高原山中腹(矢板市内)ウロウロ

年月日: 2013年4月28日(月)

画像


ゴールデンウィーク前半の初日(土)は独り勝手に休日出勤。リゲインのコマーシャルが流行った頃に就職し、二十代、三十代は常にワーカホリックだった。四十代にやりたいことができなかった分、邪魔の入らない環境で自分の好きな仕事に集中できる休日出勤は金にならなくても苦にならない(むしろ楽しい。)。

栃木在住時は、@仕事上の強いストレスを解消する必要があったこと、そしてA自分の嗜好に合う魅力的な場所が身近に在ったことの2つの条件が重なって山歩きの原動力となった。今はそのどちらも無い。栃木で関心のあったことは(やり尽くしたとは思わないが)ひととおりやってみた。奥武蔵で電車で気軽にアクセスできる場所は後年の楽しみに温存しておきたい。ノラさんからご紹介いただいた長沢背稜歩きも完結した今、秩父でわざわざ長時間自家用車を運転して行ってみたい場所はほとんど残っていない。山歩きに行く動機が薄れてしまった。

とはいえ、連休で天気も良さそうなのだから、帰省しない前半に一回くらいは体を動かすべく山歩きしてみようか。今年秋に廃車手続きする予定であるため、車利用前提の山歩きの機会は残り少ない。土曜日帰宅後に、車利用が前提となる奥秩父における最後の山歩きを計画してみたが、我が家族が夜更かしで睡眠時間が確保できなかった。あっさり当初案をあきらめ、高原山の既知の場所をつなげて歩く軽めのコースに変更。

朝方、県北の上空が分厚い雲に蔽われ、山並みが全く見えない。福島県境から離れている高原山が見えないということはかなり強烈な北西風が吹き付けていることを意味する。氏家の辺りまで来て、ようやく朝日に照らされた不気味な高原山の姿を確認。標高1200m以上が雪を被っていた。昼にかけて天候が回復したとしても、笹薮が濡れていて、尾根筋では暴風に晒されるのが確実。悪天候に対応できる装備を持ってこなかったため、コース案を断念した。

せっかく時間・資源・金を費やして来たのに何もせずに帰るのはもったいない。こんな時はちょっと気がかり・心残りだった場所を再訪するのに良い機会だ。最初に赤滝に立寄り。高原山南面の山麓は風裏で穏やか。青空が広がって陽光に照らされた新緑が鮮やかだ。

画像
赤滝


前回はデジカメを所持していなかったため、携帯電話のカメラで撮った汚い画像しか残せなかった。赤滝は左岸側から撮ると滝上の空が明る過ぎ、空が入らないように右岸側から撮ると樹木の枝が邪魔するといった具合で、撮影が難しい。鑑賞に堪える写真ではないが、一応撮影できて満足。

赤川沿いに下り、尾根の切通経由で枝持沢側に移って寺山ダムに抜けた。県民の森に向かう道の広い路肩に車を停めて、宮川の支沢を越えて宮川本流を遡行。目的は、中流部にある無名滝の再訪である。渓流釣りを始めて間もない頃(2000年頃)、宮川渓谷歩道の最下流部の入口から沢に降りて下流に向かい、涸滝の落ち口で行き詰り、右岸を高巻いて下った。あの場所をもう一度見てみたい。

最奥の堰堤上で宮川本流に入川。沢底にたくさん生えているコクサギの香が漂う。

コクサギ
       


堰堤上のゴーロは涸れているが、すぐにそこそこ水流が現れる。順調に遡行して滝に到着。滝そのものは水量しょぼいが、その右側に聳える30m程度の柱状節理の断崖が壮観だ。断崖下に不動明王が祀られている。

宮川のお不動様(全景)


柱状節理
柱状節理と不動明王
不動明王


前回の高巻き後に見ているはずだが、何故かこの壮観の記憶が全くない。「高原山紹介」で滝については簡単に記述しているのだが、大場所に関する記載は無い。高巻きで気持ちに余裕が無くて記憶に残らなかったのかもしれない。

