ヒネリギ沢周回(内の外山尾根〜赤薙山南東尾根)

年月日: 2013年9月29日(日)

行程: 霧降高原歩道近くの退避点・標高961m出発(07:20)〜稲荷川を見下ろす尾根に上がる・標高1320m(08:30)〜標高1520m(09:20)〜内の外山山頂(11:20-11:40)〜女峰山の登山道に抜ける・標高2080m(12:20)〜赤薙山(12:43)〜1404mポイント(13:52)〜中ノ沢・ヒネリギ沢合流点でダニ除去と休憩(14:30-15:00)〜車に帰着(15:20)

1900m〜1983mポイント〜北側鞍部まで極めて危険な場所が連続します。先人に倣い危険な区間の詳細記録は公開致しません。

日光地域の山々は昔は主に修験者によって、近代では伐採事業や山岳会によって隅々まで開拓され尽くしている。インターネットが普及して以降も、掲示板上でおつきあいさせていただいた方々(烏が森の住人さん、山部さん、@宇都宮さん、@上三川さん、STARION さんを筆頭とするお歴々)の踏査した範囲を合わせると尾根筋をほぼ全てカバーしているのではなかろうか。日光の山域は氏家の旧自宅からよく見える山域であって、物理的には行くことはたやすかった。しかしながら、「観光地で人が多い」ことが障害となって、心理的に遠く感じられ敬遠気味となり、訪れたのはほんの数回に過ぎない。植生は大概想像がつくので、みなさんの山行報告を見て地形図を眺めることで実際に歩いたような気になって満足していた。

いつのことか覚えていないが、確か雲竜渓谷にあるやたら等高線の密な1983mピークに@宇都宮さんが挑んだことがあると記憶している(記録が手元にないので詳細不明。)。この方、極めてタフで且つ幾つか危険な場所をあっさりと突破している経歴があるし、普通の尾根ではないのでイメージが全くわかず、触発されることはなかった。2009年7月に雲竜瀑を見に行ってバットレス下の植生に興味を抱き、ルートを検討したことがあった。この時改めて1983mポイントのある尾根に着目。行ける可能性はゼロではなさそうだが、わざわざ危険な場所をトラバースしてバットレス下に行く意義を見出せなかった。

今年、(かつては雲竜渓谷)今は足尾のジャンダルムに足繁く通うRRさんが登ったという情報を目にして、1983mポイントのある尾根が内の外山尾根と呼ばれていることを初めて認識した。RRさんの断片的な情報と別の方がヤマレコに載せている情報を併せると、南からの直登コースには下りで懸垂下降必須の危険個所があることが確定。1983mピークはやはり自分が近づくべき場所ではなさそうだ。以前検討したルートで1983mピーク北側鞍部に抜けられれば良しとすべきだろう。ネット上では内の外山尾根及びバットレスの鮮明な画像が得られないので、この目で眺めてみたくなった。

土曜日(28日)が月例通院のため、日曜日の天気が良ければヒネリギ沢を短時間で周回する案が浮上。1983mピークはパスし、奥社跡への縦走路に上がれない場合はヒネリギ沢かもしくは赤薙山南東尾根を下る。幸いなことに日曜日も日中は晴れの予報であったため、さいたま市を未明に出発。

霧降高原に至る道は方向転換場所が見つからず、後続車が気になって破線路入口らしき場所を通り越してスキー場跡近くまで行ってからUターン。戻ってきて霧降高原歩道入口バス停から少し下った場所にある退避点に車を置いた。堰堤工事用の林道を歩き始めてすぐにサルの糞踏みつけて、本日も出だしが悪い。山歩きの最後に踏みつけるよりはましか。

霧降高原歩道の橋は壊れたまま。沢を渡って、シカ道程度の細い歩道を辿ってカラマツ植林の中を進む。霧降高原歩道が高度を下げる手前で歩道を離脱して尾根筋を維持。ほぼ一貫してカラマツ植林とミヤコザサの林床の組み合わせで、藪はツツジの濃い区間が1か所存在するのみ。風が無いのがちょっとつらかった。

稲荷川を見下ろす尾根筋に出て涼風を得た。1346mポイントを少し下ると眺めの良い場所がある。コースの全貌を見ると地形図で予想したより高く遠く感じる。

1346mポイント北西から
標高1,350m辺りから見た稲荷川


稜線上には踏み跡が明瞭で、境界見出標有り。ツツジ類の樹木が豊富。この尾根は5月から6月頃にツツジ愛でに歩くのが良いのではなかろうか。標高1500m以上になると稲荷川側が大規模に崩落している場所が続き、滑りやすいミヤコザサの中の細いシカ道を辿るようになる。

