木ノ俣川落合から西俣沢・ヒツ沢間尾根を辿って大長山往復(2009年3月)

年月日: 2009年3月21日(土)

行程: 落合出発(09:10)〜木ノ俣発電所水圧管上部(09:43)〜大長山(13:44-14:00)〜木ノ俣発電所水圧管上部復帰(15:58)〜落合帰着(16:27)

強風のため、明るくなったらすぐに行動開始というシナリオが崩れて、当初予定した行程は不可能になった。深山隧道周辺の旧道探索して時間つぶしした後、他にも試してみたいことがあったので木ノ俣川沿いの林道に進入。

10年以上前、大佐飛山へ登るルートとして最初に着目したのが木ノ俣発電所がある尾根(末端が木ノ俣川左俣沢と西俣沢の合流点:落合である。)であった。様子を探った結果、尾根突端が急峻で危険でしかも発電所施設でブロックされていたため、当時の技量では尾根に取り付くことすらかなわなかった。昨年秋にヒツ沢側からこの尾根の1,550m地点に上がって見たが、猛烈なチシマザサ藪で身動きがとれず無雪期に辿るのは不可能に近いことが判明。しかし、残雪期となれば話は別だ。チシマザサ藪の存在は、深く積雪する場所であることを示す。昨年残雪期に西俣沢から西村山に詰めた時もこの尾根上に残雪帯を確認している。アップダウンが少なく取り付き以外に急勾配が無いので雪質次第では魅力的なコースだ。昨年赤ヤシオを見ようとしてなんとか取り付くことができたので、この尾根の残雪歩きを試してみる。本日は出発時刻が遅いし日帰りの予定につき、行けるところまで行って引き返す。

画像
画面中央下側の雪が残る尾根(大長山から木ノ俣川発電所まで続く尾根)を辿った。
画面中央が塩那道路のある尾根、背景は三倉山・大倉山
2008年4月5日、西村山北側から撮影


木ノ俣川支沢で砂防工事が進行中。朝早くから工事関係車両が入り込んでいるが、終点の落合までスムーズに行けた。風の強い日は釣りにならないのでさすがに今日は他に車無し。渓谷沿いの高みにある樹木の揺れが収まっておらず、眼前のチシマザサの葉も時折激しく揺れる。朝日が当たって車の中は快適。様子見しているうちに眠くなってきたので、今日はもう山歩きしないつもりで居眠り。

物音がしたので目が覚めた。一台の車があって、釣り客が支度中。だいぶ風が収まってきたようだ。既に時刻は9時近く、気温も上がっているので風が吹いても寒くなかろう。もう今季このコースを辿る機会はないであろうから挑戦してみる。

標高680mの平坦地までなんとか這い上がる(木ノ俣発電所の水圧管の下部は立ち入り禁止で階段の利用は不可。取り付き場所は危険なので詳述せず。)。平坦地からは水圧管横の階段を利用。

画像


たまにサルの糞が落ちているので足元に注意を払いながら最上部まで一気に120m登る。雪は全く無い。塩那道路のある対岸尾根の様子を見て、標高1,200mより上に行かなければまともな残雪帯がないことを覚悟。標高1,000m付近までは昨年登った実績がある。その先の高度差200mの区間のチシマザサ藪の状態が問題だ。

標高1,100mあたりから薄い残雪の島がチラホラと現れるようになった。薄くて踏み抜けるもののチシマザサが立っているのと倒れているのでは気分的に大違い。早く雪が消えてしまうところはチシマザサが他の植物に駆逐されて藪が薄いのでカモシカ道を辿っていける。標高1,200m付近から残雪帯が連続するようになり、栃木県最悪級のチシマザサ藪につかまる心配はなくなった。深いチシマザサの海である標高1,500m近辺の緩斜面は美しい雪原となる。

標高1,300m付近で振り返る。
標高1,500m近辺の緩斜面(帰りに撮影)


針葉樹が少なく一貫して見通しの良い尾根である。西俣沢中央尾根の急斜面に道筋が浮き出ているのが見えた。2004年4月に大佐飛山に登った帰りに大長山から西村山の間の稜線から見えた謎の道だ。部分的に崩落している場所がありそうで、辿ることは不可能と思われる。

西村山に突き上げる西俣沢中央尾根(背景は黒滝山)
土橇道の跡


標高1,550mを過ぎて自分にとって未知の領域に入った。山中泊できる装備を担いできたためか、早朝に暇つぶしで旧道探索して疲労しているのか、足取りが重い。既に時刻は12:30であり、このまま推移すると大長山に到着するのは13:30過ぎになる。タイムリミットを14:00として登りを続行。

標高1,550m付近から見る木ノ俣川の谷
那須・大倉山方面


標高1,600m以上では雪庇が発達し眺め良し。標高1,600m辺りから尾根が狭まりコメツガが多くなる。1,675mポイント付近はシャクナゲやツツジの藪で踏み抜けが多くやや不快である。

1,675mピークと大長山の間は勾配が緩いためルート取りの自由度が高い。地形図でルートを検討した時は右手に見えるヒツ沢源頭部の雪原を横切って大長山(1866mピーク)北の鞍部に出る案もあったが、尾根筋を維持し1,730mで尾根を横断する溝を渡り、コメツガ林の緩斜面を上り詰めて大長山南東の標高1,800mの主稜に到達。主稜には数名の新しいトレースがあった。既に大佐飛山に登頂して帰った後らしい。出発したころは強風が吹いていて寒かったであろう(横河電機山岳部のページによると、21日に大佐飛山に行ったのは横河電機山岳部のパーティ+男女ペア一組+単独行男性2名らしい。暴風雨の20日にテント泊していたパーティが2組も居たとはね。横河電機山岳部のパーティは21日も山中泊したとのことなので、黒滝山経由で戻れば顔を合わせていたはず。)。

まだタイムリミットまで余裕がある。昨年辿った大蛇尾川中央嶺を眺めたい一心で大長山に登りつめ、コメツガに被われた山頂部を突っ切り西端に向かった。出発時間の関係で大佐飛山には行けなかったものの再びこの景色を眺めることができて満足だ。

画像
遠くの左端が日留賀岳、その隣が鹿又岳の尾根、中央が大蛇尾川中央嶺(1870m、1872m、名無山)、右端が大佐飛山)


山頂でエネルギー補給して下山開始。黒滝山経由で下山するとアップダウンが多くて疲れるし、行程が長く日没までに車に帰着できないと思われたので、登ってきた尾根を戻ることに決定。雪が適度に緩みやや傾斜のきつい雪面でも安全に横切れるようになり藪を回避しながら順調に下山。

その他、下りで見たもの。

ブナの木に穿たれたキツツキの索餌孔
内側だけ黒焦げになった枯れ木


水圧管上部まで復帰し、西日に照らされた木ノ俣川の谷を眺めて休憩。

画像


取り付き部の下りも無事クリアして帰着。雪の締まり具合はまあまあでアイゼンもワカンも使用せず、全行程安全長靴で歩行できた。

雪の消えるのが早かった昨年よりもさらに積雪量が少ない。このまま積雪しなければ今年の残雪歩きは5月の連休前に終わってしまいそうだ。

山野・史跡探訪の備忘録