中の大倉尾根〜大峠〜姥ヶ平周遊(那須巡りNo.5)(2007年9月)

年月日:      2007年9月8日

目的:        エゾリンドウ観賞

遭遇した動物:  サル2匹、ヘビ2匹

植物にだけ興味ある方はこちらにどうぞ。

行程: 北温泉入口駐車場(06:20)〜1,417.1mポイント(07:20-07:30)〜清水平分岐(08:48)〜三本槍岳(09:18)〜大峠(10:37)〜峠沢渡渉(10:58)〜中ノ沢渡渉(11:11)〜赤岩沢渡渉(11:21)〜三斗小屋温泉(11:54)〜沼原分岐(12:15)〜御沢(12:34)〜姥ヶ平西側分岐(13:01)〜ひょうたん池(13:17-13:38)〜牛ヶ首(14:06)〜峰の茶屋(14:24)〜峠の茶屋駐車場(14:48)〜(雨宿り10分)〜大丸温泉(15:40)〜車に帰着(16:13)

台風9号の影響で栃木県の河川は泥水が溢れんばかりにゴンゴン流れている。自分も物好きで金曜日の夕方に会社帰りに那珂川の様子を見にいった。烏山の境橋から見た那珂川は大きなうねりを伴なって普段の倍以上の勢いで流れており恐怖を感じる。アユはまだ抱卵が始まったばかりなので、下らずに浅場のヘチで必死に耐えているのだろう。投網を打っている連中がたくさんいた。増水時は投網のチャンスなのだが、増水真っ只中で河川に近づく事自体控える状況で川に浸かっているのだからあきれる。一気に6mも水位が上昇したので、減水したときどんな流れに変貌しているか楽しみだ。簗が全部ぶっ壊れてくれれば来年も豊漁が期待できる。このまま大水がなければ2週間後に今シーズン最後のアユ釣りができるかもしれない。

さて、釣りのことを考える必要がなくなったので、今週は久々に本格的な山歩き。新聞によると那須の峰の茶屋付近のエゾリンドウが見頃を迎えているらしい。実は昨年も同じ情報を得たのだが、人を避けて黒尾谷岳経由で南月山に行ってみたらエゾリンドウの個体が少なく肩透かしをくらった。混雑する峰の茶屋と朝日岳の間の鎖場は歩きたくないので、今度は中の大倉尾根を歩いてみることにする。清水平に達した後の行程は全く考えていない。条件次第でどうするか考えることとする。

歩き始めた直後にデジカメをアスファルト地面に落とした。ケースが歪んでモニターがチラついていたが、ケースの隙間を元に戻したら幸いなことに正常に動作した。こんなことがしょっちゅうだから高級一眼レフなんて一生要らない。

北温泉の余笹川に架かる粗末な橋は流されずに残っていた。台風通過の翌日ではあるがさほど水量は多くない。登山道には林から滲み出た水がチョロチョロ流れている。風がなく湿度が高い。今日は暑くなるとのことでつらい山歩きになりそうだ。樹林帯の登山道沿いに見られる花は丈の低いアキノキリンソウのみ。1,417.1mポイントからチップの敷かれた道を300m辿ってMt.ジーンズスキー場のリフトまで行ってみたが何も無し。すぐに引き返して中の大倉尾根を進む。

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茶臼岳と朝日岳が頭を出す。   07:45


中の大倉山への登りで初めてエゾリンドウが現れた。最初はポツポツ程度であったが、樹木の丈が低くなり明るくなるにつれて密度が増す。登山道脇に種撒きでもしたみたいに途切れることなく生えている。これだけ見事なエゾリンドウを見ることができたのだから朝日岳に行く必要はなくなった。

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エゾリンドウ
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オヤマリンドウ?
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中の大倉尾根は登山道がなかったら潅木とチシマザサ藪に覆われて草花などまったく期待できないような場所だ。登山道によって空間が開けたことによってリンドウが生育できる。決して意図したものではないが人為的にもたらされた植生なのである。

エゾリンドウが茎頂以外にも花がつき平開するのに対し、オヤマリンドウはエゾリンドウより高地まで分布し、茎頂にしか花が付かずほとんど開かないそうである。ということは右側の写真のリンドウはオヤマリンドウなのか?紛らわしいことにエゾリンドウの近縁種に高地性のエゾオヤマリンドウなる種があって、オヤマリンドウとの形態的な差は花が開くか否かだけ。天気が悪くて花が開花していなかったら自分には識別できない。此処に在るのはどっちなんだよ。

