箒沢公園から檜洞丸往復(2009年7月)

年月日: 2009年7月25日(土)

行程: 箒沢公園橋(08:26)〜板小屋沢の頭(09:55)〜ヤブ沢の頭(10:36)〜玄倉口登山道分岐(10:40)〜ユーシンへの下降路分岐(11:23)〜檜洞丸山頂(11:46-12:01)〜堰堤間ゴーロ(14:20-14:37)〜箒沢公園橋(14:46)

金曜日は出勤途中で横殴りの土砂降りになり傘をさしてもぐしょぐしょに濡れた。帰りも雨に遭ったがスーパーに逃げ込んでセーフ。関東地方の梅雨明け宣言は勇み足だったな。今年最も梅雨らしい天気だ>。

夜も雨脚が強かった。寝不足状態だったので晩飯を食ったらクテッと寝てしまい、目を覚ましたのが午前一時。本日の神奈川県の6時以降の降水確率は20%とのこと。青空も望めそうだが、気象庁の降水短時間予測では昼前に雨雲が通過しそうな気配である。山の上ならなおさらだ。でかけるかどうかぎりぎりまで迷ったが、どうせ汗ぐっしょりになるであろうから多少雨に降られようが関係ないとの結論に達し、西丹沢へ向った。

この不快な季節に丹沢に行く理由はただ1つ。檜洞丸のマルバダケブキの開花を見たいがためである。所持している丹沢のガイドブックにはブナ林の林床がマルバダケブキに埋め尽くされている写真が掲載されている。満開になったら見事なものだろう。ちょっと不気味ではあるが他所では見られない特異な光景であり、植生に興味を持つ者としては放っておけない。春に檜洞丸を通過した際にマルバダケブキがびっしり生えているのを確認したので、開花時期に再訪しようと考えていた。先週、雲竜渓谷でマルバダケブキが咲き始めていたから、檜洞丸も咲き出していることだろう。今週は栃木に戻る予定がないので西丹沢行きのチャンス到来>。

新松田7:20発の西丹沢自然教室行きのバスはシロヤシオの時期にはハイカーで満員となるらしいのだが、本日は10名にも満たない。途中で低山歩きのハイカーが4,5名降りて行き、自分も箒沢公園橋で降りたので、終点まで乗っていった人はほんの2,3人だったと思われる。

入口(箒沢公園橋)


箒沢公園コースを選んだ理由は、未明まで続いた降雨でつつじ新道のゴーロ沢出合いの渡渉に難儀することが予想されるし、つつじ新道が総じて歩きにくいためだ。箒沢公園コースも沢の渡渉が2回あるのだが、小さい沢なのでなんとかなるであろうと判断。最初の渡渉は橋があるので問題無し。杉植林地を抜けてから再度沢の右岸に渡る。橋は無いが砂防堰堤間のゴーロなので楽に渡れる。

登山道入口から1kmは沢沿いのジメジメした道だ。深成岩や火山岩が露出する山にはヤマビルが生息しない(と、小生の経験上確信している。)ので、こんな場所でも安心して歩いていける。山肌に取付いてから明瞭な尾根形が現れる952mポイントまでの300mの登りが非常にきつい。湿度が高くてすぐに衣服が汗ぐっしょりになった。曇り空で登山道は暗い。尾根形が明瞭になると空が開けて幾分明るくなるはずなのだが、標高が上がると雲の中に入って余計暗い。

本日は風があるおかげで熱冷まししながら登っていける。標高1,000m付近がスズタケ薮になっており、風が当たらない。一見青々としているスズタケ薮であるが、健康状態は良くない。今年伸びた筍が見当たらないのだ。数年後、この薮も衰退して屍をさらすことになるのだろうか。

『檜洞丸まで3.8km』なんて表示を見るとガックリくる。地形図上の平面距離だから登りに要する労力や時間とあまり相関がない数字であることは判っているものの、数字がなかなか減らないと心理的に良くない。板小屋沢の頭(1,130m)をかすめて下った鞍部の南側は急峻に切れ込んでアクセスできないためスズタケが繁茂している。北側は対照的に勾配が緩くスズタケの衰退が著しい。シカの存在がスズタケの衰退の一要因であることを証明している。

