木ノ芽沢水源(八方牧場外縁)散策(2007年11月)

年月日:   2007年11月10日(土)

行程:   下塩原矢板線・金精林道入口(11:52)〜沼原線鉄塔巡視路入口(12:02)〜西トンボ沢(12:06)〜58号鉄塔(12:21−12:30)〜東トンボ沢(12:42)〜57号鉄塔(12:47)〜56号鉄塔への巡視路分岐(12:53)〜防災行政無線中継局(13:14)〜八方湖(13:20)〜嶽山箒根神社大鳥居(13:25)〜八方牧場外縁道路に入る(13:35)〜衛生管理施設(14:11)〜土塁に沿って西進〜カラマツ植林の尾根下り〜西トンボ沢水源の沢から作業道を辿る〜沼原線鉄塔巡視路入口(15:21)〜車に帰着(15:33)

関連記録@ 八方ヶ原(高原山)越え街道跡の探索その1(2005年11月)
関連記録A 2007-06-23 木ノ芽沢遡行&八方ヶ原越え街道跡探索記録その2

11月は落葉してすっきりした山腹を散策する好機である。15日から狩猟解禁なので、この週末が今季安心して高原山を歩ける最後の機会となる。あいにく雨だが、しとしと雨が降る中の巡視路歩きも悪くない。6月に木ノ芽沢左岸尾根で見た巡視路が金精林道まで続いているようなので、これを辿って西トンボ沢・東トンボ沢を横切り、巡視路の終点と明治時代に陸軍が建設した東山軍馬牧場の土塁の様子を確認してみる。陸軍用地の標柱でも見つかれば儲けもの。

下塩原矢板線・金精林道入口のゲートは閉じられていた。入口の広い道路脇に車を置いた。小雨が降っているので、スパイク長靴を履き合羽を着込んで傘をさして歩いていく。山登りではなく山下りのスタートだ。路面は深く抉れている場所があり、一般車両は走行不能であろう。

林道を10分程度下ると左側に巡視路入口がある。入口には黄色いポールではなく電源開発が設置した小さな案内標識がある。

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金精林道入口  11:52


起点の標高が最も高く、終点まで一本調子で下っていく行き止まりの林道である。

沼原線巡視路入口  12:02

明瞭な巡視路が右奥へ、古い作業道が左奥に続く(帰りは偶然に左の作業道を辿ってこの場所に戻ってきた。)。

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金精林道入口  12:02


巡視路は滑り止めが一切設置されていないがスパイク長靴のおかげで滑ることはなく歩き易い。傘をさしたまま快適な散策である。ヒノキが植林された斜面の踏み跡を下ると、西トンボ沢の2つの支流の合流点に至る。

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西トンボ沢左俣  12:06
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西トンボ沢右俣  12:09


渡渉後に初めての登りとなる。巡視路は広い尾根を横切る感じで進む。残り紅葉が鮮やかだ。

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その上方に向かう別の古い窪みが存在するが現役ではない。巡視路は数十m登って58号鉄塔に到着。雨はほぼ止んでガスも薄まり、金精林道傍の59号鉄塔がぼんやりと見える。沼原線の鉄塔周りはいずれも樹木が払われてミヤコザサ原になっており見晴らしが良いところだがガスがかかった状態も悪くない。

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58号鉄塔  12:21
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58号鉄塔から見る57号鉄塔方面  12:31


 

10分程度休憩して先に向かう。58号鉄塔から少し進むと左側に土塁が現れ、巡視路は土塁の外側に沿うように続く。ここの土塁には有刺鉄線が無いので、大正時代に東山軍馬育成牧場が廃止されて以降用いられたことがない区域と思われる。エアリアマップしか持っていないので正確な位置は把握できないが、八方牧場南縁の三角点のある尾根にいると思われた。

巡視路は土塁から逸れて下り気味になり、尾根上の樹木の無いミヤコザサ原をかすめてから東トンボ沢に降下する。渡渉点の上流側はナメ、下流側は岩ゴツゴツ。

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東トンボ沢下流側  12:42
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東トンボ沢上流側  


57号鉄塔は渡渉点から近い。植林地をひと登りで街道跡を横切り、尾根上の57号鉄塔に至る。高原山の沼原線鉄塔の周りはいずれも美しいミヤコザサ原になっていて見晴らしが良い。