清水平に近づくとエゾリンドウの数が少なくなる。クロマメノキの実をつまみながら朝日岳を眺めて休憩。紅葉の時期には紅く色づいたツツジ類の潅木と緑のチシマザサが美しいコントラストを見せる場所。

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清水平東端からみた朝日岳と熊見曽根  08:31


朝は快晴であったものの水蒸気が上昇してガスがかかり始めた。天候が悪化する気配はないし、体調も良いので、この時点で大峠に下り三斗小屋温泉を経由して牛ヶ首へ回ることを決定。三本槍岳到着時はガスで全く景色が見えなかったが、大峠に下る途中でガスが消え始めて大倉・三倉や旭岳が姿を現した。ガスが消えるのを待っていたので下りにだいぶ時間がかかった。本日、すっきりと景色が見えたのはほんの1時間程度だったようだ。

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旭岳  10:00
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大倉山・三倉山方面  10:01


個人的には、那須の一番の魅力は笹薮の美しさにあると思っている。今回も笹原が白く輝いていた。右奥が三本槍岳山頂である。

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日光を反射して光る笹の斜面  10:10


大峠への下りは草花が比較的多い。エゾリンドウよりもウメバチソウが目立つ。花期が長いハクサンフウロはまだたくさん咲いている。白い花のシオガマギクも見かけた。

大峠から三斗小屋温泉に向かうには途中3本の沢を渡渉しなければならない。ただでさえ登山道が川みたいになっており、細い沢を何度も跨ぐ。以前水量が多いときに会津中街道を辿ったことがあるので、ここが本日のコースで最大の難所であることは百も承知済み。大峠に向けて下るとき沢音が尾根上まで響いていたのが少し気になるが、今回辿るのは中ノ沢と赤岩沢の合流点よりも上だから水量はたいしたことあるまい。三本槍岳にいた先行者もこのコースを歩いていったようだ。

源流部は水位の下がるのが早い。台風通過の翌日で水量大目だが、峠沢は靴を濡らさずになんとか渡渉可能。峠沢渡渉後すぐに会津中街道(三斗小屋宿跡方面)の分岐に至る。

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会津中街道の分岐  11:00


今回は三斗小屋温泉方面へ向かう。この辺りでサル2匹と遭遇。

中ノ沢も楽に渡渉できるのではと期待したが甘かった。水量が多く水を被っていない石と石の間隔が開きすぎていて跳び石はできない。こんなとき上下に適当な渡渉点を探すのだが、あいにく中ノ沢の左岸が崖になっていて、渡れたとしても登山道に出られない。靴を脱いで渡るのも危険なので洗濯かねて靴履いたまま腿まで浸かって渡渉。最後の赤岩沢は靴を濡らさずに渡渉可能。既に濡れてしまっているのであまり意味はないのだが、意地で石の上を渡る。

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中ノ沢  11:11


三斗小屋温泉方面に向かうのは今回が初めて。会津中街道は道路勾配を極力小さくする設計だが、こちらはただの山道で渡渉するたびに尾根を跨ぐので起伏が大きい。中ノ沢か赤岩沢か忘れたが右岸の勾配が急で、ロープを這わした箇所がある。赤岩沢の左岸は崖のバンドを伝って登る。

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赤岩沢  11:21


最後は三斗小屋温泉宿に向けて百数十m登らなければならない。しかも大峠から三斗小屋温泉まで全くの無風で、熱中症気味。ミンミンゼミも鳴いて完全に真夏の雰囲気。

三斗小屋温泉で飲み水を補給して峰の茶屋方面へ向かう。このコースを歩くのも初めて。起伏が少なく歩き易い道である。沼原分岐で沼原方面へ向かう。こちらも良く整備されている。道のど真ん中でチタケを一本採取。

御沢には2つの沢が合流する場所に立派な橋が架かっている。三斗小屋温泉から姥ヶ平に至るまでのやや単調なコースにおける唯一のアクセントである。

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御沢渡渉点   12:34


姥ヶ平西側分岐から牛ヶ首方面に登る。木道を辿ってひょうたん池に行ってみたが、あまり良い景色ではない。ホツツジもそろそろ花期の終わりである。この場所は紅葉の時期に訪れるのが良いのであろう。