宮川のお不動様に関する資料を検索してみた。探し方が下手だったのか、ウェブでヒットした情報は下記一件のみ。管理人さんは地元の方ではないのに、こんな無名の場所まで探索されていることに感心する。

福島かんたん滝めぐり

柱状節理の隙間を伝って水が滴り落ちる。音響効果を狙ったものかどうかは不明だが、鍋の蓋が置いてあってパンパンパンと大きな音が響き渡る。どんな輩の仕業か、大場所を見渡せる左岸側にコーヒーの空き缶が多数散らばっていた。

左岸側から見た無名滝(落差は6、 7mといったところか)
無名滝上のナメ


右岸側を高巻いて滝上に出た。滝上は広いナメ床である。(ノウルシかどうか判別できなかったが)沢床にトウダイクサ科の植物が多数生えている。

落ち口からしばし遡行を続けると、宮川渓谷歩道に至る。ばかでかい望遠レンズを持った男性がいた(同好者達が新緑の撮影会を催していたらしい。)。この手の人間は望遠レンズと高級一眼レフを持った人間以外には極めて無愛想である。

木橋を渡って右岸側に移り、左手の植林斜面を適当に登って、尚仁沢と県民の森を結ぶ舗装路に抜けた。さらに道路の反対側の斜面を少し登って、見晴の良い牧草地に至った。

画像
高原山


牧草地の北端から舗装道路に抜けた。左右に幾つかの畜産農家を見ながら北上し、台覚寺を経て直進すると尚林沢林道に至る。単純に尚仁沢林道を東進して育樹祭会場跡(芝生の広場)、県民の森を経由して舗装車道を下って駐車地に戻る。途中、寝不足で何度か倒れ込みそうになったが、吹き下しの風が強くて休めないのがつらい。なんとか車まで戻って即昼寝。

2時間半程度眠って頭がスッキリ。まだ午後1時半。朝に較べて雲の流れが少し緩やかになった。もう一か所立ち寄ることにして、第三八方林道の入口に移動。昨年、SDカードを忘れて写真撮影できなかった沢入沢の涸れ滝の落ち口を見るのが目的である。

第三八方林道が天沼川を渡って左岸尾根を沢入沢側に回り込むことは知っている。ただし、歩いたことがあるのは天沼川〜左岸尾根の区間のみで、起点から通しで終点まで歩いたことが無い。涸れ滝訪問ついでに終点を確認できれば儲けもの。

第三八方林道は平成2年竣工とのことだが、路肩崩壊箇所はないものの、法面補強を一切していないため落石が多い。3年前の秋に来たときは草が茂っていて途中で引き返してしまった。今回はきれいに手入れされていて進むのに苦労はしないが、天沼川右岸側を奥に向かう区間が予期していた以上に長くてうんざり。

沢入沢の左岸側から植林地を少し下って沢入沢に降り、左岸側にある古い作業道を辿って下流に移動。水流が消え勾配の無い区間を進むと、次第に谷幅が狭まって涸れ滝の落ち口に至る。落ち口に至るくねくねとした滑床の溝が、豪雨時の奔流を連想させる。

滑床
落ち口はズドンと切れ落ちていて迫力がある。


右岸側の広葉樹斜面から涸れ滝全景を撮影できそうだが、足が滑ったらあの世逝き。ザイルを所持していなかったためあきらめた。左岸側から植林地の小尾根を数十m登った場所が第三八方林道の終点だった。

第三八方林道の終点
       


予定通りではなかったが、気になっていたことが片付き、山菜(タラの芽、コシアブラ、モミジガサ、ゼンマイ)も大量収穫できて、満足感のある山歩きであった。帰りにエビス釣具店に寄って、今年の那珂川の年券を購入した。秋に廃車するまで栃木にでかけるモチベーションを維持できそうだ。

山野・史跡探訪の備忘録