川桁山・三丈の滝(2009年8月)

年月日: 2009年8月12日(水)

行程: 山の神(駐車地)出発(9:30頃)〜小さなチョックストーン滝で退却(10:00頃)〜山の神尾根の杣道を辿って高巻き、支沢合流点上に降下・標高約830m(11:05)〜三丈の滝下(11:20)〜三丈の滝最上段(11:48)〜山の神尾根・1120m小ピーク(12:15-12:30)〜山の神経由で駐車地に帰着(13:33)

ゲリラ台風のおかげで夏休みの遠征計画が丸潰れのため、帰省先で山歩きする計画に変更。天気の良さそうな日は12日のみ。曇り後晴れの予報である。大倉川を遡行して大滝と小滝を見物してみたいものだが、大滝上流部のゴルジュは泳ぎ必至らしいので、単独行は無理とは思わないが危険すぎる。降雨直後なので大滝に行くことすら難しいであろう。という訳で蒲谷地から登山道利用で小滝行きを計画

前日の夜から早朝まで雨が降リ続いた。早朝、自宅から見える西吾妻山は雨雲の中である。晴れ上がることを期待して現地に行ってみた。井戸尻川沿いの林道に新しいゲートができて進入できない。ゲートの表示によると現在は林道欅沢支線の補修作業中とのこと。ゲート前に車を停めて荷造り中に軽のバンが来てゲートを開けて入っていった。林道歩行中に戻って来たので工事関係者が朝の見回りに行ったのであろう。この日は朝から気温が高く、霧が漂う林道は湿度100%状態。 登山道入り口までが遠いのなんの。高度差470mあり、休み無しで歩いても1時間掛かる。で大汗かいて登山道入り口まで行ってはみたものの、雨脚が強まってきたので退却決定。帰りに工事現場に向う車両が数台登ってきた。工事箇所は登山道入口よりも上部である。ゲート設けて一般人の目に触れないようにして、植林していない場所で一体何やってんだ?

退却して猪苗代を南下するうちに猪苗代湖上空に急速に青空が広がりだした。このまま実家に戻るのはもったいないので、急遽、目的を川桁山の三丈の滝詣でに変更。

三丈の滝は観音寺川支流の小白津川のさらに支流である無名沢に懸かる。川桁山南側の1,121m鞍部を水源とし、雪解けで水量豊富な時にのみ麓の川桁集落から落差のある三段の滝を遠望できる。木々の葉が茂ると隠されてしまう季節限定の滝。名前の由来を考えると「三条の滝」の方が相応しいように思うが、ここでは「三丈の滝」としておく。

川桁山南端の観音寺川右岸にある尾根の末端に山の神がある(地形図には表記無し。以降、この尾根を山の神尾根と仮称する。)。山の神尾根稜線沿いに昔の炭焼きに用いられた杣道があり、今から30年以上前にこの杣道を利用して三丈の滝に行くコースの道標が設けられたことがあった。同時期に川桁山の登山道の道標も設けられた。当時開業したばかりのリステル猪苗代が宿泊客向けに設置したと聞いた記憶があるが、定かではない。自分自身は尾根沿いの杣道を辿って三丈の滝に行ったことがないし、当時どれくらいの人が観瀑に訪れたのかも知らない。地元でこの滝の存在を知る人は少なくないが、現在実際に訪れる人は皆無に近い。現存する案内は山の神の鳥居前にある道標のみだ。


昔の杣道は沢沿いにもあって、高校二年の秋(11月3日前後)にこの杣道を辿って三丈の滝訪問に挑戦したことがあった。道が無くなる場所から山の神尾根に逃げて、離れた場所から滝の存在を確認はしたものの、三丈の滝であるという確証はなかった。

三丈の滝と思しき存在 1976年11月撮影


高校三年の春にも友人2人と沢沿いの杣道を辿ったことがあった。このときも三丈の滝訪問が目的だったと思うのだが、滝を見た記憶は残っていない。当時はスニーカーや長靴しか持たなかったため沢通しで滝に到達することができなかった。32年前の消化不良を解消してやろうではないか。

沢入り口は猛烈な藪に覆われて杣道の入り口がどこにあったのか皆目見当がつかない。左岸のスギ林を進んで沢に降り、薮を潜りながら少し進むと砂防堰堤が現れた。こんなところまで堰堤作ったのかよ。あきれるわい。堰堤奥は右岸沿いに杣道が残っており、順調に遡行できるかと思われた。


