木ノ俣川その2(取水堰以遠)(2008年5月)

年月日:    2008.05.24(土)

行程:    塩那道路板室側ゲート(06:30)〜降下開始(08:13)〜木ノ俣川へ降下(08:54)〜木ノ俣取水堰(10:13)〜1237mポイント北の支沢合流点で引き返す(11:23)〜木ノ俣取水堰(12:01)〜釣り終了・尾根登り開始(15:02)〜塩那道路復帰(16:14)〜車に帰着(17:59)

行程詳述の一部を削除(May26,2009)

関連記録@: 2008-05-11 木ノ俣川とヒツ沢(取水堰見物)
関連記録A: 2008-08-30 木ノ俣川の軌道跡に関する考察
関連記録B: 2014-07-26 木ノ俣川遡行

またしても週末の天気がすぐれない。雨が降るのは土曜日の午後かららしいので、先週に続いて源流釣りを計画。行く先は2週間前に取水堰見たさに遡行した木ノ俣川。水量が多い取水堰以遠が目的地なので全て沢歩きだと往復に時間がかかる。帰りは塩那道路を利用し2段堰堤付近で再び木ノ俣川に戻ろうかと考えていた。朝3時台に起きて別の案が浮上。初めから塩那道路を歩いて目的地付近で木ノ俣川に降下する手もある。そんなことを地形図を見て検討していたら朝5時を過ぎてしまった。今から行っても先客がいるだろうから木ノ俣川はあきらめて近場で遊ぶつもりで自宅を出た。

曇りの予報なのに朝方の天気は晴れ。清澄度は低いが山に雲はかかっていない。いいかげんな性格なもので、運転中にまたまた気が変わり、行く先を木ノ俣川に変更。行く途中で渡る蛇尾川は普段は涸れ川なのに本日は水量が豊富。木ノ俣川の水量も多いことが予想された。

2週間前ヤマツツジが開花中だった木ノ俣川沿いの林道は藤の花で飾られている。林道終点には朝6時時点で既に先客の車が5台。これで当初の案はボツ。狭い林道を戻る途中でさらに2台の車とすれ違った。先客に遇わずに取水堰に行くために、今朝検討した案を実行に移してみる。

男鹿山地にしてはめずらしく雲ひとつなく晴れており、無風。大好きなウワミズザクラの香りが漂う中を快適に歩いていく。

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中央が1,277mピーク、右が川見曽根1,141mピーク    07:07


今年は石川建設による道路工事は行われていないようで、車が入った形跡がない。延々と続く高い擁壁の上にあるタラの木は全て頂芽がもがれて側芽が伸びている。あんなところまで徹底してタラの芽を採るなんていったいどんな連中なのだろう。

三度坂を過ぎると約400m下方の木ノ俣川に下る沢を覗き込める。右手の尾根を下っていけそうだ。地形図を所持していないが、今朝検討した下降路の一つであることは間違いない。しばらく下っていくと本来下るべき尾根より左にはずれていることが判ったので斜面を横移動。その後は危険箇所はなく、1,277mピークを正面に見ながら順調に降下。チシマザサ・スズタケ藪は概ね薄い。シロヤシオの木が多く、期せずしてシロヤシオも愛でることができた。

対面の山肌が眼前に迫ってきた。どうやら尾根先端は崖もしくは急勾配らしい。少し尾根を戻って尾根東側のガレたルンゼを下って木ノ俣川に降りた。2週間前に撤退した場所にピタリと降りることができたらしい。2週間前に較べるとだいぶ水量が多いので、降りた場所から釣り開始。

08:54
       


日当たりの良い斜面に緑黄色の美しい花が咲いている。初めて見るウツギだ。種が欲しかったのだが、残念ながら種鞘には種が残っていなかった。キバナウツギという名で深山に生えるらしい。(取水堰以遠の岸にも見られる。)

キバナウツギ  10:05


巨岩ゴロゴロの小渓流は上空を両岸の樹木が覆っていて遠投できないため、できるだけ近づいて岩の陰からキャスティングする。木ノ俣川渓谷は幅が広いのでフライのキャスティングに向いていると思っていたのだが勝手が違った。勾配の緩い渓流で大岩が少なく身を隠すものがないのだ。この時期、魚は周りに障害物の無い浅い開きに定位しているので、迂闊に近づいて何度も逃げる魚影を目にした。遠投できるというより遠投せざるを得ない。いくら川幅があっても10m以上遠投すれば後ろの樹木に引っ掛かる。魚はいても思うようには釣れない。合わせ遅れが1回、バラシが1回、フライを引っ掛けて場をつぶしたのが数回。静かな渕に明らかに尺以上あるイワナがいたがボサが邪魔でうまくキャスティングできない。下手クソめ。結局一匹もご対面できぬまま取水堰に至った。

