川桁山・観音寺川支流の滝群

年月日: 2013年8月16日(金)

行程: 山の神出発(10:11)〜沢遡行終了・靴交換・軽食休憩(12:45 - 13:01)〜川桁山南ピーク(13:37)〜川桁山中央ピーク・1372m〜登山道出合い(13:45)〜川桁山山頂(13:55 - 14:01)〜小田峠(14:30)〜(観音寺林道)〜山の神に帰着(15:26)

先にさいたまに帰る家族を猪苗代駅まで送った後、ちょいとばかし運動すべく川桁山に向かった。川桁山の西側(猪苗代側に面した側)は、観音寺川の支流(名前不明)が刻んだ谷がV字に切れ込む。支流のさらに支流で山の神尾根の北側から流れる沢に架かる三丈の滝は、雪解けの時期に麓から見ることができる。しかし、川桁山山頂に突きあげる本流筋は、子を抱く母の手の如き尾根に隠されて一切見えない。この本流筋に地元でも滝マニアの限られた人物しか知らない大きな滝が在るという。その大滝の実体を確かめるのが目的である。

ウェブ上でそれらしき情報はヒットしない。何時の頃であったかはっきりしないが、少なくとも30年以上前、父親と沢右岸側杣道の終点まで行って、尾根上に這い上がって稜線近くの別の杣道を辿って戻った。その時に大きな滝は見ていないから、V字峡谷のさらに奥に在る大滝に達するには沢登り必至。今回は懸垂下降の装備を所持していないため、常に後戻りできるか若しくは尾根に這い上がれるか判断しながらの遡行となる。

山の神の鳥居近くのスペースに車を置いてスタート。林道支線(小白津林道?)は昔の記憶にある姿よりも状態が良い。何年か前に林道終点に二段堰堤を築いたときに整備したらしい。二段堰堤を越えようとして藪に踏み込んだ一歩目で転び、棘の生えた枝を掴んで掌に傷を負った。アユ釣りも山歩きも出だしが悪すぎ。

沢右岸側にある昔の杣道の名残は、土砂崩れや崩落で一部消失し、藪化も進んで今やほとんど役に立たない。堰堤上のゴーロで沢靴に履き替えて遡行開始。F1は落差10m以下だが、両脇に取り付ける場所無し。少し戻って右岸側を巻く。

F2の両岸は勾配きつく、直登した方が労が少ない。

F1(落差:数m、右岸巻き)
F2(落差:数m、滝右側に足掛かり在り。)


F2落ち口の右岸側にジャコウソウの群落があった。

画像
ジャコウソウ


1192mポイントから下ってくる水量の乏しい支沢が合流する場所で沢が右に屈曲。その先にやや落差の大きな滝が存在する。落差は下の段も含めて20m前後と推測する。この時はこれが大滝かと思った。三脚無いので、左岸壁に棒きれを立てかけてザックを支えてカメラを据えた。

F3(標高:約850m、落差:約15m、右岸巻き)
F3の上段全景


支沢との間の尾根に取付いて落口上部を見下ろす場所に至った。勾配がきついが、かろうじて太い蔓性樹木に掴まって落ち口に登り降りできる。落口のすぐ上流にも斜瀑のF4が控える。F4は左岸の棚に這い上がって巻いた。その上流側に樋状のクネクネしたナメ床在り。

F5は右岸側の岩場を途中まで這い上がり、上部の樹木の枝を掴んで巻く。

F4(落差:10m以下、
左岸側を這い上がる)
F5(標高:太陽光の当り具合から
判断して標高900m前後か、落差:約20m、
右岸側を這い上がる)


標高920mで小さい沢が右から合流する。本流筋の左俣には2段の滝が架かり、直登できない。支沢との間の尾根を辿って上段の上に出た。カモシカの通り道になっている。

再び沢が右に屈曲する場所の先に大滝が構えていた。斜瀑の連なりで高度差が大きい。巻いた時の感覚では30m程度ありそうだ。全景を写真に収めるには後方の右岸側に登らなければならない。樹木が邪魔になってきれいな写真を撮れそうになかったため、直下から下段のみを撮影した。

