年月日: 2007年3月21日(水、春分の日)
行程: 大月沢支線起点(08:36)〜県境尾根に上がる(9:10)〜福島東幹線鉄塔(09:29)〜福島東幹線鉄塔225号(09:46)〜500.2m三角点(10:09)〜尺丈山(10:33)〜林道峠(10:59)〜473.7m三等三角点(11:39)〜烏帽子掛峠(11:57)〜福島東幹線233号鉄塔(12:08)〜福島東幹線234号鉄塔(12:20)〜474.2m三等三角点(12:37)〜鷲子林道の峠(13:31)〜鷲子山上神社(13:49−14:21)〜車に帰着(14:47)
今回の風邪は全体的に症状が軽かったのだが、肺機能の回復が遅れて少量の痰がしつこく出る。春分の日は午後から曇るとのことだったので大事をとって出かけないつもりであった。寝坊して天気予報を確認すると栃木県は一日中晴れとのこと。風もほとんどない。こんな良い天気放っておく手はない。まだ高い山に行けるほど回復していないので、八溝山地で軽くリハビリすることにした。肺を動かして奥に残っている痰を吐き出してやる。
前回の続きとして、今回は新田山近くから鷲子山まで歩いてみる。まずはMTBを置きに鷲子山に向かうにあたり、帰り道の確認兼ねて大那地を通る。武茂川沿いや大那地の道路沿いには満開の梅の木が目立った。このところ降水量が少ないので大内川はチョロチョロ程度の水しか流れていない。こんな川に無理してヤマメを放流しているとは痛々しい。天然ものは居ないはずだが釣り客を何名か見かけた。
大那地の奥に行くのは今回が初めて。「この道路は通り抜けできません。」との標示有り。行ける所まで行ってみようと車を進めると、道路の幅が車一台分しかなくなった。それでも舗装はされているしどこまで行っても人家がある。ちょっと坂道を登ると馬頭から鷲子山に登る道に抜けた。ちゃんと通り抜けできるのである。
MTBを置いて同じ道を下り、大月沢林道に入る。ここは新田山の登り口であり、訪れるのは今回が3度目。入口付近には車を置くのに適した場所が無いので、大月沢林道支線の起点の広場を出発点とした。
支線を進んで破線路のある谷を目指す。楽に県境尾根に上がるつもりであったのに、谷は間伐材で埋め尽くされていた。
大月沢の国有林ではつい最近大規模に間伐が行われたらしいのだが、なんとも粗雑なやり方である。まず作業道を何本も作って山肌をズタズタにする。そして作業道から下に向かって縦一列の樹木を全て伐採してしまう。これを2列、3列おきに繰り返すのである。横方向には空間ができるが縦方向には詰まったままである。こんなの間伐といえるのか?台風が来たら土壌流出と倒壊で被害が拡大しそうだ。
なんとか間伐材跨いで県境尾根に上がってみたが、峠にも作業道があって峠道の跡は皆無である。すぐ南のピークの県境杭の横には赤いラッカースプレーが棄てられていた。いけませんな。
大月沢の峠から500.2m四等三角点までは延々と見通しの無いヒノキの植林地帯を歩く。単純な尾根なのであるが地形図と方位磁石の確認が欠かせない。アクセントとなるのは送電線鉄塔のみである。福島幹線と福島東幹線が並走するため、ルート上で出会う黄色いポールに標示されている鉄塔番号が紛らわしい。
栃木県側で視界が広がるのは伐採地を除いて送電線鉄塔周りだけ。送電線鉄塔周りは日当たりが良いのでアズマネザサがはびこるのが普通なのだが、225号鉄塔の直下東側にはめずらしいクマイザサの群落がある。西側にはミヤコザサの群落があり、周囲は枯れススキ。
500.2m三角点のあるピークの頂上には町の標石があり、四等三角点はその北側に遠慮がちに設置されている。
リハビリを兼ねているので歩き始めは慎重で、500.2m三角点まで予想以上に時間がかかった。肺の具合は心配ないようだ。時間が気になるので以後はいつもの80%程度で飛ばしていく。500.2m三角点から南の県境尾根は破線路の道形が明瞭で、広葉樹に覆われた区間も多くて快適な県境尾根歩きが楽しめる。この破線路の目的は何であったのだろうか。大那地の住民は鷲子山上神社だけではなく尺丈山神社にも詣でていたのだろうか。