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姥ヶ平から見る茶臼岳  13:17
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姥ヶ平   13:40
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姥ヶ平・ひょうたん池分岐にある姥神様  13:36


西川町石碑石仏資料のページに拠ると、「姥神はもともとは三途の川のほとりで死者の衣をはぐ鬼女で脱衣婆(だつえば)といわれる。剥いだ衣をそばの衣領樹の枝にかけると、その枝のしなり具合で死者の罪業が分かることになっている。」とのこと。このため、民間信仰の対象となり姥神様となったらしい。どうりで、吾妻山の姥ヶ原や那須の姥ヶ平といった三途の川を連想させるような場所に「姥」の名がついている訳だ。顔が怖くて当然か。

姥ヶ平ではシラタマノキやヒカゲノカズラが目立った。空はどんよりと曇ってしまい茶臼岳にガスがかかっている。景色が見えないならばピークを極める意味無し。山嫌いの女房といつかお手軽ハイクに来ることもあるかもしれないと思い、茶臼岳はパス。無限地獄の下側の道を歩いて峰の茶屋経由で駐車場に下山。

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峰の茶屋   14:24


駐車場を出てすぐのところに閉鎖された舗装車道がある。明礬沢右岸沿いに下っていくようなので、行き止まりになることはあるまいと思い進入。1kmほど下るとオフロード車が3台停まっていて、明礬沢の底でなにやら作業しているようだ。蒸気が大量に噴出しているので、明礬沢の中に源泉があるらしい。台風通過後なので修復作業をしているのであろう。

さらに道を下っていくと別の未舗装道と交差する。この道のど真ん中には一畳程度の広さの低い屋根を持つ構造物がある。この道を辿れば車道に出られるように思えたが、歩いてきた道の行く先に興味がありそのまま直進。草ぼうぼうでだんだん怪しげな感じになってきたが、舗装された区間もあるので絶対に通り抜けできると思った。ところがカーブを曲がったところで道が消えてしまう。周囲にある石積みは大きな排水溝のようであり、辿れない。チクチクするアザミ藪中の踏み跡を辿ってさらに下ってみたが、完全に行き止まりとなった。こんなに長い距離を下って行き止まりになるなんて、建設目的はなんだったのだろうか。

明礬沢寄りに藪こぎしながら尾根を下れば北温泉の駐車場に戻れるような気がするが距離が長そう。車道を走るバイクの音が聞こえてくるので車道からは1kmも離れていないであろう。しかし、詳細な地形図を携行していないので下手に藪漕ぎしたらどうなるか判らん。曇っていて雰囲気悪いし、失敗したら時間切れになる。数分かけて交差点に戻り、明礬沢から離れる方向に進んでみた。この道には源泉から導湯する管が埋めてあり、管理道として手入れされているのであった。何箇所かある道上の構造物は導管をチェックするためのものらしい。この道を辿れば温泉に抜けるということ。温泉の建物が眼下に見える場所まで順調に下ってくると、空が暗くなって雨が降り出した。本日は合羽を持ってこなかった。どうせ衣服は汗でぐしょぐしょなので雨に濡れてもどうということはないのだが、観光地で車が多いので目立ちたくない。ツェルトを合羽代わりにできないかなどと思案しながらしばらくミズナラの木の下で雨宿り。

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大丸温泉の源泉管理道  15:29
あまりやる人はいないと思うが、峠の茶屋駐車場から大丸温泉まで徒歩で下るならば、車道ではなくこちらを利用するのも一興。


幸い10分程度で雨が上がり、歩きを再開。大丸温泉に抜け、車道を歩いて北温泉入口の駐車場に帰着。

個人的に印象に残った植物は以下の通り。

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クロマメノキ  08:33
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ガンコウラン  08:39
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トモエシオガマ  09:32
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コバノコゴメグサ  10:14
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ウメバチソウ  10:16
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?  11:01
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ベニナギナタタケ?  12:58
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シラタマノキ  13:15
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エゾリンドウ  13:18
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ヒカゲノカズラ  13:45
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山野・史跡探訪の備忘録