広河原谷周回(冠岩沢橋〜滝入の頭〜有間峠〜蕎麦粒山〜仙元峠〜浦山大日堂)

年月日: 2012年09月16日(日)

行程: 冠岩沢橋近くの路肩出発(06:06、標高約500m)〜秩父・飯能境界尾根到達(07:25、標高約1,040m)〜秩父側の未舗装林道終点(07:55、標高約1,000m)〜森林管理道・広河原逆川線に接続(08:25、標高約950m)〜有間峠(09:00、標高約1,140m)〜埼玉県・東京都境界尾根到達(09:42、標高約1,345m)〜蕎麦粒山(10:15、標高1,472.9m)〜仙元峠(10:28、標高1,444m)〜秩父線57号鉄塔(11:37、標高約910m)〜秩父線60号鉄塔(12:04、標高約670m)〜浦山大日堂(12:17)〜駐車地に帰着(12:40)

3連休の天気がまずまずとの予報で、15日からの山中一泊の山歩きを計画した。14日夜の解析雨量・降水短時間予報に拠ると南から暖かく湿った空気が勢いよく入ってきていたので、14日発表の天気予報はどうも怪しい。雨に遭うのは御免である。15日朝の天気予報を確認するために出発を遅らせた。案の定、天気予報は悪い方向に変化しており、15日は何時何処で雷雨が発生してもおかしくない。16日は曇り基調、17日は傘マーク。3連休中の山中一泊の山歩きをあっさり放棄。

予定が無くなり15日は終日引きこもりでゴロゴロ。外で体を動かすのなら16日しかないが、魅力的な山域を今の季節に歩いてしまうのはもったいない。長沢背稜細切れ歩きの残り3区間のうち、最も関心が低い日向沢ノ峰と仙元峠の間を選択。

長沢背稜細切れ歩きは原則として秩父側から右回りで日帰りの尾根周回で行うことに決めているため、まず浦山から秩父・飯能境界尾根に上がって南下することになる。秩父・飯能境界尾根の稜線を一通り踏破済みであるため今一つモチベーションが上がらないし、しかも浦山から尾根に上がれる場所が限られているのでコース設定が悩ましい。鳥首峠は先月行ったばかりだし、森林管理道・広河原逆川線は舗装路歩きが長すぎる。未知の冠岩沢左岸尾根を辿って秩父・飯能境界尾根に上がることに決めた。境界尾根歩きが長くアップダウンが多いのが難点だが、橋小屋の頭から逆川乗越に下って(若しくは有間山から東に下って)森林管理道・広河原逆川線を歩いて有間峠に向かうのも一手。あとは現場で状況次第で判断する。


駐車地(冠岩沢橋近くの路肩)〜有間峠

取付き易そうな場所からスギ植林斜面に進入。明瞭な作業道がトラバース気味に南上方に向かい、標高600mの肩で本命の尾根稜線に出た。尾根稜線の南側は浦山広葉樹の森再生事業として広範囲に針葉樹が伐採されて開けており眺めが良ろしい。その反面、繁茂するススキとワラビの朝露で体が濡れる。浦山側は完全に無風で湿度が高く汗ぐっしょり。尾根幅がある区間は、藪が無く日陰と適度なグリップが得られる稜線北側の林の中を登る方が楽だ。

広河原谷の眺め(06:35、標高700mから)


全てが伐採されたのではなく、一部白骨樹林のようになっている場所がある。山火事でもあったのだろうか。写真撮影中にキイロスズメバチが出現。目の前に来た3匹を叩き落として上方に逃げた。これから秋にかけて開けた場所はなるべく避けた方が良い。

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植林の残骸(06:50、標高850m)
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伐採された斜面(07:08、標高950m)


鳥首峠を指す道標がある標高1,040m地点で境界尾根到着。境界尾根稜線は飯能側から微風が吹き上げて心地よし。朝方は秩父一帯が晴れていて視界良好。下る予定の尾根が良く見える(仙元尾根と呼ばれていることをこの日初めて知った。)。

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蕎麦粒山(左端)と仙元尾根(写真中央が新秩父線57号鉄塔)


滝入の頭(標高1,070.9m)の南東鞍部の稜線直下に作業道が接近する。急勾配斜面だが作業道を辿れば安全に未舗装林道終点(下の写真右端)に移動できそうである。地形図に記載の無い未舗装林道はほぼ標高を保ちながら有間山西側斜面を回り込み、森林管理道・広河原逆川線のどこかに接続している。当初案よりも楽できそうである。

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伐採斜面の作業道と有間山西側を巻く未舗装林道
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未舗装林道終点から振り返る(07:55、標高約1,000m)


