須川温泉から栗駒山〜秣岳周回(2008年10月)

年月日:    2008年10月14日(火)

行程:    須川温泉駐車場出発(06:44)〜賽の蹟(07:15)〜名残ヶ原(07:27)〜笊森方面分岐(07:34)〜産沼(08:34)〜栗駒山山頂(09:20 - 09:50)〜天狗平(10:03)〜御駒ヶ岳(10:15)〜1,333m鞍部(10:40)〜シロガネ草原1,397mポイント(11:18)〜秣岳(11:53)〜廃道(尾根道)との分岐(12:11)〜栗駒観光道路(12:42)〜須川温泉に帰着(13:23)

仙台における6年間の学生時代、近隣の里山を徘徊することはあっても宮城県で山登りしたことは一度も無かった。栗駒という地名は聞いたことはあっても興味が無く、なんとなく岩手県方面にある場所という程度の認識で、地図で眺めたことすらなかった。紅葉の名所であるという。せっかくの長期連休、東北地方を北上するついでに寄ってみよう。どんな場所なのか様子見する程度に考えていたので、曇り時々晴れの天気予報でも問題なし。

6月に発生した岩手・宮城内陸地震の被害は甚大で、未だに栗駒山近辺の道路は全て県境付近で通行止め。実質的に秋田からしか栗駒山にアクセスできない。前日夜遅くに湯沢から国道398号線を子安峡方面に向かい栗駒観光道路を経由して須川温泉に向かった。至るところ道路にひびが入り交互通行になっている。夜半過ぎに須川温泉の駐車場に到着し車中泊。

風が吹いて放射冷却がなく快適な朝。曇り時々晴れの予報ではあるが、朝方は青空が広がっていた。栗駒山は人気の場所だけあっていろいろなコースを選択できるのが魅力だ。一日天気が持ちそうなので計画していた大きめの縦走コース(栗駒山〜秣岳)を試してみる。前日に吾妻連峰でややハードな山歩きしたので、体調次第では天狗平から真っ直ぐ戻ってくることにする。

歩き始めてすぐに蒸湯なる小屋がある。このときは無人。中にカーテンで仕切られた部屋が3つある。あまりムシムシしていない。湯口に仰向けになって毛布で体を包んで蒸すとのこと。

あちこちで噴気の上がる火口周辺はナナカマドの紅葉が見頃。浴衣姿の宿泊客が歩いていた。賽の蹟に立ち寄り名残ヶ原へ。

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火口周辺    07:07    


賽の蹟  07:15
名残ヶ原  07:27


程無く分岐点に至り、沢を渡って笊森方面へ向かう。この辺りのどこかに温泉の水源があるらしく水管が這わしてある。できるだけゆっくり休憩しながら登っていった。本日は清澄度がいまひとつだが、早池峰らしき山が遠くに見えている。次ぎの沢を渡った後はひたすらチシマザサにハクサンシャクナゲが混じる藪中の道を一本調子で登る。どのくらい歩く人がいるのか知らないが、道の状態はとても良い。勾配が緩むにつれて藪の丈も低くなり眺望も良くなる。

産沼で一休みして、笊森避難小屋への分岐を経て一気に山頂へ。標高1,300m以上のナナカマドやサラサドウダンの紅葉は完全に終わって葉っぱ一枚残っていない。残念。

栗駒山北東斜面  08:58


山頂直下で下ってきた年配の単独行男性と遇った。人気の山でさぞハイカーが大勢いるだろうと思っていたが頂上は無人で拍子抜け。3連休明けだから当然か。

栗駒山山頂  09:30


コンクリートで補修した三角点標石が痛々しい。中央コースは崩落のため進入禁止だった。宮城県側には豊かな森林が広がる。美しい広葉樹林の紅葉愛でるなら宮城県側から登るのが良さそう。一方、紅葉したサラサドウダンやナナカマドが緑の笹原にちりばめられた光景を愛でるなら自分が辿った須川温泉側が良い。

南側(宮城県側)から強い風が吹いており少し寒いので、風の当たらないベンチで軽食休憩。前日MAXVALUで買ったおにぎりは米粒が硬くなってしまって噛み締めるのに時間がかかる。コンビニのおにぎりとは異なり余計な添加物を入れていない証拠である。米粒噛み締めている間に単独行の登山客(性別不明)が現れ中央コースへ下っていった。自分の辿ってきたコースのもう一回り外側を通って須川温泉に下るのであろう。

