木ノ芽沢周遊・紅葉狩り(2008年11月)

年月日:     2008.11.09(日)

行程:     水と緑の広場出発(10:12)〜電波中継施設(11:01)〜山ノ神(11:14)〜金精林道(12:22)〜沼原線巡視路入口(12:27)〜沼原線58号鉄塔(12:42)〜沼原線57号鉄塔(13:02)〜標高900mの崩落地(13:13)〜浸蝕崖(13:37)〜金毘羅橋(14:02)〜車に帰着(14:33)

晩秋を迎えて週末の天候が冴えない。晴れの予報が出ないのでどこにも行く気になれず土曜日は山歩き無し。日曜日も曇りで遠出する気になれず寝坊。11月15日の狩猟解禁前に安全に山を歩ける最後の機会であるし、雨が降る気配はなく無風であるので、運動のために高原山にぶらりとでかけた。高原山ならば地形図準備せずとも歩ける。木ノ芽沢の右岸尾根を登って金精林道に抜け、ほぼ1年前に歩いた沼原線の送電線巡視路を辿って左岸尾根に至り、崩落による稜線寸断部を突破できればそのまま尾根を下って帰着する計画である。崩落部を突破できなければ56号鉄塔方面に巡視路を辿り沼代シダブ線を下って戻ってくることにする。ちょうど1年前に沼原線の巡視路を歩いたときは紅葉が終わりつつあった。よって、今回はもっと標高の低い場所から出発して沢に面した斜面の紅葉を愛でることにする。植林地帯のコアジサイの黄葉も楽しみ。

山縣有朋記念館に向かうときに前を走っていた小豆色の車は自分の目的地である木ノ芽沢の水と緑の広場に向かった。こんな日に水と緑の広場に行く家族連れがいるとは思えない。ちょっと怪しい。水と緑の広場の駐車場は狭い。顔を合わしたくないので、駐車場まで行かずに手前の退避場所に車を停めて出発。11月に入ると咲いている草花は道端のアザミくらい。


木ノ芽沢林道のゲートがある交差点から右岸尾根に上がる林道に進入。この林道はときどきゲートが開放されていることがあるが、関係者が出る時にゲートが閉じられてしまうので迂闊に車で進入してはならない。非常に勾配のきつい林道で、普通の車ならばオーバーヒートしかねない。

延々とスギ植林地を登っていくのであるが、よく手入れされているので光が入り下生えが多く、時折美しいウルシやカエデの紅葉が見られる。


数年前、地形図上の破線を辿る目的で初めてこの尾根を訪れた。この破線はかつて八方ヶ原ハイキングコースとして整備されたが現在は廃道化している。電波中継塔より上部では部分的に道跡を識別できるが、下部は林道建設のためか判然としない。今回、電波中継塔の手前で植林地の中にうねうねとした窪みを発見できた。江戸時代の八方ヶ原越えの道であったかどうかは判らないが、明治後期の炭焼き全盛期に使用された道であることは間違いない。

電波中継塔の右側の際を進むとごく浅い谷筋に入る。谷筋の右側の植林地を適当に歩いていくと土塁に出合う。土塁手前の最高点と思しき場所に三角点と陸軍用地の標柱がある。土塁と陸軍用地の標柱は大正時代にこの地が東山軍馬育成牧場の一角であったことを物語る。

三等三角点(高倉)・標高762.9m
陸軍用地の標柱


土塁を越えて植林地を横切り丘陵の最高点に向かい、矢板薪炭合資会社社員一同と沢入の製炭請負者が明治三十九年に建てた山ノ神に詣でた。

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山ノ神   11:14


この先はしばらく土塁沿いに道跡がある。やや尾根が狭まると金精川側斜面のヒノキ植林地の中に道跡が明瞭だ。木ノ芽沢側の斜面は勾配がきつく植林に不向きであるために広葉樹林が残されており紅葉がきれいだ。

