奥武蔵ハイキングその5(白谷沢 〜 棒ノ峰(棒ノ折山)〜 長尾丸山 〜 有間峠 〜 有間山)

年月日: 2011年11月13日(日)

行程: 有間ダム南岸の白谷沢300m手前の駐車地出発(07:38)〜道を見失う(08:04)〜尾根道・標高720mに脱出(08:33)〜棒ノ嶺(棒ノ折山)(09:12)〜槙ノ尾山(09:29)〜秩父線・50号鉄塔(11:05)〜日向沢ノ峰の分岐(11:29)〜秩父・飯能境界尾根に入る(11:39)〜有間峠(12:15)〜有間山(タタラノ頭)(12:48)〜967mポイント経由で未舗装林道横断(13:17)〜林道支線終点出合い(13:42)〜落合(14:20)〜車に帰着(15:10)

フォレスターを車検前に廃車するかどうかさんざん迷ったものの、走行距離23万kmを超えなお元気に走り続けるフォレスターへの愛着が勝って結局延命。土曜日午前中に車検が済み、日曜日にどこかで山歩きしようと地形図を眺めて候補地を物色していたらヤボ用が発生し、一旦山歩きに行くのをあきらめた。状況が変わって山歩き候補地探しを再開したのが23時過ぎ。公共交通機関を利用した山歩きの候補地は行程的に若干きついので日曜の日帰りハイクには不向き。車検を終えたばかりの車を利用することにして、候補地を比較的近くの飯能に絞った。大持山から日向沢ノ峰に至る秩父・飯能境界尾根の破線路を歩いてみたいと思っていたので、有間ダム(名栗湖)を起点として有間川流域を囲む尾根を周回することにした。やっと行く先が決まったのが午前1時。予備知識は名栗湖を車で一周できることだけ。他者の記録を参照する時間的余裕無し。単調な尾根歩きであり、破線路なんぞあろうがなかろうが迷うはずがない。もう夜遅いし、睡眠時間確保を最優先して地形図印刷をあきらめた。尾根歩きに関してこの行動は間違いではなかったものの、全く心配していなかった場所でほぼ遭難というべき状態に陥った。

秩父に行くときは川越経由で県道15号線を利用して国道299号に抜けるコースを利用している。国道299号に入らず直進して武蔵台と永田台を突っ切れば有間ダムに行く近道となるので、飯能の山歩きも同じ手が使える。今回は出光カードが使える富士見市の早朝セルフ給油の店に寄ったので、適当に北上して県道15号線に出ようとしたのだが、行く先々でT字路にぶつかりうまくいかず狭山市内でウロウロ。お茶の生産で有名な狭山は畑の茶の木の花が満開だった。今年はセシウム汚染騒動でとんだ目に遭ったな。お茶を1kgも食べる人が居るわけないし、お茶を入れたら茶葉のセシウムが全て染み出すわけでもないし、摂取したセシウムの全てが腸で吸収されるわけでもない。暫定規制値(乾燥お茶1kg当たり500ベクレル)を上回ったからといって、体への影響なんぞ無きに等しい。みんな武田邦彦みたいな扇動者に踊らされすぎ。来年は良い年でありますように。

県道15号に出られないまま狭山市内を彷徨っているうちに299号に至った。これなら所沢を通った方が早かったな。さらに武蔵台でも道を間違えるおまけつきで、有間ダム到着時には既に行楽の車が増えていた。初めての場所で駐車地探す時間がもったいないので、代替コースである白谷沢口から登ることにし、堤頂を通ってダム南岸に沿って移動。白谷沢手前の駐車地から出発。

地形図持ってないし、予備知識は関東ふれあいの道があることだけ。白谷沢なる名も登山口で初めて知った。登山口横の駐車地には既に登山者の車が10台程度あり、結構人気の場所らしい。ゴルジュ手前で沢右岸側に渡った先で明瞭な道を見失った。左岸にある踏み跡の1つは進入禁止の表示在り。その右側の踏み跡を辿ると二手に分かれ、左手は途中で消える。もう一方は涸れ沢の棚の上に続く。きっとゴルジュを巻くのだろうと思って棚に上がってみると道形は不明瞭で真新しい踏み跡無し。この時点で誤った場所にいることに気づいた。後で写真を他者の記録と照合。道を間違えた場所は、「牢門」と呼ばれているゴルジュの手前だったのかもしれない。だとすると牢門の中を通るのが正解。沢通しの岩場だから踏み跡が無いのは当然。「関東ふれあいの道は安全なハイキングコースであるはず。」という先入観があって、沢通しに登るという可能性すら考えなかった。良く見れば道標が在ったのかもしれない。この日同じコースを通った大勢の老若男女で道を間違えたのが俺一人という事実に腹が立つ。しかも登りで!藪歩きより登山道歩きの方が難しい。

