龍王峡自然研究路〜恋路沢ハイキングコース〜花の山遊歩道(2008年1月)

年月日: 2008.01.19(土)

行程: 龍王峡駅駐車場(09:41)〜虹見橋(09:49)〜むささび橋(10:06)〜転落したトヨタカリーナ(10:46)〜川治第二発電所(10:57)〜浜子橋(11:07)〜逆川林道ゲート(11:15)〜岩カブト沢林道分岐(11:47)〜恋路沢林道(11:51)〜一本杉(13:11)〜920m級ピーク(13:28)〜一本杉復帰(13:43)〜丸山・852mピーク(13:52)〜ロープウェイ山頂駅(14:07)〜展望コース経由でロープウェイ麓駅(14:41)〜鬼怒岩橋(14:50)〜龍王峡駅駐車場に帰着(15:33)

これまで道無き場所を彷徨い歩くことが多かったため、近場に幾つも未訪の秀逸なハイキングコースが残っている。今年はハイキングコース主体に歩いてみようかな。

20日に雪の予報なので19日(土)に体を動かすことにした。行先は昨年秋に知った恋路沢ハイキングコース。龍王峡の自然探求路も丸山の遊歩道(花の山遊歩道)も歩いたことがないので、これらをつなげて周回しようという計画である。龍王峡の自然探求路と恋路沢ハイキングコースの関係を知らないものの、両者は当然接続していると決め付けて出発。万が一接続していなくてもなんとかなるわい。ハイキングコース主体の散策につき地形図は準備せず。

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龍王峡自然研究路
拡大図 (1/3)、  (2/3)、  (3/3)


本日は冷え込みが厳しかったので、気温が上がるのを待って遅めに出発。寒いせいなのか龍王峡の駐車場に車は数えるほどしかない。長距離を歩くのでジョギングシューズを履いていく。登山靴も携行し必要になったら履き替えるつもり。

鳥居をくぐって遊歩道を下り虹見橋へ。16年前、子供をだっこして眺めたことがあるのだが、その時に見た光景は記憶から完全に消えている。鬼怒川上流の温泉成分の影響なのだろうか、鬼怒川の水は透明度が低くエメラルドグリーンである。

虹見橋の下流側


橋を渡って右岸側の遊歩道を歩くのは今回が初めて。岩ゴツゴツで細かなアップダウンがあって結構良い運動になる。山肌は笹が無くスッキリしている。意外に変化に富んでいて、「底なし沼」なる沼地もある。モリアオガエルが産卵するのだという。周囲は山から染み出る水が凍って氷柱が垂れ下がっていた。

右岸の展望岩から見る虹見橋方面


むささび橋を渡って左岸に移る(虹見橋から0.7km、白岩まで1.3km)。

むささび橋上流側  10:07
むささび橋下流側


白岩に至るまで「大観」、「五光岩」、「兎はね」、「かめ穴」などの見所が並ぶ。何箇所かに地質の説明があるので退屈しない。簡単にまとめると、「この辺りの岩盤は2200万年前の火山灰が海底に堆積してできた緑色凝灰岩と噴出した溶岩が急に冷え固まった流紋岩から成り、地表近くまで上昇したマグマがゆっくり冷え固まった閃緑岩などの岩脈が貫入している。」ということらしい。

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虹見橋以降は大観の近くで黒い犬を連れた男性とすれ違っただけ。国道121号線を車で通ると時々白岩のバス停留所でハイカーを見かけることがあるが、交通が不便なのでこちらまで足を伸ばす観光客は少ないと思われる。

白岩と呼ばれる景勝地があるものと期待して白岩半島をぐるりと回ってみたが、白岩についての説明はなく、大きく蛇行する鬼怒川の河川敷きが白く輝いているだけ。半島の付け根と川治第二発電所の間で、国道121号線から落っこちたトヨタのカリーナがひっくり返っている。

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事故車  10:46


川治第二発電所からは舗装道路を歩いても良いし、その下側の国有林管理道を歩いても良い。どちらを進んでも浜子橋に至る。浜子橋はグレーチングなので車の通行はできない。中央にベニヤ板が敷かれてグレーチングの状態が見えないのでちょっと不安を感じてしまう。

浜子橋  11:07
浜子橋上流側


遊歩道は右斜めに向かい馬背場沢の橋の近くで向きを変えて逆川の舗装林道に接続する。舗装林道に接続する前に川治温泉方面に向かう渓流散策コース(全長700m)が分岐している。舗装道路を歩いて川治温泉に抜けても良い。

舗装林道接続点の法面に恋路沢ハイキングコースの道標有り。ゲートを抜けて逆川沿いに進む。逆川は鬼怒川合流点の約300m上流に落差の大きな滝を持つ。いや、持っていたというのが正しい。何故か、滝を含む全長200m程度の区間がガチガチにコンクリートで固められてしまっている。

