残雪期の川桁山(2007年4月)

年月日:    2007年4月4日(水)

行程: 観音寺林道(標高約670m)から歩行開始(6:30)〜小田峠(7:31)〜川桁山山頂(8:08-8:30)〜南峰(標高約1,370m)から南西尾根を下る(8:50)〜本来下るべき南尾根に復帰(9:44)〜観音寺林道終点に降下(10:13)〜車に帰着(10:41)

98歳で逝った祖父の告別式の日、徐々に雲がとれて姿を現した山々は標高1,000m以上で樹氷で白く見えた。告別式当日に栃木に戻るのは疲れるので翌4日も休暇をとってある。スパイク長靴が車に積んであるのでザックや帽子がなくとも川桁山くらい短時間でなんとかなりそう。今年は一度も残雪歩きをしていないので、4日早朝に晴れていれば樹氷を見に行こうと考えた。

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川桁山  4月3日 17:38


6時前に目が覚め、実家の2階から山々を確認。快晴・無風で磐梯山がくっきりと見えている。これはチャンス。あんパン2個とお茶一本だけポリ袋に入れて即でかけようとしたのであるが、車がバリバリに凍り付いていて出発までしばし時間を喰う。

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06:08


古い砂防堰堤までは林道に雪無し。小白津林道が分岐する先で雪が残っており、今年はその先に入り込んだ車はいない。よって、ここから歩いていく。雪上にある何日か前の足跡は、登山者ではなく岩魚釣り客のものであるらしい。今年は深いところまでは雪が締まっていないようだが、今朝の冷え込みで全く沈み込み無し。雪上はどこでも快適に歩ける。雪の量は昨年の5月4日と同じ程度で、ちょうど一ヶ月の差がある。いかに昨年の降雪量が多くて逆に今年の降雪量が少なかったかが判る。

川桁山の裏側に回りこんで標高900m辺りまで高度を上げるとようやく樹氷域に入った。快晴で陽射しが強いので山頂に到達するまで樹氷がもってくれるだろうか。昔の林道跡は小田峠の直下まで延びていないので、沢源頭から峠への詰めは急勾配の連続となり、スパイク長靴で朝方の締まった雪面を移動するのに少々緊張した。

小田峠のブナの樹氷が美しい。最低の目標は達成したので、後は行けるところまで行ってみる。川桁山の裏面(東側斜面)は全て雪が残っているので、あと2週間くらいは残雪歩きが楽しめそうだ。

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小田峠にて  07:30


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小田峠から見る川桁山東側  07:36


夏道がある尾根を真っ直ぐ登っていく。雲が出る前に登頂できそう。

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稜線直下   07:56


20数年前の残雪期に同じコースから初めて登ったときに山頂稜線雪庇を越えにくかったような記憶がある。今年の雪庇は例年より発達していないので乗越えるのは簡単。

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川桁山稜線と安達太良山   08:00


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稜線を北に辿って山頂へ   08:02


雪庇稜線をテクテク移動して山頂着。ここしばらく人が訪れた形跡はなかった。磐梯山はあいにく雲がかかっていたが、それ以外の山は全て見渡せる。

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磐梯山   08:07


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川桁山山頂から見る猪苗代湖   08:09


夏道の無い北端に移動すると桧原湖も見える。

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川桁山山頂から見る吾妻山・桧原湖方面   08:12


樹氷はまだ落ち始めていない。樹氷というよりむしろ白い花が満開の様。川桁山頂の樹氷を見るという子供の頃からの望みを、裏山感覚で普段着でポリ袋ひとつぶら下げた格好で達成するとは思わなかった。

三脚が無いので雪面を蹴破って雪の塊を積んで記念撮影。このとき気づいたのであるが、締まっているのは表面のほんの数cmのみで、内部はガサガサで固まっていない。温度が上昇すれば踏み抜けまくることを意味する。早めに退散すべし。雪の条件が予想以上に良かったので、帰りは稜線を南に辿って1,121m鞍部から東に下ることにする。30年前の春に高校の友人と共に山ノ神の尾根を登って1,121m鞍部から東に下った実績がある。特に危険箇所は無かったように記憶している。

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川桁山稜線を南へ辿る   08:33


南斜面は気温が上がり無風なのに樹氷がバラバラと落ち始めた。樹氷のシャワーの中を1,372mから南へに下る。1,372mピークから1,121m鞍部までは未踏区間。痩せている区間は藪が濃く、この時期でないと歩くのは難儀するであろう。

1,372mピーク南西の1,370m級ピークを下るとき判断を誤った。ブナに覆われた広い斜面で、1,121m鞍部が見えない。左側に観音寺川の谷を見下ろすように歩けば良いことは判っているはずなのに、ある場所のことを気にしていて南西の尾根に引き込まれた。1,370m級ピークの西側直下にはポッカリと樹木の生えない不思議な区域が存在し、麓からもはっきり見える。紅葉せず積雪期を除き緑色を保つので、チシマザサの海であろうと想像していた。その正体は予想していた通りで、雪崩落ちた場所にチシマザサが露出している。

南西尾根は勾配が緩くそのまま麓まで下れるような気がする。誘われるように尾根を下っていくといつの間にか左側に狭い谷が迫っていた。現在位置は1,121m鞍部の西側に下る谷の右岸で、三条の滝の直上らしい。この谷は急峻で普通の装備で下ることは不可能。この尾根の末端も急峻になっているはず。自分がここに来ることは一生無いと思っていたし、過去にこの一帯に下ってきた人間もおそらくいない。このまま下ることは自殺行為だ。やれやれ、想定外の300mの登り返し。予定より長く残雪を歩かされたのでジャケットを頭から被って日焼け防止。

1,121m鞍部からの下りは既に雪が緩みはじめて少々歩きにくい状態だった。あと1時間遅かったら踏み抜けまくって難儀したかもしれない。南に横移動して雪の固そうな尾根を下り、最後は広い谷を下って林道終点に抜けた。

山野・史跡探訪の備忘録