木ノ俣取水堰  10:10


昇降用足場が一部壊れていたので、左側のまるで階段のような魚道を登って上部の広いゴーロに抜けた。

取水堰は上流から下ってくる稚魚にとって死出の旅立ちとなる場所だ。ほとんどの稚魚は取水溝に吸い込まれ、最後は発電所の水圧管の中で圧死するだろう。木ノ俣川に魚が少ないのは釣り人が多いからだけではなく、取水堰の構造にも問題があるように思う。

軌道跡は取水堰の下まで左岸側にある。取水堰上部は軌道跡がゴーロの土砂下になって見えないが、ゴーロを過ぎると右岸側に軌道跡が現れる。よって、現在の取水堰の上流側に第六の渡渉点があったことになる。どこまで軌道跡が続くのか確かめるつもりで遡行してみた。取水堰以遠の軌道跡は藪化しているため沢底を行く。何度も右に左に渡渉しなければならない。アユタイツに着替えるのが面倒で山歩きのズボンのまま遡行しているので水の抵抗を受けるし冷たい。

堰堤以遠は本日はゴンゴン水が流れており、ドライフライに適した場所無し。どちらかというと餌釣り向きであろう。大佐飛山1,678mポイントから下ってくる沢の合流点から200mほど遡行すると谷が広がり明るくなる。広い岸の上はチシマザサが濃く軌道跡が見えないが、沢底には木材を繋ぎとめるのに使用したと思われる板金類が散見されるのでもっと上流に橋があったのは間違いない。左岸1,375mピークから下ってくる涸れ沢の合流点以遠にも橋の残骸があった。

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第七渡渉点 左岸橋脚跡  11:09


右岸側には石積みの橋脚が残る。左岸側は低い平坦な藪なので木製の橋脚だったらしい。

この辺りは比較的両岸の傾斜が緩くチシマザサの藪が濃い。藪中に軌道跡を追う気にはなれず、どこが終点なのか確認はしていない。

開けた谷は明るくて気持ち良いのだが、水が勢い良く流れる単調なゴーロなので飽きてしまう。イワナの棲息域はもっと奥にあるはずで、取水堰下流にいるイワナははるか上流から下ってきた稚魚が育ったものであろう。長いゴーロの奥は再び谷が狭まり面白そうだが、まだまだ水流が細くなる様子はなくどうせドライフライでは釣りにはならない。最後まで遡行するにしてもあと4km以上の流程を残している。本日中に遡行完了可能と思うが、瓢箪峠に抜ける頃には雨になっているであろうし、5時間もかけて塩那道路を戻ってくるのも嫌だ。現在地点から塩那道路に上ってしまっても良いが、この辺りの地形図を所持していないし岸のチシマザサが濃いので不安がある。一匹も渓魚とご対面していないのも心残り。降りてきた尾根を登ることにして、1,237mポイントの北側斜面の水を集める細い沢が合流する地点で引き返した。

退却点   11:23
       


一旦入川地点まで戻りしつこく釣りに再挑戦。出来の悪いフライしか残っていないが、今度は要領を得ているのでキャスティングはスムーズ。ようやく念願の木ノ俣川のイワナとご対面。開けた明るい場所で底石も白いために魚色が薄い。白い斑点が明瞭でパーマークの無い25p位のきれいな魚体だった。お相手してくれてありがとさん。もういじめに来ないからね。

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イワナ  13:55


例の尺イワナをなんとか釣りたいと思い1時間ほどねばっていろいろやってみた。相手に気づかれることはなかったが、結局フライを3度木に引っ掛けて惨敗。空中の水蒸気量が増して山々が霞み陽光も消えたので釣り終了。入川地点に戻る途中のゴルジュで釣り上がってきた2人組みと遭遇。軌道跡に上がってパスしたので話は交わしていない。

靴を履き替えて登り開始。

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15:02


400mの登りはきつい。背面の1,277mピークと川見曽根1,141mピークを見て現在位置が判るのでかえって倦怠感が増す。斜め上方に塩那道路の路肩が見えた。あと少しで帰り着いたも同然。道路に飛び出る寸前にサラサラという音がし出した。ついに雨が降り始めたのだ。バッチリのタイミングで塩那道路に這い上がることができた。

塩那道路  16:14


あとは土砂降りになろうが関係ない。フキの葉を採取しながら余裕で帰り着いた。

山野・史跡探訪の備忘録