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逆川のコンクリート化された滝  11:20


巨大な擁壁が出現する。川治ダム(八汐湖)建設に使用した岩石の採取跡であるらしい。洞門を2つ抜ける辺りが少し陰気だが、逆川の谷は南から北に開いているので概ね陽光を浴びて明るい場所だ。一見伐採地が広がるただの林道であるが、一応ハイキングコースとして標示があるので迷うことはない。岩兜沢林道分岐点を過ぎ、さらに進むと恋路沢林道分岐点に至る。ここで左側の恋路沢林道に進む。風も生き物の気配もなく静か。ハンターのものと思われる車の轍が残っていた。

恋路沢林道  11:54


恋路沢にはヤマビルがいるという噂がある。よって恋路沢沿いの地質と植生を見るのを楽しみにしてきた。山の上方の斜面は笹がなくすっきりしているが、林道沿いはミヤコザサやスズタケが生えるごく普通の植生でヤマビルが住むようには見えない。笹の生える場所にはヤマビルはいないという自身の仮説は間違いなのだろうか?

最初の分岐点で林道は沢から離れ左斜めに登っていく。周囲に笹が見当たらなくなる辺りで林道路面の色が変わる。法面に露出しているのは緑色凝灰岩でも深成岩でもない白い泥岩状の岩だ。期待していた通り、鬼怒川東の西前高原と同じ地質のようだ。恋路沢そのものにヤマビルがいるのかどうか不明だが、少なくとも笹が生えていない領域にはいそうな感じがする。

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雪面にある足跡は小型の野獣のものだけ。笹が無いので今の時期シカはいないようだ。ヤマビルがいるのだから緑の季節にはシカが訪れるのかもしれない。

林道は稜線近くまで上がって尾根の西側を南下する。周囲の景色は良く見えるが、路肩の樹木が茂って写真撮影に向く場所は皆無。林道の荒れは少なく一本杉までほとんどアップダウン無しで楽に歩ける。林道上の積雪は深くても数cm。霜柱に靴が沈み込むものの、気温が低くて融けないので靴が濡れずに済んだ。

一本杉  13:11


雪の上にはハイカーの足跡が多数残されていた。一本杉から真っ直ぐ鬼怒川温泉に下るルートも歩ける状態にあるようだ。

たいして景色が良い場所ではない。この辺りはヤマビルが多いはずなので、紅葉の時期以外は訪れる価値は低いと思う。

林道はさらに南下するが一本杉から先は用いられていない。南側にあるピークが気になったので登ってみることにした。50m程度林道を南に進むと尾根に上がりやすい場所がある。他にも物好きがいるもので、目印があって登り口が踏まれて荒れている。尾根に藪はなくミズナラ・ブナに覆われ、稜線部にだけヒノキが生えている。自然の植生とは思えないのだが、こんな部分的な植林をするものだろうか。山頂は主図根があるだけ。梢越しに日光や月山を眺めて戻った。一本杉からロープウェイ駅方面に向かう。

丸山の植生  13:44
尾根の東側(鬼怒川側)は基本的にこんな感じ。


以前は笹の無いスッキリした林が魅力的に思えたのだが、こういう植生がヤマビル生息地であることを知ってしまうと薄気味悪い。

分岐点で行き止まりと標示されている左手の道を進んでみた。滑落したらなかなか止まりそうにないが、道そのものは起伏が全く無く歩き易い。勾配の緩いところから適当に高みを目指すと丸山の山頂に至った。ここも三角点はない。先ほど登った山よりさらにつまらないピークである(帰宅して地図を見たら近くに893.8mと963.9mの三角点ピークがあった。いつか機会があったら訪れてみたい。)。

温泉神社を経てロープウェイ駅着。ここも16年前に来たことがあるのだが神社の記憶がない。高原山を見た記憶もない。鬼怒川温泉郷の眺めだけが唯一記憶通りだった。

高原山  14:09
鬼怒川左岸尾根(小原沢奥部の950m級ピーク
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鬼怒川温泉郷  14:09


ロープウェイ駅から下る遊歩道があったと記憶していたのだが見つからない。駅から少し登り返して下り道を見つけた。5月〜10月はヤマビルに注意するよう表示がある。遊歩道は展望コースと近道コースに分かれている。あまり踏まれていない展望コースに入ってみた。コース沿いにまばらにアズマシャクナゲがあるので奇異に感じる。人が植えたものらしい。名前の割には展望がほとんどなく歩く距離が長いだけなので、いずれこのコースは廃道化するのではないか。近道コースに合流して最終的に麓駅に降りてくる。正式には「花の山遊歩道」というらしい。

鬼怒川温泉から龍王峡まで遊歩道があるのではないかと期待していたのだが、鬼怒川左岸側にはそのようなものはなく国道121号線を歩くしかない。しかも国道121号線には歩道の無い区間があり少々危険である。藤原の「龍王峡1km」の標示のところから脇道に入り、杉林、田園地帯を抜けて龍王峡の駐車場に帰着。結局、全コースをジョギングシューズで歩き通した。

歩行時間は6時間未満で、寒さで発汗も抑えられた。観光と運動を兼ねた秀逸な周回コースであると思う。

龍王峡自然研究路(1/3)

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龍王峡自然研究路(2/3)

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龍王峡自然研究路(3/3)

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山野・史跡探訪の備忘録