大川林道から男鹿山地1,486.7mピークへ(2007年4月)

年月日:   2007年4月14日(土)

行程:    林道ゲート前出発(08:16)〜大川林道・小渕沢線分岐(08:38)〜右岸支沢に架かる橋・林道消失地点(09:30)〜右岸支沢奥の尾根取り付き(10:30)〜矢沢・大川間尾根到達(11:07)〜1,486.7mピーク(12:03-12:35)〜大川林道に復帰(14:05)〜車に帰着(15:25)

遭遇した動物:   サル一匹

夜半過ぎに雨が降り出し朝方には止んで晴れるとの予報。早朝からの行動は無理だが、日中はスッキリ晴れるとのことなので今年最後の残雪歩きをすることにした。行く先候補は昨年と同じ大倉山。条件次第では山中泊も考える。

現地に向かううちにどんどん青空が広がり山々が姿を現すが、目的地の那珂川源流地帯はどんよりとした雲がかかったままでとれそうにない。矢沢入口、大川林道ゲート前、林道・七千山線入口にはいずれも釣り人の車がある。この人達、まだ雨が降っているうちに出発したのではないだろうか。こちらは山登りが目的だから大倉山を眺めてしばらく様子見。大倉山を越えていく雲の流れがとても速い。この瞬間稜線にいたら吹き飛ばされるんじゃないか?本日は北風が強いとの予報であるので、もし晴れ上がったとしても県境稜線は風が強く快適に歩けないであろうと考え、結局大倉山に登るのは中止。

せっかく来たのだから大川林道を歩いてみる。歩き始めてすぐに林道を戻ってくるウェーダー履いた2人組に遭う。風がやや強いせいか、それとも好ポイントが少ないせいか、早々と大川を見切ったらしい。大川は大石ゴロゴロではなく岩盤に小砂利の組み合わせの渓流なので、渓流魚が定位できる場所が極端に少ない。おまけに幾つかの堰堤のおかげでゴーロの区間が多い。矢沢同様、釣り場としては魅力がない。ふてぶてしいオスザルが一匹いたのでナメられないように威嚇。

林道が荒れていないのは予想外であった。入口にしっかりしたバリケードがあるものの、真新しい轍がある。どうやら大川林道・小渕沢線でなにやら工事中らしい。

画像
小渕沢線分岐点  08:38


大川林道本線   08:46

直進する大川林道本線も路面の荒れはない。左岸側の小さな沢に真新しい砂防堰堤がある。道がきれいに維持されているのはこの砂防堰堤建設のためだったようだ。但し冬の間に発生した小規模な土砂崩れで途中で車の通行は不可能になっている。路面の水溜まりには産み付けられたばかりのカエルの卵があった。

画像
大川林道本線  08:46
画像
カエルの卵  08:42


入口から約3kmの地点で若い釣り人2名発見。この辺りでもポイントはほとんどなく釣果は期待できないであろう。日の当たらない右岸側の道路には数十cm程度の厚みで雪が残っており、今朝の雨で表面の締まりがなく5〜10p程度沈み込むが、歩くことは可能。

画像
大川林道  08:59
画像
大川林道  09:29


入口から約5kmで名の無い橋を渡ったところで林道が消える。林道があったと思しき場所には大川本流が流れており、川の真ん中に路肩補強の石積みが残っている。ゴーロの左岸側にあったはずの流れが変わり右岸側にあった林道を削ってしまったのだ。地図を見ると、名の無い橋は右岸側から流れ込む支沢に架かっている。つまり、以前は橋の下流にあったはずの合流点が現在は橋の上流に移り、支流の橋であったものが本流の橋になっている。

画像
大川林道流失地点  09:36
画像
大川右岸側支流


写真の黄色の標識の近くで右岸に渡渉できる。林道が消えているのは合流点付近だけなので、渡渉して林道歩きを続行しようとした。ところが、路肩を補強していた木組みが朽ち落ちて進めなくなっている場所がある。おまけに目の前で崖が崩れて大きな石が落下してきた。大川林道の中間地点以遠は危険地帯のようなので、林道歩きはここで中止。

まだ10時前なのにやることを失ってゴーロで思案。右岸側の支沢は広くて奥行きもありそうだ。奥に高い山が聳えている。あれが1,486.7mピークか。等高線の形状がとても美しいので興味を抱き地形図でルートを検討したことはあるが、どう登れば良いのか判断がつかなかった。せっかくここまで来たのに何もしないのはもったいない。良い機会なのでダメ元で支沢に進入してみる。