二度目の尺上山訪問。三角点は神社の後方にあり、神社を取り囲むように踏み固められている。神社よりも三角点拝みに来る人が多いようである。
ピジョン美和の森の道路終点にはピクニックに来たと思われる車が2台あり、人の声が聞こえた。鷲子山を除いて人の気配はこれ一回きり。尺丈山から林道峠までは県境を辿ったことがあるので、途中からは林道を歩いて時間節約。
峠の栃木県側では伐採中であり、県境に沿う真新しい作業道を歩いていく。作業道の支線に入って県境に再接近。
伐採地から尺丈山が望める。
県境尾根はヒノキやツツジ類のひどい藪。茨城県側の視界が良い場所もあるが、目印となるような顕著なピークは見えない。送電線と電波中継塔以外は見渡す限り植林された山しか見えない。確か460m級ピークであったと思うが、等級不明の安っぽい三角点標石がある。
次の鞍部で作業道が上がってきており、これを辿ると三角点ピークを通りすぎて栃木県側に下ってしまう。進路を誤ったことに気づいて戻る際に道の傍らに三角点標石を見つけた。作業道を作るときにうっかり削りかけたのか、かろうじて残っている状態である。
三角点から烏帽子掛峠の下りが難しい。正しい尾根を選択したはずだが、伐採された尾根からの見晴らしが良すぎて逆に不安になった。尾根を下ればぶつかるはずの山腹を走る林道が見えない。峠に降りるように思えなかったので一つ隣の尾根に移りジメジメした谷に下った。谷は短く栃木県那珂川町のポールの若干峠寄りの場所で舗装道路に抜けた。厳密には県境をはずしているが結果的にはこれで良かったと言えよう。
烏帽子掛峠は舗装されてはいるが狭い。昔、誤って車で来たときのおぼろげな記憶では、峠のどちらかの側に遊歩道が整備されていたように思う。
栃木県側の谷にある送電線巡視路を辿って楽に県境尾根復帰。送電線鉄塔までは明るい雰囲気であり巡視路利用で快適。474.2m三角点ピークから西は再び植林地帯の連続で見通しが利かない。474.2m三角点ピークには平成4年に設置されたSHCカワスミの青い山名板有り。
「前山」と書いてあるが何に対する「前」なのか?近くにある人家は大那地のみ。人家はみな日当たりの良い左岸(北岸)にあるから、家の前にある右岸の山(県境の山)はすべて「前の山」と呼んでいるのではないだろうか。固有名詞ではないような気がする。
県境尾根が南に屈曲する場所は尾根が広がって特徴が無いのでうっかり直進。一つ隣の尾根に移動。赤ペンキと標柱を信じて下っていくと、またまた様子が変だ。さらに一つ隣が正解で、谷渡りで県境尾根に復帰。この辺りの尾根には全て県境尾根と同じような赤ペンキがあって紛らわしい。この日のコースでもっとも難易度の高い場所である。
尾根が再び西進する場所はミス無く通過。鞍部に下ってみると地形図には描かれていない舗装林道(鷲子林道)があった。峠の茨城県側にはスズキのアルトが棄てられている。
峠から鷲子山上神社までの尾根道は判りやすい。途中から合流する古い参道らしき道は遊歩道とまではいかないが藪払いされていて歩き易い。鷲子山頂付近では部分的に自然の植生が残されていて、太古の県境尾根の雰囲気を想像できる。2019年現在、鷲子山上神社のHPに拠るとこの辺りを鹿島杜と呼ぶらしい。立ち入り禁止であるとのこと。
鹿島神社大玉串を納める木祠の横を通って鷲子山上神社着。
舗装道路を大那地側に下ると昔の参道の入口がある。現在の車道は近年できたもので、昔は徒歩で稲荷神社経由で山上神社に詣でていたようだ。黄門道路との表示があるので、かつて水戸光圀公もこの道を通って詣でたのである。ちょっと嬉しい発見だった。
鷲子山に滞在していた30分の間に急速に曇ってきたので帰り道を急ぐ。ほぼ一貫して緩い勾配の舗装道路を梅の香を楽しみながらMTBで快適に下る。植林地は見通しは悪いがチシマザサの藪漕ぎにくらべれば肉体的にも精神的にも楽。元々美しい静かな植林の中を歩くのが好きな性分。十分に楽しめた一日であった。