ヒツ沢左俣を詰めて大長山〜黒滝山〜百村山周回

年月日: 2010年5月22日(土)

行程: 木ノ俣川・落合出発(06:16)〜西俣沢経由で大長山北東尾根・1,570m地点(09:25)〜ヒツ沢左俣・1,460m地点に降下(10:02)〜大長山・1,866m(11:25)〜1813m地点で折り返し(11:52)〜大長山復帰(12:39)〜西村山(13:56)〜黒滝山(14:26)〜百村山(16:05)〜沼原線巡視路に入る(16:23)〜林道・巻川線(16:48)〜落合に帰着(17:17)

アユ釣りシーズンになればアユ釣りが山歩きに優先するので、今回が栃木における今年前半の山歩きの締めくくりとなる。日の長い今の時期ならば、退屈な山中泊をせずとも奥山を探索できそう。昨年に続きヒツ沢遡行に再挑戦。昨年は体調が心配で涸れ棚上部から引き返してしまった。今回は巨岩ゴロゴロの伏流帯より上部の状態を確かめてみたい。

昨年生じた木ノ俣川沿いの林道の路肩崩落はさらに進行し、車一台がやっと通れる程度だ。今月24日頃から修復作業を行うので、しばらくの間、通行不能となるらしい。間に合ってよかった。

昨年と同じルートで大長山北東尾根(ヒツ沢左俣と左俣沢右俣の間の尾根)の1560m地点に上がった。ヒツ沢側から沢音が響いてくる。よっしゃ!

大長山北東尾根から見る1813mポイント方向(09:28)
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目的地の標高1,460mの沢底にすんなりと下れるルートはない。直線距離にして300m程度、斜面を横断しながらできるだけ勾配の緩い場所を繋いでいくしかない。最大の障害は倒れこんで行手を阻むチシマザサの密藪だ。湾曲した谷筋の地形は予想以上に藪が濃く横移動できない。枝尾根の藪がやや薄いところを登って高度を稼いでから反対側に下ることを2度繰り返してようやく目的地に到着。この辺りは地形図には表されない複雑な地形をしている。

地形図上に線を引いてみて、この地点が2年前に辿った尾根から見えそうにないことは承知済み。現地に立ってみてそれを確信。2年前に見た滝らしきものが存在する場所は左俣本流ではないということになる。

ヒツ沢は山の北側にあってしかも積雪が深い場所であるため、残雪量が多い。雪が消えた箇所から推測する限り、標高1,460mから上流部は小滝を連ねているようだ。

ヒツ沢左俣・1,470m地点 (10:11)
標高1,490m地点の小滝(全部で落差7、8m) (10:14)


今の時期の残雪は十分に締まっており、日中の気温が高くても表面の1、2cmが柔らかくなるだけなので歩き易い。急勾配でなければ普通の登山靴でも楽に歩ける。予定では短時間勝負の往復案だったのだが、雪渓の様子を見て気が変わった。さきほど下ってきた激藪の登り返しは気が重いし、そもそも往復はつまらん。ならばこの素晴らしい雪渓を辿って大長山に行ってしまおう。

標高1,500mより上流域 (10:18)


沢の両岸にはバイカオウレンが多数開花中。危険を感じる場所はなく予想以上に順調に雪渓を遡行。

バイカオウレン (ヒツ沢左俣、10:48)


標高1,730mで見覚えのある場所に出た。ここは男鹿山地で最も奇妙な地形で、地形図上では沢源流が尾根の両側に流れ下っているかのように見える。実際、雪渓が両側に繋がっている。

標高1,730mで尾根を跨ぐ溝(向こう側は西俣沢の谷) (11:03)
標高1,750m付近 (10:06)


山頂部は雪が消えているため、直下で残雪を利用して北側に回り込んだ。

標高1,800m付近の緩斜面 (11:14)
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まだこんなに雪が残っているとは思わなんだ。これなら大佐飛山にも行けちゃいそう。

大長山北側の光景 (11:25)


4月に比べれば雪量が少ないので、大蛇尾川中央嶺をうまく写真撮影できる場所がない。写真撮影できそうな場所を求めて残雪帯を北上。

1840m級丘陵から北側 (11:43)


