日光白根山(2008年9月)

年月日:    2008.09.23

行程: 湯元温泉・中曽根コース入口出発(05:24)〜標高1,870mで尾根上に出る(06:07)〜国境平(07:01)〜五色山(07:26)〜前白根山(07:54)〜避難小屋(08:12)〜白根山山頂(09:10−09:40)〜弥陀ヶ池(10:14)〜五色沼(10:37)〜五色山(11:13)〜国境平(11:31)〜金精山(11:57)〜金精峠(12:35)〜金精トンネル(12:52)〜標高1,720mの橋から金精沢に下り林道と出合う〜登山口に帰着(13:44)

秋分の日は晴れの予報。台風の影響が無くてシメシメと思っていたのに21日からの降雨で河川が増水してアユ釣りは来週末までおあずけ。連休ではないからハードな山歩きはできないし、藪が濡れているので藪歩きもしたくない。どうしようか。夕食後に翌日の予定を考えるつもりであったが、日曜の寝不足が原因で眠気に襲われてそのまま寝入ってしまい目を覚ましたのが午前1時。考えるのが面倒くさくなって、未訪の場所をお手軽ハイクすることにした。

普段はハイカーが多いところを避けているので、奥日光に行くのは平均して1年に1回以下。日光白根山を眺めたことはあっても登ったことはなかった。栃木県側から日光白根山に登るには標高2,300m以上の前衛の山々を越えていかなければならない。地理的にはどうみても群馬県の山なのだが何故か県境が白根山を跨いでいる。県境の山は全て栃木県から登るという変なこだわりがあって、アプローチの長い日光白根山をどう登るか決めかねていたのである。山頂がハイカーで溢れる前に下山するには早朝行動が必要だが、本日は一応4時間は寝たので今から出かければ早朝行動が可能だ。この機会を逃したら一生登らずじまいになってしまうかもしれない。未経験の中曽根コースを登って避難小屋経由で白根山に登り、帰りは金精峠から金精道路に下って適当に金精沢の藪を漕いで戻ることにした。急いで電子国土ポータルの地図を印刷し、午前3時に出発。空は満天の星。

湯元温泉に不案内なので少し不安があったのだが、現地には何箇所も案内図があり迷うことなく中曽根コース入口まで行けた。既にシカの繁殖行動が始まっているらしく頻繁に鳴声が聞こえ、温泉街の道路をシカが歩いている。戦場ヶ原では気温7℃だったが湯元は冷え込んでおらず、おかげで車中で仮眠できた。空が明るくなった5時過ぎに準備して出発。

林道は登山口よりさらに金精沢奥に延びているので金精峠からの帰りに利用できるかもしれない。登山道は林道を離れて中曽根の急斜面に向かう。この沢は水はけがやたらと良くぬかるみ無し。急登区間は抉れて歩きにくいがスキー場奥から登る新道よりはまし。樹冠を渡る風は地表には届かず少々ムシムシする。本日の行程は長いので、なるべく汗をかかないようにスローペースで登っていった。標高1,870mで尾根上に出ると眺望が得られ、多少は風も当たり且つ勾配も緩くなるので快適に進める。但し、登山道に張り出したミヤコザサの露でズボンと靴はぐっしょり。花期の過ぎたハンゴンソウばかりでリンドウの花が少ないのには少々がっかりだが、ナナカマドの木が多くて実が赤く色付き彩豊富。

尾根の最高点を過ぎてしばらく西側に下ると国境平着。金精峠経由で登ってきたと思われる先行者1名の足跡有り。西側から吹き付ける風音が大きい。五色山から前白根山の区間は強風が吹いてキャップが飛ばされてしまうので日焼け覚悟で進む。前白根山で三脚を構えて奥白根山を撮影中の先行者をパスして、足跡の無い道を行く。

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前白根山を下る途上で見た白根山    07:54


前白根山は絶好の白根山撮影ポイントで、常に何名かが白根山と五色沼のセットの写真を撮影している。この日も一番良いポイントに先客様が居たので登山道を下る際にパチリ。ここからの撮影は朝向き。

五色沼に下る道の分岐点を過ぎて避難小屋に向けて下った。岩ゴツゴツで予想以上に歩き難い。有名な山の登山道を歩いていつも感じることだが、藪を漕いでいる方が安心だ。少し下ると風が当たらず尾根上で強風が吹いているのが嘘のように静かだ。道横には花期の過ぎたカニコウモリが多く生えている。この時期に山に登ることがなかったのでダケカンバの黄葉を初めて見たような気がする。

白根山の森林限界まで登らぬうちに単独行の男性が下ってきた。この調子では山頂は既に菅沼から登ってきた登山客であふれているかも。徐々に上空に雲が増えてきたものの晴れているうちに登頂できそうだ。この時期、見るべき植物は何も無いが景色は申し分ない。富士山も見えている。前年歩いた白錫尾根や皇海山方面を眺めて満足。