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牢門


かすかな道形が小尾根上方に続く。ここを登っていくことができれば尾根道に出られるはず。等高線の間隔が非常に狭い場所なので、地形図を持っていればこんな愚かな判断はしなかったと思う。尾根筋にはあまり太くない樹木を切除した跡が何箇所も見受けられる。少なくとも10年以上は経過しているであろう。古い目印とテープをそれぞれ一箇所で見かけたので、かつてバリエーションルートとして用いられた過去があるのかもしれない。

どこまで登っても勾配が緩くなる気配はなく、上方に崖が迫ってきた。手の届かない場所に何やらB5サイズ程度の真新しいパムフレットの様な紙が落ちていた。つい最近、ここまで来た者がいたということだ。既に若干危険な場所を幾つか通過してきたので下り戻るのは気が重い。崖の上は樹木が多くて傾斜が緩いように見える。こんな崖のような場所にも樹木を切除した跡があるし、山肌を這う細い木の根が部分的に露出してかろうじて体を持ち上げることができるようになっている。誘惑に負けてここで一線を越えてしまった。もう安全に下れる保証はない。

崖を越えると、安全な場所に出るどころかさらにホールドの少ない難所に至った。バランスを崩したら転落する。既に遭難しているのであれば何処で止まっても同じ。崖の途中で蝉にならなければ死ぬことはない。行けるところまで行っちまえと開き直って難所を這い上がった。本当に遭難するかもしれないと思いながら危険な崖を這い上がる最中、緊張で体がわなわなと震えた。こんなことは初めての経験である。尾根道に出られることを確信して緊張が解け、ようやく震えが収まった。家に帰ったら右目の白目が真っ赤。おそらくこのときの極限状態が原因だろう。尾根道出合いは林道と尾根道が交差する手前、標高720mの場所。地形図の関東ふれあいの道の「道」の字が表示されている最も勾配のきつい斜面を登ったことになる。上方に抜けられることが予め判っているのであれば極限状態に至らずに済んだと思う(当時、同じ場所で似た経験をしたと思われる記録がウェブ上に2件有った。同じ場所に引き込まれる登山者は少なくないと思われる。)。

30分弱で約200mを必死で這い上がったのでもうバテバテ。尾根道下って帰ろうかと思った。快晴なのにもったいないと思い直して山歩き続行。棒ノ嶺(棒ノ折山)に向う尾根道はコアジサイの葉が徐々に薄緑色に変わりつつあった。


先行者は女性2人組みと男性1名のみで、棒ノ嶺(棒ノ折山)から先は先行者無し。静かな山歩きと言いたいところだが、尾根直下の未舗装林道を走るオフロードバイクの音がひっきりなしに響いてくる。未舗装の貫通林道がほとんど残されていない現在、此処は首都圏のオフローダーにとって聖地みたいな存在なのであろう。自分も昔はオフローダーだったから、バイクを走らせたい気持ちが解らんでもない。

棒ノ嶺(棒ノ折山)山頂


地形図上では槙ノ尾山から日向沢ノ峰まで破線路が無くても、比較的明瞭な踏み跡が存在する。道がなくともこの単調な尾根で迷うことは絶対にあり得ない。縦走路から逸れて長尾丸山に上がる踏み跡を辿ってみたが特筆すべきこと無し。長尾丸山を過ぎるまで、尾根の東京都側斜面がスギ植林地で埼玉県側斜面が広葉樹林。長尾丸山の西側から927mポイント西鞍部に至るまでは尾根幅がやや狭く東京都側斜面も広葉樹林であり、残り紅葉がとても美しい。


