尚仁沢右俣遡行・桜沢右俣下降

年月日: 2010年6月19日(土)

行程: 大間々駐車場出発(10:08)〜青空コースから下降開始(10:24)〜尚仁沢右俣に下降・標高約1120m(10:45)〜涸れ棚下で遡行断念・標高約1270m(11:16)〜右岸をよじのぼって1,374m地点通過(11:43)〜矢板市最高点(12:31)〜桜沢右俣で黒曜石を見る・標高約1250m(13:30)〜桜沢左俣を横断して大間々駐車場帰着(14:22)

待ちに待ったジメジメ蒸し蒸しの梅雨到来。乾燥に弱く梅雨時に絶好調となる体質がその主な理由だが、水量が増して釣り易いとか、山にでかける人が少ないということもある。今週末は雨の予報であり、釣りには向かない。こんな場合には天候を逆手にとって雨の日ならではのテーマで行動しますか。

主目的は尚仁沢右俣(涸れ沢)の標高1200〜1300mの様子を確認すること。1999年5月に権現沢右俣から左岸の崖を這い上がった時、降雨と足の痙攣により山登りを断念して尚仁沢右俣を下ったものの、涸れ棚で行き詰り遭難の一歩手前までいったことがあった。同年11月に、尚仁沢左俣(権現沢)と右俣(涸れ沢)の間の尾根を辿って標高1,250m付近まで確認して一応のリベンジを果たしている。誰も行かない深山を独りで彷徨し始めた頃の思い出である。あの地域に行くことはもう無いと思っていたのであるが、10年以上も経過して新たな関心が生じた。地形図を見れば滝があってもおかしくない急勾配であることは一目瞭然。行き詰った涸れ棚に水流が出現する様を見てみたい。

降水を集める面積が狭く、且つ透水性の高い地質であるため、水流が出現するのはまとまった降水があった場合に限られよう。ではどうやってアプローチしようか。過去2回同様、尚仁沢下流側から遡行するのが自然だ。しかし、2008年に黒沢から尚仁沢に抜けた際にヤマビルにたかられ、あれ以来雨の日には尚仁沢に近づきたくない。ならば、大間々から青空コースを歩いて途中から斜面を下るしかない。昨年秋の様子見で下れそうなことを確認済み。ツツジの季節が過ぎて梅雨空の大間々には誰もいないであろうし、まだアブも出ない。その意味で今週末は都合が良い。

早朝勢い良く雨が降っていたのでシメシメと思ったのだが、その後一部青空も覗いて雨が降る気配がない。ダメ元で大間々に向かった。なんと、まだレンゲツツジが咲いており少なからず行楽客もいるではないか。たこやき・焼きそばの出店まであるとは驚いた。釈迦ヶ岳に向かったハイカーも何組かいたようである(剣ヶ峰付近の登山道の靴跡から推測)。誰もいないと思って汚い格好で出てきたので、そそくさと準備して青空コースに入った。青空コースは太陽が照りつけエゾハルゼミの大合唱で賑やかだ。


青空コースから離れ、下りやすそうな小尾根に入った。林床は丈の低いミヤコザサなので藪は無いに等しい。中間地点で勾配がきつい箇所があり、適当にガレた谷筋を下って巻いて尚仁沢右俣に到着。降雨後であるのに水流は無い。


単調な涸れ沢で、標高1200mまでの遡行は楽である。勾配がきつくなる区間に入ると岩棚にしがみついて登るようになりやや緊張を強いられる。


ガスが立ち込め、11年前を思い起こさせる怪しい雰囲気。両岸が切り立つ場所に落差10数mの涸れ棚が出現。一筋の水流すらない。


正面右側にある段にはかろうじて上がれるが、最後の壁はほぼ垂直で、越えるのはあまりに危険。落ちれば助からん。11年前に上から降りてきて行き詰った場所までは到達していないようだが、遡行の目的は十分に達成したので退却決定。


行きはヨイヨイ帰りは怖い涸れ沢遡行。最初の段を安全に降りる策が見つからず、ザックを先ず落としておいて、中間の棚に一瞬足をついて飛び降りた。さて、これからどうしようか。来たルートを戻るのはつまらな過ぎる。上部の勾配が緩やかな笹原まで高度差数十mしかないはず。せっかくここまで登ったのだから、できるなら剣ヶ峰経由で戻りたい。右岸側は小尾根状になっていて、樹木に掴まれば突破できそう。まるで御山沢遡行みたいな展開だ。

小尾根を辿ると眼前に崖現る。細い樹木につかまってバランスとりながら傾斜のついた濡れた岩棚を少し左に回り込むしかない。かろうじて掴める位置にあったツツジのおかげで突破。これを最後に危険箇所は無くなり、イヌブナと若いダケカンバ樹林の1,374m地点通過。


標高1,400m〜1450mの斜面は、11年前は広大な笹原であった。現在はほぼ全域でダケカンバが成長している。ポカンと開けた空間が幾つかあって公園の広場のようである。全域でほのかに甘い香りが漂う。


八海山神社周辺に何名かのハイカーが見え、声もかすかに聞こえて来る。

八海山神社方面


雲の位置が低く、標高1,000m以上はなかなか良い天気だ。

釈迦ヶ岳
雲海(塩谷町方面)


斜面上部はゴヨウツツジが多い。標高1,500m以上はまるで植林の如きイラモミの純林である。


剣ヶ峰から大入道に向かう道に入った。そのまま登山道を辿ると大回りになるので、最初の鞍部で笹原を東に下って桜沢右俣に降りた。この沢も水流は全くない。勾配の緩い沢で、足元さえ気をつけていれば安心して下れる。

ハクウンボク?


写真の場所に黒曜石が転がっている。質はあまり良くない。


水流が現れる辺りで沢を離脱。右岸に上がる時に見えた大入道の位置から判断して、離脱地点は標高1,200〜1,250mの間であったと思われる。ほぼ高度を維持して桜沢左俣を横断しレンゲツツジ帯に抜け、遊歩道を歩いて大間々帰着。

大間々のレンゲツツジ見納め


山野・史跡探訪の備忘録