月山(今市ダム・扇沢橋コース)(2008年1月)

年月日: 2008.01.26(土)
目的: 今市ダムから月山に登るルート探索

行程: 今市ダム・扇沢橋・標高550m(12:38)〜790m小ピーク(13:04)〜945m地点(13:26)〜急登開始1,020m付近(13:47)〜1,230m級ピーク(14:13)〜カラマツ植林帯に降下(14:37)〜945m地点復帰(14:52)〜790m小ピーク復帰(15:10)〜車に帰着(15:34)

月山は本来砥川から登る山であったと考えられ、月山の昔のルートの特定が今のところ栃木県の山歩きにおける唯一の関心事項である。昔の登山ルートの取り付きはダム堤頂を通ってトンネルを抜けた先の発電所近くにあると思われ、そこまで立ち入りできないかもしれない。今回はとりあえずどんな場所か見てみたいだけで、山歩きするつもりはなかった。

腰の具合がだいぶ良くなってきたと思ったら今度は痔。2週続けて寒い中長距離を歩いたのが悪かったらしい。まあ何事もやりすぎるのは良くないということだな。痔を治すには血流をよくする格好で安静にしていれば良いのだろうが、運動不足になるのも困る。本日はこの冬一番の寒さではあるが、日中は晴れとのことなので、モルモットの餌採りに出かけるついでに今市ダムを訪問。

砥川沿いのきれいな舗装道路を走って今市ダムに向かう。今回はとりあえずどんな場所か見てみたいだけで、山歩きするつもりはなかった。

この辺りも山肌には笹がほとんどない。道路沿いの注意書きに拠るとサルの群れが出没する地域らしいのでくヤマビルが居そう。

今市ダムの堤頂から月山が良く見える。

堤頂から見る月山(奥に見えるのが幸橋)
上部ダムと下部ダムの満水面標高差: 約540m


堤頂もトンネルも通行可能だが、対岸トンネルの先にある発電施設に向かう道が立ち入り禁止になっているので今回は旧ルートの探索をあきらめた。砥川の上流側に向かう方面に幸橋があり、こちらは通行可能。

幸橋を渡った先にコンクリート製の階段があるのがちょっと気になるが、おそらく植林関係者のための登り口であろう。そのままダム北岸の未舗装道路を進むと扇沢橋のガードにペンキで「月山→」と書かれている。橋を渡った先の広場に車を置いて、登山道の様子を確かめるくらいの軽い気持ちで歩いてみることにした。

今市ダム・幸橋  12:30
扇沢橋の先に駐車スペース在り
扇沢橋袂の登り口  12:38


登り口は幅広の階段なのだが、その上は薄く不明瞭な踏み跡があるだけ。取り付き地点の斜度は45度もあり、笹が全く生えておらず足元が不安定なので予備知識なしで普通のハイカーが安全に登れるルートではない。近代以前から用いられていた歴史ある登山道である可能性はゼロだ。登りは問題ないとして、下りで踏み跡を追えないと急斜面で立ち往生しそう。立ち木や岩に赤や青のペンキで矢印標示が残っているので、なんとか下りでも踏み跡を追えるだろう。月山南東尾根で見たものと同じ黄色ペンキの道標が朽ちて落ちていたので、今市山岳同好会と観光課が整備したことがあるのであろう。


知る人ぞ知るコースらしく今も辿る好き者がいて、真新しい赤テープや黄色い荷造り紐が付いている。黄色い荷造り紐を付けた主は最近鬼怒川左岸尾根に目印をつけまくった輩と同一人物ではないだろうか。

しばらくジグザグに登っていくと右側(尾根東側)にヒノキの植林地帯が現れる。登り口に立派な階段があるのは植林の作業道として用いられたからであろう。植林があるのは790m小ピーク手前までで、790m小ピークから先は広葉樹に覆われ、痩せた岩がちな場所ではツガ・モミが生える。

790m小ピーク先の鞍部からの登りで道は尾根をはずれて右側斜面を横切る。岩ゴツゴツの急傾斜なので掴まるものが少ないためトラロープが張られており、下りでは世話になること必至と思われた。