32年前にかろうじて渡れた場所が完全に崩れてしまって危険な状態にある。沢底を遡行していくと、高さ3m未満のチョックストーン滝に行く手を阻まれた。水流をもろに被って突破しようとしたが足掛かりが少なく敗退。少し戻って右岸斜面をよじ登って杣道の続きを見つけたものの、滝上流側で降りることができない。戻る際はヒヤヒヤもの。32年前に到達した場所にすら行けず敗退決定。

撤退地点


こうなると山の神尾根経由しか手がない。山の神まで戻るのも癪なので、勾配が若干緩い場所を見つけてイヌガヤの木に掴まりながらなんとか尾根に這い上がった。川桁山は川桁断層に面した深成岩層が風化してできた急峻な山であるため、イヌガヤの木が無かったら移動困難。イヌガヤ様様である。

イヌガヤの実


尾根に這い上がる寸前にチタケを発見。おおっ、猪苗代にもチタケがあるのか!福島では食べないキノコだからたくさん採れるかも♪。

チタケ(チチタケ)


果たしてその期待通り、杣道沿いにたくさん生えているではないの。帰りに回収すべく、収穫したチタケを何箇所かにまとめて置いて登り続行。

杣道が尾根筋を外れて沢に向う場所が2箇所ある。最初のトラバース道は途中で消えるので退却。次の場所では稜線沿いに登る道は無く、沢に向うトラバース道が正解のようだ。少々危険な場所だが、かろうじて木の根に足を掛けて本命の沢に下る支沢(涸れ沢)に降り立った。この上部はカール状になっている。32年前、肝つぶす思いで谷から這い上がった我々3人が、雪渓の下の空洞を潜って遊んだ場所だ。

涸れ沢から先に続く道が判らない。勾配が緩い反対側の尾根(以降、便宜上中間尾根と仮称す。)を下って本流に復帰。少し登ると落差の大きなナメ滝に至る。振り返っても谷の開く方向に川桁地区が見えないので、本命の滝ではなく三丈の滝の前衛滝らしい。沢全体が滝みたいなもので、三丈の滝と合わせると落差100mは優にあるのではないだろうか。

前衛の滝
前衛の滝のナメ


快調にナメを登ってついに三丈の滝下に到達。三丈の滝は下部の段を含めると5段以上あるが、このうち麓から見えるのは落差のある上部3段である。最下段からは直登できない。左岸側の樹木に掴まってかろうじて巻く。草付き斜面はのっぺりした深成岩に薄く土が被さっているだけで極めて足場が悪い。麓から見える上から三段目の下には降りることができないので、沢に張り出した樹木に腰掛けてなんとか撮影。

三丈の滝・下段の前衛
(レンズカバーが半開きで写りが悪いが、
かろうじて写真上部に下段が写っている。)
三丈の滝・下段


上からニ段目の下には降り立つことが可能。この滝は落差十数mあって、三丈の滝で最も落差が大きい。ニ段目下から草付き斜面を登り、かろうじて足掛りのある場所を横切り最上段の観瀑地点に到達。昔、観瀑のために樹木を伐採した痕があった。

三丈の滝・中段
三丈の滝・上段


三丈の滝を越えると穏やかな渓相となる。チタケ回収作業があるので水源地までは遡らず、尾根に上がることにした。上がった場所は標高1,050m付近。せっかく来たのだから32年振りに山の神尾根最高点を目指す。潅木薮を漕いで、ブナの木が生える小ピーク到達(後で地形図を見たら最高点ではなかった。)。ブナの木に登れば磐梯山から猪苗代湖にかけて一望できる。川桁山頂より見晴らしが良い。


中間尾根稜線を下ると、途中で斜面を横切って三丈の滝方面に向う杣道が現れる(危険個所があるためお薦めしない。)。そのまま中道稜線の杣道を下り、前述のカール状の場所を下って山の神尾根に復帰。チタケを回収しながら山の神に降下。山の神の近くは薮化していてやや歩きにくい。実家の隣に住んでいた方(故人)はこの川桁山域を熟知していたらしいのだが、かつてこの道を利用して炭焼きに従事した人で存命の方はもういない。植林されているのは麓のみであるため植林関係者が利用することもない。山の神尾根にはカモシカが一頭棲み付いており、カモシカ君が実質的に杣道の管理人である。

山ノ神
チタケ


山歩き候補地の代替地として急遽訪問したのであるが、32年越しの思いを成就でき、思いがけずチタケも賞味できて満足。

山野・史跡探訪の備忘録