取り付きを目指して北北東に藪を進むと右前方に山荘が出現したので緊張が走る。人がいたら怪しまれそうだし、犬が放し飼いになっていたら最悪の事態だが、幸い誰もいないようであった。中山峠に向かう時に見た入り口の閉鎖された林道が沼の平北側まで延びているようだ。

建物があるのだから、ここから明瞭な登山道でもあるのではないかと期待したのであるが、チシマザサ藪は相変わらず。やや急な斜面を登って南東に伸びる尾根に乗ったが、チシマザサ藪に潅木藪も加わり雰囲気悪し。地形図では西側から破線路が合流することになっているが、そんなもの一切無い。この辺りは稜線の勾配が緩いので雪が溜まるらしく、チシマザサが太く丈が高い。丸山の急斜面に入る前に東側からも破線路が合流することになっているが、そんな形跡は無いし人間が歩くような場所には見えん。使われていたのはいったいいつの話だよ。こんなもの地形図に残すなバカヤロ!

丸山南端には標高差にして約100mの等高線の密な区間がある。ササが無くすっきりしているが、替わりに岩が剥き出しの急登。幸いにして樹木が多いので危険は無い。ここも人が歩いた形跡は無い。斜面が緩くなるにつれて再びチシマザサ藪が始まり、おまけにイヌツゲやブナ・ミズナラの潅木に蔓も混じり性質が悪い。出発してからほとんど藪漕ぎの連続なのでさすがに倦怠感を覚える。

丸山稜線の東側は眺め良好だが潅木の激藪。

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丸山から眺める1,638mピーク(左)と七ヶ岳(右)  12:49


西側はブナ・ミズナラ樹林にチシマザサ藪で東側に比べると歩き易いが、樹木の枝が積雪でベロンと斜面に垂れていてかわすのが厄介。いずれにしても移動がままならぬ。枯木山近くの県境の藪よりも酷いのだから参る。目の前に七ヶ岳山頂が見えているのだが簡単に行って戻ってこられる距離でもない。1,638mピークへの登りは稜線に道があるように見えなくもないが、もし激藪ならば戻ってくるだけ労が増すというもの。残り時間を考えると進退を決断すべき時に至ったようだ。

時刻は既に午後1時近い。丸山から七ヶ岳山頂まで往復で1時間30分、丸山から中山峠まで2時間かかるとすれば、日没ぎりぎりで危険。安全を優先するならば高杖スキー場に下るのが最善だが、中山峠に戻ってくるのが大変。そもそも高杖スキー場側の地形図を所持していないので帰り道が判らん。沼の平の山荘から林道を下って中山峠に登り返す手もあるが、山頂でゆっくりしている暇はないし、疲労した身で丸山の藪をもう一度漕ぎたくない。ビバークしてゆっくり周回するという手もあるが、今夜は冷え込みそうだし、ラジオも持ってないので暇。いろいろ考えあぐねた末に撤退決定(帰宅後に登山ルートを調べてみると、撤退した場所は高杖スキー場からの登山道との出合いまであと10分程度の地点だったらしい。知っていたら行っちゃったかも。)。丸山南端まで移動し、潅木藪の高みに立って南東の方角に聳える男鹿山地を眺めながら簡単に昼食を済ました。

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丸山南端の藪  13:19
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丸山南端から眺める男鹿山地   13:19


丸山の下りは方向を見定めるのが非常に難しい。下り始めはどの方角も全て同じ勾配の激藪で道跡も皆無であるため、少しでも方向ずれると修正が大変。登りでどんな場所か経験しているから平気だが、初めての場合は平常心を保てないだろう。三角山が見えているので大きく外すことなく順調に沼の平に復帰。林道に飛び出る前にチシマザサ藪の中に古い道標の名残らしきものを見る。

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沼の平近くで見た道標らしきもの   14:04


新版「会津の峠」に拠ると、中世の中山峠の道は沼の平の北側を通っていたという。沼の平が終点の破線がそれに当たるのであろう。道標らしきものがあるということは、かつては登山道としても利用されていたのだろうか。

林道終点にある山荘は冬の準備をして閉鎖されていた。隙間から覗いてみると炊事場もテレビも備えてある。誰が何に使用しているのかは不明。再び藪に入り込み、沼の平から約50分で中山峠に帰り着いた。

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峠道のカエデ@  15:15
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峠道のカエデA  15:28


帰りは中山峠西側の偵察を兼ねて一旦高杖スキー場側に下り、中山トンネル経由で戻った。南会津も会津西街道沿いも標高800m近辺ではどこも紅葉真っ盛りで、秋の彩りを満喫しながら帰宅。

山野・史跡探訪の備忘録