栃木・茨城県境尾根歩き(県道13号県境 〜 新田山、2008年3月)

年月日: 2008.03.01(土)

行程: 県道13号太子・黒羽線の県境(10:25)〜県境尾根に上がる(10:46)〜308mピーク(11:05)〜278.5m三等三角点(11:12)〜国道461号線(11:31)〜天狗山・305.8m三等三角点(12:00)〜大波・上郷間の峠(13:10)〜389.0m四等三角点(13:38)〜光崎・相川間の破線路峠(14:14)〜474mピーク(14:43)〜493.2m新田山・二等三角点(15:08)〜大月沢林道沿いの廃屋(15:47)〜(MTB)〜車に帰着(17:10)

MTB を利用した尾根歩きの場合、駐車地と下山予定地の間で道路下りの割合が長くなるように尾根を歩く必要があるので、自動的に歩く方向が決まってしまう。標高の高いところに車を置いて最初にMTBで出発地に向かう場合と、標高の低いところに車を置いて下山後にMTB で下る場合があるが、尾根を歩く方向は同じだ。

新田山の北側の県境尾根を歩こうとすると、上記のパターンがあてはまらない。大那地をMTB で下るとしても、国道461号に出てからは緩い登りになる。しかも車の置き場所もなさそう。今回はMTB は帰りの歩行の補助と位置づけ、車を県道13号太子・黒羽線の県境に置いて、県境尾根を南下することにする。

まずMTB を大月沢に置くために大那地を南下。今日は渓流釣りの解禁日で、大勢の釣り客が竿を出している。どうみても渓流釣りの竿さばきではない。竿がじっと動かずまるでフナ釣り。大内川は水量乏しい細い川で本来はヤマメが棲みそうな川ではない。那珂川中央漁協が大内川に大量にヤマメを成魚放流したのであろう、「ヤマメの里」なるのぼりが多数目に付いた。大月沢林道を入ってすぐのところにある廃屋にMTB を置いて、出発地へ。

県境に車を停めて押川に降りようとしたが、川沿いはものすごい蔓藪で全く進めない。あきらめて道路に戻り、栃木県側(北側)に下る。

県境を出発    10:25
栃木県側    10:31


  

農道を歩いて押川に行ってみると、意外に水量が多い。川幅が最も狭い場所で石を入れて足場を作って飛び跳ねた。対岸の植林地に取り付き、昔の用水と思しき溝を渡り、作業道を横切って真っ直ぐ尾根上を目指す。この植林地は藪が少なく間伐材もなく歩き易く順調に県境に達した。

県境に沿ってセントレジャーゴルフクラブ馬頭の有刺鉄線が張られており、何も意識せずに歩いていける。ゴルフ場と県境の間には雑木林があって眺めは良くない。

鞍部に下るとゴルフ場が県境に接する。この後、ゴルフ場建設時に使用したと思われる作業道を歩いて山に登り、作業道の最高点と思しき場所から雑木林の斜面を登って308mピークに達した。何もないピークである。

278.5m三等三角点のあるピークに向けての登りは北側斜面が伐採されて明るい雰囲気だ。このピークには茨城県側の住民の共同TVアンテナが立っている。てっきり三角点が最高点にあるとばかり思っていたので、三角点に気づかずに通り越してしまった。県境を示すものが見当たらなくなったので間違いに気づき、約10分のロス。

278.5m三等三角点    11:21


三角点近くから南東に向かう尾根を下っていくと、木祠が目に入った。これが境の明神なのだろうか。鳥居を潜って国道461号の境明神峠に到着。

国道461号の境明神峠    11:31


朝方の無風快晴の陽気は何処へやら。どんより曇ってしまい冷たい風が吹く。もう帰りたい気分だが、もう一度やり直す気にはなれないので反対側の尾根に取り付き、県境尾根歩きを続行。

最初は雑木林の尾根で、栃木県側に伐採して放置した区域があり潅木の藪がうるさい。鞍部は胸丈のスズタケ藪で、イノシシのものと思われる獣道が走る。歩いているうちに徐々に空が明るくなり青空が戻ってヤル気復活。