サラサドウダン紅葉(1603mポイント付近)


平野部から押し寄せてきた雲に飲み込まれて周囲の地形が見えなくなってしまった。山の上は晴れているはずであるから雨が降る可能性は無く、登りを続行。

予定では、等高線の幅が広い標高1800m前後でトラバースしてヒネリギ沢の源頭に抜けるつもりであった。ところが、途中にある小尾根が予想した以上に険しく反対側に回れない。

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内の外山南東ルンゼ(標高1800m前後)


ヒネリギ沢側にトラバースできそうな傾斜の緩い場所を目指して怖しい場所をよじ登っていった。地形図に描かれたトラバース可能な勾配には至らない(この辺りの地形図の記載は不正確である。)。素直なルートではないため過去に人が通った形跡は一切無い。ようやく勾配の緩い場所に至った。でも予想した地形と違う。ガスっていて周囲の様子が判らんが、現在地より高い山の存在が感じられない。高度計を確認すると既に1980m。必死にもがいているうちにいつのまにか登る予定の無かった1983mピークに登り詰めてしまっていた。

山頂の岩の上にペンダントの如くスリングとカラビナが掛けられている。ここは懸垂下降の支点となる場所ではないので、この山に来た者がいるという証として残したのであろう。

気圧の微妙な変動で、雲の領域が高度1950m前後で±100m程度上下していた。1983mポイント滞在時に雲が下がるタイミングが2回あって、北側鞍部と縦走路への詰めの様子を確認。1983mポイント北側は垂直の崖で、鞍部には地形図に記載されない切れ落ちた岩稜のコブがあって辿れない。

内ノ外山・1983mポイント
女峰山


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赤薙山〜奥社跡稜線


ルート選びを失敗した結果、期せずして1983mポイントに上がれてしまった訳だが、稜線通しで先に行けないのでは退却するしかない。退却用に懸垂下降の装備を所持してはいるものの、往路はあまりに傾斜がきつ過ぎて下方を見通せないため正確に戻れる自信が無い。さて、どうすっかな。

この先は、他人様にお薦めできない行為ですので記述省略。

鞍部に抜け出て安堵。この先、縦走路に上がれなかったとしてもヒネリギ沢に下って戻ることは可能。源頭部の草原はシカが忌避するシロヨメナだらけである。

内の外山から見る詰めの様子
詰め上がる


さらば
男体山遠望


赤薙山山頂では小さな子供3人を連れた若い夫婦が昼食準備中。祠の周囲には誰も居ない。人の目を気にすることなくロープを跨いで南東尾根(南尾根の呼称を使う人もいる。)に入った。

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赤薙山南東尾根・標高1970m辺りから見た内の外山


朝方対岸から眺めた南東尾根は、笹原が多くて晴れていれば好い眺望が得られそうであった。南東尾根には危険個所も藪も無く、ただ高い方に向かえばだれでも簡単に登れてしまう。その反面、下りでは尾根幅が広がって特徴の少ない区間のルート取りに注意を要する。標高1700mから1550mまでの笹原とツツジ灌木の入り混じる広大な区間がこの尾根下りの核心部といってよかろう。あいにくガスっていて標高1800m以下では視界が限られる状態であったため、できるだけヒネリギ沢側のツツジ灌木帯に沿って下っていった。標高1600m辺りから何本か溝が切れ込むようになり、進路判断がやや難しい。1404mポイントまで標高差150mの急傾斜の下りは意外に楽で危険個所無し。雲の下に出て尾根の続きを確認して本日の地図読み完了。

赤薙山南東尾根下りで地図読みを要する広い笹原
1404mポイントで雲の下へ


ヒネリギ沢と中ノ沢の中間尾根の稜線はほぼ全て落葉樹の森林で雰囲気がよろしい。但し、とてもシカ臭い。シカ道を辿るとマダニがひっつく。大きなマダニは指でピンピンと弾き飛ばせるので除去は簡単。今回は大きなマダニに加えて、1o以下の生まれたばかりのマダニがべったりとくっついている。こいつらは簡単に払い落とせない。

画像
ヒネリギ沢と中ノ沢の合流点


ヒネリギ沢と中ノ沢の合流点で衣服を入念に何度もチェックし、一匹ずつつまみながら30分かけてマダニを除去してから車に戻った。

山野・史跡探訪の備忘録