白根山についての予備知識が無かったので山頂は広くなだらかであるとばかり思い込んでいたが、荒々しい複雑な地形をしているのに驚いた。結構な数のハイカーが最高点にたかっているのが見える。火口と思しき浅い窪みの縁を通って祠に至る。

山頂手前の祠  09:04
火口


日光白根山は地理的には群馬県側の山であり、片品村東小川地区の住民の信仰の対象とされていたらしい。

祠の横には円柱状の奉納物が並んでいて、その下に寛永通寶一文銭があった。寛永年間に鋳造が始まり明治中頃まで流通していた貨幣だから、何時頃置かれたものかは判らない。江戸時代にここまで登ったとすればたいへんな労であったろう。

祠に参拝した後、岩ゴツゴツの窪みを横切り最高点到着。狭い場所で落ち着かないのですぐに北側の窪みを横切って北側の眺めの良いなだらかな場所に移動し休憩。

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白根山北側を俯瞰  09:23
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男体山・中禅寺湖方面    09:27


だんだん雲が広がって直射日光が無くなってきたので弥陀ヶ池方面に下山開始。腕時計を持たないもので正確な時間が判らず正午あたりだろうと思っていたが、デジカメの再生画像の時刻をみてびっくり。まだ午前10時前である。道理でまだまだたくさんのハイカーが登ってくる訳だ。弥陀ヶ池方面への下りは梯子等は無いものの荒々しくて危険な道であると感じた。ハイカーの多くは菅沼方面からこのルートで登り、避難小屋方面に向かう安全な道で下山して五色沼、弥陀ヶ池を経由して戻るらしい。

弥陀ヶ池から五色沼に向かう途上の白根山斜面はミネザクラの紅葉が鮮やかだった。

五色沼への下降点にて  10:23


五色沼の畔で北岸斜面のシラネアオイ自生地保護の電気柵の説明を見て、少し戻って五色山に向けて登り開始。スポーツ飲料のペットボトルに食べ物のラップゴミをぎゅうぎゅうに押し込んで捨ててあったのにはあきれた。一応持ち帰ったもののリサイクルに出せないではないか。こんなことする神経の持ち主が登山に来るというのがどうしても解せない。何か不純な動機で来ているのであろう。

五色山は朝の強風が嘘のように静まり適度に曇って陽射しも柔らかく穏やかな天気である。朝方は逆光でうまく撮影できなかった五色沢方面が良く見える。

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五色沢    11:15


国境平に復帰した時点でまだ午前11時半。十分に時間的余裕があるので予定通り金精峠へ向かう。

国境平  11:31
金精山(笈吊岩)  11:34


金精山は東側の見晴らしが良い。先に休んでいたご三名様と入れ替わりに山頂に立ち軽食休憩。金精峠への下りは短い梯子が幾つか出てくるがさほど危険を感じない。金精峠にはこれからどこかに向かうのかそれとも下る前に休憩しているのか10名程度のハイカーが居た。金精神社の黒光りするチ○○○を拝む。鞍掛峠の道祖尊の勝ち(何が?)。

金精トンネル入口への下りはひどい荒れ様である。栃木県側から県境に上がる登山道はロクなものが無い。

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金精道路から見た金精山(笈吊岩)  13:09


金精沢に下るポイントを検討しながら金精道路をテクテク。クネクネ折れ曲がって高度を下げ、最後の橋から笹藪に突入。あまりに歩きにくいので岸を歩くのをあきらめて細く水が流れる沢底に降りた。沢底に滑る石は存在せず歩き易い。ほどなく古い堰堤に至った。

金精沢の堰堤上部  13:19


右岸側にきれいな林道があったので辿ってみたが、中曽根斜面の崩落防止工事跡に出て行き止まり。どうやら林道の続きは左岸側にあるらしい。適当に堰堤下の藪を下っていくと果たして左岸側にきれいな林道が見えた。堰堤工事と送電線・通信ケーブルを敷設するのを目的で作った林道のようで、幅広で全く荒れていない。何も考えずに湯元温泉まで下れるであろう。

金精沢の林道  13:30


出発地点の林道は金精沢右岸側にあったのだからどこかで右岸に渡らなければならない。高度計を見てそろそろ渡渉すべき地点だなと思っていたら、沢を渡ってもいないのに前方に見覚えのある光景が出現。下ってきた林道は車を置いた林道の続きだったのだ。金精沢は上流では一応沢の形を成しているが、透水性が高い土地なので下るにつれて水流が無くなり沢らしき形も消滅してしまう不思議な場所だ。

中曽根コース入口  13:44


金精沢の林道を利用すると舗装道路歩きを最短にできることが判ったのが今日の一番の収穫かな。

山野・史跡探訪の備忘録