残雪期の高原山・2012 (権現沢を周回)

年月日: 2012年4月8日(日)

行程: 林道・守子線の峠出発(06:33)〜守子神社(06:52)〜守子分岐(07:15)〜前山(08:02)〜釈迦ヶ岳(09:10-09:32)〜剣ヶ峰(10:39)〜八海山神社(10:59-11:13)〜ミツモチ手前400m(11:48)〜(休憩約10分)〜42陸軍用地標柱(12:28)〜駐車地に帰着(13:02)

日曜日に快晴の予報であったため、土曜日は花見にも行かずに栃木県北の残雪歩きを計画した。土曜日午後になって午前中曇りの予報に変更されたため、当初案を放棄。その後再び快晴の予報に戻ったが、福島県の予報と突き合わせるとどうも怪しい。気圧配置もいまひとつパッとしない。よって、目的地を県境から離れた高原山に変更。

高原山は栃木県の平野部に面する位置に在る火山という点では那須岳と共通するが、栃木・福島県境から離れており、冬型の気圧配置による積雪は比較的少ない(植生も完全に太平洋型でチシマザサが存在しない。)。栃木・福島県境の標高がたまたま高原山の北西辺りで低くなっているために、県境を越えた北西風が高原山の北西側斜面に雪をもたらすが、南東側斜面にはほとんど降雪しない。南東側斜面の雪は主に関東の平野部に積雪する気象条件でもたらされる。釈迦ヶ岳山頂はその境目に位置し、吹きさらしであるため深く積雪することはあまりないと思われる。ところが、今年は例年に較べて冬型の気圧配置が顕著で、釈迦ヶ岳山頂に深く積雪しているとのこと。烏ヶ森の住人さんのレポにあった、釈迦像が雪上に頭だけ露出している光景を見てみたい。


さいたま市〜林道・守子線

午前3時半頃に出発したので、国道はスイスイ。久しぶりなので宇都宮の白沢街道から旧上河内村に抜けて田原街道を塩谷町玉入に向けて北進してみたが、氏家経由の方が早く着いたかもしれないな。

高原山を含む栃木県北部は放射性セシウムの沈着量が多く、ほとんどの河川で渓流魚の放射性セシウム蓄積量が新しい基準(≦100ベクレル/1kg)を超えたため、栃木県の渓流釣り解禁が危ぶまれていた。季節によって食べる餌に変化があるためなのかどうか不明だが、春になって渓流魚のセシウム蓄積量が下がり、河川によっては3回連続で基準値をクリアして解禁の運びとなった。荒川も解禁しており釣り客の車が目立つ。荒川上流部は養殖した放流魚主体の釣り場だから、釣った魚を食って問題が生じることはまず無かろう。きれいな天然魚は怪しいので食べずにリリースするのが無難と思う。

尚仁沢ハートランドには早朝から水汲みの車が数台有り。土上平放牧場手前から林道・黒沢線、林道・守子線と繋いで順調に登山口到着。林道に一か所樹木が倒れこんでいたが、すり抜けることができる状態だった。先客は無し。


登山口〜釈迦ヶ岳

雪が消えてから歩いた人はあまりいないようであった。今日も少なくとも山頂までは誰に遇うこともあるまい。このコースは足尾並みに野生動物と遭遇する。ヌタ場の近くでリスを一匹、守子分岐の手前でシカの群れを見た。放射能に多少汚染されたくらいで、自然の風景も野生動物の営みも変わるはずがない。汚染された野生動物の肉は食えず狩猟の対象にならないため、放射性物質は野生動物にとって天がもたらす福音となった。要するに人間が自ら作り出したものに対して勝手にギャーギャー騒いでいるだけである。

守子神社の辺りで日焼け止めと偏光グラスを忘れたことに気づいた。こうなると適度に雲が発生してくれた方がありがたい。雪が残っていたのは標高1,050m辺りからで、例年と変わりない。厚みが十分あってよく締っている。前山直下でスパイク長靴に履き替えて順調。何日か前にまだ雪の締りがない時期に登った人の跡が残っていた。

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前山から見る釈迦ヶ岳 (08:07)


登っている南斜面は若いダケカンバの樹林で日射を遮るものが少ない。幸い、朝は斜めに光が当たるし、自分の影を見ているぶんにはさほど眩しくない。明け方まで降っていた雪の量は南斜面でせいぜい1〜2pで、登りに全く影響無し。

下りに同じルートを戻ると直射と雪面の反射を避けられない。十数年振りに西平岳に回ることを考えたものの、中岳の稜線に新雪の庇ができているのを見てこの案はボツ。

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中岳方面 (09:06)


釈迦ヶ岳山頂手前には新雪の吹き溜まりが形成されていてズボズボ。先行者はノウサギのみ。頂上の積雪量が多く、三角点標柱はおろか祠も完全に雪の下。

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釈迦ヶ岳山頂西側 (09:09)
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釈迦像 (09:18)


