餅ヶ瀬から中袈裟丸山往復(2009年6月)

年月日: 2009年6月14日(日)

行程: 餅ヶ瀬川林道ゲート出発(08:47)〜餅ヶ瀬川雨量観測所前(09:36)〜1,495mポイント(10:45)〜中袈裟丸山(12:00-12:10)〜餅ヶ瀬川林道ゲート帰着(14:55)

那珂川の状態が良くならないとアユ釣りする気になれないので、本日はこの時期としては珍しく山を選択。行く先は2年振りの足尾である。主目的は渓流釣りでも山登りでもなく袈裟丸山の植物観察。袈裟丸山は南北に長い稜線の東側(足尾側)直下に断崖を持つ。以前からこの崖に生育する植物を観察したいと思っていたので、餅ヶ瀬川の中道尾根から崖に接近して、天気が好ければついでに中袈裟丸山まで往復してみる(このコースは2006年にTNHCねくらハイカーさんが歩いた詳細な報告があります。現役サイトは消えてしまいましたが、Internet Archive Wayback Machine で "http://www.k2.dion.ne.jp/~tnhc/index.html"で参照可能です。)。

曇りで夕方から雨の天気予報であったが、朝から雷が鳴り、自宅を出発した6時半頃には広範囲で雨が降りだした。目的は植物観察でも場所が場所だけに本格的な登山である。このまま雨が止まなかったら足尾に行く意味がなくなってしまう。昨日寝不足状態でアユ釣りしていた疲れがとれておらず、猛烈な眠気に襲われたので、塩野室の近くで路肩に車を停めて仮眠して様子見。頭上の樹木から車のボンネットに落ちる雨滴の音を聞きながら寝ていたので、会社の机にボタボタ雨漏りする夢を見た。

雨が止んだようなので運転再開。神子内の道路沿いにたくさんの車があり、堰堤の上に5,6人が立って下のプールに釣り糸を垂らしているのが見えた。本日は渓流の特別解禁日で、養殖場から持ち込んだ渓流魚をたくさん放流して釣堀状態にしているのかもしれない。餅ヶ瀬川でも同じことをしていた。

地形図を見て餅ヶ瀬川は広くて穏やかな谷と思っていたのだが、実際の餅ヶ瀬川は両岸の傾斜がきつい本格的な渓流である。林道は狭く、車がすれ違える場所が少ない。幸いすれ違ったのは1台のみで、スムーズにゲート前まで行けた。朝雨が降っていたからであろう。ゲート前にあった車は釣り客のものと思しき1台だけ。

右岸側に移って程なく左岸側から支流の滝が架かっているのが見える。川床に降りて道草。川床には大きな花崗岩がゴロゴロして雰囲気の良い渓相である。


2004年に楡沢から二子山に登る途上で、尾根上で餅ヶ瀬川から登ってきたと思しき犬連れの男性と出遇った。餅ヶ瀬川から登るとすれば林道が右岸側にある区間に登路があるのであろうと思っていたのだが、作業道が一本あるのみ。彼は岩タケをたくさん採っていたので、どのみち楽な登路ではないのだろう。

左岸側に移った以降は林道は左岸側のだいぶ高いところを走っており、崖上から渓流を見下ろして歩くところは大蛇尾川林道に似た雰囲気だ。道端の草花はサワギクが少々とクリンソウがポツンと咲いているのを見たのみ。


空中の水蒸気濃度が高くて数十m先がもんやりとして見える。谷奥は雲がかかっているものの、天候は回復基調。湿度が高くても適度に涼しくて快適な林道歩き。餅ヶ瀬川雨量観測所がある場所が中道尾根取り付きがある右俣・左俣合流地点への下降路入り口である。うっかり林道を進んでしまったものの、中道尾根が見えたのですぐに気づくことができた。

餅ヶ瀬川右俣への下降点(写真左)


渡渉は楽。渡った先の平坦地の踏み跡が不鮮明だが取り付きの踏み跡はすぐに見つかった。取り付き地点の中道尾根は幅が狭く反対側の左俣(押沢)を見下ろせる。しばらく胸丈レベルのスズタケの藪中に明瞭な踏み跡が続く。カラマツ林を抜けるとスズタケ薮が薄くなりミズナラやブナの広葉樹林とミヤコザサの林床に変わる。時折日も照って涼しい風が吹き渡り、エゾハルゼミの大合唱につつまれて快適な尾根歩きとなった。


この天気の状態が長く持ってくれれば良いのだが、今日はいつ天候が悪化するか判らないのでどうしてもオーバーペース気味になる。急登区間を抜けた1,450m付近に昔のワイヤーが放置されているのを見る。1,495mポイントのある尾根は南側のダケカンバ林が美しい。

1,495mポイントのある尾根のダケカンバ林


1,495mポイント西側に眺めの良い場所があり、小法師尾根の笹の平や奥袈裟丸山方面が見える。標高1,800m以上の県境尾根に雲がかかっているのを見て時間が気になり先を急いだ。

小法師尾根方面


標高1,500mから1,550mの区間は、左手にダケカンバ林を見ながら、尾根北側に片寄ったコメツガ林に沿って登る。

標高1,570m付近に赤テープが付けられている。下ってくるときに見過ごして南東に下ってしまいかねない要注意の場所だ。ここから約800mにわたりアップダウンの少ない尾根歩きが続き順調に県境尾根に近づく。

いよいよ最終目的地の崖を目指して高度差250mの急登区間に入った。天候が安定しているうちに登ってしまおうと気はあせるが、傾斜がきつくて右往左往。笹や木につかまりながら安全そうな場所を選んでなんとか這い上がる。登りはなんとかなるとしても、帰りに霧が立ち込めていたら正しい方角に下れる自信がない。失敗して何度か登り返すうちに体力消耗して、雷雨にでも遭ったら最悪だ。

古いトラロープが一本あるが、繊維がボロボロで使い物にならん。この場所はトラロープに頼らずとも突破可能。その上方にある新しいトラロープはしっかり結わえられており、とても助かる。

登っているうちに上空の雲の厚みが増してきたような気がする。今期最後のシロヤシオに慰められてようやく難所突破。

2009年シロヤシオ見納め


県境稜線に抜ける直前に少しだけ崖に近づくことが可能だ。ユキワリソウの開花を初めて拝むことができた。袈裟丸山にもコウシンソウが自生するらしいが、少なくとも現在地の近くにはないようだ。予想以上に勾配がきつくて移動の自由がきかないし、天候も気になるので本日の調査はこれまで。

ユキワリソウ


シャクナゲの咲く県境尾根を南に辿って中袈裟丸山到着。こんな天気だから誰もいないのは当然か。山頂到着時は周囲は何も見えない状態だったが、10分滞在する間にぼんやりと東側の谷の様子が見えるようになり、頭上の雲間から太陽が覗いて中袈裟丸山頂がパーッと明るくなった。エゾハルゼミの合唱が山上まで響いてくる。

中袈裟丸山頂


本日は藪歩き周回するつもりはなかったので地形図コピーは中道尾根の部分しか持っていない。ガスに巻かれたら沢入方面に登山道を縦走して大回りすることを覚悟していた。幸い見通しが利くので往復案を試す。登ってきたばかりで記憶が鮮明であり、方向を見定めて安全に難所を下ることができた。発汗しながら休み無しで登ったため、いつもに較べて脚の疲労が激しい。適度に休みながらのんびり往路を戻って車に帰着。

山野・史跡探訪の備忘録