磐梯町・小屋川の滝群

年月日: 2012年7月15日(日)

行程: アルツ磐梯スキー場から小屋川右岸沿い林道に入る〜第二堰堤から左岸斜面を登りスキー場に上がる〜ゴールドライン(標高約1,100m)〜スキー場を戻り999mポイントより下側で廃道発見〜廃道を辿って再びゴールドライン(標高約1,010m)〜帰りに左俣のとび滝と右俣のF2を観瀑〜スキー場を下って帰着。カメラの日時維持機能が失われたので時刻不明。所要時間は5時間弱。

3連休を利用して田舎(福島県猪苗代町)に戻った。土曜日に戻る途中で那珂川で今年初のアユ釣りする予定であったが、本支流全てきつい濁り水が流れていてアユ釣り不可能。すこしの降雨でも濁ってしまうようでは今年の那珂川には期待できない。箒川の高阿津付近では濁りが混じっていなかったが、天然遡上の無い区間であり、アユが居る気配無し。那珂川の現状を見て一気にアユ釣りする気がしなくなった。

翌日曜日、昼近くなって明るくなってきたのでぶらりと思いつきで近くの滝訪問にでかけた。ゴールドラインの近くを流れる小屋川に滝があって、ゴールドラインに観瀑台があったような気がする(金払う道路を利用しない主義なもので、ゴールドラインを最後に通ったのは結納の時に現女房の両親を連れてドライブした1988年のこと。記憶が定かではない。)。地形図用意してこなかったし、事前調査を一切していないからアプローチの仕方も知らん。

猪苗代町の土田集落出身である父は、昔は押立経由で小屋川流域まで行ったことがあるという。副業で猟師をしていた祖父の代は、山(八方台)を越えて裏磐梯も活動範囲にしていたらしい。今はスキー場建設で当時の道が消えてしまっているとのことだが、地形図には小屋川の左岸側に破線路が残っている。ゴールドラインに達する前に神社マークもある。この破線路に興味を抱き何年か前に七ツ森ペンション村の奥からアルツ磐梯スキー場に抜けて道筋を探ってみたが、皆目見当がつかなかった。今回はその時に把握した現地の状況と自分の判断力だけを頼りに、滝を見てみようという訳だ。まあ、時間がかかろうと藪があろうと、沢を遡行して行けば間違いなく到達できることは確かだ。深いこと考えず、思いつきで、さほど危険を冒さない暇つぶしに丁度よい。

小屋川は樹木や藪が覆い被さって水流の上の空間が極めて狭い典型的な藪沢である。まず、アルツ磐梯スキー場から小屋川右岸の林道に進入。すると予期せぬ巨大な堰堤現る。右岸の踏み跡を辿って堤頂に上がり沢奥の様子見。うむむ、見渡す限り藪で何も判らん。堤頂の反対側でカモシカがこちらをじっと見つめておった。


堤防の上流側の藪中にも踏み跡が続く。少し開けた場所に至ると蔓や夏草の藪中で踏み跡が乱れて不明瞭となる。周囲には採り頃のワラビがべったり出ており(ワラビは春だけでなく梅雨時もたくさん出る。)、採取した跡もある。しかし、ワラビ採るだけならわざわざこんな場所に来る必要はない。猪苗代なら無尽蔵に採れるのだ。イワナ釣りが来たついでに採っていったものだろう。

奥に向かう踏み跡がなさそうなので、遡行をあきらめかけてしばしワラビとシオデを採取。沢に近づいてみると、奥に第二の巨大な堰堤が存在することが判った。沢を渡って左岸側の堤頂に出てみたが、堤防の奥はまたまた藪の連続。踏み跡は期待薄。奥の二又が見えるものの、沢靴に履き替えて藪沢を遡行する気になれん。左岸側の尾根上はカラマツの植林地帯であるので、沢から離れ造林時の作業道を期待して尾根を東に向けて横断。高台には何もないが、さらにその奥の斜面を登っていくと開けた場所がありそうだ。正体は小屋川左岸側のスキー場のゲレンデであった。

以前、破線路探索した時にこのゲレンデを途中まで歩いたことがあった。初秋にはリンドウがたくさん花を咲かせる場所だが、今は場所によっては背丈を越えるススキ、イタドリ、アザミ、ワラビ等の草薮である。滑走コースを利用してどこまで登っていけるのか試してみたくなり、草薮斜面を登って行った


草原には数多くのシジミ蝶がいた。シジミ蝶だらけの光景を見るのは初めて。

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ヨツバヒヨドリの群落があって花が咲き始めていたが、アサギマダラの訪れはまだしばらく先の話。

やや勾配がきつい場所(標高900m前後)を越えると初心者コースからの連絡道が上がってくる。谷の反対側に猫魔山や厩山が見える。展望が良くて谷全体の様子と自分の位置関係をだいたい把握できた。

滑走コースの起点まで行くつもりで登っていくとだんだんゴールドラインを走る車の音が近づく。なんとゴールドラインに達してしまった。ゴールドラインが小屋川奥部を横断していることを知らなかったので、狐につままれた感じ。ということは観瀑台はもっと標高の低いところにあり、現在位地は滝よりはるかに高いことになる。地形図の神社マークの正体を見かけなかった。見逃したか?

