雲竜渓谷(2009年7月)

年月日: 2009年7月19日(日)

行程: 林道ゲート出発(08:04)〜稲荷川展望台(08:42)〜入川(09:36)〜雲竜瀑前(09:53)〜雲竜瀑中間地点(10:20)〜雲竜渓谷ウロウロ(10:20-12:56)〜林道ゲート帰着(14:07)

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雲竜瀑(対岸から)


3連休だというのに気合が入らん。降水が少ないので那珂川の状態は先週より悪いと思われる。これでは稚魚放流している上流側に釣りに行く意味がない。スカッと晴れる見込みが無いので景色目的の山歩きも今ひとつ。土曜夜にウダウダ考えているうちに、雲竜渓谷が未訪であることに気がついた。栃木県に長年住んでいながら雲竜瀑を見たことがないなんてもったいない。この機会逃す手はないな。ここなら地形図を準備しなくても歩けそう。雲竜渓谷にはコウシンソウが自生するという。ひょっとしたら念願の仰け反りポーズを拝めるかもしれない

早朝起きることができず、氏家の自宅を7時頃に出発。平地では雨が降っていたが、塩野室を過ぎるあたりから奥日光の上空に青空が広がり始め、日光連山もくっきり見えるようになった。

稲荷川右岸沿いの細い舗装林道を進むと、まだ8時前だというのに観光客がいる。東照宮の裏手にあたる場所だが、不勉強で何があるのか良く知らない。

舗装林道が二俣に分かれる場所で両方共にゲートで閉じられている。先行者は居ない模様。本日の雲竜渓谷は貸切か?

ゲート手前のスペースに車を置いて左側の林道に進入。本日は久しぶりに良い汗を流しに来たので、快テンポで歩いていく。九十九折の長い舗装林道歩きだが、初めてということもあって退屈はしない。陽射しは強烈でも適度に木陰があって空気も涼しくて助かる。歩き始めの頃に雲竜渓谷奥に見えているのはどうやら赤薙山〜奥の院ピークらしいが、電線が邪魔で写真撮影に向く場所は少ない。

稲荷川展望台に至ってようやく雲竜渓谷の概要を把握することができる。地形図を持たずに来たのでピークの同定ができない。おそらく女峰山頂は見えないのであろう。赤い断崖を持ち一番高く見えているのは2318mポイントかな。

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稲荷川展望台にて


日向砂防ダムに降りる道を右に見やり、さらに九十九折の舗装道路を登る。シカの親子が歩いていた。道路沿いにはちらほらではあるが夏の花が咲いている。この辺りでマルバダケブキが咲き始めているということは、そろそろ檜洞丸のマルバダケブキも見頃かな?

シモツケ
シモツケソウ
キオン
マルバダケブキ


最終目的地に近づきつつある頃、下手からバイクの音が響いてきた。オフロードバイクにしては音がチンケだ。正体は原付バイクのおじさんでした。この方の情報で次の分岐で迷わず沢底に下りることができた。目的は特に聞かなかったが、入川地点には雨量観測所らしき施設があるのでその見廻りにでも来たのかもしれない。自分よりも先に沢に下りて左岸側に向かっていったので、その後は会っていない。

入川地点はゴーロ状で広々としている。個体数は少ないがカワラナデシコや見たことがないナデシコ科と思しき植物が咲いている。ムシトリナデシコに似ているので、帰宅後にマンテマ属を調べてようやく名前が判明。

ビランジ
ホタルブクロ


少雨で稲荷川の水量は少なく、持ってきた沢靴に履き替える必要なし。

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ゴルジュ(友知らず)


ゴーロを少し進むと、両脇から水が滴るゴルジュに至る(後日知ったことだが、『友知らずと』と呼ばれている場所だそうで、昔はもっと深かったとのこと。入川地点の大堰堤が築かれたことによって土砂が堆積してしまったとのこと。)。このゴルジュを抜けると眼前に雲竜瀑が現れる。落差が大きく、空気抵抗を受けながらフンワリと流れ落ちる様が優美だ。エンジェルフォールを見てみたいものだな。

少し戻って左岸側にトラロープが下がっているのを発見。これにつかまって登ってみて少々後悔。先日中袈裟丸から餅ヶ瀬川中尾根に下降した際に負った左右の手の指の怪我がどちらも完治していないので、足が滑ったら体重を支えきれずに沢底に転落しかねない。帰りは別ルートを模索することにする。

上がった場所に薄い踏み跡が認められるが、これはカモシカによるものであって、観瀑者によるものではないようだ。足を滑らしたら沢底まで転落しかねない場所があり、先週廃林道で滑落したばかりなので緊張。雲竜瀑に近づいてみたが、全景の写真を撮るには不向きの場所。滝マニアでもなければ危険を冒してまで行く価値はないと思う。真冬の2月にこんなところに氷瀑登りに来る人たちがいるとはねえ。

雲竜瀑は4段から成り、下2段は落差が小さい。最も落差が大きい下から3段目の落水地点を見下ろして引き返した。

雲竜瀑全景
落水地を見下ろす


この後の行程詳細は省略。

崖にはシャジンやコキンレイカ、イワキンバイが目立つ。

コキンレイカ(ピンボケ)


目を凝らして見ると崖にピンク色の小さな花がちらほら咲いている。まだコウシンソウが咲いているのかと思ったら別種だった。ラン科の植物のようだが、見たのは初めて。これも帰宅後に調べてウチョウランであることを知った。ウチョウラン栽培ブームの頃には金に目が眩んだ採取者が跋扈し各地の自生地が消滅。絶滅が危惧されたこともあったというが、安価な園芸品種が出回るようになって、今は平穏を取り戻している。


天候が安定していたので余裕を持ってあちこちウロウロ。コウシンソウの仰け反りポーズも目にすることができた。


昨年の種子から発芽したと思われる小さなコウシンソウが複数認められる。コウシンソウの生き残り戦略は有効に機能しているようだ。いつ崩れ落ちるか判らない不安定な岩壁で皆必死に種を維持している。「頑張れよ。」と声をかけて帰路に着いた。

山野・史跡探訪の備忘録