雄飛橋からスッカン沢周回

年月日: 2013年5月12日(日)

スッカン沢・雄飛橋の駐車場・標高約890m出発(05:52)〜大入道〜剣ヶ峰〜釈迦ヶ岳〜明神岳西峰・東峰〜1627m峰〜塩原火山・1700m峰〜鹿股沢治山資材運搬路横断〜1227mポイント〜雄飛橋帰着(14:38)

* カメラの時刻機能が壊れており、腕時計も携帯電話も忘れてでかけたもので、出発と帰着以外の時刻は一切不明。太陽の方角による大雑把な推定では、1700m峰到着時刻は12:30〜13:00の間であったと思われる。

高原山は複雑な過程を経て形成された火山であって、最高峰の釈迦ヶ岳は中心ではなくスッカン沢に面したひとつのピークに過ぎない。ウェブ上で得られる火山学者の情報に拠れば、巨大な塩原火山のカルデラを埋め尽くすように(明神岳、前黒山を含む)中央火口丘に相当する古い山体が形成され、その後でカルデラの南側に釈迦ヶ岳火山群(鶏頂山、西平岳〜釈迦ヶ岳、剣ヶ峰)が噴出したとのこと。剣ヶ峰の子分みたいな存在と思っていた大入道は、前黒山と同時期の古い山体であるらしい。その学説が事実であるならば、現存しない中央火口丘の中心はスッカン沢の源流の辺りに在ったことになる。中央火口丘と釈迦ヶ岳火山群の重なり合った部分に東に向けて開析したスッカン沢こそが高原山の中心と呼ぶにふさわしい場所であると思う。

高原山で人跡未踏の場所なんて存在しないであろうが、高原山探訪を開設した当時(2002年)、スッカン沢に面した長大な稜線の登山道の無い区間に関してウェブ上で公開されていた情報は自分が把握する限り以下の二つ。

先人の記録@: 下塩原矢板線からスッカン沢右岸尾根を辿って大入道まで往復した記録(http://www.geocities.jp/okiyamatotabi/tozan-1.html)

先人の記録A: 前黒山治山資材運搬路終点から前黒山南東の1700mピークまで往復した記録(http://www.geocities.jp/urouzan/mt100/Tochigi100Maeguro.html)*1

*1  宇都宮山の会のページからアクセスする方法が不明ですが、上記URLで直接見ることができます。記録の内容を読み返してみたところ、記録者が到達した場所は前黒山の三角点ではなく1700mピークの主三角点であったようです。

前黒山治山資材運搬路終点から明神岳の間は昔の地図では破線路が記されているので、前黒山治山資材運搬路が現役であった頃は歩く人が少なからずいたと思われる。

スッカン沢に面した道のない稜線を歩いた自身の記録は下記の3つ。

@ 前黒山登山(スッカン沢北尾根ルート探索 2003/04/09)

A 前黒山〜明神岳〜鶏頂山周回(2003/12/07)

B スッカン沢探訪その2・釈迦ヶ岳登山(2005/11/28)

ウェブ上で情報が全く得られない@の区間を皮切りに何度か細切れで歩いてみたのだが、1700m峰と前黒山治山資材運搬路終点の間だけが未踏であった。Bの記録は雄飛橋を起点とした左回りの周回であっても、スッカン沢の探索が主目的であるが故に全行程尾根を辿る周回ではない。未踏区間を含めた完全な周回は自分にとって決して優先度は高くなかった。他の関心事がほぼ片付いたことでようやく挑戦する機会が訪れた。

4月28日に実施するつもりで出かけたものの悪天候で延期。5月12日の天気予報には傘マークがついているが、午前3時頃までは雨が止んで日中は最高の陽気になりそうな気配。人の姿が少ない早い時間帯に釈迦ヶ岳を通過するため、右回りで行く。

早朝、下野市辺りではまだ雨が降っていた。北の空の方が回復が早く、高原山には雲が無くて朝日に照らされている。路面は乾いており、笹薮で濡れることもなさそう。これならもう1時間早く出発してもよかったな。下塩原矢板線はサーキット族が出没するので、夜間から早朝はあまり近づきたくない所だ。雄飛橋の駐車場に着いた頃にはちょうど連中が走行を終えて帰っていくところだったので、準備を済まして無人の駐車場から出発。

車道を歩いて高度を上げて5つ目のカーブから谷を登る。すっきりした谷で、藪も危険個所も無い。花期を過ぎたカタクリが目立つ。


尾根上は腰高のミヤコザサの林床で楽に歩ける。古い汚い目印を除去しながら順調に進行。標高1135mのスッカン沢を望める場所に至ると北西方向から涼しい風が吹いていた。熱冷ましにちょうどよい。

