飽海三名瀑(鳥海山・二ノ滝コース、玉簾の滝、十二滝)

年月日: 2013年7月10日(水)

行程: 一ノ滝駐車場出発(05:50)〜三ノ滝折り返し(06:50)〜万助道への連絡道・水場で折り返し(07:20)〜駐車地に帰着(07:45)

10年前の長期連休時に初めて鳥海山に登った。二日目に名だたる美しい瀑布群を眺めながらお気楽に二ノ滝ルートを下るつもりであったが、夜半過ぎから大雨に見舞われ、千畳ヶ原の雪渓でガスに巻かれて彷徨い、増水した月山沢で渡渉に失敗して流された。今生きているのは奇跡に近い。結果的には怪我することなく下山したものの、それは幾つかの幸運が重なったおかげであって、状況は明らかに遭難であった。下山する間、奔流する南ノコマイの轟音に畏怖して滝を見る気持ちの余裕などなかった。這う這うの体で逃げ帰ったのである。

かつて痛い目に遭わされた山であっても、鳥海山は自身にとって今でも最も魅力を感じる場所のひとつである。10年後再び巡ってきた長期連休を利用して、今年廃車予定の愛車で再訪を計画。10年前の落とし前をつけるのが第一目的なので、山頂には行かず一回り小さなコースで日帰り周回する。そして、鳥海山で遊んだ翌日に新潟県・三面川でアユ釣りをする。時期も行く先も遊びの内容も10年前とほぼ同じ。

長距離運転が苦手であるため、8日に猪苗代の実家まで移動、9日に山形県経由で新潟県・村上市に抜けて三面川を下見してから海岸線沿いに山形県・遊佐町まで北上、10日に鳥海山で山歩きして新潟県・村上市に移動、11日に三面川でアユ釣りしてから猪苗代に戻る。東北北部に梅雨前線が居座ったままで天気予報が冴えないが、10日の天気が最も良さそうであったため上記の日程とした。

9日、酒田市を抜けてから適当に遊佐町を目指し、北東北地方定番のMAXVALUで食料を調達しガソリン補給してから二ノ滝コースの駐車場に向かった。車道沿いにモリアオガエルの生息地発見。


空模様の冴えない平日に山登りする人はおらず駐車場に車無し。下界に較べて涼しいのだが、携帯電話が通じず天気図や雨量レーダの確認ができない。少々寝苦しくてもリアルタイムの情報取得を優先して、10年前と同じあぽん西浜で一夜を過ごすことにした。麓に下る前に、広い駐車場を利用してアユ竿伸ばして仕掛けの仕上げを完了。

あぽん西浜に車を置いて夕刻に海岸を散歩。あいにく現在地に梅雨前線が居座っていて、西から雲が流れてくる。鳥海山は雲の中で見えない。10年前よりあきらかに状況が悪いようだ。

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西浜海岸にて


天気予報は悪い方にはずれて当地の明日は雨の予報になった。夜半に一時降雨。

朝方は曇り空。鳥海山は雲の中で、少なくとも景色は一切期待できない。当地は終日雨の予報だが、降雨レーダを見る限りでは、まだ表示範囲に雨雲が進んできていない。数時間は山歩きできそうであったため、二ノ滝コース駐車場に向かった。

林の中は無風で静かであっても、樹冠が激しく揺れている。山の表層部を勢いよく空気が流れているのだ。おそらく山上は降雨しており、尾根筋では雨混じりの強風が吹いているだろう。当初のコースで歩くのは無理だ。滝を撮影しながら10年前に月山沢で遭難しかけた場所まで行ければ良しとすべきか。

一ノ滝は降雨後で凄い迫力だが平凡に見える。平水時の容姿はどうか判らない。飛沫と瀑風で一ノ滝の観瀑台まで下りることできず。

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一ノ滝


10年前に遭難した時にくらべると水量が少なそうだが、二ノ滝の瀑風が強くて正面でカメラを構えることができない。橋の右岸側から撮影。

二ノ滝
二ノ滝(左岸側から)


二ノ滝の観瀑台は落ち口の上に在って撮影に不向き。南ノコマイそのものが一本の滝みたいな存在なので、降雨後はどこを見ても滝観てるようなものだ。

登るタイミングに合わせて雲の下限が上昇してくれたために、かろうじて三ノ滝を撮影することができた。三ノ滝は南ノコマイの奔流を象徴する存在であると思う。10年前、ほんのわずか条件がずれていたらここを俺の死体が流れて行ったはずだ。