鞍部を過ぎて大休止。汗ぐしょぐしょで重くなった衣服を搾った。本日は天気が良くないのでアブの類を気にする必要はなさそうだ。以降はTシャツ1枚で通す。歩きを再開して間もなく雨が降り出した。これは予想していたこと。合羽を被ろうとしたら、持ってきたのはズボンだけ。傘持ってきて良かった。歩き易い登山道を辿る分には傘の方が涼しくて良い。

ヤブ沢の頭の道標を過ぎて程なく玄倉から上がってくる登山道を右から合わせる。石棚山と書かれた道標の先で険相なアザミが目立つようになる。こいつホソエノアザミなる種らしく、シカの忌避植物の1つだ。こんなものしか生えていないのだからロープ張って植生保護しなくても良いのに。もっと生育したら登山道にまで出張って痛くて歩けなくなる。花期はおそらく9月頃であろうが、美しくないのでこれ目当てに登る人はいないだろう。

ホソエノアザミ群落


石棚山の先は尾根幅が広がり起伏も緩やか。トウゴクヒメシャラの大木があること以外、特に目につくものはない。林床には数センチの丈の草本類がチョボチョボ生えるだけの貧弱且つ退屈な植生が続く。健康な森林には必ず下生えがあるはずなのに、幼樹一本すら見かけない。対照的に、部分的に柵で囲われた区域内は下生が青々としている。これが本来の丹沢の植生だとすれば、一見全山緑に覆われた現在の丹沢は既に死にかけているといえるだろう。

原因はシカしか考えられないが、その割りに真新しい足跡や糞がほとんどない。つまり、餌となるものを食い尽くしてシカが生息することもできなくなっている。丹沢は地力が貧弱なようだから、防護柵を張り巡らしてシカの移動を制限して駆除を徹底し森林の健康を取り戻すことを最優先にするべきであろう。一時、カモシカやクマもその犠牲になっても仕方がないのではないか?北米では有害なニジマスを駆除するために、一時強力な毒を河川に流して生物を絶滅させて在来生物だけ復活させる作業を続けているという(最近知ったことなのだが、何で見たのか失念)。一見過激なようだが、一回失われたものはそのくらい徹底してやらないと取り戻せない。成木に勢いのある今のうちに手を打たないとこの山の将来は悲惨だ。

1,491mピークの下りから檜洞丸山頂にかけてマルバダケブキ群落が見られる。まだ一番花がちらほら咲き出したばかりなので、8月中旬頃に満開を迎えると思われる。でも、また来る気にはなれんな。

マルバダケブキ咲き始め


山頂はリョウブが満開であった。


山頂は無人。本日登ったのは自分一人だけだったのだろうか。雨は止んでおり瞬間的に陽光も差すが、風が強い。本日は終日こんな天気なのであろう。長居は無用。山荘方面には下らず、エネルギー補給して下山開始。下山中に目に留まったのはこれだけ。

バライチゴ


堰堤ゴーロで衣服を全て着替えてさっぱりして登山口へ。箒沢対面の車道をバスが下っていくのが見えた。次のバスが来るまで1時間待ちか。バス時刻を確かめておかなかったのは失敗だったな。縁石に腰掛けて暇つぶし。幸い雨が降らないので汗と雨で濡れたザックを乾かすのに良いか。キャンプ場は水遊びに来た大勢の家族連れで賑わっていた。

道路法面を見ていて面白い植物を発見。ガクウツギ(ユキノシタ科アジサイ属)というらしい。自生地は東海地区以西とのこと。道理で今まで見たことがない訳だ。花期はとっくに過ぎてガクが薄緑色になっているが、ガクが3弁なので顔がたくさんあるみたいで可愛い。

ガクウツギ


15:41分のバスに乗客は自分一人だけ。途中2箇所で朝のバスで同乗していたハイカーが乗ってきた。この方たちは朝と衣服が同じで汗をかいているようにも見えん。小生の汗のかき方は異常なんだろうか。

新松田駅の箱根そばで掻き揚げ玉子そば\420を注文。食べながら店内の案内を見たら、夏限定のサービスメニューとして掻き揚げそばを\370→\300に値下げ中とのこと。ということは卵1つに俺は\120払ったってことだ。うーん。よく検討しないで注文するのが小生の悪いところだ(せこい話だ。)。

19時に帰宅。やっぱり西丹沢は遠いな。往復コースの場合は自家用車がないときつい。今回は特別な目的があったから行ったけれども、普通に山歩きするなら栃木に帰ったほうがましである。天気が良ければ週末は栃木に戻ることにしましょ。

山野・史跡探訪の備忘録