木ノ芽沢右岸尾根の紅葉(標高800m付近) 11:36


尾根幅が広がると延々とカラマツの植林地帯が続く。ミヤコザサが深く道跡の判別はもはや不可能だ。昨年下ってくるときに一度迷ったのも当然か。シカが数頭走り去った。

金精林道に抜ける前に標高920mの丘陵を横切る。西トンボ沢支流側の斜面は伐採後に植林しなかったらしく肩くらいの丈のミヤコザサ藪になっている。手入れなんかしなくても樹木が育つことなく笹原が維持されているようだ。丘陵の上でも土塁を発見。

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標高920mの丘陵からの眺め   12:11

遠くに見えるのは前黒山方面


今年は紅葉の当たり年なのだろうか。所々で美しい残り紅葉を愛でることができて退屈しない。金精林道に抜けてすぐに沼原線の送電線巡視路に入った。

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沼原線巡視路入口   12:27


西トンボ沢を渡り58号鉄塔で軽食休憩。写真撮影には向かない構図だがここから見るミツモチ方面の眺めは雄大だ。昨年はガスの中に消える送電線を見ただけだったので、しばし眺めに見入る。既に午後一時近いので、八方湖には行かずに57号鉄塔から木ノ芽沢左岸尾根を下ることを決めた。

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沼原線57号鉄塔方面   12:52


八方牧場の南端をかすめて東トンボ沢を渡り57号鉄塔到着。月山や箒川流域の田園地帯が良く見える。

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沼原線57号鉄塔から東側の眺め   13:02


57号鉄塔から街道跡?を辿って木ノ芽沢左岸尾根を南下。この尾根は高原山で最もアブラツツジの木が多いのではないだろうか。カエデ類も色付き良く、今まで見た高原山の紅葉で最も秀逸に感じる。

アブラツツジ・標高970m付近    13:07
カエデ    13:13


木ノ芽沢左岸尾根の街道跡は標高900m地点で大規模に崩落している。尾根両側から浸食が進行して稜線がキレットになっているため、稜線を通ることもできない。2005年は尾根を登ってきてここで退却を余儀なくされた。今回は東トンボ沢の滝から上がってくる小尾根を下り、勾配が緩くなったところで崩落地下部の沢筋をトラバースして尾根に登り返すつもりだった。少し小尾根を下ったところで崩落地に向けて下っていくシカ道発見。これを辿っていくことで東トンボ沢まで下らずともたったの数分で崩落地を突破できた。ラッキー。

崩落地を突破するとしばらくは尾根幅が広がりなだらかな丘陵を彷徨う感じで下っていける。

標高750m地点の木ノ芽沢側斜面は浸食されて奇妙な景観を呈する。2005年時は渡るのが怖くて稜線に上がって巻いた。最近変なところばかり歩いて感覚が麻痺しているのだろうか、怖々ながらザレた場所も突破してしまった。浸食崖の先もアブラツツジ街道が続く。2005年にその片鱗を見てはいたが、ここまで見事に色付くとは思わなかった。

白い浸食崖  13:37
アブラツツジ街道  13:41


崩落個所はさらに2箇所存在する。最後の崩落地は急斜面の植林地上端部にある。決して安心して辿れる道ではない。標高570m地点から作業道を辿って金毘羅橋へ降下。木ノ目(芽ではありません。)沢林道をのんびり歩いて戻る。

きのめざわばしに至る前にチリンという熊避け鈴の音が聞こえた。林道には人の姿無し。この地域にキノコ採りに来る人がいるとは思えない。ならば川か?沢を注視するとフライを投げている2人の密漁者を発見。まともな釣り人なら9月20日から禁漁になっていることを知らぬはずはあるまい。知らぬとしたら常に鑑札無しで密猟していることになる。かなり悪質な連中だ。こいつら一年中釣りのことしか頭にないのか?逆切れされて揉め事になるのは嫌なので関わり合わなかった。

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水と緑の広場   14:25


水と緑の広場の駐車場には今朝方見た宇都宮ナンバーのあずき色の車があるのみ。密漁者はやはりこの車の主だったか。今回はワイパーに警告を書いた紙をはさむだけにした。

山野・史跡探訪の備忘録