305.8m三角点は意外にも山名板だらけのピークだった(右の写真 12:01)。天狗山と呼ばれているらしい。地理的に栃木県では呼称はないはず。茨城県の相川からは独立峰のように見えるのかもしれない。

天狗山    12:01


三角点から南西数十m地点で枝尾根が西に派生し赤テープはそちらに向かっている。南西に向かう県境尾根には境界杭もテープも無し。この区域は植林されていないため丈2m以上の密なスズタケ藪が続く。栃木・茨城県境尾根にこんなすごいスズタケ藪が存在するとは驚いた。これでは歩く人もいないわけだ。まるで密なチシマザサの藪歩きみたいに獣道に倒れこんだスズタケを両手で持ち上げるように掻き分けないと進めない。八溝山地はクマもシカもいないのでマダニの心配をする必要がないのが救いだ。だいぶ長いこと藪漕ぎしたような気がしたが、後で地形図で確認したところ300m程度だったらしい。

尾根の向きが東西になる310m級ピークで、茨城県側斜面の雑木林が大規模に伐採されており、密なスズタケ藪からようやく解放された。相川地区から北側の県境尾根に向かって細い谷が3本程度切れ込む。その一番西側の谷の詰めにいることになる。南側の視界が良好である。新田山の南側にある福島東幹線が遠くに見えるので下山予定地まで先は長い。

辿るべき尾根遠望    12:26
茨城県側の伐採地


藪から解放されたのは良いが問題が2つ。汗拭きタオルを藪に盗られた。おまけに地形図も失った。植林尾根を歩くときはしょっちゅう地図読みをする必要があるのでズボンやジャケットのポケットに入れている。普通の山歩きならポケットの感触を常に感じて歩いているので落とせば必ず判る。藪漕ぎしていると藪払いに神経が集中するので、かなりの確率で何か無くなる。藪があることが判っていればザックに収納して突入すれば良いのだが、突然予期せぬ密な藪に突入するとものぐさな性格が災いして対応できないのである(いつもの悪い癖が出たと思い込んでいたのだが、山歩きを終えてザックの中を調べたら地形図が出てきた。昼食休憩時に無意識にしまったらしいのだ。)。

さて、快適に且つ安全に尾根歩きする必需品をいっぺんに2つも失ってしまい、天気は良いものの暗雲が垂れ込めたような気分。何も準備してこなかったのと同じ。ここからは自分の判断力だけを頼りに迷走するしかない。境界杭がほとんど存在しないし、これから先は入り組んだ地形が続くので、ノーミスで歩くことはできまい。誤って尾根を外せば峠に登り返す必要が出てくる。腰痛で運動不足だったから脚が持つだろうか。たっぷり汗をかかされることになるだろうから汗拭きタオルが無いのはつらい。

地図無し尾根歩きを始めてすぐに尾根が2手に分かれる場所に至った。真っ直ぐ南に下れば相川地区に下ってしまいそうだ。西側の植林の山が県境尾根のように見えるが、事前に地形図を見た記憶では県境尾根の西側に顕著なピークが2つあったはず。でも現在見えているものがそれであるかどうか判断できない。

333m ピーク    12:31


迷っていても時間を喰うだけなので、ダメ元で植林の山に向かった。植林の山(333mピーク)を登り始めて進路が誤りであったことに気づいた。県境尾根の風格が無いのである。頂上には行かずにその南東の雑木林のピークに上がってから南の狭い谷に向けて斜度45°以上の急斜面を下った。そのまま反対側の植林された山に登ってしまえば最短で県境尾根に復帰できたはずなのだが、現在地を特定することを優先して谷を詰めることを選択。道は谷奥を詰めずに植林の中に向かう。道から離れてずぶずぶ沈みこむ棚田跡を歩いて県境らしき場所に到達。茨城県側の風景をみて愕然。さきほど見た広大な伐採地の一角だった。30分程度ムダ歩き(地形図の大子町と記載されている辺りを迷走)したことになる。

