奥鬼怒残雪歩き(2011年4月)

年月日: 2011年4月30日(土)

行程: 女夫渕(03:45)〜(車道歩き)〜日光沢温泉(05:37)〜鬼怒沼(07:32)〜物見山(08:11)〜2098.7m三角点北の2100mピークで退却(09:30)〜鬼怒沼復帰(10:50)〜鬼怒沼山・2141mピーク(11:26)〜鬼怒沼山・三角点ピーク(11:58)〜鬼怒沼山・2135mピーク(12:15)〜日光沢温泉(14:14)〜(車道歩き)〜女夫渕(15:58)

我が社の今年の春の連休は三分割されている。生産活動に直結していない部門では当然有給休暇を取得して大型連休にしてしまう者が多い。工場だって中途半端に生産設備を休止させ再稼動させるよりはまとめて休みをとった方がはるかに効率が良かろうに、業務カレンダー決めた人の考えが理解できん。最初の3連休(4/29−5/1)はヤボ用がなく2日目の天候が良さそうなので、久々に遠出して山遊びすることにした。栃木でやり残している関心事は今のところ奥鬼怒の残雪歩きのみ。物見山から金精峠までの栃木・群馬県境尾根は未訪である。烏ヶ森の住人さんやねくらハイカーさんの記録で登山道の無い物見山と湯沢峠の間が薮尾根であることを承知済み。コメツガとシャクナゲ主体の薮稜線が嫌いなので無雪期に辿る気はしないが、残雪期ならば快適に辿れるかもしれない。藪が露出していたとしても燕巣山を経由して湯沢峠までは行けるだろう。問題は残雪時に湯沢峠から下れる保証が無いことだ。沢に沿って延々と斜面を横切る登山道はこの時期目印でもないと正確に辿ることは不可能だ。道を誤れば滝で行き詰る。何箇所か非常に勾配のきつい場所があって、雪で埋もれていれば通過困難である。県境を大回りして根名草山経由で下ろうにも、それはあらゆる面で余裕があればの話。夕方から天候が崩れる予報であり山中泊は非現実的。深入りすれば遭難するので、沢沿いの雪の状態と天候と進捗次第で安全最優先で判断する。

さいたまからの日帰りはきついため、前日午後にさくら市に移動して旧自宅で十分に睡眠をとって深夜に出発。女夫渕の駐車場はいつものごとく満車状態。ゲートが閉まっていて黒沢方面にある駐車スペースも使えない。少し凸凹した未舗装の場所になんとか駐車。長年使った大きめのザックは引越しの際に棄ててしまったので、中型のザックに釣り用の安物ザックをくくりつけていく。様にならん。

星が瞬き放射冷却で0℃まで冷え込んでいる。風は弱く寒さを感じない。上々の出だしだったのに、空が白むとともにうっすらと曇ってきた。県境の山々は全て見えているものの少しもんやりとしている。大気の水蒸気の量が多そうだ。本日は晴れ時々曇りの予報であったので一時は晴れ上がるかもしれない。

雪はまだたっぷり残っており、締まりも十分。温泉神社でスパイク長靴に履き替えた。温泉神社の周辺は日光沢温泉の飼い犬の排便箇所になっていて糞だらけ。鬼怒沼に上がる登山道は昔の鬼怒沼火山が形成した溶岩台地の崖沿いにある。ここも不安要素の1つであったが、残雪期の遭難防止に新しい目印がつけられていて、道を見失う心配はなさそうだ。何日か前に歩いた人の足跡も参考になる。

2004年引馬峠からの帰りに大勢のハイカーがいて落ち着いて見ることができなかったオロオソロシノ滝をようやく観瀑。

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オロオソロシノ滝


観瀑台から一旦中だるみがあって、いよいよ崖登りの核心部に入る。掴まる物がほとんど無い急傾斜の雪面トラバース区間が何回かあって緊張する。この時期に登るのはお薦めできない。危険区間を抜けるとアオモリトドマツ主体の樹林の単調な緩斜面がダラダラ続く。鬼怒沼の景色のご褒美がなかったら歩くモチベーションを維持できない。

今の時期、鬼怒沼は白い雪面で、周囲より若干低く色が異なっている場所以外はどこでも自由に歩ける。鬼怒沼は平地の彼方から遠くの高い山が頭を覗かせる光景が特徴的。朝8時時点で青空が広がり、白根山を除いて周囲の山々がくっきり見えていた。

鬼怒沼(右奥左が2141mピーク)
燧ヶ岳(左奥は平ヶ岳?)