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標高1350m前後)


設置されてから10年近く経っていると思われるが、大入道の山部山名板には痛みがほとんど見られない。

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登山道からの展望(明神岳〜1627m峰〜1700m峰)
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エロ岩と1627m峰、前黒山〜1700m峰


剣ヶ峰を経て大間々から来る登山道に合流。早朝まで雨が降っていたというのにぬかるみが全く無く快適に歩ける。剣ヶ峰と釈迦ヶ岳の中間地点で美しいキテンと遇った。立ってこちらを観察している。獰猛な性格の割に見かけはとても愛嬌がある。

釈迦ヶ岳に向けて登りの区間に入ると若干登山道に雪が残っており、先行者の足跡が認められた。融け具合から判断して1時間程度経過していそうだ。予想通り戻ってくる単独行の男性が下ってきた。こんな早くに戻ってくるということは、他にも登る予定の山があるか、もしくは半日常的に釈迦ヶ岳登山をしているのかもしれない。挨拶だけで会話無し。山頂北側は雪解けでぬかるみ多し。

日光連山と鶏頂山
高原山南面の眺め


釈迦ヶ岳山頂滞在中に中岳方面から男性が一人上がってきた。この方を最後にその後の行程では誰にも遇わず。

御岳山から明神岳方面に向かう途上にあるコメツガ林斜面に部分的に氷雪が残っていた。

明神岳山頂に立ち寄ってから少し戻って展望台で一休み。この方位から見る釈迦ヶ岳と鶏頂山はコウモリに似ている。県境方面の眺めも素晴らしい。

明神岳西峰
高原山


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帝釈山〜田代山と県道・栗山舘岩線(中央の三河沢に面する雪崩多発帯を横切っている。)


整備された回廊を通ってハンターマウンテンスキー場へ移動。

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ハンターマウンテンスキー場


明神岳東峰のスッカン沢展望台は老朽化のため立ち入り禁止であった。

スッカン沢展望台
       


スッカン沢展望台からは藪。昔の地図に記載されている破線路に相当する道跡は判別できない。たいした藪ではないので、スッカン沢に面する縁に沿って適当に進行。特筆するほどの特徴を持たない1627m ピークを経て、前黒山治山資材運搬路の終点に到着。ここから1700m級ピークまでの区間が唯一未経験であった。

前黒山治山資材運搬路終点
1700m級ピークへの登り


山頂まで針葉樹が混じるダケカンバ林とミヤコザサ林床の斜面が続く。1700m級西ピークからの眺めは残雪期に限らず秀逸である。

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1700m級西ピークから見るスッカン沢


明神岳から1700m峰の間には新しい鳥獣保護区(ニホンジカとイノシシを除く)の標示が数枚設置されていたが、それ以外には真新しい人跡は見当たらなかった。

主三角点が設置されている1,700m級東ピークはイラモミやコメツガ等の針葉樹に被われていて周囲の眺めが得られないが、ここから少し南東に樹林を下ると広い笹原の上端に至り、八方ヶ原とその先に広がる箒川流域の眺めが良い。

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1700m級東ピーク直下から見る箒川流域


1641mポイントの尾根を下るのは2度目だが、前回(2003年)歩いたときは雪が残っていたので光景に見覚えがない。シカ糞だらけの1490m級小ピークに至ってようやく記憶に残っている光景に出合えた。1345mポイントを過ぎてから鹿股川治山資材運搬路の峠に向けて降下。

鹿股川治山資材運搬路の峠


峠を跨いでスッカン沢を見下ろす左岸縁に沿って下り、1,227mピークに到着。2010年に誰かさんが藪払いをしてベンチまでしつらえて○○山なる名を付けようとしたことがあったのだが、一般ハイカーが来たいと思うような場所ではないので目論見通りにはいかなかったようだ。)

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1227mピークから見る1700m級ピーク


1,227mピークをからやや深いミヤコザサ藪の林床を下って標高1006mの下塩原矢板線の峠に抜け、後は舗装路を歩いて雄飛橋に戻り歩行完了。

左足に不安があったこともあって、普段と較べて慎重にゆっくりと歩いた。コースの大部分を経験済であり、絶好の天気に恵まれてミスもアクシデントも無く順調に周回できた。

手つかずの場所は少ないが、他所に較べれば目印類による汚れが少なく気持ちの良い場所だ。自己顕示や道案内気取りで目印をつけて汚すことなかれ!

山野・史跡探訪の備忘録