井戸沢〜流石山〜大峠〜中ノ沢(2008年7月)

年月日:    2008.07.20(日)

行程: 湯川橋(05:44)〜三斗小屋宿跡(06:26)〜井戸沢登り開始(06:33)〜最初の滝を巻く(07:29)〜稜線に抜ける(9:30)〜大峠(10:25)〜峠沢(10:44)〜中ノ沢下り開始(11:36)〜沢下り終了(12:19)〜三斗小屋宿跡復帰(12:33)〜車に帰着(13:25)

3連休のはずであったが突如土曜日出勤となってしまった。この3連休で1日は山歩きしようと思っていたので日曜日は久々に山歩きを優先させる。ちょうど流石山のニッコウキスゲが見頃を迎えているはず。ニッコウキスゲの満開の時期に福島県の音金地区で三倉山の開山祭を行っており、大峠から三倉山山頂を経て音金に戻ってくるらしい。バスで松川街道口まで送ってくれるようなので参加してみようかとも思ったが、ガソリン代節約のため福島に遠出するのは止めて今年は見送り。

井戸沢を登って帰りは中ノ沢のナメを下るという沢屋さんの記録が幾つかネット上にあり、自分でもできそうである。暑いので登山道を汗まみれで登るより爽快なシャワークライムでお花畑を目指すことにする。

この時期に深山湖方面に向かうのは初めて。道路沿いに10mに1本程度の間隔で植えられているアジサイが満開で美しい。

三斗小屋宿跡に向かう林道は湯川橋にチェーンが掛かっており、手前に既に4台の車があった。三斗小屋宿跡までは退屈な林道歩き。気温は20℃程度だろうか、湿度が高くてムシムシする。三斗小屋宿跡でようやく視界が開けて流石山方面が見えるようになる。よく晴れて登山日和だ。

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三斗小屋宿跡から見る井戸沢    06:26


三斗小屋宿跡には4台の車が停められていた。習志野No.が温泉関係者の車とは思えないが、どのような権限で入り込めるのだろうか。

三斗小屋宿跡の先にある白湯山神社を過ぎたところの分岐で左側の会津中街道跡に入る。馬頭観音を2体見やって最初に横切る沢が井戸沢である。沢屋さんの記録では苦土沢合流点は水が涸れているとのことだが、本日はそこそこ水流がある。ゴンゴンというほどではないので沢歩きの服装に着替えぬまま沢を登り始めた。大水時は暴れる沢らしくやや荒れた感じ。今年に入って何らかの調査を行ったらしく、頂部が赤い木の杭が沢中に打ち込まれている。まさか井戸沢を堰堤だらけにしようってんじゃないだろうな(この年、砂防堰堤が築かれてしまった。)。

堰堤建設直前の井戸沢    06:33


最初の滝まで至らないうちに沢屋のパーティが追いついてきた。勾配の急な沢をせっせと登ってくる一団を見ると足元を勢いよく這い上がってくるヤマビルを連想してしまった。当方はまだ沢歩きの服装に着替えていないのでこっぱずかしい。右岸に上がって6名のパーティをやり過ごした。

着替えをして沢登り再開。最初の滝下でさきほどのパーティの1名が上方を見上げている。しばらく下方で待って様子を伺っていたが、いつまでたっても登る気配が無い。どうやら登攀に手間取っているようだ。この沢は本格的な装備など要らないのではなかったか?沢屋が手間取るくらいなら自分は登れないってこと?左岸側は傾斜は急だがチシマザサ藪を漕いで巻いていくことは可能に思える。時間がもったいないので藪突入。しばらく登ると歩き易くなる。上部で指示を出しているリーダーらしき人物の背後をそっと通過すると、登り終えた3名がその先のチシマザサ藪中で待機中。道を空けてもらって明瞭な踏み跡を辿って滝の落ち口に降下。というわけで最初の滝は落ち口を見たのみ。

最初の滝の落ち口    07:29


この先幾つか滝が現れるが、いずれも簡単に巻けるもしくは直登できる。

最も落差の大きい滝の中段    07:38


谷が深い標高1300m辺りではほんの少しではあるがまだ雪が残っていた。最後の滝を過ぎると標高1390m辺りまで沢はほぼ南に向けて真っ直ぐ開いており、流石山〜大倉山稜線が見える。最後の詰めをどう選択したのか記憶していないが、稜線に上がった場所で撮った写真から判断すると、標高1390mの最初の二俣で右、そして標高1430mの二俣で右を選択したらしい。

最後の滝    07:44
谷の奥部    07:54


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沢を見下ろす。    08:02


詰めの段階では滝に替わって草花が楽しませてくれる。沢沿いには尾根上では見ることのできないシナノキンバイが満開。森林限界を抜けると丈の低い笹薮中にウラジロヨウラクが多数見られる。さらに標高を上げるとウラジロヨウラクに替わってウツギが目立つようになる。よく観察しなかったが、色の濃いものと薄いものがあったのでタニウツギとヤブウツギの双方があるのかもしれない。オオバツツジなるものの開花も初めて見た。一般登山道沿いに見られるウサギギクは本来は沢源頭の開けた場所に咲く植物らしい。この他、ハクサンフウロやギボウシも開花中。コバイケイソウの個体数は多いが花穂は皆無。

