今市ダムから月山周回(2009年12月)

年月日: 2009年12月6日(日)

行程: 今市ダム幸橋奥の駐車スペース出発(08:14)〜790mポイントで扇沢橋コースと合流(08:45)〜974mポイント(09:30)〜1230m級ピークへ抜ける(09:59)〜月山山頂(10:25-10:30)〜ジャジ沢に降下(11:33)〜車に帰着(11:45)

関連記録@: 2007-11-18 逆川から月山周遊(下郷線鉄塔巡視路利用)
関連記録A: 2008-01-26 月山・扇沢橋コース

画像
今市ダム堤頂からみる月山(帰りに撮影)、ダム奥の橋は幸橋


月山山頂にある祠は享和三年に今市・作下部地区の住民が祀ったものだ。祠もその方向を向いている。江戸時代から月山を信仰の対象として砥川側から登っていたと推測する。今市ダムが出来る以前は、月山の南東尾根に登山コースがあった(2007年11月に逆川ダムから南東尾根に上がった際、笹尾根に細い道筋を確認。)。地形的に他のルートが考えにくいので、江戸時代の登山路は南東尾根にあったと考えられる。取り付きがどこにあるのかを確認するのが今回の主目的である。

またしても土曜が曇りで日曜が快晴の予報。福島は雪の予報であったが、県北を除けば良い天気となる見込み。川崎に戻る前に午前中どこか歩いてみよう。夜遅くまで雨が降っていたので薮歩きは御免だ。長いこと懸案だった月山の古い登山路を探ってみることにする。砥川流域はヤマビルが出る可能性があるので、探索するなら今のうち。

南東尾根の末端は幾つかに分かれてやや急勾配となってジャジ沢右岸に下る。登路があった可能性が高いのはダム湖に面している岬なので、取り付きを探すのは容易ではない。しかも発電所施設があるためにゲートが設けられていて入り込みにくい雰囲気。よって、2008年1月に途中まで辿った扇沢橋コースで登り、月山山頂経由で南東尾根を下ってくることにする。道筋が明瞭で且つ発電所施設に下ってくるようであれば楽勝。道筋がダム湖に没する場合は登り返して適切な下降ルートを探ることになる。道が無かったら・・・?ま、何とかなんべ。落葉樹で見通しの良い山域だから、降下予定地点が見えれば下れるはず。何度もルートを検討した場所だから地形図も要らんな。

当日朝は氏家は放射冷却で濃霧。塩谷町大宮辺りで霧が消え、日光と高原山がくっきり見えた。予報通り快晴である。標高1,600m以上は新雪で白くなっていた。昔の道筋はどうなっていたのだろうと想像しながら今市ダムに向って砥川右岸道路を車を走らせていくと、岸寄りの杉林の中に木祠があるのが見えた。


奉納山神御寶・文化十年と刻まれているので結構古い。ここしばらくお参りした者はいないようだが、木祠は朽ちていないので建て替えてから10年以内だろう。神様のはずだが、中には菩薩らしき木像が納められている。どんな言い伝えがあるのかちょっと気になる。

今市ダム幸橋を渡って扇沢橋まで行ってみた。前日の降雨ででかい水溜りが幾つかできて、周回して戻ってくるときに歩きにくそう。しかも登路は日が当たらず冷え冷えとして雰囲気悪し。予定変更して幸橋の袂から尾根筋を辿ることにした。

937mピーク
幸橋の登り口


のっけからスギ植林地の急登。青い荷作り紐が残されているのでここを辿った登山者がいるようだ。道はない。獣道を辿って今市ダムに面した植林地内を巻くように高度を上げて尾根筋に乗った。640m〜690mの区間の勾配がきつい。土壌がしっかりしていて足裏で地面をしっかりとらえられるのでなんとか登っていける。

790mポイントで扇沢橋コース(道は不鮮明)と合流。以降は一度往復した既知の場所。前回は降雪していて雰囲気悪かった痩せ尾根も、快晴の今は特に懸念なく進める。945mと記入された境界見出し標のあるピークで右下の沢から大きな流水音が響いてくる。梢越しに目を凝らしてみると結構落差の大きな滝が見える。前日の降雨のせいで沢の規模の割りに水量が豊富だ(雪田爺さんのサイト参照。)。