画像


道は東から上がってくる尾根に出て、以降は明るい尾根筋を順調に辿って徐々にツガに覆われた場所に近づく。ツガの木に945mと記された山火事注意の赤い標識が打ちつけられている場所がある。その先は岩ゴツゴツの痩せた尾根が続き、両側が急傾斜で少々怖い。ここにもトラロープが一箇所張られている。

945m地点の痩せ尾根  13:26
標高945mポイント  13:26


990mピークでしばし思案。日光方面は降雪中で、現在地も風花が舞っている。風はさほど強くないが冷たい。目の前に聳える月山の急斜面はまるで巨大な壁が立ちはだかっているかのようで、遠目には登れるように見えない。地形図を所持しておらず先が読めないし、ビバークの準備もロープもないので、一旦はここで引き返そうと思った。しかし、真新しいマークが幾つもあるのだからルートがあるのは間違いない。積雪しているので登れる自信はないが、昨年11月に逆川から登ったルートとどちらが難易度が高いのか確かめてみたいと思い鞍部に下った。鞍部には比較的若いカラマツの木が生え、丈の低いミヤコザサが地表を覆う。手入れされている様子はない。

鞍部のカラマツ林


990mピークから見るといきなり壁が立ちはだかるように見えたのだが、カラマツが生える尾根は緩やかに高度を上げて壁に近づく。壁登りの高度差は思ったより少なくて済みそう。カラマツが消えると急登が始まる。マークはあるが明瞭な道はない。予想した通りだ。平均斜度45度以上で、最もきつい場所は斜度50度近くあるだろう。立ち木にしがみついて登るしかない。

斜度は昨年11月のルートと大差ない。立ち木の数が多いぶんこちらの方が登りやすく、無雪期ならば下りにも使えそう。しかし今は積雪しているので滑りやすく、一旦滑落したら死なないまでも大怪我は免れまい。下りが可能かどうか見極めながら慎重に登りを続ける。来たルートを戻れなければ山頂まで登りきって日蔭方面に下るしかないのだ。

登っていくうちにアクシデントが一つ発生。腰を屈めっぱなしなので年明けに痛めた腰が徐々に痛くなってきた。このまま悪化したらさらに腰への負担が大きい急斜面の降下に耐えられるかどうか不安だ。うっすら降雪中で周囲の景色も冴えなくなってきた。

一旦は安全策をとって中間地点の最も勾配のきつい場所で退却を決意したものの、いざ下り始めてみると何とかなるものである。お天気山の北西斜面よりは優しく思える。この類の場所は二度と来たくないので、思い直して壁を征服してしまうことにした。一箇所で細いロープが張られていたが、信用できないので頼らずに突破。最後は雪で滑りやすいミヤコザサの斜面を踏みしめて1,230m級ピーク到着。

1,230m級ピークから見る月山南東尾根1,200m付近


月山山頂までここから一旦鞍部に下り、雪に覆われた細い尾根を辿っていくことになる。往復で30分強と思われるが、体調と天候と残り時間を考えて引き返すことにした。既に午後2時を過ぎているので潮時だろう。

下りは小尾根の選択が難しい。目印と自分の足跡に頼らないと正確に下ることはできないであろう。下り始めて直ぐに黄色い荷造り紐の目印のせいで一本隣の尾根に引き込まれそうになった。少し判断に手間取ったが、990mピークの方角を参考にして正しい尾根に入ることができた。

細いロープが這わしてある場所で腰をかばおうと思って、試しに強く引っ張ってみると、なんと簡単にちぎれてしまった。腰にダメージを与えないようにしてなんとかこの場を突破し、順調にカラマツの生える鞍部着。月山山頂まで行けなくても最難関を制覇できたので十二分に満足である。この後も腰にダメージを与えることなく順調に下山。2箇所のトラロープは劣化が進んではいるもののまだ十分な強度が維持されており、補助的に使用した。

扇沢橋  15:33


このコースは4時間程度で駐車地から月山山頂まで往復できるが、できれば登り専用とするのが無難だろう。壁では2度、足元から岩が転げ落ちていった。石裂山みたいに垂直な鎖場は存在しないがそこそこ危険なコースなのでお薦めしない。このコースを辿らんとする方はそれなりの覚悟をして臨まれたし。

山野・史跡探訪の備忘録