煤ヶ谷〜物見峠〜一ノ沢峠〜(大山北尾根)〜ヤビツ峠〜岳ノ台〜菩提峠〜菩提原

年月日: 2010年3月14日(日)

行程: 煤ヶ谷バス停出発(07:24)〜物見峠(08:25)〜一ノ沢峠(09:28)〜大山北尾根931mピーク(10:30)〜大山北500mに位置する崩壊地(11:46)〜大山山頂で休憩(12:07-12:27)〜ヤビツ峠(13:08)〜岳ノ台(13:47)〜菩提峠(14:10)〜葛葉の泉(14:58)〜菩提原バス停(15:32)

当時、煤ヶ谷から物見峠に向うトラバース道は路肩崩落のため通行止めになっていましたが、無視して入り込んで怖い思いをしました。現在の状況は把握しておりません。このコースを計画される場合には事前に最新の状況確認をして臨んでください。

体調は問題ないのだが、私事で忙しかったのと天候が良くない週末が続いたため、この一ヶ月は山歩き無し。今週末は久し振りに青空が望めそうなので、50歳代に突入したのを記念して山歩きを計画。あいにく土曜日は月1回の血液検査の日で週末に栃木に戻れないため、行き先を丹沢に絞って物色。

空気が澄んでいた木曜日は丹沢に雪がたっぷり積もっているのが会社から見えた。暖かい日が2日も続けば日曜日には丹沢名物の泥んこ祭りが最高潮に達するだろう。泥んこが嫌なら歩く人が少ない場所(例えば正規の登山道が無い場所)に行くしかない。というわけで、本命ではない大山北尾根を歩いてみることにした。

大山北尾根のことを良く知らない。たいていは大山から札掛に下っているようだ。ということは最後は913mピークの西尾根を下るのであろう。913mピークの北には一ノ沢峠があり、ここまで歩く人もいるようだ。自分の嗜好としては後者が魅力的に思える。

尾根下りでは枝尾根を誤らないように要所で地形図を確認しなければならない。地形図をコピーするのが面倒くさいので、地形図読みが不要で頭を使わずに済む尾根上りを選択。問題は一ノ沢峠までのアプローチをどうするかだ。累積標高差や所要時間を考慮すると煤ヶ谷から物見峠経由するのが一番楽だ。雪が残っていれば危険な場所であり迂回することを余儀なくされる怖れもあるが、昨年末に歩いた実績があるので物見峠経由に賭けて見る。

うまく大山まで行ければヤビツ峠に下って、2月に歩き残した岳ノ台を経由して菩提峠に至り、最後は舗装道路をゆったり歩いて葛葉の泉で顔を洗ってから帰宅するという算段である。

本厚木駅6:55発宮ヶ瀬行きの始発バスに乗り、煤ヶ谷で下車。三峰山の登山道そのものは荒れていないが、何箇所か樹木が根こそぎ倒れて登山道に覆いかぶさっていた。昨年末に歩いたときはなかったのだから、この冬の積雪で倒れたものであろうか。広葉樹が雪で根こそぎ倒れるなんて光景は東北や北関東ではめったにないこと。この山の表土はよほど脆弱と見える。

三峰山登山道に倒れこむ樹木(2箇所有り。危険ではない。)


物見峠に向う道は路肩崩落のためロープが張られ通行止めになっていた。アップダウンをできるだけ少なくしたいがために来たのだ。ここを通れないのでは来た意味が半減する。この道の峠に近い数百mの区間はもともと危険な場所だ。「またまた〜、大げさな。ご冗談でしょ!」って感じで警告を無視して入り込んだ。

日陰には雪が残っているので、路肩の崩落よりもむしろ狭い登山道が雪に被われて傾斜を持っていることを懸念していた。案の定、危険地帯は雪が残っていてまともに歩けない。幸い、まだ雪が締まる以前にツボ足で歩いた人の足跡を利用し、キックで足場を確保しながらできるだけ山肌側に沿って進行。物見峠方面から辿ってきたシカの一団は当方を見て急な山肌を上っていった。危険地帯を抜けるまであと少しというところで問題の崩落箇所に至った。規模こそ小さいが確かに路肩が崩落し、すんなりと通れる状態ではない。つい最近崩れたばかりのようで生々しく、その周囲も不安定である可能性有り。もし足元が崩れたら谷底まで止まらない。現役の登山道のくせに危険度は明治の尾頭道並み。丹沢恐るべし。山肌の岩につかまって慎重に抜けた。途中まで後続の男性がついてきていたが、物見峠で振り返らなかったので彼も突破したのかどうかは判らない。

物見峠から唐沢林道のトンネルに降りると、トレラン姿の男性が1名休憩中。煤ヶ谷方面から林道を走ってきたらしい。彼は黒岩方面に向かって唐沢林道を走り下っていったが、路面の雪でシューズが滑るらしく2度追いついた。路面はよく締まった雪が5p程度残っており雪面を歩くと楽。大月沢橋までは厚木方面からトンネルを抜けてきた林業関係者の車の轍があったが、その先は1名分の足跡があるのみ。アプローチが大変なので渓流釣りも入りこんでいないようだ。

唐沢林道


トレランの人は林道を走っていったみたいで、一ノ沢峠に新しい足跡無し。一ノ沢峠付近では尾根の東側がスギ植林、西側がカシやヤブツバキといった照葉樹とモミ大木の自然林である。笹の類は皆無のスッキリした見通しの良い尾根でとても歩きやすい。登りだから迷うはずもなく順調に南下。