57号鉄塔から先の巡視路は尾根上に在る。良く手入れされており、廃れた遊歩道よりはるかに歩き易い。警戒音を発さずにシカの群れが走り去った。

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57号鉄塔  12:47


巡視路の分岐点があり、56号線鉄塔に向かう巡視路は唐滝沢側に下る。唐滝沢側の傾斜が急だし、56号線鉄塔まで行くと最後は沼代シダブ線を歩いて戻ってくることになるのでかなり遠回りになりそう。ここはひとまず尾根上の巡視路を辿る。

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尾根上の巡視路  12:51
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大きなヌタ場  13:04


左側(木ノ芽沢側)に土塁が現れる。この土塁には有刺鉄線が残っているので、近年まで八方牧場として管理されていた場所である(現在の八方牧場の新しい柵はその内側にある。)。ということは今辿っている巡視路は元々は八方牧場(旧東山軍馬牧場)の管理道であった訳で、その内側に在る街道跡は牧場建設以前に建設されたことになろう。

尾根の最高点には旧塩原町の防災無線の中継局がある。八方牧場外縁に沿う巡視路を下りると八方湖に至った。

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ウリハダカエデ  13:15
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林道・沼代シダブ線への出口   13:20


ここまで来たら久しぶりに大鳥居に詣でてこよう。大鳥居の近くに大穴があり大量にゴミが遺棄されている。罰当たりめ。近くでマユミを見つけてちょっぴり慰められる。

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嶽山箒根神社の大鳥居  13:25
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マユミ  13:31


帰りは八方牧場の新しい柵外縁の舗装道路をぐるりと時計回りに歩くことにする。八方牧場の内部は泉畜産組合名で立入り禁止の標示があるが、外縁道路は開放状態にある。ありがたや。雨が止みひんやりとした空気が気持ちよい。紅葉はもうほとんど残っておらず、木々に残る赤い実が目立つ。

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カマツカ  13:56


最低標高点となる東トンボ沢を過ぎて高度約80mの登りで牧場の衛生管理施設に着く。学校平を経由して戻るのが最も楽なのだが、雨の中歩いている姿を行楽客に見られるのが嫌なので、道路を離れて尾根を下り巡視路に戻ることにする。せっかく来たのだから6月に見つけた1,049.6m三角点を再確認しようとしたものの、20分ほどウロウロしたのに見つけることができなかった。地形図を持たないと見つけるのは困難だ。再び雨が降り出したのであきらめて下り開始。

有刺鉄線を伴なう土塁に沿って西に向かえば進行方向左側に巡視路が現れると思っていたのだが、何か様子がおかしい。土塁は尾根を下らずに沢筋を何度も跨ぎ高度を下げる気配がないのだ。そのうちに土塁の内側にベンチが見える場所に至った。その横には学校平のレストハウスも見える。既に下塩原矢板線近くまで来ていることが判ったので、高度を維持しながら斜面を延々と横切ってから、手入れされていないカラマツ林の尾根を下った。シカの警戒音が響き渡る。

尾根の傾斜が幾分きつくなると下方に暗いヒノキ林が現れた。

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緑の砂漠  15:14
写真では明るく見えるが実際はもっと暗い。


下生えの全く育たない針葉樹の植林は山の健康状態が維持できないので「緑の砂漠」と形容される。ガスが漂うヒノキ林はちょっと不気味だ。ヒノキ林の下部末端は西トンボ沢支流のさらに支沢が合流する場所である。沢を渡り右岸にある作業道跡を辿った。この作業道は沢に沿って下ることはなく、基本的に登り調子で尾根を跨いでいく。少し下り調子になってミヤコザサに覆われた踏み跡を辿ると金精林道に飛び出た。場所は巡視路の入口である。巡視路に入るときに気になった左側の窪みを戻ってきた訳だ。

巡視路沿いの土塁は1,049.6m三角点から南東方向に尾根を下った方向にある。地形図を持っていれば素直に南東方向に下ったと思う。地図無しにつき、八方牧場外縁の有刺鉄線を伴なう土塁が巡視路沿いの土塁に連続すると思い込んで土塁まかせに歩いてみたのであるが、意外な結果となった。この手の予期せぬことがあるから思いつきの地図無し散策は面白い。

巡視路入口の近くに八方ヶ原−山縣農場ハイキングコースの跡がある。完全な廃道状態で、今では赤い吸殻入れだけが入口に残る。数年前にかろうじて立っていた標識はミヤコザサの中に倒れていた。

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八方ヶ原−山縣農場ハイキングコースの道標   15:23


かつて人が思いをこめて作ったものが名も形もとどめることなく廃れて消えていく。人々の記憶からも消える。せめて自分が健在であるうちは記録に残してあげよう。

山野・史跡探訪の備忘録