植林された県境尾根を約400m歩いて大波・上郷間の峠に降り立つ。茨城県側はすぐ近くに民家が見える。

大波・上郷間の峠    13:10


反対側の植林地は最初は茨藪がうるさい。マツの木が混じる乱雑な植林尾根を辿って適当に高みを目指す。この山(338mピーク)には峠近くの民家のTVアンテナが設置されている。マツの木が何本も倒れこんでケーブルが引きちぎられそうになっていた。

338mピークの栃木県側の雑木林が伐採されており眺めが良い。

画像
389.0m三角点ピーク    13:21


作業道を利用して389.0m三角点ピークとの間にある鞍部に下った。鞍部の栃木県側の谷にはおびただしい数の榾(ほだ)木が並べられている。338mピークの伐採したコナラを利用したのであろう。壮観だ。

画像
榾木    13:25


389.0m三角点ピークは植林の山で藪無し。歩くスピードが上がる。天狗山より存在感がある山ではあるが、四等三角点の標石があるのみ。

389.0m四等三角点    13:38


389.0m四等三角点から順調に500m程度南下して再び進路の選択に迷った。何度か行ったり来たりして最終的に東に向かう尾根を選択。これは正解だったのだが、下っていった先に現れる枝尾根の選択を誤り栃木県側の谷に降りた。県境から100mも離れていないのだが、峠道は現役ではなく間伐材が倒れこんでハードルが連続し歩きにくいことこの上ない。

光崎−相川間の破線路峠    14:14


峠から南の県境尾根には古い山道の窪みが存在する。しばらく何も考えずに登っていける。ここまでかなり飛ばしてきたので脚に疲労がたまり痙攣しそう。もう峠はないので明るいうちに新田山に到達できるはず。脚と相談してペースを落とした。

標高450mの肩で尾根が90°東に屈曲し、474mピークを掠めるように南に再び90°屈曲する。ここは以前、地図を持たずに新田山を目指して迷走した時に来たことがあり見覚えがある。

474mピーク    14:43


尾根上には昔の山道があるので歩き易い。474mピークから100m南の尾根分岐で広い作業道が現れる。2年ほど前に大規模な間伐を実施するために建設されたものらしい。山の雰囲気が一変していた。たかが間伐するのによくもまあここまで山をズタズタにするものだな。近くに広葉樹がある場所ではすでに路面に幼樹がびっしり生えており、5年もしたら歩けなくなるだろう。

作業道は新田山の西側を巻いていく。新田山の北側は八溝山地では珍しい矮小な笹(ミヤコザサ?)に覆われ、今回歩いた区間で唯一癒される場所である。作業道から離れて笹の斜面を歩いて新田山到達。

画像
新田山の北側    15:07


新田山南の破線路峠の谷が間伐材で埋め尽くされていることは昨年歩いて承知済み。よって、今回は新田山の南西尾根を下ってみることにした。ところが尾根上も間伐材だらけで歩けたものじゃない。わずかに残っていた雪には真新しい足跡があったので、本日、この尾根を歩いて新田山に登った人がいるらしい。ハードル越えに嫌気がして右側の谷に下りてみたのだが、こちらも谷が間伐材で埋め尽くされている。この間伐を請け負った業者はいったいどんな連中なんだろう。国有林なのに日本で一番醜い植林地帯である。栃木県は県民にその是非を問うことも無く勝手に森林税なるものを導入した。今後税金でこんな雑な仕事をされたらたまらんな。

林道には葉が青々としたスギの木が倒れこんでいた。伐採したものではない。周囲を見ると山肌にも倒れたばかりのスギの木が目立つ。これは先日の春一番が吹き荒れた際に倒れたものだ。1年前に予言したことが現実となったようだ。山肌を作業道でズタズタにし縦一列に間引いたため、樹木が風雨に耐えられないのだ。


MTB で快適に大那地を下れると思っていたのに、強い北風を正面から受けて進まない。寒くてたまらん。平坦地でギヤを軽くして漕いでいたら腿が痙攣。MTB も楽じゃない。国道461号線に抜けてからは北風に当たらなくなり、平坦地でもすんなり漕いでいけるようになった。境明神峠を越えて茨城県側に入ると日陰で冷え冷えとしているが、橋場地区の県道太子・黒羽線沿いの道端にはホトケノザの花がみられ春の訪れを感じた。

山野・史跡探訪の備忘録