天狗平に向かう途上で須川コースを登ってきた10名程度と出会った。天狗平から細い道を辿って御駒ヶ岳に向かう。やたらと靴が滑った跡が残っているので先行者がいる模様。御駒ヶ岳山頂に至るまでの崖沿いの道は眺望良し。

昭和湖  10:12
龍泉ヶ原と秣岳  10:12


御駒ヶ岳から1,333m鞍部までの下りがとても長い。サラサドウダン街道なる板がぶら下がっている。確かにサラサドウダンの木が多いので、紅葉初期の見所であろう。6月下旬頃も花が一杯で良いかもしれない。

1,333m鞍部から先の天馬尾根は広い黄金色の草原地帯が続く。緩やかな起伏が続く稜線上に草がなびく光景は鳥海山・長坂道の笙ヶ岳に似ている。ずっと潅木藪が続くと思っていたので、予期せぬ自分好みの場所の出現が嬉しい。シロガネ草原の彼方に構える丘陵はモン・サン・ミシェルの如し(行ったことないけど)。秣岳の昔の名前は馬糞森だそうな。黄金色の草原を見て馬糞を連想したってことか。確かに色が似ている。馬になぞらえて馬糞(まぐそ)から秣(まぐさ)とはうまく言い換えたものだな。

シロガネ草原  11:18
栗駒山  11:22


丘陵は岩ゴツゴツで、岩の上からの眺め良し。秣岳の頂上に人がいるのが見えた。

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秣岳  11:28


丘陵を下り広い鞍部の草原地帯を通って秣岳に登る。途中で頂上から空身の男性が下ってきた。朝早く栗駒観光道路から登ってきて、8:00から4時間近く晴れるのを待っているのだと言う。今年は10月4日頃が紅葉の見頃だったらしい。彼も時期を逸してしまったとのこと。そんなことを含めて10分程度おしゃべりしてから山頂に上がった。絶景ポイントであるのに青空が消えてしまったのが惜しまれる。

秣山山頂  11:53


秣岳からの下り、笹原の中に紅葉した潅木がちりばめられた様子を俯瞰し、栗駒山・天馬尾根の紅葉の盛期の様子を垣間見たような気がした。

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11:59


分岐点で尾根道から外れて栗駒観光道路方面に下る。尾根道の続きは笹が覆いかぶさり廃道状態である。空は一様に薄曇りとなって今ひとつ紅葉が冴えない。でもガスは発生せず山並みが見えるし日焼けしないで発汗せずに歩けるのだからまあまあの天気だろう。

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須川湖方面  12:21


下りは延々と見事なブナ林が続く。このブナ林は黄葉するカエデ類が豊富で個人的に最も好きな樹林だ。栗駒観光道路まで素敵な雰囲気の中を快適に下れた。

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秣岳登山口  12:42


栗駒観光道路歩くだけでも十分黄葉を満喫できる。捜索費用が莫大にかかることを脅し文句にした遭難未然防止のための看板が何箇所かある。最初に見たのはこれ。

『一人で入山 それが遭難の第一歩』

必ずしもそうとは言えないのではないか?人の数が多ければ多いほど事故の発生確率は高まる。パーティを組めば自分が遭難したときに助けを呼んでもらえるメリットがある反面、互いに同行者を巻き込む可能性があるのだ。事なかれ主義の警察の言いなりになっていたら何もせずに死ねと言われている様なものだな。次ぎに見た標語は、

『迷ったら・・・急がずあせらず救助待て!』

その通りなのだが、見当違いの場所を捜索していたらおしまいだな。笑えたのはこれ。

『遭難は山菜買うより高くつく』

飽きることなく順調に車道を歩いて須川温泉に帰着。秀逸な周回コースであると思う。

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須川温泉駐車場  13:23


午後2時頃までは多くの車で賑わっていたが、1時間程度仮眠しているうちに閑散としてしまった。国道342号線で山を下り、途中道迷いしたものの予定通り横手・簡保の宿で入浴。ちょっと儲け物した気分の一日であった。

山野・史跡探訪の備忘録