年月日: 2010年4月4日(日)
行程: 大川林道ゲート出発(03:51)〜ワサビ沢遡行(05:25)〜2008年幕営地・1427mポイント西隣ピークの1,390m地点(06:37)〜1504mピーク(07:26)〜赤柴山・1634.5m(08:17)〜1624mポイント(08:31)〜番屋コル(08:42)〜大倉山・1885m(10:12)〜七千山・1600m(10:34)〜林道に降下(11:28)〜車に帰着(12:06)
関連記録:「大川峠〜上海岳〜黒滝股山〜1,427m手前(2008年4月)」
栃木・福島県境を最高の条件で残雪歩き出来る機会は年に数日あるかないかであろう。休日に重なる確率はその7分の2。単身赴任先から栃木に戻るのは予算上せいぜい隔週なので、真っ白な福島県境の稜線歩きを完結させることは半ばあきらめていた。日曜日は栃木県北部は午前中だけ晴れの予報だが、会津は終日天気が良さそう。朝の冷え込みで雪の締りも期待できる。本日は早めに川崎に戻って洗濯物を片付けたいので、午前中勝負で2年前の続きに挑んだ。
2週間前に閉鎖されていた屋外開閉所先の橋のゲートが開放されており、大川林道入り口ゲートまでスムーズに行けた。まだ真っ暗なうちに出発するのは2004年の残雪期の大佐飛山登山以来のこと。装備はスパイク長靴とピッケルを基本とし、アルミワカン、軽アイゼン、およびそれらを装着することを想定して予備の登山靴を携行。ロープは不要。
林道に残る雪の閉まり具合は十分で沈み込み無し。2週間前とは大違い。体力を消耗することなく順調にワサビ沢入り口に到着。
2年前にビバークした地点はワサビ沢の奥に位置する。残雪の時期にワサビ沢入り口付近を遡行するのは危険であるため、前回退却時に使用したなだらかな右岸尾根をしばらく辿って沢入口を回避し、締りの良い雪面をテクテク下って広い谷底に降りて沢沿いに移動。谷底には昔伐採された大木の切株が幾つか残っている。年代は不明。
二俣の中央尾根の突端が取り付きにくい。前回退却時に下った左俣側の斜面は雪の締りが十分でない怖れがあったので、今回は右俣を選択。大きな滝こそないものの一部凍結していて遡行しにくい。雪の締りの良さそうな場所で尾根に取り付いた。中央尾根を登るうちに朝陽が昇り県境尾根が輝いて雰囲気良し。無事、2年前のビバーク地点に到達。
朝方は雪の締りが良すぎて堅く、通常のアイゼンでは歩きにくいかもしれない。雪面に密着するスパイク長靴とピッケルの組み合わせが機能し、やや傾斜がきつくてつかまるものがない1,504mピークへの登りでも不安無し。
1,504mピークは遮る物が少なく眺め良し。
本日は冬型の気圧配置ではなく、南側(栃木県側)からやや強い風が吹いている。県境を東進する間、常に強烈な直射および雪面からの反射に晒されるので、防寒対策兼ねてタオルで頬かむり。
標高1,500m以上で濁りの無いクリスタルな樹氷が出現。陽に当たるとキラキラ輝き、偏光眼鏡を介してみると虹色に光ってシャンデリアのようだ。このタイプの樹氷を見たのは2009年2月の釈迦ヶ岳以来2度目。雪が付着しない純粋な樹氷とはいかなる気象条件でできるものなのだろうか。
赤柴山は強風に晒される場所らしく積雪量は少ない。見かけた人工物は古いプレートのみ。
2006年に大倉山から眺めて以来あこがれていた障害物の無い雪面に達した。時間的にまだ雪が緩んでおらず、順調に進んで番屋コル到着。強い南風を避けて福島県側斜面で軽食休憩。この先、稜線上に藪の露出や岩場はなさそうだし、最後の詰めは適度に灌木が露出していて滑落の心配はなさそうである。
大倉山一帯も見事な樹氷が見られた。
大倉山南斜面は灌木藪だが、既知の場所にて七千山(標高1,600mポイント)までの下降に問題なし。
今回は周回につき自分のトレースが無いため、方位を確認しながら進んだにも関わらず標高1,550mで東南の急峻な斜面に引き込まれそうになった。一度経験済みの場所であっても、なだらかな藪山や幅の広い藪尾根から派生する尾根に下るのは難しい。
標高1,352mで尾根を離脱してチシマザサ藪突入。この標高差300m以上の藪は下りでもうんざりする。
早春の陽光を浴びて車に帰着。
本日の栃木・福島県境は、2004年の大佐飛山や2005年の台倉高山の時と同等の好条件に恵まれ、数年越しの思いを成就。