雪が完全に消えているのはピーク部のみで、それ以外はずっと良質の残雪帯が続く。天候が安定しているので大佐飛山まで行こうとして一旦は1,813m小ピークから足を踏み出した。大佐飛山まで往復1時間程度の距離だが、本日の行程は普通の大佐飛山往復よりはるかにハードであることを考慮して自重。もうすぐ正午。そろそろ帰路につくべき時刻だ。

大佐飛山中央嶺 (12:09)


大長山と西村山の間の稜線上には雪が無い。残雪期でも雪が薄く、東側に発達した雪庇を利用して歩く区間だ。雪の消えた稜線の西側には断続的にうっすらとした踏み跡が認められる。夏場に歩くのはMWVのようなワンゲルだけのはずなので、多少人の手は入っているとしてもほとんどはカモシカ道起源と考えられる。ここにベタベタと赤テープが付けられていた。枝尾根が一切無い区間だから道迷い防止で付けたはずはない。主に3種類あって、細い赤テープ2種は他の山域でも常習犯の自己顕示目的。幅広のぐるぐる巻き赤テープは明らかに第三者に対して踏み跡を案内する目的で付けたもの。余計なお世話ってもんだ。バイカオウレンの群落を見て少し気持ちが和らぐ。

バイカオウレン(西村山へ向かう稜線上、13:15)


笹薮の下に隠れているコメツガの倒木に注意しながら慎重に歩いて西村山到着。西村山から黒滝山に向かうのはこれで4回目だから特に不安はない。烏ヶ森の住人さんやH@上三川さんの情報では目印だらけで汚ないとのことであった。目印の酷さはこれまで歩いてきた区間と同程度。そのことより、一部樹木の枝の伐採や笹の刈払いが行われていたことがショックだった。いったいどんな連中が何の目的で何の権限を持ってこのようなことをしているのか、現地には一切告示されていないので判らない。可能性のありそうな自治体や山岳会のHPを見ても、そのような記述は見当たらない(探し方が悪いのかも。)。管轄する機関の許認可無くしてできるはずのない行為なのだから、道路工事と同じように告示しておけ!しないのであれば、俺には単なる犯罪行為にしか思えん。

黒滝山奥の真新しい伐採痕 (14:10)


いつものように尾根筋を素直に辿って黒滝山の南側からシャクナゲ混じりの藪を抜けて山頂に至った。登山道を下り始めて、またしても驚くべきものを見た。大佐飛山方面に誘導する新しく刈払いした道が分岐しているではないか。大佐飛山なんて残雪期以外はただの藪山だ。何もなく人が行かない(行けない)のが唯一の魅力である。自然環境保全地域に道を作るなんて愚行が行われないことを願う。登山道に残る雪上に足跡なく、昨日も本日も黒滝山に登った人間はいなかったことを示す。黒滝山は残雪期における一通過点の位置づけになりつつある。

黒滝山からは登山道沿いに道路の反射板並みの間隔で目印がベタベタ。風景に目印が写り込まないように撮るのに苦労する。もう勝手にしろよって感じ。栃木で一番汚い登山道であることを保証する。百村山手前で巻川林道に誘導する新しい道ができており、ウザい赤テープは百村山方面にはなく新しい道の方に誘導している。赤テープを付けたのは新しい道を作った連中なのか?ツアー登山と何か関係があるのだろうか。

双子山のダケカンバ林はまだ芽吹き前。標高が下がると木ノ俣川側斜面にムシカリの白い花やトウゴクミツバツツジが目立つようになる。今年の春は栃木で早春の草花を見る機会がなかった。今年初めて栃木で遅咲きのカタクリの花を見た。

カタクリ残り花 (15:34)


百村山周辺のトウゴクミツバツツジが見頃。

トウゴクミツバツツジ (15:40)
トウゴクミツバツツジ(百村山にて)(16:05)


登山道と沼原線巡視路の分岐には案内が無い。巡視路は階段が整備されて2年前より歩きやすくなっていた。

沼原線巡視路沿いのシロヤシオ (16:33)


ヒツ沢の残る探索箇所は絞られた。でも、再び藪漕ぎする気力が湧くかな?

山野・史跡探訪の備忘録