カラマツが植林された974mポイントを過ぎ、1030mから約150mの急登が始まる。地形図で見る限り崖を登るようにしか見えない。遠くから眺めても登下降可能には見えない勾配なのだが、樹木につかまってなんとか登れてしまう。ここを最初に辿った人は普通の登山者ではないな。下りに使うべきルートではない。特に未経験の人が下るのは非常に危険である。前回訪問以降に辿った人がいるようで、新しい目印が付いていた。

1,230m級ピークに登りつめた頃には低地の空気が少し霞んでいた。近くでは船生の鶏岳が存在感がある。月山山頂に至る尾根は概ね歩き易く、所々好展望が得られる。前日の雪がかすかに残っていた。


青いダンプラ製の案内表示があった。「ビーフピア広場方面(鎖場コース)」と記されている。途中で見た西側に下っていく踏み跡がそうかな?下山時にこちらに迷い込んでひどいめに遭ったという記事を見たことがある。この標示は月山山頂にもあって登山者を誘い込んでいるようだ。鎖場に行かずとも月山山頂から少し下ったところにある大岩の巻きはヒヤヒヤもの。こんな標示は事故の元になるんじゃないの?


なんと南東尾根の下り口はテープが張られ、青いダンプラには「通行止め。熟練者以外下山禁止」旨が書かれているではないの。2年前に俺が逆川ダムから登った記録を公開したのが原因か?いまさら中止できるか。登路を下るほうがよほど危険だわい。

ロープ+鎖の区間を過ぎるとまた青いダンプラに「逆川ダム・今市ダム方面は熟練者以外下山禁止」と書いてある。「熟練者」の定義が不明。山岳会が認めた者だけが熟練者だとでも言うのか?禁止の理由も不明だ。道が無いのか、判別しにくいのか、それとも勾配がきついか若しくは崖があって懸垂下降等の装備を必要とするのか、発電所施設近くに人を近づかせたくないのか、理由をはっきり書け!誰が設置したのかも不明。こんな中途半端な標示はしないほうが良い。自分の経験に基き青ダンプラの記載を補足すると、逆川ダム方面は掴まるものの無い急勾配区間があるので熟練者でも下るのは無理だ(登りはかろうじて可能だが安全は全く保証できない。)。

標高1,170m(2年前に逆川方面から這い上がった場所)まで順調に下る。ここを境に踏み跡が消えた。昔の道跡確認を目的に下ってきたのですこしがっかりである。標高1,500mから標高差約80mの区間は勾配がややきつく大きな岩が露出しているが、その間を縫うようにミヤコザサの斜面を順調に下っていける。危険箇所はない。逆川ダム方面で銃声が2発轟いた。

標高1,020mの平坦な落葉樹の尾根を快適に進む。ここも道跡らしきものは皆無。めずらしいことにヤマドリが4羽群れていた。

標高920mのやや勾配が緩くなる場所(地形図で地下発電所と記載されている場所)で進路を思案。このまま尾根筋を下ると発電所の北側に出てジャジ沢を下ってこなければならなくなりそう。確かどこかで南東尾根から外れて真南に下る必要があったはずだ。南側下方にこんもりとした地形が見えるので、斜面をトラバースして広々とした南尾根に移動。この尾根には人の手が入った形跡がなく、モミの大木が多い。下方に逃げていくシカの白い尻が見えた。狩猟者が入り込まないのでシカの楽園になっているらしい。

標高700mまで下ると発電所の鉄塔が間近に見える。ジャジ沢まで危険箇所はなさそうだ。尾根筋を下るとダム湖の岬に出てしまいそうなので、尾根筋を離れて発電所施設を目指して降下。少しだけジャジ沢右岸沿いに進んで、地下発電所に至るトンネル入口・ジャジ沢橋を渡った。

今市ダム発電所施設
ジャジ沢橋


幸橋を渡って無事帰着。自身の眼と判断力のみを頼った3時間半の爽快な周回であった。南東尾根の下りは地図読み若しくは山立てが必須であり難易度がやや高いが、登りには問題なく使える。扇沢橋コースを下るのは危険すぎるので、周回ではなく南東尾根を往復するのが無難である(発電所施設に関係者がいる場合はお咎めを受ける可能性有り。

山野・史跡探訪の備忘録