丹沢三峰〜丹沢山〜塔ノ岳〜表尾根(2009年3月)

年月日: 2009年3月15日(日)

行程: 宮ヶ瀬・三叉路バス停(07:35)〜高畑(旗)山(08:40)〜1352m・東峰・本間ノ頭(10:26)〜1360m・中峰・円山木ノ頭(10:50)〜1345m・西峰・太礼ノ頭(11:07)〜1372m・瀬戸沢ノ頭(11:19)〜丹沢山(11:44-12:00)〜塔ノ岳(12:44)〜烏尾山と三ノ塔の間で大休止(13:50-14:10)〜葛葉の泉の広場(15:40-15:55)〜菩提バス停(16:30)

最初に丹沢で関心を持ったのは丹沢山から宮ヶ瀬に下る長い尾根であった(正式名称は無い?)。丹沢・三峰と呼ばれる瘤が連なる長い尾根を一度は辿ってみたい。丹沢・三峰を目的地として登ることはないし、マイカー利用でないから長い尾根を往復する必要もなく、丹沢山から先のコースと組み合わせることになる。丹沢山から先、蛭ヶ岳と塔ノ岳のいずれに向うにしてもドロドロの尾根道を避けて通れない。ドロドロの急降下はもう体験したくないので蛭ヶ岳には向う気がしない。塔ノ岳方面からヤビツ峠に向う表尾根と組み合わせることにしよう。塔ノ岳に登るハイカーの大多数が辿る道だし、前回登った大倉尾根の道が乾燥していて歩きやすかったので、表尾根も快適であろう(考えが甘かった。)。

バスの便が多い南側に下山すると帰りの時間を気にしなくて済むし、静かな雰囲気の尾根を歩きたいので、ハイカーの少なそうな北側(宮ヶ瀬)から登って表尾根を下ることにする。下山後に顔を洗って着替えすることを考えるとハイカーの多い蓑毛に下るのは避けたい。ということで、下山予定地を菩提にした。

本厚木6:55発宮ヶ瀬行きのバスに乗り、三叉路で下車。札掛方面に少し歩くと登山道入口がある。植林された取り付き部は急傾斜でジメジメしているが、凝灰岩の山なのでぬかるみはなく快適である。山ノ神まで上がれば尾根伝いの道となる。この辺りも辺室山同様に斜面の雑木が間引いてある。コナラ・カエデ主体の雑木林とスギ植林が交互に現れる。一見美しい林に見えるものの、地質も植生も鬼怒川右岸尾根に似ていて、ヤマビルが出るというのがうなずける。

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地形図では危険箇所が少なそうに思える道だが、基本的にアップダウンの多い稜線を避けて東側斜面についており、一歩誤ったら転落→即死となる区間が多い。これが一般登山道とはね。東丹沢は全般に凝灰岩や礫岩が浸食されて切れ落ちている場所が多くて怖い。昔住んでいた川崎のマンションの大家の奥さんは仲間とハイキング中に転落して亡くなった。旦那さんはしょんぼりと「景色を眺めていて足を踏み外したのだろうか。」と語っていた。場所は聞かなかったが、近郊のハイキングだから丹沢だったのかもしれない。足を踏み外して死ぬようなハイキングコースなんてあるのかと思ったものだが、東丹沢を歩いてみてそれが現実の話であったことを納得。

最近は無理してガツガツ登ることをせず、勾配に合わせて単位時間あたりの仕事量を一定に保つように歩くことを心がけている(すなわち、急な場所をチンタラと登ってるだけ)。急登区間で後続の男性が勢い良く登ってくるのが見えた。小生、平地だけは歩くのが速いので、くっついたり離れたりしながら高畑山到着。

展望台に登ってみたが眺め悪し。展望台の周囲にはシソと思われる枯れ草が目立つ。大山から不動尻に下る途中でも同じような光景が見られるので、シカはシソ科植物を食べないようである(モルモットの好物なんだけどね。)。

水分補給して、後続男性に挨拶して先行(ここでエネルギー源を補っておかなかったのがまずかったようで、本間ノ頭の登りでバテた。)。道は尾根東側の山腹を巻いていく。『青宇治橋』方面を示す道標が現れた。橋だと?このまま進むと下山してしまうことになる。左側にも踏み跡があって、シカ防護柵の扉を抜けてみるとそこは送電線鉄塔で眺めが良く、これから辿らんとする尾根がはるか高く見える。これで道を間違えたことに気づいた(帰宅後に確認したところ、高畑山を発った直後に誤った道に入ったらしい。分岐の道標があったかどうか不明。ここで道を間違えたという話は聞かないから自分が見落としたのだと思う。)。

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鉄塔からの眺め


地図もガイドブックも持たずに来たので現在位置を特定できないが、辿るべき尾根の南側に居て、尾根まで標高差100mくらいであろうことは判る。こんな場合は適当に尾根を登ってしまえば良い。丹沢でバリエーションやるつもりはなかったのに、とんだハプニングだ。ヤブツバキが散見される明るい尾根であり、辿るのは容易。道はないが赤い境界杭が点々と設置されている。

844mピークに上がってみると期待していた登山道は無かった(地形図で稜線部を通るように記されている破線路は、実際には北側の斜面を巻いている。)。山頂近くの木に黄色いテープが巻かれているので、この尾根を辿って青宇治橋に下る登山者がいるのかもしれない。稜線を辿っていくと右下から登山道が近づいてきた。山を巻いているので人工的に足場を作ってあったりして危険度が高い道である。『金冷シ』と書かれた場所があったが、地形図上のどこであったか覚えていない(金冷シって怖くてキンタマ縮み上がるってこと?それとも肝を冷やすという意味か?)。

