奥武蔵ハイキングその8(越生駅〜大高取山〜越生梅林〜黒山三滝〜傘杉峠〜顔振峠〜吾野駅)

年月日: 2012年3月3日(土)

行程: 越生駅(09:02)〜大高取山山頂(09:58)〜梅園神社(10:28)〜越生梅林を通り抜け〜黒山三滝・天狗滝(11:56)〜黒山三滝・男滝(12:04)〜東屋で昼食休憩〜傘杉峠(12:51)〜顔振峠(13:16)〜吾野駅(14:05)

晴天の日に関東三大梅林の一つである越生梅林に行ってみたいと思っていた。週末は冴えない天気予報だったのに急に土曜日が晴れる見通しとなり、日付が変わってから越生梅林を中心とした大雑把なコースを検討した。

周回向きの場所ではないので電車利用とする。越生駅から直接街中を越生梅林に向かうのは味気ないので大高取山経由とし、梅林から越辺(おっぺ)川が流れる谷をテクテク舗装車道を歩いて南下し、黒山三滝を鑑賞して顔振(かあぶり)峠を越えて吾野駅に下る。コース上の山域はほぼ全て植林されているため、おそらく越生梅林と黒山三滝以外に見どころはあるまい。貴重な晴れ間に体を動かすことが第一目的である。

道迷いするような山域ではないし、おそらくハイキングコースが整備されているであろうから、地形図は持たずおおまかな地理関係と主要ポイントのみ頭に入れていく。

今回のハイキングは山歩きが主ではないので、以下に道中思ったこと感じたことをダラダラ。


武蔵浦和駅〜(武蔵野線)〜北朝霞・朝霞台〜(東武東上線)〜坂戸駅〜(東武越生線)〜越生駅

比較的短時間のコースであるため、徐々に空が晴れ上がりつつあることを確認してから自宅を出発。平野部は晴れていても奥武蔵の高いところには雲がかかっていて良い景色は望めそうにない。本日の選択は正解。

一本松駅のローマ字表記が"IPPOMMATSU"であることに違和感を覚えた。誤記ではなく、”んま”の実際の発音が"MM"であるため意図的に"NM"ではなく"MM"にしているらしい。外国人が発音しやすようにとの配慮らしいが、日本人がいちいち口の開きや舌の位置・形を思い浮かべてローマ字表記するかね。"N"も"M"も"NG"も区別しない寛容さが日本語の最大のメリットの一つなのだから、余計なこと考えず”一本”はあくまで"IPPON"と表記した方がシンプルで良い。韓国では漢字の発音が厳格で実際の発音とローマ字表記の不一致が存在せず、後ろに何が付こうが発音が難しかろうが"N"が"M"に変わるなんてことはない。その代わり、発音の違いに対する寛容さが無い(少なくとも日本人はそう感じる。)。


<越生駅〜大高取山>

ホームが大勢のハイカーで混み合い、改札口を出るまで数分を要した。花見客ではなくハイキング大会の参加者達らしい。彼らと別れて大高取山らしき高みに向けて駅正面の道を進み、法恩寺を経由して越生町商工会館のある通りを西に向かうと、前方で交差する道路をハイカーの長蛇の列が北から南に向かう光景に出遭った。さきほど越生駅で見たハイカーの数の比ではない。こんなにたくさんどこから湧いて出てきたんだ?東武鉄道が主催する「梅かおる」越生梅林をめぐる里山ハイキングなるものとぶつかってしまったようだ。

ハイキング参加者の列と交差してさらに西に進むと越生神社が在り、その先に大高取山の登り口を示す標が在った。前日雨が降ったもののコナラの落ち葉がしっとりと地表にへばりついた状態で泥んこや滑りやすい場所はない。

南に面した植林斜面の登山道を進んでいくと、だいぶ離れた場所の麓の犬が山中のかすかな足音を感じ取って吠え始めた。一匹二匹ではない。吠え犬をたくさん飼っているようだ。韓国や栃木の田舎みたいに放し飼いしていないだけましだが、山歩きの初っ端から犬に吠えられたので気にいらねぇ。手をパンパンパンと叩いて挑発してやったら爆竹連鎖並みの大騒ぎになった。無駄に喚く存在は人間(例えば放射能パニックのキチガイども)も犬も害悪でしかない。

大高取山は全山スギ・ヒノキが植林されており、眺望目的で登る価値は無い。北側のゴルフ場(埼玉ロイヤルGCおごせコース)の際まで行けば眺めが良いのではないかと推測するが、三角点のある山頂は薄暗い植林の中である。無名戦士の墓から来る道への分岐付近だけ開けた場所があって、南側の山が見える。眺望は無いものの、大高取山の登山道は「武蔵・越生ハイキングコース」の一部として良く整備されており歩きやすい。カシ、シイ、サカキ等の常緑の下生えが刈り払われている場所が多く、植林の山にしてはスッキリと見通しがあって全般的に雰囲気は悪くない。


<大高取山〜梅園神社〜越生梅林>

越生町自然休養村センターに下る道と別れて梅林方面に向けて尾根筋を下り、道標に従って尾根を離脱して人里に抜けた。山中で遭ったハイカーは10名強。

県道61号線を歩いて越生梅林に向かう途中、梅園神社の前を通る。越生梅林の発祥となった神社であり、創建は少なくとも1350年よりも前であるとのこと。全コース中、最も雰囲気が良かった。