枝尾根の肩にある未舗装林道終点到着時、枝尾根の裏側から人の声が聞こえた。朝7時台に逆川方面(飯能側)から有間山尾根に登るとしたら逆川乗越まで車で来たとしか考えられない。しかし、現在位地は橋小屋ノ頭(標高1,163m)よりも北側であって有間山(タタラノ頭)と反対方向だ。なんか変だなと思いながら未舗装林道を南下していくと予期せぬ光景に出遇った。

標高1,100mポイント南側の鞍部において稜線と未舗装林道の高度差は40mしかない。その斜面を下りつつある女性の姿があった。こちらに気付いて声をかけてきた。「登山者の方ですか?」「そうです。」「あの、私、登山道を間違えたみたいです。」 はぁ?って感じ。道間違えるような場所じゃねぇだろ。「ここ崖になっていて降りられませんよ。」 何処に行こうとしているのか聞こうとしたら、「あ、いいです。戻ります。お騒がせしました。」だって。

未舗装林道は緩やかにではあるが下り基調で有間山西側を巻いていく。途中一か所、豊富に水が流れる支沢があるので水の補給ができる。関係者以外入り込めない林道に車が1台あり、長靴を履いた男性がなにやら準備中。背後から人が現れて驚いたであろう。挨拶だけして通り過ぎた。

標高950mで森林管理道・広河原逆川線のヘアピンカーブに接続した。有間峠まで200m弱の登りとなるが、稜線辿った場合よりはるかに楽で時間短縮できた。なにより、ほとんど直射日光を浴びずに歩けるのが嬉しい。

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有間峠



有間峠〜蕎麦粒山〜仙元尾根〜浦山大日堂〜駐車地

有間峠に在った登山者のものと思しき車は2台。林道日向沢線を歩いて仁田山をパス。

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フジウツギ・林道日向沢線にて


尾根東側は陽に照らされているが、飯能側の空には雲が多く湧き上がり、日向沢ノ峰は雲の中。雲にすっぽり覆われ、微風が吹いて適度に涼しい。防火帯の優しいチヂミザサの草原が美しい。その中に、数は少ないが矮小なヤマトリカブトとフシグロセンノウを幾つか見かけた。

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埼玉県・東京都境の尾根道
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ヤマトリカブト
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フシグロセンノウ


蕎麦粒山に向かう途上で、戻ってくる単独行男性1名と遇った。蕎麦粒山にはご夫婦と思しき1組が滞在中。どちらも挨拶を交わしただけで話はしていないが、おそらく彼らは有間峠に在った車の持ち主であろう。

休まず蕎麦粒山を通過して次の1,444mピークに向かった。有間峠からここまで来る1時間半の間に一気に曇りの領域が広がってしまい、どこにも青空が見えない。パラパラと弱い雨が降り出した。


予定ではその西側鞍部まで行くつもりであったが、山頂に仙元峠と書かれていたので今回は鞍部に立ち寄らず仙元尾根を下る。

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1,444mピーク(仙元峠)
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現在の仙元尾根の登山道に、かつて秩父と多摩を結ぶ唯一の峠として多くの人が行き交ったことを感じさせるものは何一つない。ただの細い山道である。要所に道標や誤進入防止のロープがあって迷うことはないが、素直に尾根稜線を辿らない細いトラバース道が大部分を占めるため、足首に常に同じ方向に負荷がかかってとてもつらい。登山道というよりむしろ造林関係者(明治神宮?)の作業道として維持されているようだ。次回、登りで辿るときは登山道を完全無視するつもり。

道中何か所か出てくる注意書きの設置主が明治神宮であった。この辺りの経緯について参考となるページがある(時空散歩 − 日原往還;奥多摩・日原から仙元峠を越えて秩父・浦山に ttp://yoyochichi.sakura.ne.jp/yochiyochi/2009/10/post-116.html )。

標高1,150m地点は尾根東側の薙が進行して稜線部の下まで抉れているので要注意。近い将来、稜線も崩落するだろう。

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左奥が飯能・秩父境界尾根


新秩父線鉄塔57号以降は送電線巡視路を兼ねているので歩き易い。60号鉄塔から浦山大日堂の間は管理道がなかったら登降不可能な急勾配である。本当に昔の人がこんな場所登降したんだろうか。他にもっと安全な取付きがあったのではと推測する。

浦山大日堂


有間峠を車で通過できることを知ったので、帰りに通ってみた。塩那道路のミニチュア版を全線舗装化したような存在であり、下りがきついので秩父の渋滞回避に使うメリットは低いと感じた。

山野・史跡探訪の備忘録