人間は立てないような場所にカモシカがいた。臆病なシカのようにどこまでも逃げることはせず、ちょっとだけ離れて見返り美人ポーズ。可愛いもんだ。


痩せ尾根区間を抜け、本間ノ頭に向けて勾配がきつくなってきた。長年、シカに食われ続けたためなのか、それともこんな高い場所で柴刈が行われてきたためなのか、樹木が奇妙な景観を呈している(樹種不明)。

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道間違えてだいぶ時間をロスしたはずだが、登山道の霜柱が崩れていないので先行者はいないようだ。余計な山登りしたせいか、脚が重い。明日の仕事のことを考えると無理は禁物。標高950m付近で後続の男性が追いついてきたので先行してもらった。山歩きして抜かれた経験は鳥海山でバテた時以来のこと。この男性は本当に登るのが速くてあっというまに姿が見えなくなってしまった。丹沢山に登るにはどの方角から登るにしても標高総和1500mくらいを一気に登るのであるから、栃木の山登りよりも労力を必要とする。帰ってからWebで調べたら、宮ヶ瀬から4時間程度で登っている記録があった。丹沢には健脚者が多い。

朝ごはんはしっかり食べたはずなのに空腹感を覚え、標高1047m地点のブナに腰掛けてエネルギー補給。

腰掛ブナ


エネルギーが体に廻るまであと1時間くらいはつらい山登りになりそうだ(実際、ここから本間ノ頭までの300mの登りがとてもつらかった。)。本間ノ頭の東の肩まで上がると初めて丹沢山が見えるようになる。次の名無しの1350mピークの下りでは蛭ヶ岳が良く見える。

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蛭ヶ岳


円山木ノ頭手前の鞍部は太いブナの木立が美しい。

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残雪で白い丹沢山を間近に見ながらも円山木ノ頭から急降下を強いられるのでガックリ。太礼ノ頭への登りで男性登山者が下ってきた。丹沢山到着までに下ってきたのはこの一人のみ。静けさを期待して宮ヶ瀬から登るという選択は正解であった。

瀬戸沢ノ頭はブナとミヤコザサの組み合わせで雰囲気の良い場所。シカ防護柵を抜けると蛭ヶ岳が良く見える。前日の降雨と今朝の冷え込みで締まり具合の良い雪の上を歩いて丹沢山到着。昼近いので大倉やヤビツ峠方面から登ってきたと思われる健脚者が10名程度昼食休憩中。先行した例の男性も休憩していた。南端の笹原の斜面で富士山を眺めながら昼食休憩。

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丹沢山からの眺め


塔ノ岳に向う登山道のドロドロには参った。前回よりはるかにひどい。たまらず横の笹原の踏み跡を辿るのであるが、ところどころ枯れ枝を積んで通せんぼしてある。大勢の登山者を招き入れて尾根を抉ってドロドロにしている一方で、植生を保護するために笹原を歩いてはならないなんて矛盾している。那須では他所から石を運び入れて抉れた登山道を補修した。荒れの進行を食い止めるという意味において、木道設置や石を敷き詰めるのは正しい選択であると思う。立派な階段作れとか砂利敷けとか言うつもりはないが、丹沢でもエコにこだわらずこれ以上抉れないようにする必要があるだろう。

塔ノ岳から丹沢山に向う人は20名程度だったろうか。泥んこ道を走って登ってくるトレイルランナーも何名かいた(山の中を走っている連中は自分とは目的が異なる全く異質の存在なので、登山者とはみなさない。)。塔ノ岳は大勢の登山者で賑わっていた。暖かくなったら広い山頂がハイカーで埋まってしまうことだろう。そろそろ自分が丹沢を歩く季節は終わりのようだ。

塔ノ岳
塔ノ岳から見る表尾根・遠くに見えるのは大山


表尾根からの景色は文句なしに素晴らしい。それにひきかえ、道の状態のひどいこと。乾燥した快適な尾根道を期待していたのに、登山道の性質は丹沢山と同じで富士山の火山灰に覆われている。歩く人が多いので、ドロベチャグチョ度は極限状態。栃木でこんな道歩いた経験ないぞ。なんで皆平然として楽しそうに泥の中を歩いていられるのか理解不能。丹沢歩く人にとってヒルと泥んこは当たり前ってことか。恐れ入ります。泥道歩きで不快感が増し、写真も記録もとらず黙々と下った。

鳥尾山からの下りは全コース中最悪。スズタケ薮の中で道が深く抉れて逃げ場無し。土留め階段があるのに滑ってしりもちをついた。とっさに両手をついたものの尻の一部とザックに泥がついてしまい、気持ちがプッツン。笹薮が切れて開けた場所があったので、登山道を離れて一目につかない場所で尻を太陽に向けて泥を乾かして落とした。様にならん。

歩きを再開してもしばらく怒りが収まらぬまま三ノ塔を通過。二ノ塔の下りでようやく泥んこ道が消えて救われた気分になった。抉れてはいるものの、歩く人が少ないので荒れている感じはしない。途中、登ってきた人は一人だけ。舗装林道を跨ぎ、二度目に舗装林道に出たところで山道は終わり。少し舗装林道を下ると葛葉の泉の広場に至る。

葛葉の泉の広場


ここには菩提生産森林組合が登山者のために設けた水汲み場がある。沢で顔を洗って着替えして、のどかな里の春の雰囲気を満喫しながらバス停まで約40分の下り。菩提バス停からは秦野駅にも渋沢駅にも出られるので、先に来たほうに乗ればよい。終日天気が良く、悲惨な尾根道歩きがうそのように、最後は気分良く締めくくることができた。

山野・史跡探訪の備忘録