栃木県と福島県南会津の境の山々はほぼ全て見えている。那須岳はまだ天候が回復していないようだが、男鹿山地の雲は徐々にとれつつあった。

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鶏頂山と県境の山並み (09:28)



釈迦ヶ岳〜剣ヶ峰・八海山神社

登り始めの時点では高原山の北側が晴れていなかったため、大間々コースに回ることは考えていなかった。既に高原山一帯は広く晴れており、大間々コースを辿りミツモチ手前から42陸軍用地を経由して周回するのも悪くないと思い始めた。この周回ルートは1999年5月に試したことがあったが、当時はミツモチ手前から下る破線路の実態を知らず入り口が判らなかったため少し大回りした。その後この破線路を何度か利用して、コースの全貌を把握しているが、当初思い描いた周回は未達成のまま。今年、烏ヶ森の住人さんが大間々コースで登っているし、その時よりも雪の状態が良いので障害は特にないであろう。

山頂北側はところによって新雪が深く、樹木の枝が邪魔、且つコメツガの樹陰の締りが今一つで踏みぬけたりして、直進できない。かといって東に寄りすぎると急峻な東斜面に転落しかねない。この道を通ったことは無雪期に3度あるだけ。傾斜がきつくてロープがあったことくらいしか覚えていない。カチカチの雪に埋もれたロープを見て登山道を辿っていることは判るが、スパイク長靴だけで安全に下れるような勾配ではない。立ち木に掴まり慎重に場所を選んで降りていくと、進行方向右側にスッカン沢の源頭が見えるではないか。いつのまにか分岐を行き過ぎてしまっていた。このまま鶏頂山に行くことは可能だが、戻ってくるのが面倒臭い。少し登り返して大間々コースに入った。

この日、メイプルヒルスキー場跡から釈迦ヶ岳に登った人がいて、記録に拙者のトレースを「解読できない。」と書いていた。南から登って北に下るときに道を間違えて戻っただけ。

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大間々ルートを俯瞰 (09:52)


大間々コースも最初のうちは勾配があり、一度滑った。手でブレーキをかけながらすれ違いざまに樹木をキャッチして制動。雪庇は権現沢側に向けて発達している。権現沢は勾配緩めであり、万が一滑落しても死ぬことはあるまい。コメツガ樹林の雪下に空洞があってたまに踏みぬけるが、ゆっくり歩いていればそう危険ではない。

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下ってきた稜線 (09:59)
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大間々コースの雪庇 (10:01)


これまで歩いた釈迦ヶ岳東尾根や権現沢奥を詰めたときに使用したイラモミ樹林の尾根筋(下の写真中央部)が良く見える。

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剣ヶ峰手前から見た釈迦ヶ岳 (10:26)


剣ヶ峰から矢板市最高点の間も雪の締り具合良好。どこでも歩ける。矢板市最高点からイラモミ林を下って八海山神社到着。釈迦ヶ岳眺めて休憩。

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八海山神社から見た釈迦ヶ岳 (10:59)



剣ヶ峰・八海山神社〜駐車地

八海山神社のガレ場は吹きさらしで積雪しにくい場所なので、稜線部を除いて雪無し。この辺りは見晴らしコースの名前の如く、高原山南側の眺めが抜群に良い。ここに馬頭観音があることに初めて気づいた。

見晴らしコースを大間々方面には下らず、青空コースに近道。この辺りの雪は緩んでおり、適当にグリセード。青空コースは日当たり良好の割に雪の沈み込みが少なく快適。

ミツモチまで400mの標柱から歩き慣れた破線路を下る。ここを道なき藪尾根と称している記録がヤマレコにあるが、藪というほどではない。ヒノキ植林地下部の土塁で登山靴に履き替え、しばし休憩してから42陸軍用地を経てもう一下り。

適当な場所から尚仁沢林道に下り立ったとき、県民の森の方角から2台のオフロードバイクがやってきた。倒れた樹木が通せんぼしておりオフロードバイクはここから引き返したようだ。バイクや車で林道に入り込む場合は、こんな時のために鋸を携帯した方が良い。

林道横にある湧水は県民の森方面にホースで引かれている。導水しきれない水が通常は林道に流れ出ているのだが、今回はチョロチョロ程度しか流れておらず、顔洗いには不十分(帰りに黒沢で済ました。)。

林道・守子線の尚仁沢右岸の擁壁が亀裂だらけで浮き上がっている。このまま放置すると今年中に擁壁が崩落する可能性大。車では入り込まないのが無難。

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ミツモチ手前から見た釈迦ヶ岳方面 (11:51)


本日遇った(見かけた)登山客は、スッカン沢と権現沢間の尾根筋で釈迦ヶ岳に向かった1名、八海山神社から登ってきた1名、八海山神社で休憩中の1名、見晴コースを登ってきた1名で、いずれも単独行の男性。

山野・史跡探訪の備忘録