F6(標高:930m前後、
落差:20m前後か、左岸巻き)
F7(標高:980m、
落差:30m前後か、右岸大高巻き)


F7の直登は無理。右岸側斜面を30m程度登ってから浅いルンゼ状の場所を渡って滝に近づき、樹木に掴まりながら高度を上げて崖下の勾配の緩い場所を伝って小尾根に上がった。小尾根の反対側は切れ落ちている。部分的に岩が剥きだしの小尾根を辿り、勾配が十分に緩やかになってから沢に降下。

F7から先に大きな滝はなく、順調に標高1050mの二俣に達した。ここは尾根筋にあった杣道の終点であり、何度か杣道を辿って来たことがある。最後に来たのは35年以上前の高校3年の秋だが、特徴のある場所で見覚えがある。杣道は藪化してしまっているようで、沢から見た限りでは何処にあるのか判別できなかった。今や杣道を利用して戻るメリットはなさそうである。川桁山の現役の登山道を利用して下山すべく、沢を詰めることにする。

サンカヨウ


左右どちらも水量は同程度。地形図を所持していなかったので、左俣を詰めると山頂に突き上げることを知らず、右俣を選択。葉を虫に食われたブナの木が周囲に目立つようになった。この変化を見て、既に標高1200mに達しているらしいことが判った(今年はブナアオシャチホコが大発生したらしく、標高1200m以上のブナの葉が虫に食われて、山が赤茶けて見える。 )。水流が無くなってから靴を登山靴に交換して藪漕ぎ開始。

ツバメオモト


高校3年時に二俣中央の尾根を登って川桁山中央ピーク(1372m)に至った。二俣中央の尾根は木の根が這いアズマシャクナゲが生える痩せた尾根で、たいして苦労せずに中央ピークに上がれたように記憶している。当時は川桁山の登山道の存在を知らなかったから裏側(反対側)の小田峠目指して傾斜のきつい原生林の斜面を下った。その際、腕時計を失っているのでチシマザサや蔓の藪にてこずったと思われるが、記憶は朧だ。今回は源頭部から尾根上を目指したのであるが、登るにつれてチシマザサの密度が増す。到達した場所は標高1370m級の川桁山南ピークであり、中央ピークを経て登山道に至るまで稜線の蔓混じりのチシマザサの藪漕ぎを強いられた。

川桁山山頂に向かう稜線上の登山道はここ数年刈払いが行われたことがなく、道両側から灌木、夏草、笹が覆い被さっている。暑い中のダラダラ登りはつらい。天狗角力取山、大滝山、安達太良山方面の眺望が良いことが唯一の救いだ。

天狗角力取山、大滝山方面
川桁山山頂


本日は午後から天候が変わることが予報されていた。安達太良山方面に発生している入道雲が迫ってくる様子はなく、雷雨に遭うことなく帰れそう。

沢遡行時に膝下まで濡れたズボンは乾くどころか全体が汗ぐっしょりで自重でずり下がる状態だ。上半身も汗ぐっしょり。川桁山山頂で水を飲もうとしたら、ペットボトルが無い!車に置き忘れてきたようだ。実家で採れたトマトを2つ持ってきていたので救われた。水が無いと判ったら一刻も早く下って沢水を飲みたくなった。小田峠側に登山道を下っていくと右側の沢筋から水流音が聞こえてくる場所がある。案内はないが登山道から近いため飲み水確保に良い場所である。観音寺川側から内野側に周回する場合は此処が最後の水場となる。

発汗と塩分不足で、車に帰着した時には軽く頭痛がした。8月の山登りは汗かき体質には向かないな。山歩き終了して1時間もしないうちに会津全域に積乱雲が発生し雷がゴロゴロ。結果的に降雨域がずれたので雨に遭うことはなかったと思うが、もう少し時間帯が遅かったら薄気味悪い思いをしただろうな。

父から聞いた話では、かつてどこかの業者が上部から滝に降下しようとして死亡事故が発生したことがあるらしい。何を目的とした業者だったのか、どの滝で事故が発生したのかは不明。この地に不案内な一般のハイカーが安易に行ける場所ではなく、沢中では携帯電話も通じない。訪問する場合は十分な装備と計画を以て望まれたし。

山野・史跡探訪の備忘録