画像
大川右岸側支流の堰堤(帰りに撮影)  14:03
画像
大川右岸側支流・堰堤奥の様子  10:19


最初の関門である堰堤は右岸側から越えるが、岩が脆く足場がほとんどない。帰りに再びここを通ることを考えるとちょっと気が重い。堰堤の奥は広いゴーロで雰囲気が宜しい。水量はあまり多くないし、ゴルジュも無いので進行の妨げになるものはない。中間地点からは雪渓歩きとなる。源頭部を詰めて標高1,220mの鞍部に上がろうかと思ったが、勾配が急すぎて無理。その左側斜面を見上げると取り付ける場所があり、藪が薄くて勾配が比較的緩く、雪が消えているので登っていけそうである。青空が消え1,486.7mピーク頂上もガスがかかっているようで雰囲気悪し。天候が好転することを期待して続行。

稜線に上がるまではやや急勾配。残雪の上にはクマの足跡有り。稜線部は笹薮が無く勾配も緩く楽に辿れる。アスナロの幼樹が青々とした区間も歩きにくくない。

画像
アスナロ幼樹に覆われた枝尾根  10:49


標高1,150mから急勾配になり、危険というほどではないが左側(東側)に迫る谷が怖い(下りはもっと怖い)。雪が残っていたら歩くのは困難かもしれない。最後は稜線を外れて勾配の緩い残雪帯を横切り、矢沢・大川間尾根の標高約1,250mの地点に抜けた。矢沢側がルンゼ状で樹木が無く大佐飛山方面が見える。矢沢最深部には入ったことがなく、男鹿岳に登ったときもガスがかかっていて見えなかったので、矢沢の奥部が覗けたのは嬉しい。

稜線部は薄いチシマザサとアスナロの藪にシャクナゲが少々混じる。稜線部も歩けるが、少し大川側(北側)にずれれば藪の無い場所のカモシカ道を利用できる。

画像
尾根上の様子(矢沢側)  11:18


鞍部からの高度差約250mの登りは9割方矢沢側(南側)に発達している雪庇を利用できる。勾配がけっこうきついので、固く締まっていれば滑落する可能性があるが、今朝の降雨のおかげで適度な沈み込みがあって安心。2004年の厳冬期にナスノガルーダ氏と常吉氏のパーティがこの尾根を深山ダムから男鹿岳まで縦走しているが、そのときの苦労は今回の比ではなかったことだろう。

登っていく間一貫して那須・大倉山方面の眺めが良く、疲れを忘れさせてくれる。残雪の急登を抜けて勾配の緩やかなブナに覆われた山頂部を西に移動。

画像
1,486.7mピーク山頂部  12:03


山頂からの眺めも秀逸。広い山頂を移動すればほぼ360度見渡せる。特に大佐飛山や男鹿岳方面の眺めが良い。

画像
福島・栃木県境尾根(黒滝股山 〜 大倉山)  12:05


男鹿岳に行くには一旦250m以上下って鞍部から550mの登りとなる。尾根の雪庇がやや細いようだが問題ないであろう。林道歩きが目的で山中泊前提の縦走用の装備を所持していないため今回はここから引き返す。

画像
山頂にて(背景は男鹿岳)   12:26


山頂の雪庇の陰に大量の黒いすすのようなものを発見。大気汚染物質かと思いつまんでみると、感触が何かおかしい。指も汚れない。よく見ると体長1.5mm程度の黒いトビムシのような虫が集結しているのであった。周囲の雪面にもパラパラと分散してうごめいている。

画像
雪虫の集団  12:28
画像


あいにく山頂滞在時に陰ってしまい、西風にさらされて少々寒い。雲間から太陽が覗いて山頂だけが照らされた時には、周囲の暗い山肌をバックにブナがダケカンバのように映えてきれいだ。30分ほど滞在して同じルートで下山開始。帰りは1,486.7mピークの下りで部分的に尻セードで楽できる。

画像
大倉山 〜 那須岳(下山途上で撮影)  12:44


午後になって徐々に雲の位置が高くなり、大佐飛山も姿を現した。

画像
矢沢・大川間尾根から見る大佐飛山   13:05(下山時)


残雪帯では自分の足跡をトレースできるから安心であるが、雪の無い尾根の下りでは慎重な見極めが要求される。標高1,200m付近の急勾配の尾根選択がやや難しい。

無事に沢底に下り雪面を歩いて戻る途上で1996年製のポカリスェットのアルミ缶を発見。雪面にあったのだから尾根から雪に流されて転がり落ちてきたということか?目的は不明だが過去にこの谷に入り込んだ人がいる。最後の堰堤の巻きも無事クリアして大川林道に復帰。釣り人は皆帰ったようで、帰りは誰にも遇わなかった。

終日天候が回復することは無く、アズマイチゲも花を閉じたまま。

画像
アズマイチゲ(木ノ俣地蔵の駐車場にて)  15:45


山野・史跡探訪の備忘録