間の滝
三ノ滝


しばし三ノ滝で霧の動きを見ていた。これ以上雲の下限が上昇することはなさそうだ。月山沢渡渉地点まで登るのは意味無しと判断して退却決定。

さぎり(狭霧)橋(平成15年7月完成。10年前に完成したばかりの橋を見ている。)を渡って万助道への連絡道(南ノコマイ右岸)に入り、連絡道をしばらく辿って水場に達した。水場とはいっても、靴脱がずには渡れない水量である。辺りに霧が立ち込めているのでこちらも退却決定。雲の下限がどんどん下がってきており、そろそろ山から退散すべき時合だ。山登りも高山植物を見ることもできなかったけれども、愛車と思い出の場所を再訪して主な滝を観たのだから10年前の落とし前をつけることはできたな。

一ノ滝駐車場にて
       


一ノ滝駐車場の大きな屋根付き休憩所で本日の行動を思案。地図に飽海三名瀑なる表示がある。いずれも日本100名瀑級の名瀑と書かれている。一つは今日訪問済みの二ノ滝。残りの玉簾の滝と十二滝を観て帰ろう。山を下り始めてすぐに眠気を催し、胴腹滝の駐車場で1時間程度仮眠。運転再開した時には雨が降り出していた。

玉簾の滝は日向川流域、十二滝は最上川支流の相沢川流域にあって、移動距離が長いのが難だ。まず県道373号線に入って途中で町道を通って日向川の下黒川橋に出ようとしたのだが、どの道に入っても県道373号線に復帰してしまう。怪しげな細い道を通ってようやく下黒川橋通過。

県道366号線を進むと玉簾の滝の案内が出ている。駐車場からきれいな道を10分程度歩いて玉簾の滝到着。降雨で水量豊富なためこの滝も飛沫混じりの瀑風が強い。落差63mとのこと。これまでに見た直瀑の中で最も落差があって美しい。滝の沢は水量の多い沢ではないので、普段は優美な姿を見せるのであろう。

玉簾の滝の由来
玉簾の滝


十二滝への移動はさらに面倒だ。まず、県道386号線で南に山越え。ほぼ全て一車線である。すこし国道344号線を東進してから市道に進入。未舗装区間こそ存在しないが、狭い一車線道路で路面に細かい石ころが多数散らばっている。雨の日でも林業関係者の車が対向してくるので緊張した。県道362号線は県道標示が見当たらなくても十二滝の案内は出ている。十二滝も不動様手前の駐車場から10分程度歩く。

この時点では雨が止んでいたので、経ヶ蔵なる低山に登ってみるのも悪くないと思った。

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経ヶ倉〜十二滝ハイキングコース


いざ滝を観に歩道を下ろうとしたタイミングで風雨が強まってきた。ハイキングするような状況ではないわ。

十二滝の名称は、全部で十二の滝を連ねていることに由来するらしい。

十二滝案内図
芯の滝(左)と河原滝


滝の手前にある橋は進入禁止となっていて、残念ながら左岸側から十二滝の全景を眺めることができない(画像検索すると左岸側から撮った写真がヒットするのでお試しあれ。少なくとも案内図の下から2/3 程度の範囲は見えるようだ。)。

濡れた岩盤の上を移動して部分的に撮影。

火揚滝(たぶんね)
南滝(たぶんね)


観瀑を終えて戻る頃には酒田市は土砂降りの雨。この後数日間、山形県では激しい降雨が続いた。ぎりぎりのタイミングで山形県を脱出。

国道7号を南下するにつれて雨雲が薄くなってはきたが、局地的に雨が降っている。どれが笹川流れを指すのか判らないまま海岸線を南下していくと、「笹川流れ遊覧船乗り場まであと2q」の表示があったので、てっきり2q先に笹川流れがあるものと思い込んだ。ところが、遊覧船乗り場は肝心の景勝地を通り過ごした場所にあって、何も見えない。わざわざ戻って観る程の場所とは思えなかったので、そのまま南下。もう来ないと思う。

県道583号線(極めて狭く対向車が多いので、利用すべきではない。)を通って三面川の水明橋で国道7号線に復帰し、朝日村の道の駅「朝日まほろば」で入浴。村上市で洗濯・食糧調達・ガソリン補給を済まして、三面川の駐車地に移動。

降雨レーダーに後続の雨雲が映っており、明日も雨になりそう。三面川のダムは普段の倍以上の放水を続けている。今夜も雨が降るようならアユ釣りをあきらめて猪苗代に帰る。夜半、一時雨が止んだ時に一匹のホタルを見たのが唯一の慰めとなった。

三面川
       


山野・史跡探訪の備忘録