肝心の越生梅林はまだ開花していなかった。入り口で「本日は無料です。」と言われたが、道理で。3月に入っても梅の花が咲かないとは、今年の寒さが例年よりはるかに厳しかったことを物語る。見頃は3月中旬頃にずれ込むだろう。

梅の花が咲いていなくても客はそこそこ多くて、飲食店が営業しており、訪れた時はちょうど太鼓の演奏が披露されていた。

参考ページ: 越生梅林 梅まつり


<越生梅林〜黒山三滝>

お目当ての梅の花が咲いていないのに一人で越生梅林に居る意味が無いので、越生梅林を突っ切り、車の帰りの進路に沿って県道61号線に復帰。

越生梅林自体は大きくなものではなく、約2haの敷地に約1,000本の梅が植えられている。この地が梅で有名なのは、越辺川に沿って形成された盆地状の場所が梅の栽培に適していて、古くから梅の栽培が盛んだったからである(谷全体で2万5千本もの梅の木があるのだそうな。これが関東三大梅林の一つに数えられる所以だろう。)。梅の香りに包まれて里をゆったり歩いてみたいものだ。いつかまた来るさ。

県道61号線沿いに南下する途中、ちょうど見頃のロウバイを発見。半月前に宝登山のロウバイが見頃だったのだから、越辺川流域の方が気温が低いようだ。


小杉地区と大満地区の境付近で県道61号線を北上してくるハイカーの姿がちらほら。里をハイキングする人が結構居るなと思っていたら、今朝出遭ったハイキング大会参加者の先頭集団であった。彼らは桂木観音を経て上大満に抜けてきたらしい。

上大満から先は再び静かな里歩きとなった。交通量が少ない道路で歩道が整備されている。初めての場所であるし、ひっそりと立つ二宮尊徳(金次郎)像に気づいて立ち寄った旧梅園小学校南分校跡地の説明を読んだりして退屈することはなかった。

火の見下バス停から先は急に道路幅が狭まり歩道もなくなる。ちょうどこの辺りから越辺川の流れがゆったりした里川から渓流相に変化する。全洞院、熊野神社を経て東上閣に至ると少し観光地らしい雰囲気となる。

越辺川支流の藤原川沿いに進み徐々に谷幅が狭まり険しくなってくるが、ほとんどの場所が植林されているし、ゴミが放置されていたり、滝の前に店が構えてあったりして、かつての修験の場であったことを思わしめる幽玄な雰囲気とは程遠い。


<黒山三滝〜傘杉峠〜顔振峠>

天狗滝は滝下まで行けないので滝の全容を拝むことができない。天狗滝のある沢は水量少なく、前日降雨してもこの程度ならば渇水の時期の水流は乏しいものだろう。男滝のある沢の方が水量が多い。男滝の規模については、ウェブ上にある女滝と手前の橋を入れた構図の写真を見て判断されたし。東京近郊で簡単に見ることのできる滝としては立派であり、1950年に日本観光百選の「瀑布の部」で第9位に選ばれたことがある(Wikipediaより引用)というのも納得がいく。

天狗滝
男滝


男滝のある沢と天狗滝のある沢の間に中間尾根を跨ぐ連絡歩道がある。中間尾根上の東屋で昼食休憩して、天狗滝の沢沿いの歩道を辿って傘杉峠に向かう。

水流の無い谷沿いの道もまた「武蔵・越生ハイキングコース」の一部であり、関東ふれあいの道でもある。一か所鎖が這わしてある場所以外に注意すべき場所は特にない。植林された谷の斜面にはシャガが自生している。これまでも慈光寺の近くや奥多摩の金比羅尾根でシャガ自生地を見たことがあるが、これほど広範囲にシャガが自生しているのを見るのは初めてだ。植林されて直射を受けず湿った奥武蔵の環境がシャガの生育に適しているようだ。その他の植物の存在の可能性が期待できないので、この山域はシャガの花を期待して4月下旬頃に訪れるのが良いかもしれない。

前回の経験で尾根筋を辿る遊歩道からの眺望が良くないことを承知しているので、傘杉峠から顔振峠まで車道歩き。


<顔振峠〜吾野駅>

奥武蔵の中でもハイカーの数が多いコースと思うが、午後なので登ってきたハイカーは1名のみ。

風通しの良い沢沿いにサルオガセの仲間が生育している。低山帯でも生育するものなのだな。霧が発生しやすい高山で見られる色の薄いサルオガセとは種類が異なるのかもしれない。確か栃木県の荒井川の奥でも似た光景を見たことがある。


麓に下りてきてから吾野駅に行くまで道がやや複雑であるが、要所に道標があるため迷うことはなかった。しかし、高麗川とその支流の中間の高みを越えて再び吾野駅に向けて階段を上らなければならないので、余韻に浸ってハイキングを終えるという感じがしない。


吾野駅〜(西武秩父線)〜飯能駅〜(西武池袋線)〜秋津・新秋津〜(武蔵野線)〜武蔵浦和駅

吾野駅のトイレで顔洗いと着替えを済まし、14:37発の列車が来るまで駅のベンチで本を読んで暇つぶし。この駅は待合室が無いので天候の悪い日に列車を待つのはちょっとつらそうだ。ハイキング客の帰りで混み合う時間帯ではなかったため余裕で座れた。その後の接続も順調で全て座って武蔵浦和まで移動。総じて快適なハイキングであった。

山野・史跡探訪の備忘録