滑走コース横に小屋川右俣の源流がチョロチョロ流れている。水芭蕉やクリンソウが生えている小さい流れで、滝を架けるような流れには見えない。滑走コースの縁を下りながら沢音の変化を頼りに下降点を模索。標高999mポイント付近から斜面を下ってみたが、まだ右俣の勾配が緩く滝が出現する気配なし。対岸(右俣右岸)に道筋らしきものが見える。不思議に思って近づいてみると自分の居る左岸側にも歩道発見。現在使われている様子はない。実質廃道だがとても歩き易い。滑走コースのどこからか下ってきて、右俣を渡って左俣に向かうようだ。廃道を利用して反対側の終点を探ってみる。未知との遭遇で俄然ヤル気が出てきた。

右俣を渡る場所にもクリンソウが生えている(花期はとうに過ぎて実だけ。)。道は中尾根を回り込み、左俣渡渉点に至る前に左俣の滑滝(F2)が見える。渡渉点には樹木の幹が這わしてあるが年月が経っている。道はさらに左俣の支流側に回り込み、最終的にゴールドラインの標高1,010mのカーブで終点となる。ゴールドライン建設により土砂で埋もれて明瞭な接続点は無い。確かめてはいないが、ゴールドラインが終点ではなくゴールドライン建設によって分断もしくは埋もれてしまったらしい。

ちょっぴり成果を得て満足し、余裕を持って観瀑に専念する。左俣渡渉点のすぐ下に数m程度の小さい滝がある。これをF3とする。廃道を少し戻って左俣左岸から斜瀑のF2を見る。

左俣F3
左俣F2


ゴールドラインから見える滝があるとすればもっと下流側であろう。さらに廃道を戻って枝尾根を下り本命の滝に到達。後で、これが「とび滝」であることを知った。落差はアユ竿一本分程度(10m前後)。水量の割には見ごたえのある恰幅の良い滝である。水芭蕉が生えているので、花期に来たらきれいな写真が撮れるかもね。

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左俣F1・とび滝


一旦廃道に復帰し、左俣の奥を探ってみる。渡渉点の上流側に比較的新しい木製の数段の梯子が立てかけてあるのだ。祠でもあるのかと思い奥まで進入してみたが、何もない。谷の斜面から湧き出る湧水に含まれる朱色の微粒子が固着して不思議な景観を呈す。

湧水から流れ出る朱色の微粒子が付着してできた筋
朱色の微粒子が固着蓄積したもの
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朱い谷


谷の奥にさらに滝(F4)が見えるが、沢歩きに興味ないのでパス。左俣探索を完了し、戻るついでに右俣に滝があるかどうか探ってみた。

右俣の下方からやや大きな水音が響いてくる。数十m斜面を下ると高低差の大きな滑滝が見えてくる。迫力はないけれども美しい(alcokabahol さんの記録によると、これは右俣のF2。ゴールドラインから見える滑滝はもう少し下方にあるらしい。)。

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右俣F2


カヤの木につかまりながら廃道に戻る途中で、落ち葉の下にFUJICHROME VELVIA50 の包装袋を見つけた。平成19年4月15日に発売開始したカラーリバーサルフィルムだから、まだ5年経っていない。訪れる好き者がいる割にネット上には写真が少ない。

廃道の反対側の出口はスキー場滑走コース建設で埋もれており、スキー場側からは判別できない。GPSなんぞ持っていないので、標高999mポイントより下の赤松の10m程度南側に存在するとだけ書いておく。基本的な能力がある人ならこれだけで十分であろう。

帰りは初心者コースへの連絡道を通ってリフトのあるコースに抜けた。

磐梯山


両親は若いころ(アルツ磐梯スキー場建設以前)ゼンマイ採りに行った際に右俣の滑滝を見ているとのこと。母は沢にクリンソウがたくさん咲いていたことを鮮明に覚えていた。

帰宅してからネット情報を調べたら、alcokabahol さんが一通り探った記録があった。滝の同定はこの記録を参考にしました。春か秋にもう一度行ってみる価値ありそうだな。

山野・史跡探訪の備忘録