物見山(毘沙門山)は鬼怒沼の溶岩台地の側面から突き出ているため鬼怒沼と標高差が100mも無く顕著な山に見えないが、鬼怒沼北端から見るとまともな形状をしている。適当に登って山頂に至った。栃木の山紀行の山名板がかろうじて雪面から出ている状態。名前の割りに眺望はたいして良くない。

休憩なしで県境尾根縦走開始。最初は尾根幅が広く快適に進める。標高2000mを下回る最低鞍部から登り返した標高2,050m地点からの眺めがよろしい。

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左から根名草山、白根山、2091mピーク


2,100mピークに至ると燕巣山が視界に入った。稜線はこれまで同様歩きにくそうに見える。既に時刻は9:30。眼下の谷は残雪が多く湯沢峠から下るのは危険すぎる。燕巣山に行ったら歩きにくい稜線を戻ってくるしかない。

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燕巣山


2,091mピーク以南は様相が一変する。尾根幅が狭まり稜線東側に雪庇が張り出している。雪庇がずり落ちそうなっていて稜線近くに隙間ができている。これを避けようとして稜線西側に移るとコメツガに被われた斜面の締りの無い雪がスカスカ踏み抜けるといった具合。これではペースが上がらない。おまけに陽光が完全に消えて群馬県側から冷たい風が吹き抜けて雰囲気悪し。低い気圧に弱くて標高2,000m以上でお決まりの鈍い頭痛を発症しノーシンを服用。気持ちよく残雪歩きすることが本日の目的であって、危険を冒して燕巣山に行く意味無し。あっさり退却決定。口直しに鬼怒沼北方の2,141mピークにでも登って時間をつぶしてから帰ろう。

2,100mピーク(尾根北側)方向
2,091mピーク(尾根南側)方向


なんとか2,091mピークまで戻って安堵。県境最低鞍部から一里沢源頭部の浅い沢を渡って鬼怒沼に復帰。この辺りの地形は黒滝山西側の大巻川源頭部と似ている。

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引き返す途上で見た鬼怒沼方面の眺め


鬼怒沼で自分以外の人の足跡発見。避難小屋付近で休憩中の男性が居た。避難小屋から鬼怒沼山方面に向かった人の足跡が少なくとも2名分有って、そのうち1名は既に下山。足跡はいずれも2,141mピークに向かい、鬼怒沼山には向っていなかった。2,141mピークこそが鬼怒沼山の名にふさわしいと思うが、残念ながら眺めはあまり良くない。梢越しに鬼怒沼の存在を認識できる程度である。北側に少し下ると袴腰山方面の様子が見える。

鬼怒沼山の北側を覗いてみようとして鬼怒沼山西側斜面を横切った。傾斜がきつく滑落しそうである。西側の膨らみから鬼怒沼山山頂に至った。つまらない山の代表格といえるこの山に再訪するとは思わなかった。分厚く雪が残っている分、ある程度眺めが得られる。

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鬼怒沼山(三角点ピーク)にて


地形図には鬼怒沼山の表記が2箇所ある。ついでに東隣のもうひとつの鬼怒沼山(2,135mピーク)にも行ってしまおう。両者の間に危険箇所は存在しない。

鞍部のダケカンバ
黒岩山方面


2,135mピークはなだらかなピークであるのに東側が疎林であるため眺めがよい。もし残雪期に訪れることがあったらここまで足を延ばすことをお薦めする。

雨が降りだしたので下山開始。2,141mピーク南東の2,110mピークから南南西に下り、鬼怒沼南東端をかすめて樹林帯の中で登山道に復帰。一番の難所で締まりの無くなった雪に苦戦中の男性登山者の前に出させてもらい順調に下山。下山中に振動で響いていた頭痛は標高が下がるにつれて治まった。

宿泊客を迎えに行く途中のバスの運転手さんに「乗っていきますか?」と声をかけていただいたが、春を迎えんとしている奥鬼怒の雰囲気を楽しみたかったので丁重にお断りした。

山野・史跡探訪の備忘録