一ノ沢峠付近の稜線


梢越しに見える丹沢三峰の尾根はこちらより積雪が深そうだ。752mポイント付近の少し視界が開けた場所から見た丹沢山は真っ白。あれだけ雪があれば泥んこ道歩かずに済むかも。

752mポイント付近の植林地から見た丹沢山


標高800mから始まる急登区間は落葉広葉樹に被われた明るい尾根であり、10p程度積雪していた。適度に柔らかく、かといって表土が滑ることもなく、順調に913mピーク到着。札掛から上がってくる尾根方面を指し示す「県道」と書かれた案内有り。本日登ってきた1名分の足跡があり、足跡の主は少し南下した場所にある眺めの良い送電線鉄塔で食事中だった。空気が霞んでしまう前に大山に到達すべく、休まず鞍部の先に進む。

鞍部から150mの登りが大山北尾根コースの中段に相当する。昼近くになっても日陰で適度に雪が締まっていて順調に登れた。この辺りから醜いボロボロのビニール紐の目印が目障りとなる。山中にゴミ撒き散らかしているようなものだ。ゴミの不法投棄と変わらん。こんなものに頼らんと大山北尾根歩けないような奴がいるのか?必要最低限の目印類だけ残し醜いビニール紐やビニール袋を除去しながら進んだので、時間がかかった反面適度に休憩になった。

登り終えて1,040mピークから見た大山北尾根の眺めは感動的である。草原状の尾根に崩壊地が迫っているため見晴らしがすこぶる良い。足尾の大平山の雰囲気にちょっと似ているかな。

1,040mピークから見た大山北尾根


南東に向う区間で下ってきた年配単独行者とすれ違った。遭った下山者はこの人だけ。

1,094mピークは見晴らしが良くない。その前後の稜線は痩せているが危険度は低い。

1,094mピーク南の痩せ尾根から見た大山三峰


標高1,100m付近であったと思うが、地獄沢からモノレールが上がってくる。このモノレールは大山北500m付近で石尊沢方面から上がってくる別のモノレールと出合う。そのすぐ近くにある崩壊地上部は大山で最も眺めの良い場所に違いない。

画像


山頂に近づくにつれて足跡が少し増えてきた。みな下り始めてみたものの途中で引き返したようだ。最後はアルミ梯子を上ってフェンスを越えて大山山頂到着。急に世界が変わる。本日は人がやたらと多くて道は泥んこ。神社には詣でず、展望台側の道横で昼食休憩してからヤビツ峠に向けて下山開始。大山の登山道は岩ゴツゴツのところが多く、雪解け水は流れていてもドロドロの場所は比較的少ない。

ヤビツ峠で休まず対面の道に入った。こちらは歩く人が少ないようで、雪解け水が澄んでいる。なだらかで草原状の区間が多く雰囲気の良い場所だ。840mピークの東屋は見晴らしは良くないものの静かなのが良い。ここで暫く休憩して岳ノ台を目指す。

最近、広葉樹を植林したばかりの開放的な緩斜面を抜けて岳ノ台に行ってみると残念ながら先客様有り。おばちゃん2人組と犬連れの男性が居て、こちらをジロジロ見るくせに挨拶しても返さない。栃木の田舎にいるみたいだな。

岳ノ台西側の標高750mのなだらかな鞍部には江戸時代に祀られた菩提風神社在り。毎年四月に家内安全・五穀豊穣・登山者等の安全祈願を菩提滝の沢保存会が行っているとのことだが、平成15年に建てた説明板が朽ちて倒れており廃な雰囲気が漂う。風神様を祀る神聖な場所であり、地形的に現在の林道の菩提峠より峠と呼ぶに相応しい場所であるが、昔峠道があったという記録は少なくともWeb上にはない。

鞍部から反対側に登ると稜線北側に菩提峠の駐車場につながる広い草原状の窪地が広がる。稜線上に柵が張られており窪地に降りることはできず、グルリと周ってパラグライダー滑走場を経由して菩提峠到着。登山者の車が多い。自家用車利用の登山者は主にここを出発点として表尾根に上がるらしい。

菩提峠方面から見た大山


菩提峠のゲートは開いていたが、麓のゲートが閉じられていて通り抜けできないため入り込む車は少ない。林道に車が数台停めてあったので、ニノ塔に直登する道があるのかもしれない。林道の交差点で葛葉の泉に下る道路に入り、最初に横断する沢で顔を洗い着替えを済ませた。キブシの花穂が伸びヤシャブシの花も膨らみつつある。春の陽光を浴びて快適な林道歩きである。ヘアピンカーブから標高差約70mをショートカット。

葛葉の泉には菩提の森林組合が登山者のために設けた水汲み場がある。車で乗り付けて大量にペットボトルを持ち込み水汲み場を占有する輩がいるらしく、「マナーを守れない場合は水汲み場を廃止することも検討する。」旨の警告が書かれている。着いたときは誰もいなかったのだが、水場を離れた途端、次々に車がやってきた。火山の透水層を通った水ではないのだから、わざわざ汲みに来る価値があるとは思えんが。


菩提原バス停に向う際に田園地帯から顧みる表尾根の眺めは実に雄大。個人的に一番好みの下山地であるが、他に登山者はいなかった。バス停まで距離があるために登山者に敬遠されるのかもしれない。

山野・史跡探訪の備忘録