野門沢・布引の滝訪問(2011年7月)

年月日: 2011年7月17日(日)

行程: 野門沢・大事沢工事用林道の車止め出発(05:27)〜山ノ神(05:51)〜林道終点(06:30)〜布引の滝・前衛滝(07:29)〜布引の滝(08:03-08:55)〜林道終点復帰(09:51)〜車に帰着(10:25)

栃木県在住時は、くそ暑い時期の休日は川にどっぷり浸かってアユ釣りして涼むことが常であった。埼玉県に移ってからは車の運転が億劫で、今年はアユ釣りの準備すらしていない。土曜日に一ヶ月振りに氏家に行くついでに翌日曜日に栃木県で山歩きすることにした。地形図の準備や行程検討が面倒なので、遊歩道を利用できる涼しげな場所で且つ未訪の場所である布引の滝を行く先に選択。これまでこの時期に山歩きする機会が少なかったので、滝の周囲の植生を観察するのが楽しみ。

土曜日は埼玉県程ではないにせよ栃木県もうだるように暑かった。夜になってもなかなか気温が下がらない。涼しくて且つ携帯電話が通じる場所を求めて夜9時半頃に大笹牧場に至り、霧降に向う道の広い路肩で車中泊。蚊がいないので窓を開けてなんとか寝ることができた。

翌朝、カラスの鳴声を合図に活動開始。工事用道路を歩くと距離が長くなるため、車止めから斜面を直登して2段上の道路に抜けた。ここから先は2004年に見つけた富士見峠の旧道を辿れる。山ノ神までは部分的にガレていて勾配がきつい。山ノ神から上方はミズナラの林の中に矮小なスズタケに覆われた明瞭な旧道を歩ける。まだアブが発生していないので快適。

山ノ神
旧道の雰囲気


全て旧道を辿り舗装道路を一切歩かないことも可能ではあるが、展望台から先は工事用道路を歩いた方が楽である。

陽射しが強烈。早朝は雲ひとつ無く、谷間にわずかに霧が発生しているのみ。

高原山方面
展望台から布引の滝(上二段)を遠望


道路終点から先の登山道で一箇所ショウキランを見た。朝方まだ日が差さない樹林内をオオミズアオがアゲハ蝶の如く舞う。

ショウキラン


富士見峠に向う道と別れて野門沢への下りに入る。2004年に富士見峠に向う際にほんの少し下ってみた記憶がある。その時に較べると木製の土留め及び階段の崩れが進行して廃な雰囲気が漂う。遊歩道を整備しておきながら工事用道路を通行制限しているので、訪れる人の数はあまり多くないようだ。

水の流れる支沢を2度渡る。最初の沢は湧水を水源に持つらしく、とても冷たく味も良い。枯れかけたオオバイケイソウが多数目に付く薮の無い緩斜面に休憩用のテーブルとベンチが幾つかしつらえてある。オオバイケイソウにはこれまで春先の陽光に輝く芽と夏の薄汚く枯れたイメージしかなく、花を見たことがなかった。鮮やかさはないものの結構きれいな花である。この花は花粉媒介をハエに頼っているらしく、臭い。

オオバイケイソウ


遊歩道として整備されているのは此処まで。その先は道が不鮮明となり少々不安を覚える。明るい沢底に降りてから左岸沿いに進むのだが、テンニンソウがびっしり生えていて道筋なんぞどこにあるのか判らん。薮は無いので足元に気をつけて前衛の滝に近づく。

布引の滝の下段を見るには前衛の滝を巻かなければならない。予備知識ゼロだし現地にも道案内や目印の類が皆無であるので、しばし思案。左岸のルンゼ上方の崖下にやや勾配の緩い場所がありそうだが、前衛の滝近くから安全に上がることはできない。少し戻って小尾根を登りトラバースしてルンゼに近づくと補助ロープが結わえてあった。こんなものに頼って危険を冒さないと接近できないのだから、その旨を遊歩道入口に警告しておくべきである。

ルンゼを渡った先の小尾根を登って崖に沿って移動し布引の滝到着。陽光が当たる前に滝を拝むことができた。今まで見た中で最も壮麗な滝の1つだ。苦労して観る価値はある。残念ながら写真では見上げる感じが伝わらない。

画像
布引の滝全景


滝周辺で一番目立つのがトリアシショウマで、崖や沢筋の至るところで開花中。その他、センジュガンピ、クルマユリ、ウサギギク、ニョホウチドリらしきもの(個体数は少ない。)、モミジカラマツなどの開花も観察できた。シナノキンバイが存在するのかは未確認。オタカラコウと思しき花茎が多数生育中であったので、7月下旬になれば黄色い花が多く観られると思う。

ウサギギク
ニョホウチドリらしきもの
モミジカラマツ


左岸側の空中に滝上部に向けて何本かワイヤーが張られている。かつて滝の上で何をしていたのか気になる(2017年追記。昭和40年代に野門沢源流地帯で大規模に森林伐採が行われた折、少なくとも木材の一部が野門沢側に搬出された可能性がある。)。

戻ろうとした時、男性1名が現れた。話の感じでは林道終点まで車で上がってきたようであった。さらに戻る途中で、ルンゼ下に男女一組の姿を発見。

登山道分岐点までの登り返しがきつい。林道終点に戻ってきた頃には三界岳から女峰山にかけて雲が発生していた。下る途上で、突如雷鳴の様な轟音が鳴り響いた。雷鳴にしては長時間響いたし、岩石の転げ落ちるような音が混じっていたので、野門沢のどこかで大きな崖崩れが生じたと思われる。

林道終点から車止めまで登りと同じルートで近道し30分強で帰り着いた。林道終点にあった車は1台のみで、車止めにあるのは自分の車のみ。ということはあの3名は1台に同乗してきたということだ。車止めには鎖がかかったままであった。工事関係者の特権なのだろうか。

山野・史跡探訪の備忘録