ヤグルマソウ  07:56
ハクサンチドリ  08:08
モミジカラマツ  08:09
シナノキンバイ  08:33
 
タニウツギ?  09:10
オオバツツジ  09:22
ウサギギク  09:24
ハクサンフウロ  09:28


水流が途絶える地点でハイキングの服装に着替えて一般登山客に成りすます。草原状の笹薮中にしっかりとした踏み跡ができているので、このコースが沢屋さんに人気があることが伺える。流石山方面から稜線の夏道を歩いてきた登山者が「何であそこに人が居るのか?」といった感じで小生の姿を凝視している。ちょっと恥ずかしい。

ニッコウキスゲは一度に一輪しか開花しないと聞いていたが、盛期はゴージャスに咲いてくれるものらしい。

県境稜線から見た大倉山〜三倉山方面       09:30
ニッコウキスゲ    09:33


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県境尾根から井戸沢を俯瞰   09:34


稜線上ではハクサンシャクナゲの開花もみられる。ニッコウキスゲも見事だったが、この山の主役である美しい笹原を愛でぬわけにはいくまい。流石山から大峠への降り始めが特に美しい(そんなこと思うのは小生だけ?)。

ハクサンシャクナゲ  09:36
新葉の伸びた笹原  09:52


稜線の夏道に出てからはひっきりなしに登山者とすれ違い、その度に待機しなければならない。「逆コースを登ってきたんですか?」と聞かれること幾たびか。本日は三倉山の開山祭だったのだ。花の無い季節なら10名程度しか遇わない登山道だが、本日は200人くらいとすれ違ったような気がする。

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大峠から登ってくる大勢の登山者    10:01


大峠から一気に峠沢まで下って昼食休憩。休憩中に1名が三斗小屋温泉方面に向かっていった。もう一名若い男性が来たが何故か大峠方面に引き返して行った。わざわざ水汲みに来たんだろうか。最後に三斗小屋温泉方面から現れた監視員の腕章をつけた男性と少し言葉を交わした。

峠沢を渡ると三斗小屋宿方面に向かう分岐が現れる。これが会津中街道跡である。4年前に較べて藪化が一段と進んでいるが、歩く人は今もいるようだ。藪に入ってすぐに着脱式の偏光グラスを奪われた。20分ほどウロウロ探したのだがどうしても見つからない。山歩きすると必ず偏光グラスがなくなる。安物だけどこれがないとアユ釣りができない。また買いに行かなければならないのが気がかりで気分良く歩けなくなった。

中ノ沢渡渉点は広いナメである。再び沢歩きの格好に着替えて沢を下る。ほとんど全てといっても良いくらいナメが連続する。水量も豊富で面白い。

会津中街道・中ノ沢渡渉点  11:36
中ノ沢のナメと巨大タマゴ  11:50


偏光グラスをなくしたことで注意力が散漫になっていたのだろう。登山靴を収納していたザックのファスナーを閉め忘れて、収納したはずの靴が無くなっていた。これだから一生高級品とは無縁だな。

アホな釣り客の捨てた7月20日賞味期限のパンの袋を回収。ナメばかりで魚が棲むには厳しい環境であるがイワナらしき魚を2匹見かけた。

左岸側に人為的な切り口を持つ木が3本転がっているのに気づいた。良く見ると束ねてあって緑のロープで繋がれている。壊れた橋らしい。ということは峠沢との合流点に気づかぬまま中街道の渡渉点まで下ってしまったらしい。右岸の会津中街道跡を辿って三斗小屋宿跡に復帰。

がりつうさんのブログで知った、復元された白湯山の鳥居に寄ってみた。鳥居は苦土沢右岸の急斜面の際にあり、噴煙たなびく白湯山(茶臼岳)を遥拝できる位置にある。御沢を登るために一旦は沢に降りなければならないが、鳥居から降りるのは無理。どこから降りていたのか気になる。崖沿いに適当に林の中を歩き、棄てられた古いカローラがある場所で林道に復帰。道路の無い場所だしエンブレムも古いので遺棄されたのは数十年前だろう(1960年代の初代カローラ、フォグランプ付きでした。)。「旅館 大黒屋」と書いてある。

復元された白湯山の鳥居  12:33
遺棄された初代カローラ  12:55


評判通りの楽しいコースだった。沢遡行と稜線歩きで草木の開花を堪能できて満足。ただ、偏光グラスと靴を失くしたせいで気分が今ひとつで帰りの林道歩きが余計退屈に感じられた。

山野・史跡探訪の備忘録