927mポイントの近くで大きな荷を背負った単独行者が西から辿ってきた。山中一泊では済まない量の荷物だから山梨県から縦走してきたのかも。100m超の急登区間の3分の2程度まで登った頃、背後から熊避け鈴の音が聞こえてきた。当方が10分程度軽食休憩していたことを考慮してもすごいスピードで、あきらかに速く登ることを目的とした歩き方だ。どこまで先に行けるか試してみたくなって、せかされるようにハアハアゼイゼイ心臓バクバクしながらの尾根歩きとなった。おかげで出発が遅れた分を少し挽回できたみたい。

1087mポイント前後で単独行者と団体に出遇った。結構人気のあるコースのようだ。送電線鉄塔からの見晴らし良好。

新秩父線・50号鉄塔(背景が日向沢ノ峰)
仁田山(左)と有間山(右)


日向沢ノ峰の最後の登りがきつい。分岐寸前で両腿がビクビクし出した。ガツガツ登ってくる後続者に追いつかれる寸前に日向沢ノ峰分岐に滑り込みセーフ。

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蕎麦粒山・一杯水方面


分岐で挨拶した若い後続者は「へへっ、追いついたぜ。」という表情を浮かべてさっさと日向沢ノ峰の最高点に行ってしまった。最高点まで行く元気が無いので、蕎麦粒山方面にある岩に腰掛けて昼食休憩。

気持ちの良い尾根歩きを期待してきたのに、蕎麦粒山・一杯水方面も有間峠方面も尾根筋に延々と枯死したスズタケのストロー薮がびっしり続いていてがっかり。

有間峠に下る途中にある新秩父線送電線鉄塔からの眺めが良い。

広河原谷


仁田山に向かう途中で林道に近づく場所有り。有間峠に車を置いて林道を歩いてここから登り始める人が多いようだ。


仁田山に向かう尾根筋も枯れ死したスズタケのストロー藪がびっしり。秩父で広範囲に見られるスズタケの枯れ死の原因は何なのだろうか。明るい尾根道で枯れ死しているのだから日照不足ではない。密で且つ丈が高いのでシカの食害でもない。菌類に侵されているのか?枯れ死した範囲が2008年の一斉開花の範囲と同じであるという説もあるが、実生による更新が進んでいる様子は見られなかった。


朝方の青空は何処へやら。すっかり曇ってしまって、景色が冴えない。名栗湖方面から霧が尾根を越えていくようになり雰囲気悪し。こんな状態で未知の尾根を歩いてしまうなんてもったいない。天気の好いまたの機会にとっておきたくなり、どこで尾根歩きを中断するか思案しながら歩を進めた。

有間峠


有間峠北側のピークだけスズタケが健在である。他所に較べて落ち葉が湿っているので、乾燥化と関係があるのか?ここもいつまでもつやら。

有間峠北側ピークのスズタケ


開けたタタラノ頭なる山名板があるピークに達した。有間山はとっくに通り過ぎたのか、それともまだ先なのか?(地形図を持っていないのでタタラノ頭=有間山であることを知る由もない。)遠くに見えるの尾根が蕨山の尾根だとすると、あと1時間近く北上しないと下りの尾根に入れないことになる。本日は軽く歩くつもりだったので、ここから谷を下ることにする。

タタラノ頭から東に下る尾根筋には地籍調査のものと思しきピンクのテープが垂れている。すぐに手入れの良いヒノキ植林地となり、舗装林道を横切る。さらに尾根筋を素直に下り、未舗装林道と交差する前に名栗湖が見えてだいたいの現在地を把握。地形図の1016mポイントのある尾根に入れば落合まで順調に下れたと思うが、素直に尾根筋を辿ると967mポイントのある尾根に入ってしまう。


未舗装林道から先は作業道との出合いを期待して植林地を下り、有間川左岸の支流源頭部に降りた。


植林地の緩い斜面を下って作業林道終点出合い。あとは道路歩きだけで帰り着いたも同然。


有間川渓谷は雰囲気は良いのだがきれいな紅葉が見られない。左岸から落ちる大ヨケの滝が印象に残った。渓流釣り場も名栗湖周辺も八王子ナンバーや所沢ナンバーの車がたくさんあって、観光客で賑わっていました。

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有間ダム(名栗湖)


山野・史跡探訪の備忘録